労働者性41 労務DDにより回避可能な雇用契約の存否に関する紛争(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、雇用契約の存否が争点となった裁判例を見ていきましょう。

流通情報センター協同組合事件(東京地裁令和3年7月7日・労判ジャーナル117号46頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社と雇用契約を締結している旨主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、雇用契約に基づく未払賃金及び立替金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

雇用契約の成立を肯定

【判例のポイント】

1 XとY社及びA社との間の雇用契約の存否について、Xは、平成29年12月、組合専務理事であるD及びA社の実質的な代表を務めるFから、Y社及びA社で正式に働いてほしい旨言われてこれを承諾したところ、その際、業務内容については、監査、巡回、受入先企業の相談対応等と、当該業務に対する報酬については、Y社から月額10万円、A社から月額5万円(立替経費については別途精算)とそれぞれ定められ、その後、概ね当該定めに従ってXが業務に従事し、Y社から支払がされたことが認められ、さらに、Xは、Y社及びA社で業務を行うようになった後、当初は、Y社の指示によりFと相談して担当先の割り振りを受けた上、担当の受入先企業を訪問して実地確認等を行い、その結果を記載した報告書をY社に提出していたこと、その余の業務についても、Y社及びA社の指示を受けて行っていたことが認められ、Y社及びA社の指揮命令下で業務に従事していたということができるから、XとY社及びA社との間で、雇用契約が成立したというべきであり、そして、令和元年6月、A社の業務がY社に引き継がれた後も、Xは引き続き従前と同様の業務を行っていたというのであるから、上記引継ぎに伴い、XとA社との間の雇用契約がY社に引き継がれ、未払賃金債務もY社に引き継がれたものと認められる。

仕事の仕方を実質的に検討し、指揮命令下に置かれていると判断される例です。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介1246 カエルにキスをしろ!#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度読み直してみました。

タイトルからは内容を推測できませんが、内容は非常にポジティブかつ現実的なものです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

あなたがどう感じるかは、あなたの人生に起きる出来事で決まるのではない。出来事にあなたがどう反応するかで決まる。あなたの人生のカエルではなく、そのカエルをあなたがどう扱うかで決まるのだ。同じ経験をした二人の人間のうち、一人はそれを乗り越え、忘れ、くじけず生きていく。もう一人は、長い間うちひしがれ、怒り、憤慨し、惨めな思いをすることがある。同じ出来事でも、二人の反応は異なる。」(106頁)

「世の中は解釈でできている」ということを表現を変えて言っているにすぎません。

幾度となくこのブログで書いていますが、出来事それ自体に意味などありません。

出来事は出来事です。

自分自身でその出来事に意味づけをしているにすぎません。

「もうだめだ。」と思うのも自分。

「改善点が見つかった。次につなげよう。」と思うのも自分。

日々の生活や仕事それ自体に意味などありません。

つまらない、納得できない等と不満を感じるのも自分。

楽しい、もっと上手になりたい等とやりがいを感じるのも自分。

すべては誰のせいでもなく自分の解釈によって決まっているのです。

賃金221 タイムカードの代行打刻と降格・懲戒解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、タイムカードの代行打刻と降格・懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

ディーエイチシー事件(東京地裁令和3年6月23日・労判ジャーナル117号52頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社に対し、①平成30年5月1日付けでされた降格の懲戒処分及びその後にされた減給、並びに、同年7月2日付けでされた懲戒解雇がいずれも無効であるとして、雇用契約に基づき、本件減給前の賃金月額124万円で計算した同年7月支給分の未払賃金残額3万4571円、同月額で計算した同年8月支給分からXがY社を定年退職となる令和元年11月20日までの未払賃金合計1984万円(124万円×16か月=1984万円)、平成30年12月及び令和元年6月に208万円ずつ支給されるはずであった未払賞与合計416万円、及び、上記各元本に対する各支払期日の翌日から同年11月25日までの遅延損害金合計93万8546円(計算については別紙1のとおり。)の合計2497万3117円+遅延損害金の支払、②雇用契約に基づき、退職金156万円+遅延損害金の支払、③本件懲戒解雇が違法であるとして、不法行為に基づき、損害賠償金110万円(慰謝料100万円と弁護士費用10万円の合計)+遅延損害金の支払、④Xが株式会社aの取締役に就任した平成30年9月25日をもってXY社間の雇用契約が終了したと解されて第1項の一部が棄却された場合の予備的請求として、本件懲戒解雇が違法であるとして、不法行為に基づき、損害賠償金1498万2000円(同日からXがY社を定年退職となる令和元年11月までに支払を受けられたはずの給与及び賞与の合計額2131万3333円から、定年退職日となる同月20日までにa社から支払われた報酬合計873万3333円を差し引いた残額1258万円、平成30年9月25日時点での退職金の額と定年退職時の退職金額との差額104万円及び弁護士費用136万2000円の合計)+遅延損害金の支払を、各求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、1255万9315円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、156万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、部下にタイムカードの代行打刻を行わせていたことを理由として、Xを本件事業部の部長から次長に降格する懲戒処分(本件降格)を行っているところ、Y社では、就業規則(就業規則、賃金規程等は、本件事業部の従業員らに実質的に周知されていたと認めるのが相当である。)には、出退社の際は本人自ら所定の方法により出退社の事実を明示する旨規定されていたのであるから、Xの上記取扱いはY社の上記就業規則の規定に違反し、Y社による従業員の労働時間管理を妨げるものとして、Y社の業務に支障を生じさせ得るものであったというべきである。そして、本来、部下らに規則を守らせるべき本件事業部長であるX自らが部下に上記代行打刻を行わせていたこと、本件事業部の他の従業員らにも同様の代行打刻がみられ、Y社として本件事業部内の規律を正す必要があったことも考慮すれば、後に判示するXの不利益に鑑みても、Y社が本件降格を行ったことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとはいえず、本件降格が懲戒権の濫用として無効となるものとは認められない。
よって、本件降格は有効である。

