競業避止義務29 取引先奪取行為等を理由とする未払退職金請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、取引先奪取行為等を理由とする未払退職金請求に関する裁判例を見てみましょう。

ユフ精器事件(東京地裁令和3年3月30日・労判ジャーナル114号48頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、本訴として、Y社に対し、退職金規程に基づき退職金約685万円等の支払を求め、これに対し、Y社は、反訴として、Xに対し、取引先を違法に奪い、在庫品を無断で搬出するなどの違法行為をしたとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき損害約4619万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

本訴退職金請求認容

反訴損害賠償請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社はXが本件4病院に対し、取引先を変更するよう社会通念上自由競争の範囲を逸脱した方法で働きかけた旨主張するが、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した方法で働きかけたことを認めるに足りる証拠はなく、そして、M記念病院以外の病院、医療センター及び脳神経センターについては、Xが取引先を変更するよう働きかけたことを認めるに足りる証拠はないから、Y社の主張を認めることはできない。

2 Y社は、Xが、本件搬出行為、本件販売行為及び本件取引先奪取行為という一連の行為を行ったことにより、本件4病院は、Y社との取引を終了させたと主張するが、Xは、本件取引先奪取行為をしたと認めることができず、そして、Y社の方で、Xが退職することとなった後に本件4病院に対して積極的な営業活動を行ったことは認められず、かえってY社は、東京警察病院に対してXと連絡を取らないように求める書面を差し入れるなどしてY社の社内に紛争を抱えていることをあえて同病院に知らせてその印象を悪化させる行動にすら及んでおり、これらの状況に照らせば、本件4病院がY社との取引を終了したことは、かえって専らY社のフォロー不足が原因であると推認することができ、本件搬出行為及び本件販売行為と本件4病院がY社との取引を終了させたこととの因果関係を認めることはできないから、Y社の前記主張を認めることはできず、Y社の反訴に係る損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。

顧客は、会社ではなく担当者につくのは、美容師やキャバ嬢に限った話ではありません。

その結果、担当従業員が退職することによって、「顧客を奪われた」ように見えてしまうことは多々あります。

しかしながら、著しく不相当な事情がない限り、裁判所は「自由競争」を重んじます。

競業避止に関する裁判は、多くの場合、会社に不利な結果となりますのでご注意ください。

競業避止義務の考え方については顧問弁護士に相談をし、現実的な対策を講じる必要があります。

本の紹介1222 それ、勝手な決めつけかもよ?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは、「だれかの正解にしばられない『解釈』の練習」です。

さまざまな理由から同調圧力に屈しながら生活せざるを得ない方は決して少なくありません。

だれかの正解や正義を押し付けられない生き方こそが「自由」というものです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ペストの流行があった1665年。ケンブリッジ大学が一時休校。結局、2年間に及ぶ休校となった。ニュートンはその間に、万有引力の法則を発見した。さらに僕が驚いたのは、ニュートンが『休校期間』のことを『創造的休暇』と呼んでいたことだ。今はこの先に向けて、何かを創造する時間でもある。」(15頁)

これは、著者がコロナ真っ只中で書いた内容です。

タイトルにもあるとおり、「それ、勝手な決めつけかもよ」ということに気付けるかどうかがとても大きいです。

「自分にはどうせできない」という決めつけが多くの場合、見えない首輪となっています。

ほんとはそんな首輪、存在しないのに。

ある人は「どうせ無理」と思い、ある人は「どうせできる」と思うのです。

どうせ勝手な決めつけをするのなら、自分の価値が向上する解釈をしましょう。

「どうせ無理」と考えて、何か物事が好転することはありません。

解雇354 解雇前の出勤停止期間につき賃金支払義務が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、懲戒解雇を有効としつつ、解雇前の出勤停止期間につき賃金支払義務が認められた事案を見てみましょう。

JTB事件(東京地裁令和3年4月13日・労経速2457号14頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と期間の定めのない雇用契約を締結していたXが、出張旅費や会議打合費、交際費を不正受給したことを理由に懲戒解雇されたことについて、懲戒解雇は解雇理由の一部を欠く上、不正受給額が高額でないことなどに照らすと、上記懲戒解雇は社会通念上相当とはいえず解雇権を濫用したものとして無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成31年2月分から同年4月分までの未払賃金として81万8320円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇有効

Y社はXに対し、81万8320円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 本件における経費の不正受給行為の悪質さの程度や、XがこれによってQやY社の秩序に与えた悪影響の程度に照らすと、諭旨退職に応じるか否かを決断するために与えられた猶予期間が数日しかなく、退職金の額も告げられなかったからといって、適正手続に反するということはできない。

