本の紹介1298 「応援したくなる企業」の時代#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から10年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

帯には「『売らない企業』が生き残る。」と書かれています。

今読んでも、特に違和感のない内容です。

コアな部分に関しては、10年前とあまり状況は変わっていないように思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

最大の違いは、多様性にある。高度成長期は、極端にいえば、みなが同じ方向を向く『十人一色』の時代だった。それが時代が進むにつれて、個々人の多様性を重視する『十人十色』となり、これからは『一人十色』といってもいいほどに、それぞれの個人のなかに多様な個人が同居している時代になるのだ。」(221頁)

日本は、個性とか多様性が尊重されない国ですが、そんな中でも、自分で自由に生きることを選択すれば、これほど楽しい時代はないと思います。

1つだけの仕事に固執する必要はなく、同時にいくつもの仕事をやっている方も決して珍しくありません(就業規則で副業が禁止されている方は別ですが)。

やりたいことをやりたいようにやる。

それが許される時代なのですから、思い切り好きなことをすればいいのです。

我慢して我慢して、気づいたら年老いていたなんて人生、まっぴらです。

人生は、すべて自分の準備と選択の結晶です。

不当労働行為291 組合が労組法の規定に適合せず、労組法上の救済を受ける資格を有しないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、組合が労組法の規定に適合せず、労組法上の救済を受ける資格を有しないとされた事案を見ていきましょう。

グランティア事件(東京都労委令和2年6月16日・労判1262号97頁)

【事案の概要】

本件は、組合が労組法の規定に適合するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

労組法の規定に適合しない。
→申立て却下

【命令のポイント】

1 組合においては、役員以外の一般の組合員に組合の「すべての問題に参与する権利」があるとはいえず、役員は「組合員の直接無記名投票により選挙」されておらず会計報告は「組合員に公表」されていないから、労働組合法5条2項の要件を欠いている

2 加えて、組合の実態としても一般の個々の組合員が、組合を自主的に組織する主体であるということは困難であり、組合は、「労働者が主体となって自主的に・・・組織する」という労働組合法第2条の要件を欠いているといわざるを得ない。

3 したがって、組合が、労働組合法に規定する手続きに参与し、同法による救済を受ける資格を有するものであると認めることはできない

法適合組合とは認められないと判断された事案です。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介1297 40歳からの適応力#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から11年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

将棋棋士羽生善治さんの本です。

著者が日頃、どのようなことを考えているのかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

一時の評価というのは必ずしも当てにはならないとも思いました。自然に継続していきながら確実に身の丈を伸ばしていく。”急がば回れ”という言葉もありますが、このテーマについて考えると地道が一番と思えてなりません。」(59頁)

自然体で鍛錬を続けることがとても大切なのだと思います。

無理をしても長続きしませんし、嫌々やっても挫折します。

やはり一生懸命を楽しめる人が強いですね。

勤勉こそが結果を出し続ける秘訣なのだと思います。

休日に勉強をしている人と遊んでいる人で結果が同じわけがありません。

うさぎではなくかめのようにコツコツ地道に物事を進められる人が最後には勝つのです。

不当労働行為290 派遣元会社が、解雇の撤回等を議題とする団交申入れに応じなかったことが不当労働行為とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、派遣元会社が、解雇の撤回等を議題とする団交申入れに応じなかったことが不当労働行為とされた事案を見ていきましょう。

アウトソーシング事件(中労委令和3年9月15日・労判1262号95頁)

【事案の概要】

本件は、派遣元会社が、解雇の撤回等を議題とする団交申入れに応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 本件団体交渉申入れの交渉事項は、Aが会社に解雇されたものと理解した上で、①会社に対し解雇の撤回を求め、併せてこれに関する会社の見解の説明を求めるものとし、②会社に対し、Z社に働きかけてAの職場復帰を早期に実現させるように努めることを求め、併せてこれに関する会社の見解の説明を求めるものと解される。これらの交渉事項は、Aの待遇に関する事項で、かつ、会社が実行したり説明したりすることが可能なものであるから、義務的団交事項に当たる。
したがって、Aの雇用主である会社は、本件団体交渉申入れに対し、原則として速やかに団体交渉に応じて、労使双方が同席する場で、交渉事項に関する会社の立場ないし見解を組合に直接伝達して協議及び交渉を行う義務を負うものと解される。

