本の紹介1293 解決する力#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

タイトルにある「解決する力」というのは、生きていく上で本当に大切です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

よく『準備が足りません』と言い訳する人がいますが、準備が足りないのはあたりまえ。準備があり余っている人などいません。準備不足のギリギリの状態のなかで、どうやって事態を切り抜けるかを考えることが大事だと思います。」(209頁)

すべてのことを完璧に準備するなんて、そもそも時間がいくらあっても足りません。

マルチタスクが当たり前の時代に、そんな悠長なことをやっていたら、準備しているうちに状況が変わってしまいます。

のんびり屋さんには大変な時代かもしれませんが、複数の結果を同時に出している人たちの共通点は「動きながら準備する」です。

準備はほどほどに、とにかく動き出すことが大切なのです。

動きながら修正を繰り返す。

これが何事にもスピードが求められる時代のやり方です。

解雇369 事業縮小に伴う解雇が手続きに妥当性を欠くため無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、事業縮小に伴う解雇が手続きに妥当性を欠くため無効とされた事案を見ていきましょう。

アンドモア事件(東京地裁令和3年12月21日・労経速2476号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結していたXが、令和2年7月20日付けでされた解雇は解雇権を濫用したものとして無効であるとして、Y社に対し、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、令和2年5月分から同年8月分までの未払賃金合計101万8162円+遅延損害金の支払等を求め、さらに、本件解雇は違法であり不法行為に当たると主張して、不法行為に基づき慰謝料100万円及び弁護士費用相当額10万円の合計110万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 本件解雇当時、Y社には相当高度の人員削減の必要性があったと認められ、当時の状況に照らすと、解雇回避のために現実的にとることが期待される措置は限定されていたことがうかがえ、被解雇者の選定も不合理であったとは認められない。
しかしながら、Y社は、休業を命じていたXに対し、一方的に本件解雇予告通知書を送り付けただけであって、整理解雇の必要性やその時期・規模・方法等について全く説明をしておらず、その努力をした形跡もうかがわれない
上記のとおり相当高度な人員削減の必要性があり、かつ、そのような経営危機とも称すべき事態が、主として新型コロナウイルス感染症の流行という労働者側だけでなく使用者側にとっても帰責性のない出来事に起因していることを考慮しても、本件解雇に当たって、本件解雇予告通知書を送付する直前にその予告の電話を入れただけで、それ以外に何らの説明も協議もしなかったのは、手続として著しく妥当性を欠いていたといわざるを得ず、信義に従い誠実に解雇権を行使したとはいえない
したがって、本件解雇は、社会通念上相当であるとは認められず、解雇権を濫用したものとして、無効である。

整理解雇の必要性等を説明したところで、状況的に大きく変わるわけではないとしても、プロセスを軽視すると、このような結論になってしまいます。

整理解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

本の紹介1292 若者よ、天下を取れ。#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

タイトルがすでにいいですね。

このご時世、天下を取るなんて豪語している若者、ほとんど見かけないですけどね(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

いくつもりだった。見るつもりだった。聞くつもりだった。会うつもりだった。『つもり人間』で大成した人間はいない。」(104頁)

そりゃそうだ、という話です。

どれだけ「つもり」が積もり積もっても、結果、行動しなければ状況は一つも変わりません。

やるつもり。

やってもすぐにやめてしまう。

それでは、結果が出るわけがない。

仕事も勉強も運動も、例外なく、やり続けることでしか結果は出ません。

不当労働行為289 団交拒否にかかる審査申立てと「一連の継続する行為」の意義(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、団交拒否にかかる審査申立てと「一連の継続する行為」の意義に関する事案を見ていきましょう。

一般社団法人日本港運協会事件(東京都労委令和3年7月20日・労判1260号93頁)

【事案の概要】

本件は、団交拒否にかかる審査申立てに関連して「一連の継続する行為」の意義が争点となった事案を見ていきましょう。

【労働委員会の判断】

本件申立ての1年以上前の団交にかかる申立ては却下

【命令のポイント】

1 組合は、平成30年2月7日付団体交渉申入れに対し、法人が同月19日に会員に文書を交付したことは本件申立てよりも1年以上前であるが、申立て前1年以内の団体交渉と一連の継続する行為に当たることから、本件審査の対象となると主張する。
しかし、団体交渉の申入れや団体交渉は、その都度別個の行為であり、同様の行為が続いているからといって、全体を1つの継続する行為とみることはできない
したがって、組合の主張は採用することができず、本件申立てより1年以降前の平成31年2月9日以前の団体交渉に係る申立ては、却下せざるを得ない。

