競業避止義務30 引抜き行為等に基づく損害賠償請求が棄却された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、引抜き行為等に基づく損害賠償請求が棄却された事案を見ていきましょう。

Unity事件(大阪地裁令和3年10月15日・労判ジャーナル120号36頁)

【事案の概要】

本件本訴は、X社が、元従業員であるYに対し、Yは労働契約上の競業避止義務ないし秘密保持義務に違反してX社の新規事業をYが設立した新会社に移行させ、かつ、X社の他の従業員に対してX社を退職するよう唆したなどと主張して、不法行為に基づき、損害金合計705万2883円+遅延損害金の支払を求める事案である。

本件反訴は、Yが、X社に対し、YはX社から令和元年10月分の賃金の支払を受けていないなどと主張して、労働契約に基づき、同月分の未払賃金34万7224円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

本訴請求棄却

X社は、Yに対し、34万7224円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 確かに、Yは、X社を退職するのに先立ち、D及びCに対し,退職後にBと共に新会社であるc社を立ち上げて事業活動を行う予定である旨を伝え、第6回会議の後には会食を開いてD及びCに対して待遇面についての話をするなどしており、これらの事情からすれば、D及びCも被告のc社における事業活動に一定の興味を示していた可能性があることは否定できない。
しかし、Yが、D及びCに対し、X社からの独立の予定を告げ、仮にX社からc社に転職した場合における待遇面についての説明をすることを超えて、その地位を利用して圧力をかけるなどしてc社への転職を強く求めたとの事実を認定することはできない。現に、Dは、令和元年10月15日の時点でc社への転職をしない旨の意向を明確に表明していたし、D及びCは、いずれも、結果として、c社には就職しなかった

2 これに関し、X社は、Yは上司としての立場を利用してDの引抜きを敢行し、Cに対しては、X社での雇用条件より好待遇であるなどと述べてc社への就職を強く勧誘し、X社に在籍中であったにもかかわらず社外で行われた会議に出席させるなどの強引な引抜行為に及んだものである旨主張する。
しかし、Yがその地位を利用してDの引抜きを図ったと認めるに足りる証拠はなく、Cについても、その意思に反するような強引な働きかけがされたものと認めるに足りる証拠はない。本件証拠によって認定することのできる事実は、YがXから独立するに当たり、その旨を周囲の同僚ないし部下であるD及びCに伝えたところ、同人らがYの独立後に立ち上げることになる新会社に就職することについて一定の興味を示したため、YがD及びCに対して転職が実現した場合の待遇面について説明したというものにすぎず、Yによる社会的相当性を逸脱した引抜行為があったものと認めることはできない
D及びCは、いずれも、結果的に、X社を退職してしまったが、D及びCの退職と被告の言動との間に相当因果関係があるとはいい難い。
以上のとおりであって、YによるD及びCに対する社会的相当性を逸脱した違法な引抜行為があったものと認めることはできず、これに反する原告の主張は採用できない。

引抜き行為については、本件同様、単に「よかったらうち来ない?」程度の勧誘では違法と評価されることはほとんどありません。

最終的には、勧誘された従業員の職業選択の自由に委ねられているわけです。

引抜き行為の問題については顧問弁護士に相談をし、慎重に対応を検討してください。

本の紹介1268 風の谷のあの人と結婚する方法#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

この本も須藤元気さんによって書かれたものです。

須藤ワールドを存分に堪能できる一冊です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人はある程度の『段階』にまで来ると、他人に寄りかかることがむしろ自分の力を弱めることだと認識できるようになります。」(77頁)

「他人に寄りかかる」とは、すなわち、「依存」を意味します。

「依存は弱さである」ということを明確に認識すると、生き方が変わります。

経済的、精神的依存度が高い生活をしていると、モノカルチャー経済同様、「それ」がなくなることに対する不安・恐怖、そして実際になくなった途端に状況が一変してしまう不安定さを甘受せざるを得ません。

