本の紹介1303 幸福の「資本」論(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

タイトルとおり、「幸福」とは何か、どのようにしたら「幸福」になれるかが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

幸福についての研究では、『自分の人生を自分の自由に決められる』ことが幸福感に結びつくことがわかっています。これが『自己決定権』で、人生の自由度が大きいほど人生に対する満足度は大きくなります。」(224頁)

「自分の人生を自分の自由に決められる」

当たり前のようで、決して当たり前ではありません。

むしろ多くの人にとって、とても難しいことではないでしょうか。

人生は、日々の小さな選択・決断の集積によって形成されています。

政治や社会や環境のせいにしたところで状況は好転しません。

人生は、我慢して生きても、自由に生きても、いずれにせよあっという間に終わってしまいます。

自分の人生なんだから自分の好きなように生きましょう。

そのために必要な準備を日々しましょう。

諦めたらそこで終わり。

YOLO!

賃金226 事実上の離婚状態にある場合に中退共の退職金や遺族給付金等の支給を受けるべき「配偶者」に該当しないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、事実上の離婚状態にある場合に中退共の退職金や遺族給付金等の支給を受けるべき「配偶者」に該当しないとされた事案を見ていきましょう。

独立行政法人勤労者退職金共済機構ほか事件(東京地裁令和4年1月26日・労経速2479号33頁)

【事案の概要】

本件は、a社の従業員であった亡D(平成26年10月15日死亡)の配偶者であるXが、①亡Dが被共済者であるY1機構に対し、中小企業退職金共済法に基づく退職金928万2803円及+遅延損害金の支払を求め、②亡Dが加入していたY2基金に対し、Y2基金規約に基づく遺族給付金として503万0300円+遅延損害金の支払を求め、③亡Dが加入していたY3基金に対し、Y3基金規約に基づく遺族一時金として243万3000円+遅延損害金の支払を求める事案である

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 中小企業退職金共済法は、中小企業の従業員の福祉の増進等を目的とするところ(1条)、退職が死亡によるものである場合の退職金について、その支給を受ける遺族の範囲と順位の定めを置いており、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む配偶者を最先順位の遺族とした上で(14条1項1号、2項)、主として被共済者の収入によって生計を維持していたという事情のあった親族及びそのような事情のなかった親族の一部を順次後順位の遺族としている(同条1項2号から4号まで、2項)。
このように、上記遺族の範囲及び順位の定めは、被共済者の収入に依拠していた遺族の生活保障を主な目的として、民法上の相続とは別の立場で受給権者を定めたものと解される。
このような目的に照らせば、上記退職金は、共済契約に基づいて支給されるものであるが、その受給権者である遺族の範囲は、社会保障的性格を有する公的給付の場合と同様に、家族関係の実態に即し、現実的な観点から理解すべきであって、上記遺族である配偶者については、死亡した者との関係において、互いに協力して社会通念上夫婦としての共同生活を現実に営んでいた者をいうものと解するのが相当である(最高裁昭和58年4月14日第一小法廷判決参照)。
そうすると、民法上の配偶者は、その婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みのない場合、すなわち、事実上の離婚状態にある場合には、中小企業退職金共済法14条1項1号にいう配偶者に当たらないものというべきである(最高裁判所令和3年3月25日第一小法廷判決参照)。

ということです。

少しマニアックではありますが、弁護士、社労士としては知っておく必要があります。

退職金や遺族給付金等については顧問弁護士に相談をしましょう。

本の紹介1302 CHANCE(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

成功するか否かは、まさにタイトルのとおり「CHANCE」をどのように捉えるかがとても大きいです。

掴むのか、逃すのか。

その判断の集積に他なりません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

大きなチャンスが目の前に来た時に、それに挑戦できるかどうかということだ。ある成功者がつかんだチャンスは、多くの人もそれを見て、気がついて、触れたはずだ。でもほとんどの人は手を出さなかった。そこに両者の決定的な差があるんだ。
『自分は成功者だ』と思っている人は、現実に成功する行動を取るものだ。そう思っていない人は、反対の行動を取るんだよ。常に、人生には分かれ道がある。そのどちらを行くかでたどり着く地点が変わる。それだけなんだよ。」(75頁)

まさにそのとおりです。

人生は、選択の連続で、その選択の集積が今の自分を形成しています。

10代の頃は、それほど大きな差はなくても、30代、40代と、選択の集積が増えていくにつれて、うまくいっている人とそうでない人の差は顕著に表れます。

成功する人は成功する理由があり、その逆もまたしかり。

日々の小さな選択を見直すことが、成功への第一歩です。

パワハラ・セクハラ69 テレアポ業務を命じたことがパワハラにあたらないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、テレアポ業務を命じたことがパワハラにあたらないとされた事案を見ていきましょう。