2 本件出勤停止命令は、本件就業規則118条に基づき、本件における経費の不正受給の調査やこれに関する懲戒審査の円滑な遂行のために業務命令として出されたものであって、懲戒処分ではないし、これに引き続いてされた賃金の一部不払いも、正当な理由が認められない賃金の不払いであって問題はあるものの、懲戒処分としてされたものではない。したがって、本件懲戒解雇は、実質的にも二重処罰に当たるものではない。

3 Y社は、給与未払について、Xが長期間・多数回に及ぶ不正受給を行っており、その態様等も考慮すると出勤させた場合には証拠隠滅のおそれがあったことから、出勤させなかったものであり、Y社によって労務の提供を拒んだことについて「債権者の責に帰すべき事由」(民法536Ⅱ)があるとはいえず、Y社には本件出勤停止命令以後の賃金の支払義務はないと主張する。
しかしながら、本件の不正受給に係るゴルフの相手方や、不正受給に当たって飲食等の相手方と偽って申請された者は、Q外の者であり、XがQに出勤したとしても、自宅待機の場合に比べて、口裏合わせ等の証拠隠滅等のおそれが高まるとは考え難い。本件で、Xの出勤を禁止しなければならない差し迫った合理的な理由があったとまでは認め難いといわざるを得ない。
本件出勤停止命令は、本件不正受給の調査やこれに関する懲戒審査の円滑な遂行、職場秩序維持の観点から執られたものではあるものの、なおY社の業務上の都合によって命じられたものというべきであり、Y社は、本件出勤停止命令後も賃金支払義務を免れないというべきである。

上記判例のポイント3は悩ましいですね。

本件事案において、自宅待機命令が明らかに不当であると現場で判断するのは極めて困難であると思います。

とはいえ、裁判所の判断は理解できるところですので、参考にしてください。

解雇をする上で必要なプロセスについては、事前に必ず顧問弁護士に相談するようにしましょう。

本の紹介1221 自信は「この瞬間」に生まれる#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

今から7年前に紹介をした本ですが、再度読み返してみました。

今読んでもとても良い本です。

日頃からどのような準備をすればよいのかが明確になります。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

実力主義が徹底しているアメリカ社会では、『昔取った杵柄』で生き残れるほど甘くはない。たとえハーバードでMBA(経営学修士)を取得しようが、高額年俸は保障されていない。完全に本人の実力次第。おまけに、ひとたび政権が替われば、4000人近い官僚が入れ替われる国。雇用の流動性が、日本に比べてはるかに高いのです。だから、みんないくつになっても、自分の価値を高めようと必死に学ぶ。」(184頁)

日本には「雇用の流動性」は良くも悪くもほとんど存在しません。

良くも悪くも雇用が強く保障されていますので、いまだに実力よりも終身雇用・年功序列が重んじられています。

多くの従業員にとっても、給与に高いボラティリティは求められていないため、結果、「安定」こそが最優先されるわけです。

決して悪い話ではありませんが、若くて優秀な人材にとっては、組織に属している理由を見出すことは極めて困難でしょう。

優秀な若手人材が集まらない、すぐに退職してしまうという嘆きをよく耳にしますが、雇用条件、雇用システムを見れば必然というほかありません。

不当労働行為280 組合員に対する部長及び社長の面談における発言と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合員に対する部長及び社長の面談における発言が不当労働行為にあたるとされた事案を見ていきましょう。

ビジネスパートナーほか1社事件(東京都労委令和2年1月21日・労判1247号96頁)

【事案の概要】

本件は、組合員に対する部長及び社長の面談における発言が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社らは、面談時のB3部長の発言について、職位を離れ、友人として個人的に話をしており、支配介入の意思はなく、組合の運営や活動等に影響を与える可能性も存しないと主張する。
しかし、B3部長はY1会社の部長職でB1社長を補佐する立場にあるところ、A2に、B1社長への謝罪と損害賠償請求訴訟の和解の必要性を説き、「ユニオンを立てた時点で、もうこいつは、というふうに思われてるのよ、あなたは。あなたが上の経営者だったらどう思う。」、「それを、例えば、感情が高ぶってね、あいつは、みたいに思われているところに、それに輪を掛けたのが、その、第三者を入れたということだと思うよ、その、しかも、第三者も悪いと思うよ、私は、性質が。企業にとって。」といった発言をしている。
これらの発言は、組合加入や組合を介した交渉がA2に悪影響を及ぼすことを示唆し、同人に対し、暗に組合からの脱退を迫るもので、これが、同人をY1会社の会議室に呼び出した上で行われていることをも踏まえれば、職位を離れた個人的な話であったとは認め難く、Y1会社による組合の弱体化を図る支配介入行為に当たるというべきである。

思うのは自由です。

ただ、それを口に出したら問題になってしまうことがあります。

気を付けましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介1220 ある日突然40億円の借金を背負う-それでも人生はなんとかなる。#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

5年前に紹介をした本ですが、再度、読み直してみました。

みなさん、ある日突然40億円の借金を背負うことになったらどうしますか?

