ペット問題3 区分所有者から賃借している者が管理規約に違反してペットを飼育している場合、区分所有者及び賃借人を被告としてペット飼育の差止め請求が認められた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者から賃借している者が管理規約に違反してペットを飼育している場合、区分所有者及び賃借人を被告としてペット飼育の差止め請求が認められた事案(東京地判平成28年3月18日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本訴事件は、原告が、原告が管理するマンションの一室に居住する被告Y1及び同Y2が、本件建物の管理規約に違反し、上記居室内で犬を飼育しているとして、被告Y1及び被告Y2並びに上記居室の区分所有者である被告Y3に対し、管理規約に基づき、上記居室内でのペットの飼育禁止を求めるとともに、本訴被告らが犬の飼育を中止せず、原告らが本訴提起を強いられたことが不法行為に当たるとして、本訴被告らに対し、不法行為に基づき、弁護士費用82万6000円の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

本訴被告らは、本件建物内において犬を飼育してはならない

その余の請求は棄却

【判例のポイント】

1 ①本件居室の区分所有者であり賃貸人であるY2は、賃借人であるY1らが本件居室において本件ペットを飼育している事実を知っていたこと、②本件規約等によれば、本件建物の区分所有者は本件規則等の遵守義務を負い、また賃借人に対しても本件規則等を遵守させる義務を負うことについては当事者間に争いがない。そうすると、Y2は、賃借人であるY1らに対し、本件規則等を遵守し、本件ペットを飼育しないようにさせる義務を有していること、これをY2が履行できていないことは明らかであるから、被告Y2が、本件規則等につき債務不履行責任を負うことは明らかである。

2 原告は本件規約等の違反を理由としてペットの飼育禁止を求めていると解されるところ、このように債権的な請求を行う場合において、被告らの対応により原告が訴訟提起を強いられたとしても、これはあくまでも上記違反の是正を求める中での出来事であるから、この点のみを切り出して独立の不法行為と認めるのは相当とはいえない。
また、本訴の提起を強いられた事実が不法行為とは認められないことを前提として、我が国の民事訴訟において弁護士強制制度が採用されていないことを考慮すると、被告らの行為と原告による弁護士費用の支出との間に相当因果関係があると認めることもできない。したがって、原告による弁護士費用の請求には理由がない。

区分所有者から賃借している者が管理規約に違反してペットを飼育している場合には、区分所有者及び賃借人ともに被告としてペット飼育禁止請求訴訟を提起することが認められます。

なお、本裁判例においては、弁護士費用の請求は棄却されています。

区分所有に関する訴訟においては、どんな場合でも弁護士費用の請求が認められるわけではありませんので気を付けましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。