不当労働行為の救済申立ては、不当労働行為と思われる行為がなされてから1年以内に行う必要があります。

同様の行為が繰り返し行われている場合は、「一連の行為」が最後に行われた時点を基準にして、1年以内かどうかを判断します。

「一連の行為」の判断は、解釈に委ねられますので、予測可能性が高くありませんので注意が必要です。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介1291 負けない力#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「あなたはいつも勝とうとして間違えてばかりいる」と書かれています。

ホームランを打とうと空振りを連発するのではなく、小さなヒットを繰り返すことがとても大切です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『たった一つの価値観に従わないと負けで、”みんな”という共同幻想から落っこちて孤独になってしまう』という恐怖感が『みんな』というものを作り、それを強固なものにして行くのです。」(238頁)

マスク着用が良い例です。

理にかなっているか否かはひとまず措いて、みんなと同じであることを善とする方がいかに多いことか。

多くの場合、この国では、正しいかどうかはほとんど関係がありません。

いかに空気を読み、和を乱さないかが美徳とされています。

学校教育がちゃんと浸透している証左です(皮肉)。

いつまでたっても論理的思考が育たないわけです。

守秘義務・内部告発11 代表者らの背任行為の通報等を理由とする懲戒解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、代表者らの背任行為の通報等を理由とする懲戒解雇の有効性について見ていきましょう。

神社本庁事件(東京地裁令和3年3月18日・労判1260号50頁)

【事案の概要】

本件は、雇用主であるY社から平成29年8月25日付けで懲戒解雇されたXが、懲戒解雇が無効であると主張して、①Y社に対する雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、②Y社に対し、雇用契約に基づく賃金として、平成29年9月から本判決確定の日まで毎月21日限り63万5789円+遅延損害金の支払等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇無効

【判例のポイント】

1 解雇理由1にかかる行為は、庁内の秩序を保持する義務に反したものとして就業規則67条1号および3号、就業規則67条2号「社会的規範にもとる行為のあったとき」、5号の「本庁の信用を傷つけ」る行為のあったときに、それぞれ外形的に該当する行為であるといえ、Xは、Y社の神職であるから、神職懲戒規程の適用があると解されるところ、神職懲戒規程細則3条2号ハおよびニにも該当するから、この点でも就業規則67条1号の懲戒事由に外形的に該当する。

2 解雇理由1にかかる行為は、労働者が、その労務提供先である使用者の代表者、使用者の幹部職員および使用者の関係団体の代表者の共謀による背任行為という刑法に該当する犯罪行為の事実、つまり公益通報者保護法2条3項1号別表1号に該当する通報対象事実を、Y社の理事および関係者らに対し伝達する行為であるから、その懲戒事由該当性および違法性の存否、程度を判断するに際しては、公益通報者保護法による公益通報者の保護規定の適用およびその趣旨を考慮する必要がある

3 公益通報者保護法の規定の内容、および公益通報者を保護して公益通報の機会を保障することが国民生活の安定および社会経済の健全な発展に資するとの当該規定の趣旨に鑑みると、労働者が、労務提供先である使用者の役員、従業員等による法令違反行為の通報を行った場合、通報内容の真実性を証明して初めて懲戒から免責されるとすることは相当とはいえず、①通報内容が真実であるか、または真実と信じるに足りる相当な理由があり、②通報目的が、不正な利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく、③通報の手段方法が相当である場合には、当該行為がY社の信用を毀損し、組織の秩序を乱すものであったとしても、懲戒事由に該当せず、または該当しても違法性が阻却されることとなり、また、①~③のすべてを満たさず懲戒事由に該当する場合であっても、①~③の成否を検討する際に考慮した事情に照らして、選択された懲戒処分が重すぎるというときは、労働契約法15条にいう客観的合理的な理由がなく、社会通念上相当性を欠くため、懲戒処分は無効となると解すべきである。