できるだけ依存しない生き方とは、すなわち、自立することに他なりません。

「それ」がなくなっても生活していけるように、日頃から経済的、精神的準備をしておきましょう。

賃金223 未払賃金の時効援用を受けて、法的根拠を変更した不法行為に基づく損害賠償請求が否定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、未払賃金の時効援用を受けて、法的根拠を変更した不法行為に基づく損害賠償請求が否定された事案を見ていきましょう。

フルキャストアドバンス事件(東京地裁令和3年8月20日・労経速2471号35頁)

【事案の概要】

本件はかつてY社から雇用されていたXらが、①Y社から、給与明細に休憩時間の項目を設けないようにするなどして休憩時間があったかのように装って欺罔され、休憩時間の給与相当分の金員が支払われず、②Xらの就業先が都内であり、東京都内の最低賃金が適用されるにもかかわらず、Y社から、実際には最低賃金法に違反して最低賃金より低い額で給与を算定され、Xらが損害を受けたなどと主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償金として、X1については787万8575円、X2については810万0585円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、Xらの労働時間を把握するために勤務実績表、「管制」への電話連絡及び勤務予定表といった手段を整えていた。もっとも、勤務実績表及び勤務予定表には休憩時間が記載されず、Xらからの「管制」への電話連絡でも仮眠や休憩の時間は報告されていなかった。そうであるにもかかわらず、Xらの平成30年2月分以前の給与明細上は、日によって異なる休憩時間が存在した前提で労働時間が算定されている。したがって、Y社は、Xらの日々の休憩時間を厳密には把握しないまま、休憩時間が取られた前提で給与計算をしていたと認められる。
また、勤務実態としても、Xらは、休憩時間・仮眠時間とされた時間において、平成30年10月に1病院当たり2名体制に変更になるまでは、救急の患者が来た時には医師や看護師に連絡するなど即座の対応をする必要があったのであり、休憩時間・仮眠時間とされていた時間も、いわゆる手待ち時間であるともいえるものではあった。

2 しかしながら、Xらは、Y社の社内(事業場内)ではなく、外部にある病院内で警備業務を行っていたところ、平成30年3月までは休憩時間を取得できなかったなどという申告や報告を被告にしていなかった。また、Y社と本件各病院との間の警備業務請負契約においても、警備を担当する労働者の休憩時間・仮眠時間が設けられ、これに沿ってXらの勤務シフトが作成されていた。実際にも、Xらは、本件各病院における警備業務において休憩や仮眠をしていたし、客観的に休憩や仮眠ができないような勤務シフトではなかった。そのため、Xらにおいて休憩時間が取得できない時間帯があったとしても、Xらの申告や報告があるまでは、かかる状況を被告が把握することは困難であったと認められる。
 
3 以上のとおり、Y社は、Xらの日々の休憩時間を厳密には把握せず、勤務予定表で休憩・仮眠とされた時間が実質的には手待ち時間であったにもかかわらず、休憩時間が取られた前提で給与計算をしていたのであり、原告らの労働時間管理が不十分であったことは否めないものの、Y社において、Xらからの申告や報告があるまでは、かかる状況を把握することは困難であったと認められる上、Y社は、Xらの申告を受けた後は速やかに過去2年分について休憩時間分を全て労働時間に算入して再計算した賃金を追加支払するとともに、更なるXらからの申告を受けて警備員を1名体制から2名体制へと変更している。
これらに加え、Y社がXらの労働時間を把握するために勤務実績表、「管制」への電話連絡及び勤務予定表といった手段を整えていたことからすれば、Y社が休憩時間として控除した分の賃金の支払義務を認識しながら、労働者による賃金請求が行われるための制度を全く整えなかったと評価することはできない。

賃金不払いがあったとしても、それをもって当然に不法行為に該当するわけではありません。

今回の事案では、消滅時効の問題があったため、やむなく不法行為構成に変更しましたが、上記判例のポイント2のような事情が認められたため、裁判所は、賃金不払いの違法性を認めませんでした。

いずれにせよ、日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

本の紹介1267 無意識はいつも君にかたりかける#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

須藤元気さんの本です。

まるで哲学者のように物事の本質を見出す内容は、何度読んでも素晴らしいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

