本の紹介2106 資本家マインドセット#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「さらばサラリーマン。」と書かれています。

今の時代は、誰でも「資本家」としての生き方を選択することができます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

会社の名前でしか呼ばれないようなサラリーマンは、もはや生き残れない。活躍できるのは、自分の名前で仕事のオファーや注文が来るような人材だ。その人にしか打ち出せない価値や仕事があるなら、スーツやネクタイを着用していようがいまいが関係なく、取引先から求められるだろう。」(189頁)

ここ最近、スーツやネクタイを着用しない職種がものすごく増えてきましたね。

労働力の減少による超売り手市場がゆえに、昔のような堅苦しいルールはどんどんなくなり、服装も髪型も髪の色もピアスも髭もタトゥーも、もうなんでもOKなのでとにかく働いてください、という時代です。

そんなことはもう好きにすればいいと。

「べき論」が強い昔気質の会社は、今後ますます人が集まらなくなっていくことでしょう。

解雇406 業務によって貯まったポイントの私的費消を理由とする解雇が有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、業務によって貯まったポイントの私的費消を理由とする解雇が有効とされた事案を見ていきましょう。

中央建物事件(大阪地裁令和5年10月19日・労判ジャーナル143号28頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結して就労していたXが、Y社による解雇は無効であるとして、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、解雇後の未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、総務部における勤務中、上司から、担当業務であった酒類購入によって貯まった本件ポイントを当該酒類の購入に充てるように指示があったにもかかわらず、Xは、酒類購入業務によって貯まった本件ポイントを私的に費消しているところ、その使途が美容用品や家電製品等の多岐にわたることに照らすと、本件ポイントには、現金に類似する通用性・利便性があったと考えられ、本件ポイント費消は、Y社に対し、Xが業務上委ねられていた現預金を私的に利用することと同等の経済的損害を与えるものであって、これと同様の信頼関係の破壊をもたらすものであったといわざるを得ないから、本件ポイント費消の性質及び経緯、費消額及び用途並びに回数及び期間に照らすと、本件ポイント費消は、XのY社従業員としての職務上の義務に反するものであり、本件解雇についての客観的に合理的な理由に当たるものと認められる。

魔が差したというか出来心というか・・・とはいえ、ポイントの私的利用は、上記のとおり、現預金の私的流用に類似することから考えれば、懲戒解雇を選択することもやむを得ないと思います。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2105 持たざる者の逆襲(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間頑張りましょう。

今日は、本の紹介です。

まだ何者でもない君へ」送る「自分の手で自由な未来を掴み取るための指南書」です。

とてもいい本です。おすすめです。

著者が努力の人であることがよくわかります。

成功は、努力の異名です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

この本は、ここまで自由を掴むことをテーマに書いてきた。・・・そして、その自由を掴むために重要なこととして『選択』『成長』『運と縁』『解釈』『勇気』の五章に分けて記した。」(168頁)

各章のタイトルだけを見ても、自分の手で自由を獲得するために必要な要素がわかります。

経済的にも精神的にも自由であり続けるためには、この5つの要素を常に意識する必要があります。

自分の人生は自分で切り拓くほかないという事実を受け入れ、日々、努力するほかありません。

現状に対する愚痴・不満を言っているだけでは何一つ変わらないことは、自分が一番わかっているのですから。

競業避止義務34 退職した従業員の競業行為に対する損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、退職した従業員の競業行為に対する損害賠償請求に関する裁判例を見ていきましょう。

創育事件(東京地裁令和5年6月16日・労判ジャーナル143号48頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、Y社の元従業員Bらに対し、Bらが、会社退職後、競業行為に及んだなどと主張して、債務不履行(競業避止義務違反)又は不法行為に基づく損害賠償として、Bに対し、学力テストの実施事業、Bらに対し、会社在職中に知り得た顧客との取引の各差止めを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件就業規則は、従業員に周知されていたと認めるのが相当であり、本件規定1は、Y社の従業員のうち役職者等がY社退職後にY社と競業する業務を行ってはならないという内容、本件誓約事項は、CがY社退職後にY社と競業する業務を行わず、在職中に知り得た機密情報又は業務遂行上知り得た特別の技術的機密を利用してY社と競業的又は競合的行為を行わないことを誓約する内容、本件規定2は、役職者等がY社退職後に会社在職中に知り得た顧客と取引をしてはならないという内容になっているところ、営業担当者であるBらについてY社の顧客との取引を禁止する必要性が大きい上、従業員に対する制約が大きいとまではいえないことからすれば、Bらが代償措置を受けていないことを考慮しても、Y社在職中に知り得たY社の顧客との取引を禁止することに合理性があると認められないとはいえず、そして、本件各規定の役職者は、Y社において係長以上の役職を有する者と認められるから、Bらのうち、係長以上の役職にあるC及びDは本件規定2に基づきY社に対し会社在職中に知り得た顧客とY社退職後1年間は取引をしてはならない義務を負うが、Bは「役職者」及び「企画の職務に従事していた者」のいずれにも当たると認められないから、Bは、本件規定2が適用されず、Y社に対し上記義務を負わない。