2 次に、本件降格が有効であるとしても、本件減給については別途労働契約上の根拠が必要であるところ、役付手当については、賃金規程において、部長は月額20万円、次長は月額15万円と明確に定められているから、本件降格に伴い、賃金規程の上記規定に従って役付手当を減額したことは、有効である。
他方、基本給については、XY社間の雇用契約書にはその減額の根拠とすべき規定はなく、賃金規程にも、第3条に雇入れの際の初任給の決定に関する規定があるのみで、雇用継続中の基本給の減額を基礎づける規定は見当たらない。そうすると、本件減給のうち基本給の減額については、労働契約上の根拠なくされたものといわざるを得ず、これに対するXの同意も得られていない以上、無効といわざるを得ない。
以上によれば、本件降格及び本件減給のうち役付手当の減額については有効であるが、本件減給のうち基本給の減額については、労働契約上の根拠を欠き無効である。

上記判例のポイント2は注意が必要です。

仮に降格が有効であったとしても、基本給の減額に関する根拠規定が存在しない場合には、当然には減額はできません。

手続きを進める際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をし、慎重に対応しましょう。

本の紹介1245 脳が教える!1つの習慣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

脳科学に従った成功の方法が書かれています。

タイトルのとおり、「習慣」こそが結果を出す唯一の方法なのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

大きなことを可能にするのは小さなことだ。」(212頁)

結局、毎日毎日、コツコツやるしかないんですよ。

んなことはずっと前からわかっているのです(笑)。

やり方もへったくれもなく、毎日コツコツやり続けられるかどうか、ただそれだけのこと。

断言しましょう。

1年365日、毎朝4時に起きて3時間やり続けたらなんだって結果は出ます。

みんなが寝ている時、遊んでいる時にどれだけ努力を続けられるか。

ただそれだけのこと。

有期労働契約108 有期雇用契約途中の解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、有期雇用契約途中の解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

ローデンストック・ジャパン事件(東京地裁令和3年7月28日・労判ジャーナル117号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で有期雇用契約を締結していたXが、Y社に対し、Y社による有期雇用期間途中の解雇は無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、雇用契約に基づく未払賃金等の支払を求めたほか、Y社による違法、無効な解雇により精神的苦痛を受けたとして、不法行為に基づき、慰謝料200万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、C社長から令和元年7月23日付けメールのようなメールを送信しないよう業務命令を受けていたにもかかわらず、自己の考えに固執して故意に複数回にわたってこれに反する行為に及んでおり、Y社の管理部長としての資質を欠くものといわざるを得ず、Xには就業規則所定の解雇事由に該当すると認められ、また、XはY社との間で期間を5年間とする定年後再雇用契約を締結しており、本件解雇の時点で2年6か月以上の雇用期間を残していたため、Y社は、他部署への配置転換や雇用期間の満了まで賃金を受領しつつ自宅待機とするという雇用の継続を前提とした提案をしたが、Xがこれに応じないばかりか、その後、Y社がXに対して自宅待機命令を発し、その間も賃金の支払を継続することにしたにもかかわらず、それでもなおXは業務命令に反して同年9月6日付けメールを送信したため、Y社はこれ以上Xの雇用を継続することはできないとして本件解雇に踏み切っており、このような点に照らせば、Y社としてXの雇用の継続のために可能な限りの努力をしたにもかかわらず、Xを解雇せざるを得なかったといえるから、労働契約法17条所定の「やむを得ない事由」があったというべきであるから、本件解雇は有効である。

雇用期間満了までお金あげるから会社に来なくていいとまで言われております。

有期雇用契約ですので、無期雇用契約に比べると解雇のハードルが高いですが、それでもここまでの事情があれば、裁判所もさすがに解雇を有効と判断してくれます。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