2 会社は、Aを解雇しておらず、雇用契約が継続しているから、解雇の撤回という交渉事項は、会社が処分可能なものではなく、義務的団交事項に当たらないから、本件団体交渉申入れに応じなかったとしても、不当労働行為に当たらないと主張する。
しかし、解雇の撤回を求めるとの交渉事項は、義務的団交事項に当たる。しかるところ、会社は、Aとの雇用契約の途中解除に関する組合の認識が誤りであるというのであるから、本件団体交渉申入れに応じて、団体交渉の場で、組合に対し会社の見解を示して説明すべきであった。したがって、会社の上記主張は採用することができない。

解雇の撤回を求めるとの交渉事項が義務的団交事項に当たることは明らかです。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介1296 プロフェッショナルの働き方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から10年前に出版された本ですが、再度読み返してみました。

変化の激しい時代における働き方のコツがわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

発言がぶれるのはよくないこと。日本では一般的にそう思われているようです。しかし、現代のように環境が目まぐるしく変わる時代においては、変化に応じて柔軟に対応できることのほうが、むしろ重要だと私は思います。一貫性に価値を置きすぎるという日本人の傾向が重大な損失につながった例としては太平洋戦争が有名です。」(116頁)

これはよくありますね。

他人から「ぶれている」と評価されたくないばかりに、状況が変わっても、以前の判断を変えられないという人。

他人の評価が気になってしかたないのでしょうか。

状況によって意見を変えるのはむしろあるべき姿です。

他人の目、他人の評価ばっかり気にしているから、こういうしょうもないことが気になってしまうのです。

労働者性46 客室乗務員らの訓練契約の労働契約該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、客室乗務員らの訓練契約の労働契約該当性に関する裁判例を見てみましょう。

ケイ・エル・エム・ローヤルダツチエアーラインズ事件(東京地裁令和4年1月17日・労判1261号19頁)

【事案の概要】

本件は、オランダの航空会社であるY社との間で、契約期間を平成26年5月27日から平成29年5月26日までの3年間とする有期労働契約(以下「本件労働契約①」という。)及び契約期間を同年5月27日から令和元年5月26日までの2年間とする有期労働契約(以下「本件労働契約②」といい、本件労働契約①と併せて「本件各労働契約」という。)を締結し、客室乗務員として勤務していた各原告が、本件労働契約①の前にY社との間で締結した訓練契約が労働契約に該当し、Y社との間で締結した有期労働契約の通算契約期間が5年を超えるから、本件労働契約②の契約期間満了日までに被告に対して期間の定めのない労働契約の締結の申込みを行ったことにより、労働契約法18条1項に基づき、Y社との間で期間の定めのない労働契約が成立したものとみなされると主張して、Y社に対し、①期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、②本件労働契約②の期間満了日の翌日である令和元年5月27日から本判決確定の日まで毎月末日限り36万9611円の賃金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

地位確認認容

【判例のポイント】

1 本件訓練の内容は、EU委員会規則の要求する基準に準拠しつつも、Y社が作成した教材や被告独自のマニュアルに従い、Y社の航空機や設備等の仕様及びこれを踏まえて策定された保安業務や、就航する路線や客層に合わせたサービス業務等の内容に則ったものであり、他の航空会社と異なるY社に特有の内容を多分に含んだものである。
本件訓練は、訓練生が本件訓練に引き続いてY社において客室乗務員として就労することを前提として、そのために必要な知識や能力を習得するために実施されたものであって、Y社の運航する航空機に乗務する客室乗務員を養成するための研修であったと認められる。
また、Y社が各原告に対して本件訓練の訓練手当を支払うに当たって所得税の源泉徴収を行っていること、Y社が原告らに対して交付した推薦状や証明書において、原告らが客室乗務員としての稼働を開始した時期を本件訓練契約の始期と記載していること、⑧Y社が現在、日本人客室乗務員との間で、労働契約とは別個の訓練契約を締結することはせず、労働契約の締結後に本件訓練と同様の訓練を実施していること、いずれも、Y社において本件訓練を受講中の訓練生を労働者であると認識していたことを推認させるものである。
そうすると、本件訓練期間中、訓練生が正規の客室乗務員として乗務することがなかったとしても、本件訓練に従事すること自体が、Y社の運航する航空機に客室乗務員として乗務するに当たって必要不可欠な行為であって、客室乗務員としての業務の一環であると評価すべきであり、原告らは、Y社に対し、労務を提供していたと認めるのが相当である。

