本の紹介2135 ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から4年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

タイトル通り、いかにして競争優位のポジションを確立すればよいかが書かれています。

すべての項目でトップを目指す必要はないという発想は非常に参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

今の時代、ほとんどの車はちゃんと走る。それも、安定した走りっぷりだ。冷蔵庫は食品をきちんと冷やすし、ステレオの音だって良好だ。洗剤は服の汚れを落としてくれるし、ホテルの部屋は清潔で静かである。成熟した経済の消費者は、商品の品質は当然、一定レベルをクリアしているものだと信じている。今日、究極の差別化とブランド構築、ブランドロイヤルティ確立のチャンスを生み出すのは、商品やサービスの提供を通して示される、人としての価値観なのだ。」(38頁)

これはすべてのサービス業についてそのままあてはまります。

サービスのクオリティが一定レベルを超えた先は、サービス提供者の価値観こそが究極の差別化要素なのです。

もう純主観的に「あう・あわない」「好き、嫌い」というレベルです。

この人にまた会いたい、この人とずっと一緒にいたいと思ってもらえるか否か。

人の選択基準なんて、つまるところ、そんなものです。

解雇410 海外勤務者の退職・解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、海外勤務者の退職・解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

アイウエア事件(東京高裁令和4年1月26日・労判1310号131頁)

【事案の概要】

本件は、A塾という名称で学習塾を運営するY社に平成25年6月1日付けで入社し、同月13日から中華人民共和国(中国)内に所在するA塾A1校において講師として勤務していたXが、同年9月末日を退職日とする同月1日付け退職願に署名押印したものの、退職の意思表示は不存在であり、又は仮に存在していたとしても心裡留保若しくは虚偽表示により無効であって、同年10月1日以降もY社との雇用関係が継続していたとした上、平成28年12月27日にY社によってされた解雇は解雇権の濫用に当たり無効であるとともに、Xに対する不法行為に該当するなどと主張して、Y社に対し、①労働基準法37条1項に基づき、平成27年11月1日から平成29年1月26日までの未払割増賃金合計167万7307円+遅延損害金の、②労働基準法114条に基づき、付加金167万7307円+遅延損害金、③民法536条2項に基づき、Y社が再就職した平成29年4月1日の前日までの間の未払基本賃金50万4460円+遅延損害金、④民法709条に基づき、損害金143万2832円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

原審は、Xの上記各請求について、①未払割増賃金合計126万7361円+遅延損害金、②付加金126万7361円+遅延損害金、③未払基本賃金44万8360円+遅延損害金、④損害金49万5000円+遅延損害金の各支払を求める限度でこれらを認容し、その余をいずれも棄却した。

【裁判所の判断】

1 原判決主文2項を取り消す。

2 上記取消部分に係るXの請求を棄却する。

3 その余の本件控訴を棄却する。

【判例のポイント】

1 少なくともXにおいては、Y社とXとの雇用契約が、就労ビザ取得までの短期間で終了する前提で締結されたなどとは認識していなかったものとみるのが相当であるとともに、Y社から、転籍出向後もY社の海外赴任規定の適用を前提とした手当の支給等が行われることや、転籍出向後もY社への帰任が前提となっているかのような説明を受けていたXにおいて、転籍後もY社との雇用契約が存続するとの認識を有していたとしても不自然ではなかったものと認めることができる。
そうすると、Y社における「転籍」が一般に「それまで在籍していた会社を退職して別の会社に属すること」を意味し、Xが「転籍出向」を自ら選択して本件退職願を提出したとの事実が存したとしても、本件における上記の事実関係の下においては、Xにおいて、上記のような意味での「転籍」を自ら選択し、Y社との雇用契約を終了させる意思に基づいて本件退職願を提出したものとは認められないものというべきである。

2 Y社は、原判決言渡し後である令和3年11月12日、前記第2の2(5)のとおり、Xに対し、原判決主文1項で認容された未払割増賃金及び遅延損害金を含む合計286万2783円を支払ったものであるところ、原判決主文1項には仮執行宣言が付されており、Y社は当審においてもXの未払割増賃金請求を争っているものの、上記の支払については、原判決主文1項が維持されることを前提とした、留保付きの弁済とみることができるから、その限度で弁済の効力を有するものと解するのが相当である。したがって、本件においては、裁判所が付加金の支払を命ずるまでに使用者が未払割増賃金の支払を完了したものとして、Y社に対し付加金の請求を命じないこととする。