 

本の紹介1244 自分のための人生#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度読み直してみました。

帯には、「『充実人生』・・・は他者から与えられるものではない。自分が今、何を選び、何をするかですべてが決まる。」と書かれています。

まさに人生は選択の総体です。

自分がこれまで日々どういう選択をし、これからどういう選択をするかで人生は決まります。

とてもいい本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私たちは一生涯、確実性を奨励する声を聞いて過ごす。まず家庭で始まり、教育者によっていっそう強化される。子どもはよけいな実験は避けるようにと教わり、未知のことにも近づかないようにとすすめられる。迷いは禁物です。正しい答えを出しなさい。自分と同類の人とつき合いなさい。このような恐るべき安全のすすめにいまだに執着しているとしたら、今こそ断ち切って自由になるときだ。」(172頁)

親の子に対する教育が与える影響は計り知れません。

安定志向の親は、子に安定の大切さを教え、挑戦志向の親は、子に挑戦の大切さを教えます。 

できるだけ失敗しないことを重視するのか、失敗しても諦めずにチャレンジすることを重視するのか。

このようにして幼少期に形成された価値観が大人になっても変わらずに影響し続けているように思います。

管理監督者52 年収約1100万円の従業員の管理監督者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、年収約1100万円の従業員の管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

スター・ジャパン事件(東京地裁令和3年7月14日・労判ジャーナル117号42頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結して就労している従業員Xが、Y社に対し、平成28年6月から令和元年11月までの期間における時間外労働、深夜労働及び休日労働に対する割増賃金の不払がある旨を主張して、Y社に対し、労働契約に基づき、未払割増賃金等の支払を求めるとともに、労働基準法114条に基づき、付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払割増賃金請求認容

付加金等請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの管理監督者性について、経営上重要な事項の決定、採用、人事考課、業務の割当て、労働時間の管理のいずれについてもXの権原や影響力は限定的なものであったといわざるを得ず、これに加え、Xの部下の人数は3ないし4名と少なく、Xの労働時間の中でマネジメント業務を行っている時間はわずかであり、Xは主として部下が担当する業務と同様の業務に従事していたと認められることを踏まえると、Xは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者ということはできず、また、Y社においてはフレックスタイム制が採用され、Xも同制度の適用対象となっているところ、Xは、Y社に対し、出社時刻及び退社時刻を申告し、B社長から勤務時間を記録した出勤簿の承認を受け、概ねフレックスタイム制の始業時間帯及び終業時間帯の間で出退勤しており、有給休暇についてもB社長の承認が必要とされていたということも踏まえると、Xには事故の労働時間についての裁量があったとはいい難いから、Xの待遇について、給与が年収1080万円ないし1170万2220円と比較的高額であることを考慮しても、Xが管理監督者に該当するとは認められない

2 Y社は、Xが、雇用契約当初からその後本訴提起の直前に至るまで一貫してY社がXを管理監督者として扱うよう誘導し、Xに対して時間外労働の抑制などの時間管理をする機会を奪わせ、他方で自分で勝手に労働時間を長くしてから、長期にわたりその状態を自ら放置して時間外の請求をすることなく、2年半以上過ぎてから請求したことを理由に、本件請求は禁反言の原則、信義則に違反する旨主張しているが、Xは、Y社に正社員として入社した当時、自己が残業代の支払を受けることができる立場ではないと認識してはいたものの、就労する中で管理監督者としての権原を有していないという認識に至ったことから本件請求を行ったというのであるから、入社後2年半以上過ぎてから請求したからといって、禁反言の原則や信義則に反するとはいい難く、また、Xが自ら不当に労働時間を長くしているとはいえないし、Xの時間外労働を抑制する機会を失ったというのも、Y社が管理監督者に該当しない者を管理監督者として扱ったことによる帰結にすぎないから、XのY社に対する割増賃金請求が信義則に反するということはできない。

年収が高い分、未払残業代の金額も自ずと跳ね上がります。

この程度の働き方では、開かずの扉はまず開きません。

労務管理は事前の準備が命です。顧問弁護士に事前に相談することが大切です。

本の紹介1243 クオリティ・カンパニー#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

8年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

タイトルからもわかるとおり、会社はかくあるべしということが書かれています。

理念的なことが書かれていますので、共感できるかどうかは読み手によると思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

願望は人それぞれ異なるが、真のリーダーは、自分中心、相手不在ではなく、どうしたら縁ある人を幸せにできるかを考え、それに対して本気で取り組むことで、相手の矢印(ベクトル)が変わり、協力関係を醸成していく。賢い計算高さより、人間的なハートがあれば与えて与えられる関係性を築くことができる。」(51頁)