シナジー・コンサルティング事件(東京地裁令和3年2月15日・労判1264号77頁)

【事案の概要】

本件は、テレアポ業務を命じたことがパワハラにあたるかが争われた事案である。

【裁判所の判断】

パワハラにはあたらない

【判例のポイント】

1 Xは、「テレアポ業務」を強要されてこれが不法行為に当たると主張し、Y社も、Xに同業務を命じた理由の一つとして原告の勤務態度規律があった事実は認めているが、そもそも不動産の営業を担当するXに対して電話での営業を命じること自体は使用者の裁量の範囲内にあると考えられる。そして、Y社は、Xが上司に日々の具体的な業務遂行状況を報告しなかったことを問題であると認識していたこと、Xが本件雇用契約の締結に先立ち「テレアポ営業では1日1200件電話をしたこともあります。これまでの人脈と経験で積極的に行動し成果につながる仕事がしたいと思っています。」などと記載した職務経歴書を提出して自己の長所として訴えていた経緯があることを踏まえて、業務内容及びその成果がY社から見て明確と評し得る「テレアポ業務」を担当させることによって上記問題の解消を意図したからといって、それが報復・懲罰ということにはならず、使用者の裁量を逸脱した違法な指揮命令であると評価することはできない

1日中シュレッダーをかける業務を命じるのとは訳が違います。

通常の業務範囲として許容される業務を命じることは使用者の権限として許容されていますので、本件では上記の結論になりました。

ハラスメント該当性については顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介1301 「孤独」が人を育てる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

基本、群れないほうがいいです。

時間を浪費するだけですので。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分の力量と限界は違う。自分の力量を見定め、その上を目指すのだ。自ずと、己の限界が上がっていく。自分の力量内で仕事をしていたら、何年経とうが同じ力量のまま。進化、深化することを意識する。」(107頁)

仕事も筋トレも同じです。

毎日同じ負荷でやっていては、成長するはずもありません。

来る日も来る日も同じことを同じレベルでやっていて、どうやって成長するのでしょうか。

意識的にコンフォートゾーンから抜け出さなければ成長はありません。

解雇370 退職合意の有効性と就労意思の有無(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、退職合意の有効性と就労意思の有無について見ていきましょう。

グローバルマーケティングほか事件(東京地裁令和3年10月14日・労判1264号42頁)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、Xが、Y1社及びY2社の両者と締結していた労働契約に基づき、被告会社らとの間で令和元年5月30日にされた退職合意は不成立又は無効であるとして、被告会社らに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、平成30年10月に被告会社らによりされた賃金の減額を伴う給与体系の変更は無効であり、在職中の未払賃金が存在するとして、被告会社ら及び同社らの代表社員であるY3に対し、令和元年7月分(同年8月10日支払)までの基本給、歩合給及び残業代の未払賃金合計123万8193円+遅延損害金の連帯支払等、Y3らによる退職強要が違法であるとして、被告らに対し、Y3については民法709条、被告会社らについては会社法600条による損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円と弁護士費用10万円の合計110万円+遅延損害金の連帯支払を求め、さらに、被告会社らに対し、労基法114条に基づき、未払割増賃金に対する付加金として67万0290円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 XとY2社との間において、XがY2社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2 Y2社は、Xに対し、86万7869円+遅延損害金を支払え。