普通なら自己破産です。

この本では、著者が16年かけて家業を再生した話が紹介されています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

原因を自分に探すこと。起こることはすべて必然であり、偶然ではない。そしてそれは私の考え方や行動が基になっている-と考えた。『自分が源』という考えである。・・・どんな状況でも、自分が考え方や行動を変えることで道は開ける、と信じてきた。」(178~179頁)

このブログで何度となく書いていることですが、自分の身に起こったことを会社や社会のせいにしても、結局のところ状況は何も変わりません。

自分の考え方や行動を変えるほかないのです。

断言しましょう。

自分の考え方や行動を変えずに居酒屋で愚痴を言っていても状況は1ミリも変わりません。

つまるところ、今の自分は、これまでの自分の選択の総体です。

人生を変えたければ、自分の考え方と行動を変えるほかありません。

言うは易し。

凝り固まった自分の考え方と行動を変えることは至難の業です。

だからこそ、人生はそう簡単には変わらないのです。

労働災害107 製麺機での受傷と安全配慮義務違反の有無ならびに過失相殺(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、製麺機での受傷と安全配慮義務違反の有無ならびに過失相殺に関する裁判例を見てみましょう。

製麺会社A事件(旭川地裁令和2年8月31日・労判1247号71頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対して、Y社の雇用契約上の安全配慮義務違反により負傷したとして、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償として、損害金787万4583円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、365万3922円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 本件製麺機は、常時刃が露出している危険性を有するものであり、また、Y社においては、麺に縮れを付けるなどの物的な対策や、それに代えて労働者を十分に教育するなどして、上記作業から生じる危険性を防止する義務を負っていたというべきである。
しかしながら、Y社は、本件製麺機の刃を常時露出させたまま、特段の物的対策を取ることなくXを作業に従事させたのであり、また、本件製麺機の刃の部分が危険であることを注意喚起するような表示等をしていたとは認められないし、Y社がXに対して、本件製麺機の危険性を十分に教育したと認めるに足りる証拠はない
したがって、本件事故については、Y社に安全配慮義務違反があると認められる。また、その義務違反の内容に照らすと、不法行為が成立するというべきである。

2 Xは、本件事故当時、麺に縮れをつける作業に当たり、視線を正面に向けたまま、左手を本件製麺機の方に伸ばしたのであり、危険性を有する作業であるのに、自らの手元を注視しなかったのであるから、注意を欠いていたといわざるを得ないし、その不注意が本件事故に寄与していることは明らかといわざるを得ない。また、本件製麺機は刃が常時むき出しになっており、Xとしても、その危険性を容易に認識することができたといえる。
他方、Y社の安全配慮義務違反の内容は、特に、常時露出した刃の真下に手を伸ばすことが日常作業として予定されていたことからすれば、Y社において、危険性を有する機械から労働者の安全を守るべき要請は高かったといえるし、その方策をとることが特段困難であったとはうかがわれない。また、刃の真下に手を伸ばすことが予定されていたことからすれば、Xが左手を刃の近くに持って行ったこと自体は、格段に突飛なものとはいえない。このような事情を考慮すれば、上記にみたXの不注意を、過失相殺に当たって殊更に重視することは相当とはいえない。
以上の事情を考慮すると、本件事故に対するXの過失割合は、3割を相当と認める。

会社からすると、本件製麺機の危険性は、注意喚起の表示をするまでもなく、また、教育するまでもなく、「見ればわかるでしょ」という感じかもしれません。

しかし、裁判では、会社の責任を認めつつ、そのような事情は過失割合の問題として処理することがあり得るということを認識していれば、事前の対策を講じることもできたかと思います。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介1219 お客を増やす努力をやめなさい!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは、「安売り、ブラック化から抜け出すたった1つの売り方」です。

キーワードとして「エンゲージメント」という言葉が登場します。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

価格競争に打って出たら、あなたも従業員も疲弊してしまう時代。人件費を節約しようと思ったら従業員が集まらない時代。こう述べると、サービス業のマネジャーにとって暗黒時代のようですが、そうではありません。あなたは『良い利益』を追求すること、お客様や従業員と温かい関係を築くことを任されているのです。もう、昨日までのようなレッドオーシャンでの商売をやめて、全く新しいビジネスを展開していいのです。」(56頁)

