本の紹介2116 インパクトカンパニー#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「『小さくても輝く企業』(インパクトカンパニー)に生まれ変わるための『たった一つの勝ちパターン』とは?」と書かれています。

大きさではなく爆音のインパクトが勝敗を決するのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

売上や利益を求めるほど、会社の収益性はどんどん低下していく。こんな善意による悲劇が、日本の至るところで起きている。」(110頁)

この文章の意味、わかりますか?

「え、なんで?」って思いませんか?

わかる人にはわかると思います。

会社の規模を大きくすることだけがゴールではありません。

むしろ小回りが利くように、意識してあえて組織を大きくしないという選択もあるのです。

今後ますます不透明な時代に突入していきます。

固定資産、固定費といった状況の変化に対応しにくいモノをいかに持たないかが私のモットーです。

賃金282 使用者による一方的な錬成費の支給中止が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、使用者による一方的な錬成費の支給中止が認められた事案を見ていきましょう。

中日新聞社事件(東京地裁令和5年8月28日・労経速2543号25頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、Y社に対し、毎年従業員に支給していた錬成費の支給は、労使慣行(又は黙示の合意)として労働契約の内容となっていると主張して、労働契約に基づき、令和2年分の錬成費及び遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 民法92条により法的効力のある労使慣行が成立していると認められるためには、同種の行為又は事実が一定の範囲において長期間反復継続して行われていたこと、労使双方が明示的にこれによることを排除・排斥していないことのほか、当該慣行が労使双方の規範意識によって支えられていることを要し、使用者側においては、当該労働条件についてその内容を決定し得る権限を有している者か、又はその取扱いについて一定の裁量権を有する者が規範意識を有していたことを要するものと解される。
Y社は、昭和30年代から平成31年まで、60年以上にわたり、従業員等に対し、年間で合計3000円を錬成費として支給していたが、この間、労使双方が明示的に当該慣行を排除・排斥した事実は認められない。
したがって、錬成費の支給について、同種の行為又は事実が一定の範囲において長期間反復継続して行われ、労使双方が明示的に当該慣行によることを排除・排斥されていなかったと認められる。

2 Y社が、錬成費について、労働条件である給与の支払と同様に支給を継続する必要がある金員として支給を開始したものとは認められず、その後、Y社が長年にわたり従業員に錬成費を支給してきた事実はあるものの、その間に行われた錬成費の支給に係る変更は、いずれも使用者による一方的な変更によって行われており、労使双方の合意が必要であるものとされていなかったということが認められる。また、従業員においても錬成費を給与に類するものとして受け止めていたとはうかがわれず、Y社は一貫して錬成費の支給手続等について給与の支払とは異なる取扱いをしていたのであるから、錬成費の支給という当該慣行が労使双方の規範意識によって支えられていたとは認められない。

労使慣行のハードルの高さがわかりますね。

また、上記判例のポイント2の考え方は是非知っておきましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2115 人を信じても、仕事は信じるな!#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「小さい会社には小さい会社なりのやり方がある!」と書かれています。

小さい会社の強みを理解し、その強みを最大限活かす経営をするべきです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『上司はどこを見ている』のかがわかれば、部下自身も『どこに力を入れるべきか』『どこを修正すべきか』がわかります。」(178頁)

受験勉強と同じことです。

採点基準を熟知することから始めましょう。

求められているポイントを押さえない限り、いくら努力をしても結果につながりません。

それは、いわゆる「ずれている」という状態です。

限りある時間の中で効率よく努力をするのです。

対上司に限らず、対顧客も同じことです。

賃金281 定期昇給等の実施が労使慣行として認められなかった事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、定期昇給等の実施が労使慣行として認められなかった事案を見ていきましょう。