4 丙総長及びI会長が、本件売買について背任行為を行った事実、およびL課長がこれに加担した事実については、①真実であるとは認められないものの、本件文書を理事2名に交付した当時、Xが、これを真実と信じるに足りる相当の理由があったといえ、②不正の目的であったとはいえず、③手段は相当であったから、公益通報者を保護し、公益通報の機会を保障することが、国民生活の安定などに資するとの公益通報者保護法の趣旨などに照らし、本件文書の交付をもってこれらの事実を摘示した行為は、違法性が阻却されて懲戒すべき事由といえないというべきである。

公益通報・内部通報関連の懲戒事案の対応は、上記判例のポイント3を参考にして慎重に対応することが求められます。

感情的になって、詳細な調査等をせずに懲戒解雇することは避けなければいけません。

解雇を行う場合には、必ず顧問弁護士に相談をしつつ、慎重に対応していきましょう。 

本の紹介1290 自分を動かす名言#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

タイトル通り、さまざまな名言が紹介されています。

たった1つでも自分を動かす名言に出会えれば、それだけで十分です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間は自由であり、つねに自分自身の選択によって行動すべきものである。」(144頁)

私が人生で最も大切にしていることです。

私にとって、「自由」こそがすべての価値の最上位にあります。

いかなることについても「選択の自由」があることが幸せの定義です。

だからこそ、不合理な強制や無意味な制限は、死ぬほど嫌なのです。

自らの自由意思に基づいて、あえて不自由な生活を選択してしまう方、多くないですか?

どんどんどんどん身動きが取りにくい方へ行ってしまう。

まあ、それも自由ですが。

競業避止義務31 派遣会社における同業他社への引抜き行為の違法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、派遣会社における同業他社への引抜き行為の違法性について見ていきましょう。

スタッフメイト南九州元従業員ほか事件(宮崎地裁都城支部令和3年4月16日・労判1260号34頁)

【事案の概要】

本訴:X社は、X社の従業員であったYが、Yの設立したZ社と共謀の上、X社に在職中、X社の他の従業員をZ社に引き抜いたと主張し、Yに対しては不法行為又は債務不履行に基づき、Z社に対しては不法行為に基づき、損害賠償金2513万0595円+遅延損害金の支払を求めた。

反訴:Yらは、X社が、Yの名誉及びZ社の信用を毀損する行動を行っていたと主張し、X社に対し、不法行為に基づき、損害賠償金+遅延損害金の支払を求めた。

【裁判所の判断】

1 Y及びZ社は、X社に対し、連帯して315万5587円+遅延損害金を支払え。

2 X社は、Yに対し、77万円+遅延損害金を支払え。

3 X社は、Z社に対し、110万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 前提として、登録状態スタッフは、そもそもX社の従業員ではないこと、派遣スタッフは、より良い待遇やより多くの就業先の可能性を求め、複数の派遣元企業に登録するのが通常であることから、債務不履行又は不法行為が問題となる引き抜き行為の対象にはならない

2ー1 本件で問題となっている引き抜き行為は、いずれも派遣先企業を変えずに、派遣元企業だけを変えたというものである。
このような場合、X社は、まずは、当該派遣スタッフの派遣料相当額の売上げを失うことになる。これに加え、当該派遣先企業のスタッフ受け入れ可能人数には上限があると考えられることから、X社が、当該派遣先企業へ代わりの派遣スタッフを派遣することが不可能になる可能性が高くなる。
そのため、X社から移籍してきた派遣スタッフをX社在籍時と同じ派遣先企業へ派遣する行為は、X社に対する影響が大きい。
2-2 Z社は、YがX社に在職中の平成30年8月1日から4名の雇用スタッフをQ3に派遣し、収益を上げている。被用者は、会社に在職中は雇用契約上、職務専念義務を当該会社に対して負っているので、当該会社が副業を認める等の特段の事情がない限り、実際に収益を上げることは許されない。
そうすると、Yが、X社在職中に、Z社を設立し、実際に収益を上げていた事情は、行為の悪質性を基礎づける
2-3 Yは、勧誘の際、派遣スタッフに対し、X社とは話がついているかのような話をし、他方で、X社には内密にするよう依頼し、派遣先企業に対しても、派遣スタッフの移籍は、X社も了承済みであるかのような言動を行っている。
勧誘を受けた派遣スタッフにとっては、自身に対する待遇が最も大きな関心事であることは否定できないが、派遣先企業を変えることなく派遣元企業が変わることについては、従前雇用契約を締結していた原告との関係を気にして、原告による了承があるかは相当程度関心を持つのが通常であると考えられる。現に、P6も、X社と被告らとの間で、派遣スタッフの移籍について話がついていたと聞いたことが、移籍の決断をする理由となった旨供述している。
また、派遣先企業にとっても、派遣スタッフを従前派遣してくれていたX社との信頼関係の問題から、X社による了承があるかは大きな関心事であると考えられる。
そうすると、派遣スタッフ及び派遣先企業に対するYの言動には、問題があるといわざるをえない
2-4 Q2営業所の雇用スタッフ及び粗利は、平成30年6月は163人、648万0065円であったのに対し、同年9月は133人、331万4543円であり、被告らによる引き抜き行為の前後でそれぞれ減少していることに照らすと、被告らによる引き抜き行為がX社に与えた影響は軽視することができない