2 Bらが学力テスト事業や取引をしたと認められず、他にBらが社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様でY社の顧客を奪取するなどの行為に及んだと認めるに足りる的確な証拠はないから、Bらは、Y社に対し、不法行為を行ったとはいえない。

競業避止義務違反を理由とする損害賠償請求は、この「自由競争の範囲」が壁となることがとても多いです。

よほど目に余る違法な態様による顧客奪取が認められない限り、一般的には自由競争と言われてしまいます。

競業避止義務の考え方については顧問弁護士に相談をし、現実的な対策を講じる必要があります。

本の紹介2104 「300億円赤字」だったマックを六本木のバーの店長がV字回復させた秘密#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

物語形式のマーケティング本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

往々にして企業は『予算がない』とか『そのアイデアを実現するにはこれが足りない』と言い訳をしたり、逃げに走ったりしてしまう。実行したいアイデアを決めたら、そこから逃げずに考え抜けば、多少の失敗はあっても勝率は上がっていく。」(189頁)

これは決して企業に限った話ではありません。

やらない理由探しばかりしていると、それがいつの間にか癖になって、新しいことに挑戦できない体になってしまうのです。

リスクがあるだの、前例がないだの、先行きが不透明だの・・・そんなもん新しい挑戦すべてにあてはまりますから。

計画ばかり練っていないで、分析ばかりしていないで、評論ばかりしていないで、どんどんやってみればいいのです。

不当労働行為317 職種変更、賞与不支給等の不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、職種変更、賞与不支給等の不当労働行為該当性に関する事案を見ていきましょう。

ヒガシトゥエンティワン事件(大阪府労委令和5年8月18日・労判1302号91頁)

【事案の概要】

本件は、職種変更、賞与不支給等が不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 会社と組合との間の労働協約には、「組合員を大量に異動させるとき及び組合役員を異動するときは労使協議会で協議の上行う」と規定があるところ、会社は、令和2年職種変更組合員17名を総合職に職種変更するに当たり、労使協議会を開催していないのであるから、かかる会社の対応は、本件労働協約違反とみるのが相当である。

2 会社は、労使関係が緊張関係にある中で、運転職以外の従業員については、令和3年度夏季賞与を支給する一方で、運転職のみ支給しなかったのであるから、会社の行為は、運転職が組合の組合員であるが故になされたものであるとみるのが相当である。

上記命令のポイント1のように組合との間で労働協約を締結している場合には、その内容に反する行為はできませんので注意しましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介2103 仕事の辞め方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

放送作家鈴木おさむさんの本です。

帯には、「ワクワクしない仕事をダラダラ続けるほど、人生は長くない!」と書かれています。

同感です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

絶対に自分の中のDNAはメッセージを出してくれている。それが『思いつき』。小さなところで言うと『急に〇〇が食べたくなった』というのは、体がメッセージを出しているのです。つまり、ふとした思いつき、『〇〇って興味あるな~』『一度習ってみたいな~』なんて『思いつき』はDNAのメッセージかもしれない。だから結局『行動する人』が勝っていくんですよね。」(186頁)

もうこれは、肌感覚としても、おそらく正しいのだと思います。

いろんなことに挑戦し続けている人というのはとても魅力的です。

近くにいるだけでパワーをもらえる人というのは、だいたいこのタイプです。

世間体やら他人の評価なんて気にも留めていない、という感じです。

そんなことは自分の人生に何の影響もないことを知っているからです。

賃金278 覚醒剤所持及び使用の罪での有罪判決を理由に懲戒解雇された従業員への退職金不支給が有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、覚醒剤所持及び使用の罪での有罪判決を理由に懲戒解雇された従業員への退職金不支給が有効とされた事案を見ていきましょう。

小田急電鉄事件(東京地裁令和5年12月19日・労経速2542号16頁)

