解雇363 就業状況不良等を理由とする解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、就業状況不良等を理由とする解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

産業と経済・やまびこ投資顧問事件(東京地裁令和3年9月24日・労判ジャーナル120号54頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結していたXが、Y社に対し、Y社による普通解雇が無効であるとして、Y社に対する雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び同契約に基づく未払賃金等支払、同契約に基づき、同解雇前の令和元年12月支払分の給与のうち欠勤に伴い支払われなかった13万円の支払、並びにY社がXに金融商品取引法に違反する取引を共用したことや同解雇が不行為に当たるとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料700万円の賠償を求めるとともに、A社に対し、A社がY社を実質的に支配していたなどとして、Y社に対するのと同内容の各請求をした事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、違法取引を強要されたとは認められないにもかかわらずこれを強要されたと言って監督官庁への告発を示唆して和解の名目で金銭的要求を行った上、その後、14日間欠勤し、その多くが無断欠勤であったばかりか、その間にA社およびY社を非難する旨のSMSを送り続け、Y社に対する反抗的な態度を明らかにし、このようなXの言動については、就業規則所定の解雇理由である従業員の就業状況が著しく不良で、就業に適しないと認められたときに当たり、Xを解雇することについての客観的に合理的な理由があるというべきであり、そして、以上のような労働者の言動については、Y社も不適切な取引関係の形成に関与したことがうかがわれることは否定し難いものの、Y社に対し金銭的要求を行うなどしていることからすれば、その是正を求めるための正当な言動とは解し難い上、正当な理由なく就労を拒否し、反抗的な態度を明らかにしたものであって、Y社との信頼関係を著しく損ねたものというべきであり、また、Y社は、Xに対し、適切に弁明の機会を付与し、Xもこれに応じて弁明をするなどしており、本件解雇については手続的にも相当性を欠くというべき点は見受けられないから、本件解雇は、社会通念上相当であると認められるから、本件解雇は有効である。

内部告発をする場合には、告発を正当化するだけのエビデンスを用意しておかないと、立場が逆転しかねませんので注意が必要です。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

本の紹介1273 最大化の超習慣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

日頃、堀江さんのYouTubeを見ている人にとっては、特に目新しいことは書かれていません。

昔ながらのライフスタイルが染みついてしまっている方は、何かのヒントになるかもしれません。

まあ、一度染みついてしまったライフスタイルは、そう簡単には消せませんが。

Old habits die hard.

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

この作業は必要か?この行為に意味があるのか?あなたのなかでふと湧き上がるその疑問はおおかた正しい。世のなかはあまりに形骸的な儀式に満ちている。」(113頁)

「なんとなく決まり事だから、何の意味があるのかよくわからないけど、とりあえずやっている。」

そんな「儀式」が多すぎます。

どれほどの時間を「儀式」に費やしているのでしょうか。

意味のない時間泥棒の儀式を1つ1つ排除することで、結果として、本当に必要なことに使える時間が増えるのです。

毎日毎日、時間がないと嘆いているみなさん、その仕事、作業、過程、本当に必要ですか?

そんなことに時間を使っていたら、あっという間に人生が終わってしまいます。

Life is shorter than you think.

不当労働行為287 会社とアドバイザリー業務契約を締結した社労士及び共済組合の行為が不当労働行為とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社とアドバイザリー業務契約を締結した社労士及び共済組合の行為が不当労働行為とされた事案を見ていきましょう。

オーダースーツSADAほか1社事件(宮城県労委令和2年9月26日・労判1258号88頁)

【事案の概要】

本件は、会社とアドバイザリー業務契約を締結した社労士及び共済組合の行為等が不当労働行為にあたるかが争点となった事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 B氏による脱退届用紙の配布は、Y社の指揮命令権の及ぶ昼礼の機会に、Y社がB氏と一体となって行っているものと評価でき、「使用者」による行為であると言わざるを得ない。
「使用者」が労働組合の脱退届用紙を配付して脱退を勧奨する行為は、脱退という組合員が自主的に判断して行動すべき事項(内部運営事項)に介入するものであり、X組合の団結力・組織力を損ねるおそれのある行為であるから、支配介入に該当する。

2 Y社がチェック・オフ停止の根拠としている脱退届は、Y社とB氏が一体となって脱退届用紙を配付して脱退を勧奨するという支配介入行為によって、A執行委員長を除く全組合員が署名したものである。この不当な支配介入行為によって署名された脱退届においては、組合員は自らの自由な意思でX組合を脱退したのか疑わしい状況であったことが認められる。
本件においては、Y社の不当な支配介入行為によって脱退届が提出されていたという特殊な状況であったことを踏まえると、Y社がチェック・オフの停止を行ったことは、X組合の弱体化を意図した一連の行為の一部であると評価でき、X組合の組織運営に支配介入しようとしたものと言わざるを得ない。

