不当労働行為285 会社の支店長がバス運転手である組合員に対し組合脱退勧奨を行ったことが不当労働行為とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社の支店長がバス運転手である組合員に対し組合脱退勧奨を行ったことが不当労働行為とされた事案を見ていきましょう。

ジェイアールバス関東事件(東京都労委令和3年8月17日・労判1254号95頁)

【事案の概要】

本件は、会社の支店長がバス運転手である組合員に対し組合脱退勧奨を行ったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 X支店長は、Aの行為を会社に報告しないことと引き換えにJR東労組の脱退届を出すようにAに求め、同人がこれを拒否すると、同人が転勤になる可能性やJR東労組が将来なくなる可能性を示唆するなどして同組合から脱退するよう働き掛けているのであるから、本件行為は、組合の運営に干渉し組合を弱体化させる行為であるといえる。

2 会社の対応やJR東労組の中央執行委員会の見解を考慮しても、本件行為について既に解決済みであり、集団的労使関係秩序が正常に回復されたとまで断ずることはできず、そうすると、類似の行為が繰り返される恐れがなくなったともいえない。したがって、本件申立てに救済の利益ないし必要がないとする会社の主張は採用することができない。

組合脱退勧奨が不当労働行為にあたることは争いのないところです。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介1261 本当のお金の使い方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

タイトルのとおり、お金の「稼ぎ方」ではなく、「使い方」にフォーカスした本です。

どれだけお金を持っていても、使い方が間違っていると何にもなりません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分の理想の生活ができるように、お金を稼ぎ、使う。それが私のお金の使い方です。私たちの人生で大切なのは、プライベートや仕事を充実させることであって、節約が最上位にくるわけではありません。そのためには我慢ばかりせず、『自分にとっての価値があるもの』にお金を使うことです。」(92頁)

お金は稼ぎ方もさることながら、使い方も同じくらい重要です。

特に20代から30代前半の方は、自分の価値を高めるためにどれだけ時間とお金をまわせるかが、その後の人生に決定的な影響を与えます。

これは残酷ですが真実です。

準備をしてきた人とそうでない人で同じはずがないという、いわば当然の帰結です。

自分の価値を高め、単価を上げることができれば、投資資本の回収なんてあっという間にできます。

不当労働行為284 組合員の解雇撤回等を議題とする団交申入れに対する会社の対応が不当労働行為にあたるとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合員の解雇撤回等を議題とする団交申入れに対する会社の対応が不当労働行為にあたるとされた事案を見ていきましょう。

粟野興産事件(東京都労委令和3年1月19日・労判ジャーナル1254号96頁)

【事案の概要】

本件は、組合員の解雇撤回等を議題とする団交申入れに対する会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 会社は、組合の全ての質問や要求は既に第1回団体交渉や係属中の訴訟等において回答済みであり、また、長期間、数々の訴訟と労働委員会の手続等で争われており、いずれかの譲歩により交渉が進展する見込みはなく、団体交渉を継続する余地はなくなっていた以上、団体交渉拒否の正当理由があると主張する。
しかしながら、訴訟と不当労働行為審査手続と団体交渉とは、各々その目的や機能を異にするものであり、訴訟や労働委員会の手続の中で説明資料等が提出されたからといって、団体交渉において誠実に説明する労働組合法上の義務が消滅するわけではない
また、訴訟等が係属していたとしても、別途、団体交渉において紛争を解決する余地がないとはいえず、団体交渉において双方が説明や主張を尽くした上で交渉が行き詰まりに達したといった事情がない限り、訴訟等における状況のみから、団体交渉を継続する余地がなくなったということはできない

これは、団体交渉の基本中の基本ですので、しっかり押さえておきましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介1260 我慢して生きるほど人生は長くない(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

著者は、心療内科医の先生です。

このブログで書いている内容と共通する部分がいくつもあります。

自由に生きても我慢して生きても、いずれにせよ、人生はあっという間に終わります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