価格競争なんてしてもろくなことになりません。

価格競争をするということは、価格以外に他との差別化ができないことを自認するようなものです。

正確には、差別化なんていくらでもできるのですが、正しい差別化のしかたがわからないというところでしょう。

いずれにせよ価格競争は百害あって一利なしです。

配転・出向・転籍48 配転拒否後に解雇された事案における配転の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、配転拒否後解雇された事案における配転の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

インテリジェントヘルスケア(仮処分)事件(大阪地裁令和3年2月12日・労判1246号53頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社からの配転命令に応じなかったとして解雇(普通解雇)されたが、同解雇は無効であるとして、①労働契約上の地位を有する地位にあることを仮に定めること、②賃金の仮払い、③配転命令先に勤務する労働契約上の義務がないことを仮に定めることを求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効
Y社は、Xに対し、令和3年2月から本案訴訟の第一審判決言渡しに至るまで、毎月25日限り、16万3000円を仮に支払え。

【判例のポイント】

1 債務者は、センターⅠにおいて、印鑑の不正所持という問題や、ケアマネージャーが、多数にわたって介護保険に定められたルールを逸脱して居宅サービス計画書の作成等を行っていたという重大な不正行為が発覚したことから、人員配置について見直すことを含めて対応策を検討していたもので、本件配転命令は同対応策として発令されたものである旨主張する。
しかし、確かに、ホロニクスグループにおいて、令和元年6月21日付けで、利用者の印鑑の使用に関する注意喚起が行われたことが認められるが、同注意喚起は、京都府八幡市社会福祉協議会職員のケアマネージャーによる行為についての新聞報道がなされたことを受けてのものであって、センターⅠにおいての問題が発覚したことを受けてのものではなく、ほかに、センターⅠにおいてY社が主張するような問題が発覚したことを客観的に裏付ける疎明資料もない。
また、仮に、Y社が主張するような問題が発生したため、Y社内部あるいはホロニクスグループ内部において検討がなされたり、行政への対応を行ったり、対応策の検討が行われたのであれば、そこには何らかの痕跡が残ることが想定されるが、本件において、Y社が、そのような検討、対応等を行ったことを客観的に裏付けるに足りる疎明資料はない
さらに、Y社あるいはホロニクスグループ内において、一般的な人事異動として、センターⅠとその余の施設の間において、定期的に人事異動が行われていたことを一応認めるに足りる疎明資料もない
そして、Xが、Y社に対し、就業規則の変更について問題視する内容のメールを送信しているところ、労働者の同意がなくても、就業規則を変更して1日の所定労働時間を延長したり、休日に関する定めを変更することが可能な場合もあるが(なお、Y社における就業規則の変更が有効か無効であるかは現時点では明らかではない。)、その点をさておき、Xが上記のようなメールを送信した約1か月後に本件配転命令が発令されたものである
以上を総合考慮すれば、本件配転命令は、業務上の必要性を理由として発令されたものと評価することはできず、ひいては、配転命令権の濫用として無効となるといわざるを得ない。
そうすると、本件配転命令に従わなかったことを理由とする本件解雇も無効となるから、本件においては、被保全権利が認められることとなる。

解雇理由を配転命令に従わなかったこととする場合には、当然、前提となる配転命令が有効である必要があります。

今回の事案では、配転命令に業務上の必要性が認められなかったため、無効と判断されています。

突発的な配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介1218 勉強の価値(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

帯には「子供が勉強しないのは、大人が勉強していないから。」と書かれています。

「勉強しなさい!」ってどの口が言っとんねん、と子どもたちは思っているのでしょうか(笑)

実際、大人になって毎日勉強している人がどれほどいるでしょう。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

いずれにしても、大人は子供に対して正直に語る必要があるし、大人自身が、もう少し勉強というものを正しく理解した方が良い。しかし、ほとんどの大人は、大学までのどこかで勉強から落ちこぼれた人たちなので、子供にきちんと勉強の説明ができない。そういうときは、まず自分が勉強をすること、再び学び始めること、子供を説得するには、それくらいの努力(勉強)は必要だろう。自分が嫌いだったものを、子供には好きになってほしい、というのも、虫が良すぎる。自分ができなかったことを子供には実現してもらいたい、と考えるような親の言うことを聞く子供はいない。」(89~90頁)

日本の社会人の勉強のしなさ加減は有名な話ですが、本をろくに読まない大人が子どもに「本を読みなさい」と説教するのはまさに滑稽です。

肥満体型の医師から「健康のために痩せなさい」と言われているようなものです。

仕事のできない上司から「営業成績を伸ばせ」と言われているようなものです。

ドノクチガイットンネン(笑)

小さい頃に勉強の習慣が身に付けられると、その後のスタディーライフが非常に楽ですね。