会社とアドバイザリー業務契約を締結した社労士の行為であったとしても、「使用者」による行為と評価されてしまうので注意しましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介1272 人生を変える習慣のつくり方#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

もうタイトルそのまんまの内容です。

いかなる習慣を身に付けるかで人生は決まります。

断言していいでしょう。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

あなたを成長させてくれそうな人と一緒にいなさい セネカ『道徳書簡集』」(347頁)

習慣は伝染します。

誰の影響を受けたかによって、その後の人生が大きく変わります。

すなわち、誰と多くの時間を共有したかが極めて重要なのです。

親、学校や塾の先生、上司、友人、交際相手・・・・

だからこそ環境が与える影響は計り知れないのです。

子どもで言えば、親は選べませんが、せめて学校と友達は選んだほうがいいでしょう。

大人で言えば、会社と交際相手(結婚相手)は選んだほうがいいでしょう。

習慣とはすなわち、何を「当たり前」とするか、です。

日々の「当たり前」の積み重ねこそが、人生を形成しているのです。

解雇362 即戦力社員の試用期間満了後の本採用拒否の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、即戦力社員の試用期間満了後の本採用拒否の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

日本オラクル事件(東京地裁令和3年11月12日・労判ジャーナル120号2頁)

【事案の概要】

本件は、コンピュータ・ソフトウェアの研究、開発等コンピュータ・ソフトウェア関連の事業を行う会社であるY社と通信業界の専門家である「テレコム・イノベーション・アドバイザー」として雇用契約(年収1560万円、試用期間3か月)を締結して入社したが、試用期間満了時に解雇された元従業員Xが、Y社に対し、解雇は合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合に当たると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認などを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 テレコム・イノベーターの職責は、専門知識に基づき、通信業界の顧客の役員・部長級の社員と、技術革新について議論し、Y社が提供するソリューションの営業につなげていくことであり、そのためには、相手の意見・考え方を理解した上で、通信業界における深い知識に基づいて、海外における業界の最新動向に関する情報を提供し、議論を進めることが必要であり、そのために必要なコミュニケーション能力は、相当に高度なものであることが推認される

2 客観的にその存在が裏付けられているXのコミュニケーションにおける問題は、Xが、以上のテレコム・イノベータ―に必要とされるコミュニケーション能力を有していないことを端的に明らかにするものであるといわざるを得ない。

3 本件雇用契約により留保された前記解約権は、試用期間中の執務状況等についての観察等に基づく採否の最終決定権を留保する趣旨のものであると解されるから、その解約権の行使の効力を考えるに当たっては、当該観察等によってY社が知悉した事実に照らして検討する必要があり、本件雇用契約締結までにY社が知っていた事実については考慮することができない
・・・以上のようなXの問題は、応募者と採用面接担当者という役割が明確にあり、その職歴からすれば、Xも対応に慣れていたことが推認される採用面接において、Y社が知ることは不可能であったと認められる。

即戦力を期待され、高額の給与で中途採用された従業員の場合、解雇のハードルは下がります。

また、試用期間における解約権の行使に関する考えたについて、上記判例のポイント3を確認しておきましょう。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

本の紹介1271 不条理な会社人生から自由になる方法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

本の内容はとってもおもしろいですが、特にタイトルの方法が書かれているわけではありません。

日本の会社での働き方がいかに国際競争力を喪失させているかがわかりやすく書かれています。

なお、会社人生が不条理だと感じるのであれば、退職するのが一番手っ取り早い方法であるのは言うまでもありません。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

あらゆる仕事で高い専門性が要求されるようになるなかで、『ゼネラリスト』としての経験しかないサラリーマンが、必要な知識やスキルを獲得できないまま年功序列で役職を与えられています。そうなると、『この仕事をやりとげるだけの能力が自分にはない』と思いつつも、誰にも不安を打ち明けることができず、上司や同僚、部下、クライアントの視線に戦々恐々としながら日々をやり過ごすようなことになりかねません。」(271頁)

数年に1度、部署異動が行われ、その分野のことがだんだんわかってきた頃に、また新たな部署に配属されるというゼネラリスト養成コースの場合、ある特定の分野の専門性を高めることは至難の業です。

逆に言えば、大量のゼネラリストが養成される中で、ある特定の分野において際立った専門性が発揮できる人材は、引く手あまたになるでしょう。

需要と供給の関係から言えば当然のことです。

「あなたは何ができる人ですか?」

という問いに、あなたは答えを持ち合わせていますか?

