ペット問題6 隣室の居住者に対して、飼育犬の鳴き声による騒音のため平穏な生活が侵害されたとして慰謝料の支払を求めた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、隣室の居住者に対して、飼育犬の鳴き声による騒音のため平穏な生活が侵害されたとして慰謝料の支払を求めた事案(東京地判平成21年11月12日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、Yの隣室に居住するXが、Yに対し、Yがその居宅においてダックスフント2匹を飼育し、本件飼犬の鳴き声による騒音のため平穏な生活が侵害されたとして、①本件飼犬をと殺すること、②本件訴状送達の日である平成21年1月9日から本件飼犬の飼育をやめるまで1日当たり5万円を支払うこと、③慰謝料50万円及び訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求めて提訴し、本件事件係属中の同年2月1日、被告の長女が本件飼犬を連れて転居したため、上記①の請求に係る訴えを取り下げ、上記②の請求につき、同請求に係る期間を上記転居の前日までとし、上記③の請求を維持している事案である。

【裁判所の判断】

Yは、Xに対し、6万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

Xの居宅において、48.1デシベルから59.7デシベルの値の本件飼犬の鳴き声が聴取されており、Xは、Yが隣室に転居してきた平成20年4月ころから、Yの長女が本件飼犬を伴って転居した平成21年2月1日までの間、本件飼犬の鳴き声によって、一定の精神的苦痛を感じたことが認められるというべきである。
本件マンションの管理組合規約の使用細則において、他の居住者に迷惑又は危害を及ぼすおそれのある動物を飼育することが禁止されており、Xが犬の鳴き声に対して好ましい感情を抱いていないことが推認されることのほか、Xの居宅において聴取された本件飼犬の鳴き声の程度、Yがその居宅において本件飼犬を飼育していた期間等を総合して勘案し、Xの上記精神的苦痛に対する慰謝料としては5万円、弁護士費用相当損害金としては1万円が相当と判断する。

裁判所が認定する慰謝料の金額の相場を知るにはよい裁判例です。

訴訟係属中に飼犬を連れて転居してしまったため、①については取り下げられていますが、仮に判決まで行っても請求は棄却です。裁判所は、飼育を禁止することはあっても「と殺する」ことを命じることはありません。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。