第一審で付加金の支払を命じられた場合の対抗策としては、控訴し、判決が確定する前に遅延損害金を含め全額支払うということですが、仮執行宣言が付されている場合(通常付されています)、上記判例のポイント2のような別の論点が出てきます。

この点は少しマニアックではありますが、弁済をしても付加金が認められてしまうか否かに関連する重要な論点ですので、是非、押さえておきましょう。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2134 ニュータイプの時代#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「『正解を出す力』にもはや価値はない!」と書かれています。

そう。今の時代、正解なんて簡単に入手できますので。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

このような世界にあって、経験を蓄積し、蓄積した経験に依存しようとするオールドタイプが価値を失っていく一方で、新しい環境から迅速に学習し、自分の経験をアンラーンしていくニュータイプが大きな価値を創出していくことになる。」(309頁)

アンラーン(unlearn)とは、すでに持っている知識や価値観などを破棄することで、思考をリセットさせる学習方法をいいます。

時代背景も技術レベルも全く異なる以上、何十年も前の経験に基づいて動いても時代錯誤であることは明らかです。

「俺たちが若い頃はな~」という例のあれが、世代間ギャップを生む根本的な原因なのです。

何事にも固執せず、柔軟な発想を持ち続けることがとっても大切なのです。

不当労働行為319 変形労働時間制導入の撤回等に関する団体交渉およびその後の対応が不当労働行為に該当するとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、変形労働時間制導入の撤回等に関する団体交渉およびその後の対応が不当労働行為に該当するとされた事案を見ていきましょう。

フォーブル事件(広島県労委令和5年11月2日・労判1310号163頁)

【事案の概要】

本件は、変形労働時間制導入の撤回等に関する団体交渉およびその後の対応が不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、組合の要求や主張に対し、変形労働時間制を導入できるとする具体的な根拠として、要件を具備していることや、導入する理由及び必要性等について、C労基とのやり取りなども踏まえて具体的に説明すべきであった。

2 変形労働時間制の解釈等に係る組合の主張は、その根拠が提示されておらず、組合独自の解釈に基づくものと評価し得ることは否定できない。
しかし、仮にそうであったとしても、組合に導入を納得させることまでは求められておらず、また、組合の要求や主張に対応する回答としては、導入できるとする具体的な根拠やC労基の見解、導入の理由や必要性などをもって説明すべきであり、それは可能であった。

3 以上のとおり、本件団体交渉におけるY社の対応は、組合に対して、導入できるとする具体的な根拠や導入の理由及び必要性等について十分な説明等を行うことなく、自己の主張を一方的に述べるだけのものといえ、不誠実であったと認められる。

上記命令のポイント2は団体交渉独特の考え方であり、非常に重要な視点ですので是非、しっかりと理解しておきましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介2133 頭がいい人、悪い人の仕事術#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

「仕事術」というテーマに限らず、生き方全般について示唆に富む内容です。

古い本ですが、今なお、おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

遠い将来の実りのために、目の前の痛みに耐える習慣をつけよう。よりよい成功のための対価は喜んで支払おう。こうした行為はつらく、ときに犠牲を伴う。しかし、長い期間を意識してものを考え、経済的に独立しようと努力をすれば、あなたの品性はさらに磨かれ、人間としてもほんとうに立派な人物となるだろう。」(140頁)

このような発想・習慣は、一朝一夕に確立できるものではありません。

私見ですが、10代~20代に確立したか否かでほぼ決まってしまう気がします。

目先の快楽ではなく、人生を長期的に見た上で、自らの商品価値を高めるためにさまざまな準備をする。

このような発想に基づき、準備を継続してきた人は、30代以降、それまでの努力を目に見える形で回収できることが多いと思います。

セクハラ・パワハラ90 セクハラ行為による精神障害発症について加害者及び会社の責任を認めたものの、休業期間の長期化は原告側にも原因があるとして休業損害額を4割の限度で認めた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、セクハラ行為による精神障害発症について加害者及び会社の責任を認めたものの、休業期間の長期化は原告側にも原因があるとして休業損害額を4割の限度で認めた事案について見ていきましょう。