3ー1 被告らがX社に対する負の印象を喧伝し派遣スタッフを移籍させたものではないこと、Yがスタッフナビゲーターの情報を持ち出して引き抜き行為を行っていたわけではないこと、X社よりも良い待遇をうたって派遣スタッフを勧誘すること自体は問題がないこと、平成30年6月から8月は、Q2営業所の粗利率は、Q2営業所の従業員の中ではP7が担当する企業が一番高く、Yが粗利率の高いところを狙って引き抜き行為を行ったとは認められないことなどといった事情を考慮しても、本件の引き抜き行為は社会的相当性を逸脱しているといわざるを得ない。
よって、Yは、引き抜き行為について債務不履行又は不法行為責任を負う。
3-2 また、Z社は、Yにより設立され、Yが代表取締役を務めることから、Z社の行為とYの行為は一体といえ、Z社は、引き抜き行為によって、経済的利益を得ている立場にある。
よって、Z社は、Yと共謀の上、社会的相当性を逸脱した引き抜き行為を行っていたものと認められ、不法行為責任を負う。

4ー1 これらの文書中の「重大な非違行為」、「当社の事業に対して、重大な悪影響を及ぼしております」、「当社の従業員及び当社の取引先に対して、真実と異なる内容の説明を行う等をしていた」、「Y氏に対し懲戒解雇を申し渡しております」、「Y氏及びZ社は、当社が長年月をかけて構築した、このような有形・無形の資源を理由なくして侵奪しております」、「Y氏は、・・・当社の基幹システムである「スタッフナビゲーター」に保管されている顧客情報および個人情報を無断で持ち出し勝手に利用していた」等の記載は、既知の事実ということはできず、その事実の有無に関係なく、経済活動を営んでいく被告らの社会的評価を低下させるものであることは否定することができない
4-2 上記文書に記載された内容は、X社と対立関係にある小規模な一企業にすぎないZ社及びその代表者であるYに関する事実及びその評価にすぎず、公共の利害に関する事実ということはできない。
4-3 また、その記載内容も被告らを誹謗中傷するものであり、およそ公共の利害に関するものということはできない。
4-4 また、配布された文書に記載された情報が公共の利害に関するものということはできない。その上、「Y氏からZ社へ派遣契約を切り替えるよう勧誘されたとしても、一切取り合わないようお願い申し上げます」などといった記載からは、公益を図るためというよりは、X社の経済的利益を守るために、X社は文書の配布を行ったと認められる。
4-5 さらに、配布した文書の真実性については、Yを懲戒解雇した事実や、Yがスタッフナビゲーターに保管されている顧客情報及び個人情報を無断で持ち出して勝手に利用していた事実は、真実ではなく、これを真実と信じたことに関する正当な根拠もない。
よって、公共の利害に関する事実、公益を図る目的、内容の真実性に関しては、X社の主張を認めることはできず、これらを理由とする違法性阻却事由は認められない。
4-6 また、X社は、被告らの引き抜きを受けて、自身の経済的損失を最小限に食い止めるために、派遣スタッフや派遣先企業に文書を配布せざるを得なかった旨主張する。
しかし、X社が派遣スタッフや派遣先企業に配布した文書は、被告らを誹謗中傷する内容を含んでいるものであり、それが複数回にわたり配布されていることなどに照らすと、相当性があるとは認められない。
4-7 以上より、X社の主張する違法性阻却事由は認められず、X社は、被告らの被った損害につき、不法行為に基づく損害賠償責任を負う