2 Y社の客室乗務員として乗務するためには本件スケジュールに従って本件訓練を受講し、これを修了するほかないのであるから、本件訓練期間中、原告らには訓練内容について諾否の自由はなく、原告らは、時間的場所的に拘束され、Y社の指揮監督下において本件訓練に従事していたこと、原告らに代わって他の者が本件訓練に従事することは想定されておらず、代替性もなかったことが認められる
したがって、本件訓練期間中の原告らは、使用者であるY社の指揮監督下において労務の提供をする者であったと認められる。

3 他方、Y社が、各原告に対し、本件訓練期間中、2週間ごとに1055ユーロもの日当を支払い、本件訓練終了後に訓練手当として18万8002円を支払い、これを所得税の源泉徴収の対象としていたこと、これらの合計には全ての法定の手当が含まれるとされていること、本件訓練が途中で終了した場合には、訓練生に支払われる訓練手当は、実際の訓練契約の長さに従って計算されるとされていることからすれば、上記の訓練手当及び日当の支払は、本件訓練に従事するという労務の提供に対する対償としてされたものであり、原告らは、労務に対する対償を支払われる者であったことが認められる。
以上によれば、本件訓練期間中の原告らは、労働契約法及び労働基準法上の労働者であることが認められるから、本件訓練契約は労働契約に該当するというべきである。

上記判例のポイント1、2の事情からすれば、労働者性、労働契約該当性が肯定されることは理解ができます。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介1295 名言力#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から10年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

タイトル通り、名言がいくつも紹介されています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

敵と戦う時間は短い。自分との戦いこそが明暗を分ける。 王貞治」(44頁)

真理です。

結果・成果を目にするのはほんの一瞬です。

でも、その背後には、人の目には見えない日々の努力の積み重ねが必ずあります。

人生は、いつだって、弱い弱い自分との戦いです。

怠惰で、飽き性で、言い訳を探すのが得意な自分との戦いに勝たなければ、何も手にすることはできません。

継続雇用制度34 無期転換直後に定年を迎えた労働者への継続雇用拒否が有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、無期転換直後に定年を迎えた労働者への継続雇用拒否が有効とされた事案を見ていきましょう。

一般財団法人NHKサービスセンター事件(横浜地裁川崎支部令和3年11月30日・労経速2477号18頁)

【事案の概要】

本件は、平成14年4月から、1年契約更新で、NHK視聴者コールセンターにおいて、視聴者対応を行うコミュニケーターとしてY社に採用され、17回にわたり契約更新を行い、平成31年には無期労働契約への転換権を行使し、これがY社において受理されたため、令和元年8月以降契約期間の定めのない労働者となったXが、60歳の定年を迎える同年末をもってY社を退職することとされ、Xの希望に反しY社に継続雇用されなかったことが、実質的には高年法に反し、労働契約法18条の趣旨に反する雇止めであるとして、Y社に対し、XがY社との間で労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、労働契約に基づく賃金(バックペイ)+遅延損害金の支払を求めるとともに、Y社がXに対し、要注意視聴者に対する刑事や民事上の法的措置をとることなどにより、要注意視聴者によるわいせつ発言や暴言等に触れさせないようにすべき安全配慮義務を怠り、これによってXが精神的苦痛を受けたとして、雇用契約に基づく付随義務としての安全配慮義務違反に基づき損害賠償(慰謝料)100万円及び弁護士費用10万円たす遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社に在籍する約150人のコミュニケーターには、公平・公正、自主・自律、不偏不党を旨とするNHKの方針に則り、個人的意見を述べないことなどが要請されており、また極力均一なサービスを視聴者に提供すべく、コミュニケーターは策定された視聴者対応のためのルールに従うことが強く求められている。
しかし、Xは視聴者との電話対応で度々トラブルになっており、それもY社の作成したルールを遵守せず、ひいてはそこから逸脱して、感情的にいわゆる売り言葉に買い言葉となって口論に発展した場面が少なくない。これらのXの視聴者対応は、中にはそれ1つを取り上げれば比較的些細なものとみうる余地があるとしても、それが度々繰り返された以上、Xの電話対応の問題や不適切さを示すものにほかならず、全体を総合してみればY社が策定したルール及び就業規則に反するといわざるを得ない
また、Xは、視聴者対応について平成19年以降再三にわたりY社からルール違反等を指摘され注意・指導を受けながらも、自己の対応が正当であるとの思いから、指導を受け入れて改善する意欲に乏しく、指導を受け入れずに勤務を続けていたことが認められる。

2 「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」が定める、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由に該当し、継続雇用しないことについて、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるというほかはない。
そして、問題となるXの電話対応の内容及びその頻度並びにこれまでのY社のXに対する多数回にわたる注意・指導の経緯及びXの改善意思の欠如等に鑑みれば、本件継続雇用拒否が重すぎて妥当性を欠くとは認められない。