A社事件(鳥取地裁令和6年2月16日・労経速2551号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、勤務先であるY社及びかつて上司であったZに対し、次の各請求をする事案である。
(1) 不法行為及び使用者責任に基づく損害賠償請求
Y社らに対する、Zから継続的に人格権を侵害する違法なセクシュアルハラスメント及びパワーハラスメントを受け、これにより精神的苦痛を被るとともに、精神疾患を発病して休職を余儀なくされたなどと主張した、Zについては不法行為に基づく、Y社については使用者責任に基づく、損害賠償金2527万4746円(慰謝料1000万円、治療費9万1144円、休業損害438万9514円、逸失利益849万6384円及び弁護士費用229万7704円の合計額)+遅延損害金の連帯支払請求
(2) 債務不履行に基づく損害賠償請求
Y社に対する、Y社において、①セクハラ及びパワハラ被害防止策の周知徹底を怠ったため(事前の安全配慮義務違反及び職場環境調整義務違反)、Zによるセクハラ及びパワハラが発生するとともに、②同セクハラ及びパワハラの発覚後、速やかに必要かつ十分な措置をとることを怠ったため(事後の安全配慮義務違反及び職場環境調整義務違反)、精神的苦痛を被ったなどと主張した、債務不履行に基づく、損害賠償金660万円(慰謝料600万円及び弁護士費用60万円の合計額)+遅延損害金の支払請求

【裁判所の判断】

Y社らは、Xに対し、連帯して594万7156円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xが適応障害との診断を受けたのは平成30年10月22日で、その後にうつ病との診断を受けたのは令和元年11月16日である。そして、これを休業損害の算出基礎となる休業期間(平成30年11月1日から令和5年10月20日までの1815日間)との関係で考慮するならば、休業期間のおおむね8割程度の部分がうつ病の発病以降の期間となる。
Xの主治医の意見は、Xが「うつ病」を発病した主な要因には、Zがした不法行為ないしその後の言動のほかに、Y社の事後対応があり、さらには、Y社の事後対応により、Xが「健全な社会的関係性の感覚」を損なうなどして、うつ病が遷延しているというものである。このような主治医の意見に、ZのF支店への出張、F支店長への降格によってXとZの接触がないものとなったことを併せ考慮すれば、Xがうつ病を発病した後、上記に認定した休業期間の終期にまでうつ病が遷延しているのは、Y社の事後対応についてのX自身の受止めが強く作用しているとみるのが合理的である。これを換言すれば、上記の休業損害期間について、それが終期に近づけば近づくほど、その時点での休業の原因がX側の事情にあるとの側面が強まっているとの評価が可能である。
このように、そもそもXがZの不法行為によって適応障害ないしうつ病を発病したものであるとはいえ、うつ病が遷延して長期に及び休業期間が発生したことについて、上述したとおりのX側の事情というべきものがあって、その休業期間のおおむね8割に相当する部分については、休業期間の終期に向かって順次、そのX側の事情が原因となっている側面が強まっていること、治療費とは異なって休業損害は高額にわたるものであること等を踏まえると、損害の公平な分担の観点に照らし、Zの不法行為による休業損害額は、もはや一旦算出した金額の半額をやや下回るものになると認めるのが相当である。
このような考慮に基づく休業損害について具体的金額をもって示すと、基礎収入(日額8548円)に休業期間(1815日間)を乗じて一旦算出した休業損害額1551万4620円の4割に相当する620万5848円の限度にとどまるものとするのが相当である。

パワハラ等による精神疾患発症事案において、使用者側が着目すべき点が記載されています。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。

本の紹介2132 残業しない技術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

残業をしない方法は、残業をしなくてもいいような仕事量にすることです。

ますます労働人口が減少する中で、それでもなお残業しないためにはもうこの選択しかありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

しょせん、どんなに仕事がデキる人でも要領のいい人でも、よくよく見てみると『取捨選択を絶え間なくつづけている』ことが分かります。とりわけ、この『捨てる技術』をきちんと身につけることこそが、サクっ!と仕事をこなすためには必要不可欠です。」(24頁)

全く同感。

もうみなさん、やらなければいけないことが多すぎるのです。

マンパワーが減り続ける一方で、やるべき雑用はいまだに増え続けています。

何をやるかよりも何をやらないかを決めることのほうがはるかに大切です。

この際、無駄なルーティンや手続を一掃してみてはいかがでしょうか。

賃金284 固定残業代および変形労働時間制の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、固定残業代および変形労働時間制の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

エイチピーデイコーポレーション事件(那覇地裁沖縄支部令和4年4月21日・労判1306号69頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が経営するリゾートホテルの従業員であったXが、Y社に対し、労働契約に基づき、時間外割増賃金等合計882万2183円+遅延損害金、同額付加金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、882万2183円+遅延損害金を支払え