僕らはこの世界に巻き込まれているようで、じつは毎瞬毎秒解釈を続けているだけ…。見た物を”解釈”し、あれは良いとかあれは悪いとかの価値判断をし、それをあなたが言葉に置き換えるとき、あなたを巡る現実はその解釈のとおりに姿を定着させる。」(27頁)

いつもブログに書いていることですね。

事実や出来事それ自体に意味などありません。

自分で事実や出来事を解釈し、意味付けをしているだけです。

過去の「事実」は変えられませんが、それに対する「解釈」はいかようにも変えられます。

つまり、過去は変えられるのです。

他人から「やせ我慢」だと揶揄されても、それ自体もまた他人の勝手な解釈ですから他人の勝手です。

「人生は解釈で出来ている」という解釈のしかたを知るだけで、人生の幸福度は大きく変わります。

労働災害111 自発的な兼業による長時間労働等について安全配慮義務違反が否定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、自発的な兼業による長時間労働等について安全配慮義務違反が否定された事案を見ていきましょう。

大器キャリアキャスティング・ENEOSジェネレーションズ事件(大阪地裁令和3年10月28日・労経速2471号3頁)

【事案の概要】

Xは、セルフ方式による24時間営業の給油所において、主に深夜早朝時間帯での就労をしていた者である。給油所を運営するA社は、深夜早朝時間帯における給油所の運営業務をB株式会社に委託していたところ、同社は、その業務を被告Y1社に再委託した。
Xは、同給油所において、Y1社との労働契約に基づき、深夜早朝時間帯での就労をしていたが、その後、A社とも労働契約を締結しY1社での就労に加えて、A社との労働契約に基づき、週1、2日、深夜早朝以外の時間帯にも就労するようになった。
Xは、Y1社及びA社を吸収合併したY2社に対し、Xの連続かつ長時間労働を把握又は把握しえたとして、Xの労働時間を軽減すべき安全配慮義務があるにも関わらず、これを怠り、Xに精神疾患を発症させたとして損害賠償請求等をした事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y1社及びA社との労働契約に基づくXの連続かつ長時間労働の発生は、Xの積極的な選択の結果生じたものであるというべきであり、Xは、連続かつ長時間労働の発生という労働基準法32条及び35条の趣旨を自ら積極的に損なう行動を取っていたものといえる。
すなわち、Xは、Y1社と労働契約を締結していたにもかかわらず、A社とも労働契約を締結し、Y1社との労働契約上の休日(日曜日)にA社での勤務日を設定して連続勤務状態を生じさせ、Cから勤務の多さについて労働基準法に抵触するほか、自身の体調を考慮して休んでほしい旨注意され、5月中旬までにはa社の下での就労を確実に辞める旨約束した後も、別途金曜日にa社との労働契約に基づく勤務を入れたり、平成26年4月28日にf店における就労について話し合った際もGの意向に反して自ら就労する意向を通していたのである(かかるXの行動・態度に照らせば、たとえY1社が更に別の曜日を休日にするなどの勤務シフトを確定させたとしても、Xが独自に交渉するなどして、その休日にA社の下で就労し、あるいは、更に異なる事業所で勤務しようした蓋然性が高いと認められる。)。

2 他方、Y1社としては、いかに上述した契約関係に基づいて24時間営業体制が構築されているとはいえ、XとA社の労働契約関係に直接介入してその労働日数を減少させることができる地位にあるものでもない(それゆえに、Cは、Xに注意指導してA社との労働契約を終了するよう約束を取り付けている。)。
加えて、そもそもXの担当業務に関する労働密度は相当薄いというべきものであること、Y1社は基本的に日曜日を休日として設定していること、CはXに対し、労働法上の問題のあることを指摘し、また、X自身の体調を考慮して休んでほしい旨注意をした上、Xに同年5月中旬までにはA社の下での就労を確実に辞める旨の約束を取り付けていることなど、本件に表れた諸事実を踏まえると、Y1社が原告との労働契約上の注意義務ないし安全配慮義務に違反したとまでは認められない。