職場の人間関係は密で影響力が大きく、どのような環境でどのような人とどのような関係を作るかは、その後のあなたの心や生活、人生のあり方を左右します。」(98頁)

多くの人が、寝ている時間以外のほとんどの時間を自宅と職場(学生で言えば学校)で過ごしています。

人生の幸福度は、何をするかよりも誰といるかによって大きく変わります。

人の悩みの大半は、人間関係から来ていることを考えればわかると思います。

自宅にいても、会社にいても、不平不満やストレスが尽きないという生活・・・考えただけで大変です。

今の自分は、過去の自分の選択の総体です。

続けるも自由。

辞めるも自由。

自由に生きても我慢して生きても、いずれにせよ、人生はあっという間に終わります。

退職勧奨19 使用者が承諾した後のため、従業員の退職の意思表示の撤回はできないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、録音の証拠能力を肯定し、従業員の退職の意思表示の撤回はできないとされた事案を見ていきましょう。

公益財団法人東京税務協会事件(東京地裁令和3年9月16日・労経速2468号43頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間の労働契約に基づき被控訴人に使用されていた控訴人が、被控訴人に対してした退職の意思表示が撤回、無効又は取消しにより効力を有しないと主張して、Y社に対し、①本件労働契約に基づき、未払賃金25万6000円+遅延損害金の支払を求めるとともに、②労基法114条、26条に基づく付加金25万6000円+遅延損害金の支払を求め、また、Y社の被用者がXに対して退職強要等のパワーハラスメントに及んだと主張して、Y社に対し、③不法行為(使用者責任)に基づき、慰謝料30万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

原判決が控訴人の請求をいずれも棄却したところ、これを不服とする控訴人が控訴した。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 労働者による退職の意思表示は、これに対し使用者が承諾の意思表示をした後は、もはや撤回することができないものと解される。
これを本件についてみると、Y社においては、幹部職員及び専門職員以外の職員(臨時職員として採用されたXもこれに当たるものと認められる。)の退職については事務局長が決定権限を有するところ、本件退職意思表示について、Y社の事務局長が、4月12日、これを受理して控訴人の退職を承認する旨の決定をしたものと認められる。
そうすると、同日の時点で、Y社は、本件退職意思表示に対し承諾の意思表示をしたものというべきであるから(改正前民法526条1項参照)、その後になされた本件撤回通知により本件退職意思表示を撤回することはできない。

2 Xは、乙第6号証(事業所面談における会話の録音反訳書面及び録音体)について、Xの許可なく録音されたものでありプライバシーを侵害するなどと主張し、違法収集証拠として証拠の排除を求めるものと解される。
そこで検討すると、民事訴訟法が証拠能力(ある文書や人物等が判決のための証拠となり得るか否か)に関して何ら規定していない以上、原則として証拠能力に制限はなく、当該証拠が著しく反社会的な手段を用いて採集されたものである場合に限り、その証拠能力を否定すべきである。
これを本件についてみると、乙第6号証は、E所長が事業所面談においてXとの会話を録音し、これを反訳したものと認められるところ、当該証拠について控訴人が主張するところは、要するに控訴人の知らないところでその発言が録音されたというものであって、これを前提としても、当該録音が著しく反社会的な手段を用いてなされたとはいえないから、乙第6号証の証拠能力を肯定すべきである。

本件を通じて、民事訴訟における無断録音の証拠能力に関する考え方を押さえておきましょう。

退職勧奨の際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

本の紹介1259 MIND CHANGE(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

弁護士であり不動産投資家でもある堀先生の本です。

サブタイトルは、「くすぶった人生から一歩踏み出し、自由で豊かな成功者になるための方法」です。

精神的・経済的安定・自由を獲得するために必要なプロセスがすべて載っています。

多くの人が本を読まないし、読んでも行動に移しませんので、ここに書かれていることを素直に行えば、ほぼ間違いなく成功するでしょう。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・しかし、私は勇気を出して、行動しました。何となく、それが成功する人の習慣だと分かっていたからです。・・・もし現状に満足しているなら、リスクを取るかどうかで悩むこともそもそもないはずです。無駄なリスクを取らずに、これまで通りの生活をすればいいだけです。人生のステージを変えたいのであれば、つまりリスクを取るかどうかで悩む状態なのであれば、そこでリスクを取るべきなのではないでしょうか。少なくとも、取るかどうかで悩んだまま人生の時間が過ぎていくよりは、はるかに良いと思います。」(218頁)