上記判例のポイント1の「中にはそれ1つを取り上げれば比較的些細なものとみうる余地があるとしても、それが度々繰り返された以上、Xの電話対応の問題や不適切さを示すものにほかならず」との理解のしかたは注意が必要です。

一般的には、些細な非違行為をたくさん寄せ集めても、それをもって解雇や雇止めの合理的理由があると認定することはありません。

また、本件同様の事案の場合には、注意・指導のエビデンスをどのように残すかに留意する必要があります。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

本の紹介1294 決断する力#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「『いざ』というとき、立ち止まるな!走りながら考えろ。」と書かれています。

立ち止まっている暇など残されていません。

人生はあっという間に終わってしまいます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

週末は体力をつくる。これ、あたりまえの備え。もうひとつ週末しかできないこと、本や資料を読み込む集中力。ある意味では月~金より土日のほうが仕事密度が高いと思ったほうがよいです。仕事は、発想があるかないかですから。」(91頁)

休日の使い方で仕事における中長期的なパフォーマンスは天と地ほど変わってくると確信しています。

いわゆる「自分のための投資の時間」をどれだけ持てるかが極めて重要です。

ジムで体を鍛えるもよし、資格試験の勉強をするもよし。

しかしながら、現実は、休日とはいえ、多くの方が、様々な雑務等に追われ、自分のための投資の時間が持てないのではないでしょうか。

減価償却に負けない自己投資を継続することが、自分の価値を高める唯一の方法です。

労働時間78 ラブホテル従業員の休憩時間の労働時間該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、ラブホテル従業員の休憩時間の労働時間該当性に関する裁判例を見ていきましょう。

ホテルステーショングループ事件(東京地裁令和3年11月29日・労経速2476号29頁)

【事案の概要】

Xは、平成26年4月、Y社(都内で16店舗のラブホテルを経営)との間で労働契約を締結し、以降Y社の経営する複数の店舗において、客室清掃などを担当する「ルーム係」として勤務していた。
Xは、平成30年8月から令和2年8月頃までは、Y社の店舗の一つであるA(11部屋の客室を有する)で勤務し、通常は出勤してタイムカードを打刻した後、所定始業時刻以前の労働時間については賃金が支払われていなかった。

Xは、令和2年12月にY社を退職したが、令和3年2月に、未払賃金及び休業手当の支払を求めて本件訴訟を提起した。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、合計148万5130円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、タイムカードを打刻してから所定始業時刻の午前10時までの間、リネン類の準備作業などを行っており、Xのこれらの作業の性質はY社の業務遂行そのものである。このことに加え、その作業がY社が労務管理のために導入したタイムカードの打刻後に行われていたこと、Y社の管理が及ぶ店舗内で行われていたものであること、ほぼ全ての出勤日で同じように行われ続けていたことなどからすると、Y社はこのような常態的な所定始業時刻前の作業の実態を当然に把握していたというべきところ、これを黙認し、業務遂行として利用していたともいえるから、上記作業はY社の包括的で黙示的な指示によって行われていたものと評価すべきである。

2 Xにおいては、ルーム係として客室清掃等の業務を行うことが労働契約上定められた業務であるところ、その業務を行う態様としては、Y社からの包括的な指揮命令に基づいて、フロント係からの連絡が客室の煙草処理や忘れ物の確認を行ったり、客室の空き状況や当日の混雑状況などを踏まえて必要があると自身らが判断すれば、客室清掃を行うといった状況であった。
そうすると、Xは、所定就業時間内においては、実作業に従事していない時間であっても、状況に応じてこれらの業務に取り掛からなければならない可能性がある状態に置かれていたというべきであり、その結果、原則的にルーム係控室に常に在室することを余儀なくされていたものと認められる。
そうすると、労働契約上の形式的な45分間の休憩時間や実際に昼食をとっていた時間を含めて、所定就業時間内は、Xには労働契約上の役務の提供が義務付けられていたというべきであり、労働からの解放が保障されていたとはいえない
したがって、所定就業時間内は、全て労基法上の労働時間に当たるものと認められる。

上記判例のポイント2については、仕事の性質上、仮に実作業に従事していない時間があったとしても、1人体制では、労働からの解放は否定されてしまうのはやむを得ないところです。

日頃から顧問弁護士に相談の上、労働時間の考え方について正しく理解することが肝要です。