 Y2社は、Xに対し、令和元年9月から本判決確定まで毎月10日限り18万円+遅延損害金を支払え。

 Y2社は、Xに対し、21万2315円+遅延損害金を支払え。

 XのY2社に対するその余の請求並びにY1社及びY3に対する請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Xの要求は、本件面談当初から持ち出していたものではなく、原告は、本件面談の当初は、在職を希望していたのである。すなわち、Y3は、本件暴行の事実を否定した原告に対し、実際には防犯カメラの映像を確認していないにもかかわらず、「全部録画されているから」、「それも映ってます。」などと述べ、A弁護士も、被告Y3の同発言を前提として、原告に対し、「映像を全部分析して、あなたが言ったことも全部暴いて。」、「応諾しないのであればもう私が出ているから、就業拒否で自宅待機。で、懲戒解雇」、「転職先からですね、過去の経歴調査が入るんですよ。」などと述べたことから、原告は、当初希望していた在職を希望しなくなり、退職を前提とした退職条件の交渉に終始した経緯に照らせば、Xは、上記Y3及びA弁護士の一連の発言により、防犯カメラ映像に本件暴行の様子が記録されており、当該映像の存在及び内容を前提にすると法的に懲戒解雇や損害賠償請求が認められると認識したことにより、在職を諦め、退職の意向を示すに至ったとみるのが相当である。
Xが、本件面談の当初、本件暴行の事実を否定し、在職を希望していたことに加え、当時、美容師の資格は有していたものの、既に再就職先を確保していたことや、再就職先を探していたことはうかがわれないこと、Xは、当時、扶養すべき家族があり、実際にも被告会社らを退職後に美容師とは全く職種の異なる不動産会社の営業職に就職していることからすれば、退職に伴う原告の不利益は大きいものがあったことなどの事情を総合すると、Xにおいて、防犯カメラの映像に本件暴行の場面が記録されているとの認識を持たなければ、退職の意向を示すことはなかったことが認められる
以上に判示したところを総合考慮すれば、Xは、Y3及びA弁護士から、実際には記録されていなかった防犯カメラの映像に本件暴行の場面が記録されており、これを前提として懲戒解雇や損害賠償請求が認められると言われ、在職を希望する言動から退職を前提とした退職条件の交渉に移行して退職合意書等に署名したものであるから、その自由な意思に基づいて退職の意思表示をしたものとは認められず、本件退職合意の成立は認められないというべきである。

2 被告らは、Xが、本件面談の後、X代理人に対し、退職合意書等に署名をして和解した旨報告し、翌日である令和元年5月31日には、同代理人をして、Y3及びA弁護士に対し、和解契約の履行を求める旨の書面を送付していることから、追認により新たに退職合意が成立したものとみなされる旨主張する。
しかしながら、Xは、本件面談当時、被告らが本件暴行の記録されている防犯カメラ映像を有しているとの事実と異なる認識を有し、上記書面送付当時においてそのような認識が払拭されたと認めるに足りる証拠はないから、上記書面送付当時、Xにおいて本件退職合意が無効ないし不成立であると知っていた(民法119条ただし書参照)ものとは認められず、上記書面送付をもって、本件退職合意を追認したということはできず、被告らの上記主張は採用することができない。

3 Xは、美容師の資格を有し、本件店舗において美容師として勤務していたところ、本件退職合意後、その資格を生かすことができず、職種も異なる不動産会社の営業職として再就職していること、再就職後の給与額は月額22万円から35万円程度と変動があり、本件賃金変更前には基本給だけで月額30万円を支給されていたことと比較して不安定であり、平均的にみると給与額も減少していることが認められるから、他に特段の事情が認められない本件においては、再就職によりXの就労意思が失われたと認めることはできない

合意退職の有効性の判断過程について、上記判例のポイント1をしっかり理解しておきましょう。

また、上記判例のポイント3のとおり、再就職したとしても必ずしも復職の意思が喪失したとは認定されないので注意しましょう。

退職合意をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

本の紹介1300 「話し方」の品格(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

確かに「話し方」にその人の知性や品格が現れることは事実です。

ただ、個人的には「聞き方」にこそ、より知性や品格が現れると思っています。

聞き方が下手な相手には話す気が失せます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

コミュニケーションの世界にヒエラルキーが作られ、『話す』が上、『聞く』が下とみなされている現実は、一刻も早く打破すべきである。・・・この関係を打ち破るには、あえて『聞く』が先、特に上位者から先に聞くことを実践するとよい。聞き手がいて、コミュニケーションが成り立つ、という基本を再確認しよう。」(196頁)

はっきり言いましょう。

他者とのコミュニケーション(例えば、会食等)においては、いかに自分が気持ちよく話をしたかではなく、いかに相手に気持ちよく話してもらえたかこそが重要なのです。

実のところ、その場を支配しているのは、話し手ではなく、聞き手です。

できるだけボールポゼッション率を下げること。

できるだけ他者がトラップしやすく、シュートをしやすい質問という名のパスを出すこと。

そして、相手が話をしているときには、不必要かつ大袈裟な相槌を打たずに、また、途中で遮らずに静かに聞くことです。

一番ダメなのは「はい、はい、はい、はい」を連呼するあれです。

耳障り以外の何物でもありません。

労働者性47 プログラマーの労働者性が否定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、プログラマーの労働者性が否定された事案を見ていきましょう。

東京FD事件(東京地裁令和3年11月11日・労判ジャーナル122号50頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、雇用契約に基づく未払賃金等の支払等を求めた事案である。