真実です。

人生のステージを変えたいと願うのであれば、他の人と同じような生活をしないことです。

原因と結果の法則からすれば当然のことです。

人が休んでいるとき、寝ているとき、遊んでいるときに、どれだけ汗をかけるか。

しかも、それを習慣化できるかどうか。

英会話もジムも禁煙もダイエットも、あらゆることは習慣化してはじめて結果が出るのです。

人生はそう簡単には変わりません。

一瞬変わったと思っても、気を抜くとすぐに元に戻ってしまいます。

まさにホメオスタシス。

We first make our habits, then our habits make us.

不当労働行為283 組合の内部運営を理由とした団交拒否が不当労働行為にあたるとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合が大会を適法に行っていないなど組合の適法性に疑問があること等を理由に、会社が団交に応じないことが不当労働行為にあたるとされた事案を見ていきましょう。

クローバー事件(東京都労委令和3年1月19日・労判1254号96頁)

【事案の概要】

本件は、組合が大会を適法に行っていないなど組合の適法性に疑問があること等を理由に、会社が団交に応じないことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 会社は、組合の団体交渉の申入れに対し、労組法第2条の自主性及び同法第5条第2項第5号の民主性の点で組合の法適合性並びにA委員長の代表者としての資格に疑義を示して代議員の選出手続などについて具体的な説明を求め、説明がなかったことを理由として団体交渉に応じなかった。
しかし、会社が疑問視する組合の自主性や民主性に関する事項は、組合の内部運営に係る事柄であるから、団体交渉を拒否する理由にならない

2 組合が内部規約に違反して代議員を選出したとしても、それは単に内部規約違反にとどまり、その解決は組合の自主性に委ねられるべきものであるから、それが直ちにA委員長の代表者資格や組合の法適合性に影響を与えるものとはいえない

このような理由で団交拒否が正当化されることはありません。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介1258 人生逆転最強メソッド(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

弁護士でありユーチューバーの岡野先生の本です。

高卒→フリーターから弁護士になったという異色の経歴をお持ちのため、このようなタイトルにも説得力がありますね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

せっかくチャレンジしてみたのに、一回うまくいかなかったからといって、やめてしまうということも多く見かけますが、これは非常にもったいないです。最初からうまくいくことなんてありませんし、失敗することは、恥ずかしいことではありません。ほとんどの人が、試す回数が少なすぎるのです。」(126頁)

「ほとんどの人が、試す回数が少なすぎるのです」

要するに、「もうやーめた」とあきらめてしまうのが早すぎるのです。

そんな簡単に結果なんて出ませんから。

なかなかうまくいかないことを乗り越えようとする過程自体を楽めるかどうか、そこがポイントです。

まさに山登りと同じです。

有期労働契約110 無期転換直前の雇止めの適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、無期転換直前の雇止めの適法性に関する裁判例を見てみましょう。

日本通運(川崎・雇止め)事件(横浜地裁川崎支部令和3年3月30日・労判1255号76頁)