Y社は、Xに対し、付加金882万2183円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 本件出勤簿の体裁、記載内容自体の不自然性や、その記載内容が他のXの稼働状況を示す証拠と整合しないこと、証拠提出の経緯等に照らすと、X本人は出勤簿に記入していなかった旨をいうX主張の当否を措くとしても、本件出勤簿がXの労働時間の実態を反映したものといえるかについては相当疑問があり、本件ホテルにおいて残業申請書や緊急残業申請書の作成等を通じて適正な労働時間管理がされていたとも認め難いというべきである。

2 本件ノートはその成立にXのみしかかかわっておらず、証拠の体裁等においても類型的に信用性が高いものとはいえないものの、その記載内容が他の客観証拠により一応は裏付けられていると評価できることや当時の勤務実態に照らして不自然ともいえないこと等からすると、実労働時間の認定資料として採用し得るものといえる。

3 Y社提出の就業規則には、各直勤務の始業・終業時刻及び各直勤務の組合せの考え方、勤務割表の作成手続や周知方法に関する定めは見当たらないから、変形期間における各週、各日の所定労働時間の特定を欠いているといわざるを得ない。

上記のとおり、原告作成のノートに基づき労働時間が認定されています。

こうならないためにも、使用者側で労働時間をしっかり管理しておく必要があります。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2131 超一流になるのは才能か努力か?#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

努力を継続できる才能があれば、たいていのことは結果が出ます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

常に自分に負荷をかけつづけていないと、身体は以前とは水準こそ違うものの、新たなホメオスタシスに落ち着き、改善は止まってしまう。コンフォート・ゾーンのわずか上にいつづけることが重要なのはこのためだ。」(75頁)

成長にフォーカスしている人は、この感覚をとても大事にします。

傍から見たら、もうそんなことしなくてもいいのにと思うような人に限って、常に何かに挑戦し続けていたりします。

ぬるま湯に浸かることに慣れるのが怖いのです。

常に自分に負荷を掛け続けるのはそういった理由なのです。

その結果、差はますます広がるばかり。

労働時間108 夜勤勤務の休憩時間に関する未払割増賃金等支払請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、夜勤勤務の休憩時間に関する未払割増賃金等支払請求に関する裁判例を見ていきましょう。

医療法人みどり会事件(大阪地裁令和5年12月25日・労判ジャーナル147号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、介護老人保健施設において介護職員として勤務していたXが、Y社に対し、未払時間外割増賃金等の支払並びに労基法114条に基づく付加金等の支払を求め、また、同法39条の年次有給休暇の取得を申請していないのに、Y社が、Xに無断でこれを取得したこととしてその残日数を減少させたとして、不法行為に基づき、当該日数の賃金相当額の損害賠償等の支払を求め、さらに、令和3年度上半期及び下半期の賞与の算定にあたって、合理的な理由なく最低評価をしたとして、不法行為に基づき、それぞれ減額分2万円の損害賠償等の支払等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払割増賃金等支払請求一部認容

損害賠償等請求一部認容

【判例のポイント】

1 夜勤時の休憩時間に関して、本件運用変更前について、Xが、夜勤において、夜勤者2名の間で休憩に関する取り決めがなく、相勤者がナースコール等に対応するとは限らなかった以上、Xは、当該待機時間中、常にこれに対応する必要があったというほかなく、そして、ナースコール等の回数は、毎回の夜勤ごとに相当の回数に及んでおり、これがごく稀であって実質的に対応の必要が乏しかったとみることもできないから、Xは労働からの解放が保障されていたとはいえず、Y社の指揮命令下に置かれていたと評価するのが相当であり、本件運用変更後も、本件施設の介護職員は、夜勤時に休憩を取得すべきとされる時間帯においても、相勤者が巡視やナースコール等への対応を行っている間に利用者から重複ナースコール等があった場合における対応を免除する旨の指示を受けておらず、このような事態がごく稀であって実質的に対応をする必要がなかったともいえないから、休憩時間とされる時間についても、労働からの解放が保障されていたとはいえず、Y社の指揮命令下に置かれていたといわざるを得ないから、本件運用変更の前後を問わず、本件請求期間中のXの夜勤については、休憩時間を取得することができたものとは認められない

2 Y社の就業規則には、1か月単位の変形労働時間制を採用する旨の記載があるが、Y社の就業規則において、Y社が実際に作成した勤務割表の労働時間に対応する各日・各週の労働時間の特定がされているとは認められず、当該変形労働時間制は、労働基準法32条の2第1項所定の要件を欠くものといわざるを得ない。

上記判例のポイント1の理屈は異論のないところかと思います。

看護師に限らず、警備員等についても、同様の議論が妥当します。

法律の考え方はわかっていても、人手不足の昨今、実際にどのように労務管理をしたらよいのか悩ましいところです。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。