兼業・副業を認めている会社にとっては、非常に重要な裁判例です。

上記判例のポイント1のような事情があったからこそ、裁判所は、会社の責任を否定しましたが、会社が黙認していた場合には結論が逆になり得ますのでご注意ください。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介1266 三行で撃つ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

「書く」ことを仕事としている方は、是非、読んできてください。

必ず参考になります。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

いいライターとはなにか。企画を持っているのがいいライターだ。企画の量とライターの質は、正比例する。・・・仕事のことを四六時中考えているワーカホリック。『ラーク・ライフ・バランス』などという言葉が、なんと、新聞社のような組織にも蔓延してきた。笑ってしまう。表現者に、ワーク・ライフ・バランスなどあるわけがない。『ワーク・イズ・ライフ』だ。仕事中毒になるのだ。いつでも、寝ても覚めても、表現のことを考えている。」(177頁)

「けしからん!」「ブラック企業だ!」と批判される方、仰るとおりでございますので、どうぞお気になさらないでください。

以下、労働基準法が適用されない(=「労働者」でない)方のみ、お読みください。

仕事に没頭している人で「ワーク・ライフ・バランス」を気にして働いている人なんていません。

寝ても覚めても仕事のことを考えていますが、別にすごくもなんともありません。

それが当たり前だからです。

自らの意思で、好きでやっているのですから、誰からも責められるいわれはありません。

まさに「ワーク・イズ・ライフ」です。

仕事が好きというのは、とても幸せなことです。

仕事はつまらないけど人生は楽しい、・・・そんなことある?

派遣労働31 通勤によるコロナ感染不安を訴える派遣労働者に対する雇止めの違法性が否定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、通勤による新型コロナウイルスへの感染不安を訴える派遣労働者に対する健康配慮義務違反及び雇止めの違法性がいずれも否定された事案を見ていきましょう。

ロバート・ウォルターズ・ジャパン事件(東京地判令和3年9月28日・労経速2470号22頁)

【事案の概要】

本件は、労働者派遣事業等を目的とするY社との間で期間の定めのある労働契約を締結していたXが、Y社に対し、Xが新型コロナウイルスへの感染を懸念して在宅勤務を求めていたにもかかわらず、Xを派遣先会社に出社させたり、在宅勤務等を希望するXを疎んで雇止めにしたり、雇止めに関しその理由を具体的に説明しなかったりしたと主張し、これらはXに対する一連の不法行為に当たるとして、不法行為に基づき慰謝料450万円及び弁護士費用45万円の合計495万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社や本件派遣先会社において、当時、Xが通勤によって新型コロナウィルスに感染することを具体的に予見できたと認めることはできないというべきであるから、Y社が、労働契約に伴う健康配慮義務又は安全配慮義務(労働契約法5条)として、本件派遣先会社に対し、在宅勤務の必要性を訴え、Xを在宅勤務させるように求めるべき義務を負っていたと認めることはできない
したがって、仮に、Y社が本件派遣先会社に対しXの在宅勤務の実現に向けて働きかけをしなかったという事情があったとしても、これをもって違法ということはできない。

2 本件労働契約は、令和2年3月2日から同年3月31日までの期間を定めて締結されたものであり、本件雇止めまで一度も更新されたことがなかったことや、本件労働契約において更新を予定した条項は定められていなかったことに照らすと、本件雇止めの時点において、Xに雇用継続への合理的期待があったと認めることはできないというべきである。

コロナに対する不安の度合いは、人によってまちまちですので、Xの要望は理解できないことはありません。

もっとも、コロナに限らず、風邪もインフルエンザも、マスクをしようかしまいが、ワクチンを接種しようがしまいが、感染する人は感染してしまいます。その逆もまたしかり。

判断が難しい労務管理については、速やかに顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介1265 心を鍛える(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

堀江さんと藤田さんの共著です。

帯には「大事なのは『頭の良さ』より『ハートの強さ』」と書かれています。

まあ、両方大事です。

お二人の10代から40代までの激動の人生を知ることができます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

結論。高みを目指すなら、志の高い人とつきあうことだ。周りの志が高いと、自分自身も自動的に頑張りたくなるし、モチベーションも保つことができる。心の強さは、伝染するのだ。」(125頁)

誰と付き合うか、誰と時間を共にするか、誰の影響を受けるか。

これによって、自分の「当たり前」が形成されるのです。

みなさんは、毎朝、早起きをして勉強するのが「当たり前」ですか?