本件は、Y社との間で期間の定めのある雇用契約(最初の雇用契約開始日から通算して5年を超えて更新することはない旨の条項が付されていた。)を締結し、4回目の契約更新を経て勤務していたXが、Y社に対し、Y社が当初の雇用契約から5年の期間満了に当たる平成30年6月30日付けでXを雇止めしたことについて、①上記条項は労働契約法18条の無期転換申込権を回避しようとするもので無効であり、Xには雇用継続の合理的期待があった、②同雇止めには客観的合理性、社会通念上の相当性が認められないなどと主張し、Y社による雇止めは許されないものであるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同契約に基づく賃金請求権に基づき、上記雇止め後である同年8月25日から毎月25日限り月額賃金26万9497円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件においては、通常は労働者において未だ更新に対する合理的期待が形成される以前である本件雇用契約締結当初から更新上限があることが明確に示され、Xもそれを認識の上本件雇用契約を締結しており、その後も更新に係る条件には特段の変更もなく更新が重ねられ、4回目の更新時に、当初から更新上限として予定されたとおりに更新をしないものとされている
また、Xの業務はある程度長期的な継続は見込まれるものであるとしても、b配送センターの事業内容や従前の経営状況に加え、Xの担当業務の内容や本件雇用契約上の更新の判断基準等に照らせば、Xの業務は、顧客の事情により業務量の減少・契約終了があることが想定されていたこと、Xの業務内容自体は高度なものではなく代替可能であったことからすれば、恒常的とまではいえないものであった。
加えて、b配送センターにおいて就労していた他の有期雇用労働者はXとは契約条件の異なる者らであった。その他、Y社横浜支店において不更新条項が約定どおりに運用されていない実情はうかがわれない
このような状況の下では、Xに、本件雇用契約締結から雇用期間が満了した平成30年6月30日までの間に、更新に対する合理的な期待を生じさせる事情があったとは認め難い

2 労働契約法18条は、有期契約の利用自体は許容しつつ、5年を超えたときに有期雇用契約を無期雇用契約へ移行させることで有期契約の濫用的利用を抑制し、もって労働者の雇用の安定を図る趣旨の規定である。このような趣旨に照らすと、使用者が5年を超えて労働者を雇用する意図がない場合に、当初から更新上限を定めることが直ちに違法に当たるものではない。
5年到来の直前に、有期契約労働者を使用する経営理念を示さないまま、次期更新時で雇止めをするような、無期転換阻止のみを狙ったものとしかいい難い不自然な態様で行われる雇止めが行われた場合であれば格別、有期雇用の管理に関し、労働協約には至らずとも労使協議を経た一定の社内ルールを定めて、これに従って契約締結当初より5年を超えないことを契約条件としている本件雇用契約について、労働契約法18条の潜脱に当たるとはいえない
したがって、同法の潜脱を前提とする公序良俗違反の原告の上記主張は理由がない。

雇用契約締結当初から更新回数の上限を設定し、かつ、例外的な運用をしていない場合には、本裁判例のように雇止めは有効と判断されます。

契約更新の途中でこれをやると逆の結論になりますので注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

本の紹介1257 ミニマリスト仕事術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

帯には、「行動、思考、感情の無駄を削れば、人生に革命が起きる」と書かれています。

まさにミニマリストの発想ですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

そもそもどうして人は、『やりたいこと』を断念してしまうのでしょう。『人の目を気にする』とか、『仕事のために犠牲にする』とか、『やらなくてもいいこと』に私たちは時間や心を割き過ぎているのです。『時間がない』と多くの人は言いますが、誰でも所有している時間は平等です。・・・なのに『やりたいこと』を実現できる人とできない人がいるということは、『同じ時間を使って何をするか』の選択が正しいか、間違っているかの違いだけなのです。」(74頁)

私の考えでは、多くの方は、①日々、やらなければいけない「ルーティン」が多すぎる、もしくは、②本来やらなくてもいいことに時間を割きすぎている、のどちらかではないかと思っています。

結果、仮に「やりたいこと」があったとしても、そのための時間を確保できない(=「時間がない」)ため、やりたいことを断念してしてしまう。

①の典型例は、家事、育児、仕事(残業)でしょうか。

②の典型例は、会合、ゲーム、SNS、YouTube・・・など、挙げたらきりがありません。

①は、その環境を大きく変えることはそう簡単ではありません。

実は、②もそう簡単ではありません(笑)

だからこそ、どんどん努力や挑戦の格差が広がってしまうのでしょう。

日々、忙しい、忙しいと言っているうちに、人生はあっという間に終わってしまいます。