本件は、派遣会社に関する紛争ですが、決して派遣業界特有の問題ではありません。

特に注意が必要なのは、上記判例のポイント4-1~7です。

引抜き行為発覚後、被害会社としての対応を誤ると、名誉毀損、業務妨害等を理由に損害賠償請求の反訴を起こされてしまいます。

感情的にならず、慎重に対応することが求められます。

引抜き行為の問題については顧問弁護士に相談をし、慎重に対応を検討してください。

本の紹介1289 まず、のび太を探そう!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

どのように価値を創造していくかについてドラえもんとのび太くんを例えに説明しています。

ビジネスの大原則がわかりやすい例を用いて説明されているので、ビジネス初心者にはいい本だと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『のび太』と『ドラえもん』の関係を思い出してみてください。のび太はドラえもんに”モノ”を要求しているでしょうか?もちろん『スモールライト出してよ~』なんていう場面もありますが、それはドラえもんが一度でも、ひみつ道具を出した後のことですよね。じつは、のび太は、モノがほしいとは言ってません。」(97頁)

さて、自身のビジネスに応用できるでしょうか。

新しい商品やサービスを売ろうとする場合、顧客は「スモールライト」の存在を知りません。

言うまでもなく、その効果について知る由もありません。

「こんなのあったらいいよね」という商品・サービスは、こちらから提案しなければ決して生まれません。

顧客のニーズからイノベーションが生まれることはないということです。

顧客は「iPhoneつくってよ~」とは言ってくれないのです。

解雇368 合意解約申込みの撤回が認められなかった事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、合意解約申込みの撤回が認められなかった事案を見ていきましょう。

日東電工事件(広島地裁福山支部令和3年12月23日・労経速2474号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で有期労働契約を締結していたXが、Xについて辞職又は合意解約を理由とする上記労働契約の終了の効果が生じておらず、かつ、上記労働契約が労働契約法19条によって更新されたと主張し、Y社に対し、(1)Xが労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、(2)賃金請求、(3)賞与請求をした事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件各退職願の内容をみると、その提出行為が辞職の意思表示であるか合意解約の申込みの意思表示であるかはともかく、少なくとも、XとY社との間の労働契約を終了させる意思を表示したものであることは明らかであるから、本件各退職願の提出は、退職の意思表示であると認めるのが相当である。

2 辞職は、労働者の一方的意思表示による労働契約の解約であって、使用者に到達した時点で解約告知としての効力を生じ、これを撤回することはできない。辞職の意思表示がこのような法的効果を有するものであることを考慮すると、退職の意思表示が辞職の意思表示であるといえるためには、明確に辞職の意思表示であると解し得る状況であったことを要するというべきである。
確かに、Xは、本件各退職願の提出の数分後に、Pに対し、「辞めることになりました」などという内容のメールを送信しており、このようなXの行動を考慮すると、本件各退職願の提出行為をもって辞職の意思表示であると解する余地は十分にある。しかし、本件各退職願の記載内容からすれば、その提出行為をもって撤回の余地のない辞職の意思表示であると解することが相当であるといえるかは疑問を差し挟む余地があるし、Xに適用されるY社の就業規則の規定内容も考慮すると、辞職の意思表示であると明確に解し得る状況であったとみるには疑問がある
本件各退職願の提出行為は、合意解約の申込みの意思表示であると認めるのが相当である。

3 本件話合いにおける「撤回」との文言に関連するXの言動は、自己都合による退職となるか会社都合による退職となるかを関心事としていたXが、会社都合による退職となるよう交渉する手段として行ったものにすぎないとみることもあり得るところである。加えて、Xが、本件話合いにおいて、本件各退職願の返還を求めるなどしておらず、合意解約の申込みの意思表示を撤回したことと整合しない行動をとっていたことも考慮すると、本件話合いにおいて、合意解約の申込みの意思表示をXが撤回したと認めるには足りない

本件の「退職願」には、「今般、 年 月 日付で退職いたしたくご許可下さるようお願い申し上げます。」と記載されており、Y社の承諾が求められているような記載になっていました。

労働者には退職の自由が認められていますので、退職にあたり使用者の許可は必要ありませんが、仮に本件同様の退職願が提出された場合には、会社としては速やかに許可・承諾をすることによって、退職の意思表示の撤回を回避することができます。

退職合意をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。