休みの日や仕事終わりにジムで運動するのが「当たり前」ですか?

「当たり前」とは、すなわち、「習慣」を意味します。

誰の影響を受け、どのような習慣を身に付けているかで、もうほとんど人生は決まってしまいます。

習慣の蓄積こそが今の自分の姿なのです。

労働者性44 ホテルのフロント業務に従事する者の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ホテルのフロント業務に従事する者の労働者性に関する裁判例を見ていきましょう。

キサラギコーポレーション事件(大阪地裁令和3年8月23日)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、賃金が未払であるとして、雇用契約に基づき未払賃金等の支払を求めるとともに、Y社代表者からセクハラ、誹謗中傷等を受けたとして、会社法350条に基づき損害賠償等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Xが従事していた業務は、本件ホテルのフロント業務等であったところ、その業務内容に照らしても、XがY社から指示された仕事を受諾するか否かを自由に決定することができていたということはできず、Xが、Y社から打診された業務を拒絶したというというような事情もうかがわれず、また、Y社代表者が、Xに対し、部屋の稼働状況を問い合わせたのに対し、Y社代表者の問合せがあるたびにXが稼働状況を報告していることからすれば、Xは、Y社の指揮命令下にあったということができ、さらに、Xの勤務場所は、本件ホテル内に固定されており、業務に従事する時間もシフトによって定まっていたほか、Xはタイムカードを打刻することが義務付けられていたといえるから、Xの勤務場所・勤務時間には拘束性があったということができ、そして、Xの報酬は、時給制とされており、労務提供の時間によってその額が定めることとされていたものであること、100時間の見習い(研修)期間が設けられていたことなどからに照らせば、Xの報酬は労務対償性を有していたということができるから、Xは、Y社の指揮監督下において労務を提供し、労務提供の対価として報酬を得ていたものであり、本件契約は雇用契約であったと認めるのが相当である。

これを業務委託(請負)とするのは完全に無理があります。

強引に業務委託契約の形をとるとあとで大変なことになりますので気を付けましょう。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介1264 自分資産化計画(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

本のそでには「本当に大切なのは、『どれだけ稼ぐか?どれだけ増やせるか?』よりも『どれだけお金を持ち続けられるか?』」と書かれています。

一時的にお金を増やすことができても、それが持続できなければ意味がありません。

かといって、貯金ばかりして窮屈な生活もしたくないですよね。

サステナブルな収入源をいかに確保するかがとても重要なわけです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『リストラされるかもしれない』『年収が下がって住宅ローンが払えないかもしれない』『家族の生活費、子供の養育費を捻出できるだろうか?』『老後資金を2000万円以上貯めなければならない』 毎日このようなお金の不安に駆られて、いつもあなたは『自分のしたいこと』を後回しにしていませんか?パートナーのため、子供のため、親のため、上司のため、部下のため、会社のため・・・いつもあなたは『誰か』のために働いています。そこにどれだけ『あなたのため』に働いている分があるでしょうか。」(3~4頁)

仕事、家庭、お金、老後・・・心配と不安だらけですね。

いつどうなるかわからない現代社会において、いまだに高度経済成長期がごとき長期安定収入をベースとしたものの考え方をしている方が多数いることに驚きます。

昭和の常識は令和の非常識なのに、いつまで親世代と同じことをやっているのでしょうか。

来年どうなるかすらわからないのに、35年間もの長期返済計画を立てるという・・・。

教育と同調圧力の呪縛でしょうか。

私には正気の沙汰とは思えません。

モノを持つということのリスクの根本は、手放したいときにそう簡単に手放せないということと維持費が予想以上にかかるということに尽きます。

変化の激しい時代にモノを持つことはメリットよりもデメリットのほうがはるかに大きいと私は思っています。