崇高な理念はさておき、会社を潰さないことがまずは重要です。

ミッションだとかバリューだとかどれだけ並べたところで、会社が倒産してしまえば、元も子もありません。

10年先の大きな目標もいいですが、目の前の仕事をしっかりとやるという極めてシンプルな約束を守ることで十分な気がします。

労働災害109 店長の過重労働による死亡と会社・取締役に対する損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、店長の過重労働による死亡と会社・取締役に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

株式会社まつりほか事件(東京地裁令和3年4月28日・労判ジャーナル1251号74頁)

【事案の概要】

本件は、亡Aの相続人であるXらが、被告株式会社Y1の従業員であった亡Aが、Y1における長期間の過重労働により、不整脈による心停止を発症して死亡したため、これにより損害を被った旨主張して、①Y1に対しては債務不履行による損害賠償請求権に基づき、②Y1の代表取締役であったY2に対しては債務不履行による損害賠償請求権又は役員等の損害賠償請求権(会社法429条1項)に基づき、連帯して、X1においては2401万0975円+遅延損害金の支払を、X2においては3513万1830円+遅延損害金の支払を、それぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

被告らは、X1に対し、連帯して、2091万5568円+遅延損害金を支払え。

被告らは、原告X2に対し、連帯して、3093万5452円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y2は、Y1の代表取締役として、Y1の業務全般を執行するに当たり、Y1において労働者の労働時間が過度に長時間化するなどして労働者が業務過多の状況に陥らないようにするため、従業員の労働時間や労働内容を適切に把握し、必要に応じてこれを是正すべき措置を講ずべき善管注意義務を負っていたというべきであるところ、Y1の業務執行を一切行わず、亡Aの労働時間や労働内容の把握や是正について何も行っていなかったのであるから、その職務を行うについて悪意又は重大な過失があり、これにより亡Aの損害を生じさせたというべきである
したがって、Y2は、会社法429条1項に基づき、Y1と連帯して、亡Aの死亡により生じた損害の賠償責任を負うというべきである。

2 これに対し、Y2は、亡Bに名義貸しをしたものにすぎず、Y1の取締役としての職務を行うことが予定されておらず、実際にも職務を行っていなかったから、Y2のAに対する重大な過失はないとも主張する。
そこで検討するに、Y2は、亡BからY1の設立に当たり名前を貸すように依頼を受けてこれを了承し、被告Y2においてY1の代表取締役の登記手続をされたものであり、Y1の経営に関与したり、役員の報酬を得たりしたことも一切なかったのであるから、Y2がY1の業務執行に関わることが一切予定されていない、いわゆる名目的な代表取締役であったことは、被告らが主張するとおりである。
もっとも、Y2は、亡Bからの上記依頼の内容について、Y1の役員になるのかもしれないとの認識を持ち、印鑑登録証も貸したことが認められるのであるから、Y1の代表取締役への就任自体は有効に行われたものであるといわざるを得ず、そうである以上、Y2がY1の代表取締役として第三者に負うべき一般的な善管注意義務を免れるものではない。仮に、Y2が、Y1の実質的な代表者であった亡Bから、Y1の業務執行に関わる必要がないとの説明を受けていたり、Y1から何らの報酬を得ていなかったりしたとしても、それはY1の内部的な取決めにすぎず、そのことからY2がY1代表取締役として負うべき第三者に対する対外的な責任の内容が左右されることはない

たとえ名目的な代表取締役であったとしても、それをもって責任を免れないことは争いのないところです。

労災が発生した場合に、会社のみならず、役員の責任追及をされることがありますので注意しましょう。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介1242 あなたがもし残酷な100人の村の村人だと知ったら#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

帯には「教えていますか?この国で生き延びる知恵と方法を。13歳から知っておきたい日本とお金の衝撃の真実!」と書かれています。

少し古い本ですが、現在の日本の状況がよくわかる本です。

大人が読んでもとても参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

大事なのは、そこに『所有』志向がかけらもなかったことだ。このことはこれから生きていく方向として、たいへん重要だと私は思う。これからの時代は、所有志向の人は負けていくしかない。何も持つな、借金するな、身軽を身上に、できれば魅力のなくなったサラリーマンなんてすっぱりと辞めて得意分野で起業し、自分資本を活かし、人間関係資本を縦横無尽に使い、お金資本を得ていくこと、それが一番いいと私は考えている。これが、時代の変化から見えてくる、これからの生き方である。」(149頁)

このブログでもときどき触れるトピックです。

結論、その人の好きにすればいいのですよ(笑) 

所有して幸せを感じるのであれば所有すればいいのです。

私は、所有することで幸福度が上がるどころか、かえって不幸になるので、できる限りモノを所有しないようにしているにすぎません。

畢竟、所有することによってコストやリスクが増えるのが面倒なのです。

正しい、間違っているという問題ではなく、価値観の問題です。