おはようございます。
今日は、管理費・冷暖房費の不払に対するペナルティとして給湯を停止したことが権利濫用にあたり不法行為とされた事案(東京地判平成2年1月30日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンション管理費の不払を理由として給湯を停止することは、権利の濫用に当り、不法行為を構成するかが争われた事案である。
【裁判所の判断】
不法行為を構成する。
→慰謝料30万円
【判例のポイント】
1 原告らは、また、本件管理規約の無効を主張するが、本件マンションの居住者にとって、給湯、冷暖房の供給が不可欠であるとしても、その利用の対価として管理費等を支払うべき義務を負うのは当然であり、その支払を拒む正当な理由があるとすれば、その理由を法的に明確に主張し、後に不当利得としてその返還を求める等の手段に出ることが可能であるから、管理者が、給湯等の利用について管理の委任を受けた区分所有者との間で、管理費等の不払いに対抗する手段として、暖房、給湯等の供給を停止することができる旨を約定することが、直ちに公序良俗に反し、又は自力救済と同視すべきものであるということはできない。
2 原告X1に対する給湯停止の措置は、管理規約に基づくもので、あらかじめ管理費等の支払を督促し、給湯停止措置に出ることを警告した上で行われたものではあるが、給湯という日常生活に不可欠のサービスを停めるのは、諸経費の滞納問題の解決について、他の方法をとることが著しく困難であるか、実際上効果がないような場合に限って是認されるものと解すべきである。
本件において、原告X1の不払いの最大の原因となっていた冷暖房費については、現に旧シャトー松尾時代からの入居者Aに対しては、その意向に沿って冷暖房の供給をしていないのであり、冷暖房設備の撤去工事も、後に原告X1がみずからしたように、他の区分所有者への供給とは切り離して、比較的容易にすることができたのであるから、管理会社である株式会社BないしCとしては、昭和55年4月5日より前、給湯停止前に、冷暖房の供給停止を条件に、それまでの管理費及び冷暖房費の滞納分の支払を求める交渉をしてしかるべきであった。
その上、B管理の事務処理上のミスから、原告X1の入居後約一年を経て冷暖房費の請求がなされるようになったことが、原告X1に管理会社に対する不信感を抱かせる原因となったことが容易に推認できるから、B管理の原告X1に対する対応は適切を欠いたもので、本件給湯停止の措置は、権利の濫用に当たるものといわざるを得ない。
本裁判例は、ペナルティを定めた管理規約自体は有効と判断した上で、適用場面を制限しました。
このような管理規約はそれ自体無効と判断される可能性も十分ありますので、注意必要です。
規約に書いてあればなんでもOKというわけではないということを認識しておきましょう。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。