原判決は、Xの請求をいずれも認容したため、Y社がこれを不服として控訴した。

【裁判所の判断】

原判決取消(請求棄却)

【判例のポイント】

1 Xは、本件契約に基づく業務を行うに当たっては、一人で現場に赴き、専門的知識を有するプログラマーとして、顧客の担当者と協議をしながら、自身の責任において、作業内容やスケジュールを決め、期限までにシステム開発を完成させることが求められていたこと、②現場において、Xに対し勤怠時間の管理や業務上の指揮命令を行う者は存在しなかったこと、③XがY社に対し毎日の作業時間を記載した勤務報告書を提出していたのは、報酬額が作業時間に連動していたためであること、④本件契約期間中、Y社を事業主とする社会保険に加入していなかったこと、⑤Y社は、従前、Xと雇用契約を締結していたが、Xが従事していたシステム開発支援業務の過程で知った顧客のソースコードやシステム構成情報の一部などを公開WEB領域にアップロードするという漏えい行為に及んだことから、当該雇用契約を解除し、その後、別の顧客との個別案件に限り業務を委託する趣旨で本件契約を締結したことが認められるから、Xは、Y社の指揮監督下において労務の提供をする者とはいえず、本件契約が雇用契約であるとは認められないから、本件賃金請求は理由がない。

珍しく労働者性が否定された事案です。

ここまで自由に、自らの裁量で仕事ができているのであれば、労働者性が否定されるのでしょうね。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介1299 ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から10年前の本ですが、再度、読み返してみました。

タイトルのとおりの話が書かれていますが、まさにこの本自体が、多くのビジネス書同様、タイトルで煽って買わせるという手法を採用しております(笑)

ビジネス書を読んだだけでデキる人になれないことくらい、デキる人たちはみなわかっていることです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

そもそも自己啓発本とは、畑にまく肥料のような本だと捉えています。読んだからといって、すぐに生活が豊かになるわけでも、業務スピードがアップして営業トークがうまくなるわけでも、職場の人間関係が劇的に改善されるわけでもありません。そうした短期的に結果が出るような効能ではなく、ジワジワと時間をかけながら、自分の思考の土台を柔軟にしたり、奥深くしたりするのを助けてくれる本だと思うのです。」(224頁)

そんなこと、わかっとるわ(笑)

誰も即効性があるなんて思っていませんから。

本を全く読まない人に比べたら、自己啓発本を読み漁っている人のほうが、格段に成長は早いでしょう。

すべて自分で経験しないと気が済まないなどと言っているようでは、時間がいくらあっても足りません。

先人の成功体験、失敗体験を読書により、ものの数十分で疑似体験ができるのですから、読書をしない理由が見当たりません。

労働時間79 タクシー運転業務の労働時間性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、タクシー運転業務の労働時間性に関する裁判例を見てみましょう。

洛東タクシー事件(京都地裁令和3年12月9日・労判ジャーナル122号1頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に勤務していたタクシー乗務員Xらが、未払いの時間外割増賃金があると主張して、Y社に対し、未払割増賃金及び付加金の支払を請求した事案である。

Y社は、乗務員らのタクシー乗車時間のうち、長時間の客なし走行などを労働時間から除外し、また、基準外手当の支給が割増賃金に当たると主張した。

【裁判所の判断】

請求一部認容(公休出勤手当を割増賃金算定基礎に含めないことを除き、請求認容)

【判例のポイント】

1 タクシー営業において、乗車希望の客を見つけるために、乗客なしに一定時間走行することは当然に想定されるところ、そのような時間であっても、乗車希望の客が見つかった場合には、当該客を乗せて走行することになると考えられる上、実際に、Xらは、それぞれが慣れた経路や地域を中心に、各自の経験に基づいて客を見つけることができると考える場所を「流し」で走行していたものであって、乗客なしの走行をしている間、Xらが行燈の表示を回送等にするなど、およそ客の乗車が想定されない状態にしていたことはうかがわれない

2 そうとすれば、Xらが、客を乗せることなく、長時間走行していたとしても、そのことから直ちに、当該時間について労働から解放されていたとは認め難く、むしろ乗車を希望する客がいた場合には、すぐに客を乗車させて運送業務を行うこととなるのであるから、当該時間についても労働契約上の役務の提供が義務付けられていたものであり、Y社の指揮命令下に置かれていたと認めるのが相当である。

まあ、そう解さざるを得ないでしょうね。

日頃から顧問弁護士に相談の上、労働時間の考え方について正しく理解することが肝要です。