賃金224 基本給減額の合意が無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、基本給減額の合意が無効とされた事案を見ていきましょう。

グローバルサイエンス事件(大阪地裁令和3年9月9日・労判ジャーナル118号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない雇用契約を締結していた元従業員Xが、Y社に対し、未払賃金等の支払を求め、XがY社から解雇されたことについて、本件解雇が違法無効である旨主張し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づく未払賃金等の支払を求め、民法702条1項所定の事務管理に基づく費用償還請求として、Y社の事務に係る立替金約7万円の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

未払賃金等請求一部認容

立替金等支払請求認容

【判例のポイント】

1 賃金減額合意について、Y社は、令和2年1月23日にXに対して退職勧奨をしたところ、Xはこれを拒否し、「給与は18万円でよいので、どうか働かせてください、営業成績は必ず改善します」と懇願し、Y社はこれを了承したと主張するが、そうすると、Xの賃金減額の申出は、29万円から18万円という大幅な減額であってXに対して大きな不利益を与えるものであるところ、Y社による退職勧奨の影響を受けてされた申出であるから、その不利益の大きさ及び減額に至る経緯に照らしてXの自由な意思に基づいてされたものとはいえないから、Xの基本給を29万円から18万円に減額する旨の合意があったとは認められない。

仮にXから懇願されたという事情があったとしても、判例のポイント記載のような事情があると、裁判所としては、自由な意思に基づいた合意とは認めてくれません。

会社としては対応方法が悩ましいところです。

賃金の減額をする場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介1270 やりたい事をすべてやる方法#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

こちらもまた須藤元気さんの本です。

著者自身、さまざまな仕事をしており、まさにやりたい事をすべてやっている感じがします。

著者が重要だと思っているツボが短い言葉で端的に書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

替えがきく仕事というのは、それだけでずっと食べていくことができなくなってしまうことを意味する。」(28頁)

わかりきっていることですが、このことを意識して日頃、仕事をしている人がどれほどいるでしょうか。

誰がやっても結果がそれほど変わらないことに、顧客や会社は多額の報酬・給与を支払いません。

「誰がやっても変わらない」と思われている仕事は、「安い方がいい」という価格競争に巻き込まれる運命にあります。

しかし、本当は、誰がやっても変わらない仕事なんてものは存在しません。

いかに「違い」を作り出し、顧客にアピールするか。

その努力と工夫がなければ、安く買い叩かれることになります。

「替えがきかない仕事」は、探すのではなく、自ら作り出すのです。

解雇361 就労意思喪失と解雇無効地位確認請求の帰趨(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、就労意思喪失と解雇無効地位確認請求の帰趨に関する裁判例を見ていきましょう。

エヌアイケイ事件(大阪地裁令和3年9月29日・労判ジャーナル120号48頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、Y社がした普通解雇が無効である旨主張し、労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、未払賃金等の支払を求め、また、Xが、Y社の代表取締役であるB及び取締役であるCに対し、同人らが不法行為に基づく損害賠償責任を負い、あるいは、取締役として会社法429条に基づく損害賠償責任を負うものであり、それら各損害賠償責任に係る支払義務がY社の賃金支払義務と不真正連帯関係にある旨主張し、不法行為又は会社法429条に基づく、上記未払賃金と同額の損害金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

地位確認請求棄却

未払賃金請求一部認容

【判例のポイント】

1 本件解雇後におけるXの就労の意思について、Xは、本件解雇の直後である令和元年7月9日、本件解雇が無効であることを前提とし、Y社に対して労働契約上の権利を有する地位確認を求める旨の本件訴えを提起しているから、Xが、本件解雇時において、既に就労の意思を喪失していたと認めるには足りないが、Xが独自にコンピューターシステムの技術者の紹介等を行うようになり、その結果、翌々日支払の約定の下、実際にY社での就労時を大きく上回る収入を得るようになった最初の月である令和元年12月をもって、XはY社での就労の意思を喪失したと認めることが相当である。

解雇事案において、解雇後一定期間経過後に他社へ転職した従業員について、就労意思の喪失が問題となります。

過去の裁判例を見る限り、この点の裁判所の判断は担当裁判官によって認定結果が異なります。

今回の事案のように、Y社の就労時を大きく上回る収入を得るようになったという事情がある場合には、比較的就労の意思の喪失が認定される傾向にあります。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

本の紹介1269 レボリューション#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

ここのところ、須藤元気さんの本が続いておりますが、読みだすと止まらない本です。

思考方法がとても好きです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

最終的に人が必要とするのは、知恵ではなく覚悟かもしれない。」(179頁)

まあ、そうかもしれませんね。

何かを達成しようとする場合、途中で投げ出さない、最後までやり切るという「覚悟」がなければ、結局、何をやっても中途半端に終わってしまいます。

どれだけ知識、技術があっても、最後の最後は覚悟の有無で勝敗が決するのでしょうね。