【事案の概要】

本件は、令和4年7月7日付けでY社を懲戒解雇されたXが、Y社に対し、退職金及びこれに対する遅延損害金の支払を請求する事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件犯罪行為は、覚醒剤取締法41条の2第1項(所持)、同法41条の3第1項1号、同法19条(使用)により、いずれも10年以下の懲役に処すべきものとされる相当重い犯罪類型に該当する。直接の被害者は存在しないとはいえ、覚醒剤の薬理作用による心身への障害が犯罪等の異常行動を誘発すること、密売による収益が反社会的組織の活動を支えていること等の社会的害悪は、つとに知られているところである。
約5年にわたる使用歴を有するXの覚醒剤への依存性、親和性は看過し得ない水準にあったといえる。この間、Xは大野総合車両所の車両検査主任の立場にあって、管理職ではないとはいえ、首都圏の公共交通網の一翼を担うY社の安全運行を支える極めて重要な業務を現業職として直接担当していた。摂取から少なくとも数日は尿から覚醒剤が検出されるという調査結果等に照らせば、ほぼ毎週末覚醒剤を摂取していたXが、業務への具体的影響は不明であるものの、身体に覚醒剤を保有した状態で車両検査業務に従事していたことは明らかである。この事態を重く見たY社が、延べ758名に対し延べ21時間10分もの時間をかけて再発防止のための教育措置をとったことは相当であり、これを過大な措置だとするXの主張は失当である。
以上の社内的影響に加え、Y社は監督官庁に本件を報告しており、限られた範囲ではあるが外部的な影響も生じている。なお、車掌や運転士等の鉄道会社やバス会社の従業員の薬物犯罪が報道され、社会的反響を呼んだ例は珍しくないのであって、本件が報道等により社会に知られるには至っていないことは偶然の結果というほかなく、これをXに有利に斟酌すべき事情として重視することはできない。

2 以上によれば、本件犯罪行為は、Xの永年勤続の功労を抹消するほどの不信行為というほかなく、退職金の全部不支給は相当である。

私生活上の非違行為を理由とする退職金の不支給が相当であるとされた事案です。

私生活上の非違行為が争点となる事案では、いかに業務や社内秩序に悪影響があったのかを具体的に主張することが求められます。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2102 わいたこら。#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「しくじってもめっちゃ幸せ!」と書かれています。

楽天家の鏡です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人がチャンスをものにするときは、自分の力を超えた不思議な力が働いている気がしてならない。」(137頁)

人生は、だいたい「ガチャ」ですからね。

いくらがんばってもうまくいかないときもあるし、何もしていなくてもチャンスが舞い込んでくることもあります。

その瞬間、その出来事だけを見れば、どういう理由かわからないこともたくさんありますが、私たちにできることは、せいぜい、毎日精一杯生きるということくらいなものです。

出し惜しみせず、夜横になった瞬間に爆睡できるくらいに精一杯生きるしかありません。

有期労働契約125 女性従業員に不適切な言動を繰り返すこと等を理由とする雇止め(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、女性従業員に不適切な言動を繰り返すこと等を理由とする雇止めに関する裁判例を見ていきましょう。

ゲオストア事件(東京地裁令和5年6月14日・労判ジャーナル143号50頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で有期雇用契約を締結していたXが、Y社から上記有期雇用契約の更新の申込の拒絶(雇止め)をされたことから、Y社に対し、Xにおいて上記有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があり、当該雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとはいえず、労働契約法19条により、同一の労働条件で有期労働契約が更新されたものとみなされることを主張して、労働契約上の権利を有することの確認及び未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、令和2年11月9日、f氏がトイレ掃除をしているトイレのドアをノックし、トイレから出てきたf氏を追いかけて話しかけた上、わざわざf氏と話をするために再度来店し、f氏が会社のアシスタント社員(店長を補佐する役職)のh氏に立会を求めるなど、Xと話すことを嫌がっていることは明らかであったにもかかわらず、本店店舗から出ようとしたf氏にさらに話しかけており、上記行為は、従前からXの言動に不快感を抱いていたf氏に対し、恐怖や不快感を強く感じさせ、多大な精神的苦痛を与えるものであったといえ、その他にも、e氏やj氏などの女性従業員に対する不快感を与える行動が度々あったことや、Xとf氏及びe氏のシフトが重ならないように配慮していたにもかかわらず、Xが勤務終了後に、f氏が勤務している際に再度来店したり、Xが勤務日でない(シフトが入っていない)日にわざわざ本件店舗を訪れてf氏などに話かけていることなども併せ考慮すると、本件雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないとはいえない。

訴訟において、上記事実を立証できるように日頃から準備をしておく必要があります。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。