学校法人I学園事件(東京地裁令和5年10月30日・労経速2543号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されているXらが、平成28年度から令和元年度の定期昇給及び特別昇給が行われなかったことにつき、労働契約又は労使慣行によりY社は定期昇給及び特別昇給を行う義務を負っていたとして、Y社に対し、労働契約に基づき、定期昇給及び特別昇給が行われていた場合の従来の賃金表に基づく賃金及び賞与と実際に支払われた賃金及び賞与との差額並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社の給与規程では定期昇給について「予算の範囲内において」行うと定められ、給与規程において定期昇給の具体的な内容が定められていたものではなく、その内容が明らかになっているものではないこと、本件組合とY社との間で団体交渉を経て妥結協約書を作成した上で定期昇給が行われてきたことが認められるから、毎年必ず定期昇給を行うことがXらとY社との間の労働契約の内容になっているとは認められない。

2 本件組合において定期昇給及び特別昇給等を団体交渉で要求し、Y社において財政状況を踏まえて予算を検討し、その後本件組合と被告との間で団体交渉を行い、妥結した上定期昇給及び特別昇給が行われてきたこと、Y社が特別昇給の中止を通達したこともあったが本件組合からの抗議があり撤回したこと、Y社から定期昇給を定年5年前で停止する旨回答したものの、本件組合の反対により撤回されたこと、Y社が平成25年3月29日には、平成26年度以降は定期昇給を実施できないことを否定できない旨回答していたこと等が認められ、Y社において定期昇給及び特別昇給を行わない可能性や中止について言及するなどし、定期昇給及び特別昇給を行うことを規範として認識していたとは認められない
また、本件組合においても、定期昇給及び特別昇給が当然に行われるものではないと認識していたからこそ要求していたといえるから、定期昇給及び特別昇給を行うことが労使双方の規範意識によって支えられていたとは認められず、定期昇給及び特別昇給を行うことが労使慣行になっていたとは認められない

労使慣行として認められるのはかなりハードルが高く、そう簡単に裁判所は認めてくれません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

 

本の紹介2114 1秒でつかむ#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

元テレ東敏腕ディレクターの本です。

圧倒的没入感」がいかにして生まれるのかがよくわかります。

とても勉強になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

仕事において極めたスキルの『広さ』は、コンテンツにおける『深さ』をもたらします。」(109頁)

ある特定の分野の専門性を高めることももちろん大切ですが、その一方で、幅広く経験することもまたそれと同じくらい大切です。

なにがどのタイミングでコネクトするかわかりませんので。

ある三ツ星のフレンチのシェフが、休日に、フレンチのみならず、ありとあらゆるジャンルの流行っているお店に食事に行くのもまた同じ理由です。

解雇408 懲戒処分当時に使用者が認識していなかった非違行為に基づく懲戒解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、懲戒処分当時に使用者が認識していなかった非違行為に基づく懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

富士通商事件(東京地裁令和5年7月12日・労判ジャーナル144号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社が行った解雇は無効である等と主張して、Y社に対して、解雇無効地位確認及び未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 Y社はXに対して懲戒解雇の意思表示をしており、懲戒処分当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情がない限り、その存在をもって当該懲戒処分の有効性を根拠付けることはできないものというべきであるところ、Y社の主張する事情は、解雇理由証明書に記載されておらず懲戒当時にY社代表者が認識していなかったと認められるから、これらの事情があったとしても、本件懲戒解雇の有効性を根拠づけることはできず、その他、本件では、Y社の主張する懲戒事由が認められないことから、本件懲戒解雇は無効であるから、Xは、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあるとともに、Xが令和3年7月7日以降に労務を提供していないのは、Y社の責めに帰すべき事由によるものといえるから、Y社は、56万3721円の支払義務を負う。

上記太字部分の事情からすれば解雇事由とするのはなかなか難しいですね。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2113 ウチら棺桶まで永遠のランウェイ#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には、「人生は環境じゃなくて、全部やり方次第だって私が証明する」と書かれています。

環境による影響は極めて大きいです。

とはいえ、環境のせいにしたところで何ひとつ状況は変わりません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

未来に不安はあるけど、未来を左右するのって今だから、今の心配するようにしてるわ」(9頁)

未来は常に「今」の積み重ねによってつくられます。

未来が不安だ不安だと嘆きながら、たいした準備をしない人を見ると複雑な気持ちになります。

未来がそんなに不安なら、今から準備すればいいのに。

毎日、朝4時に起きて、勉強すれば、未来の不安なんてなくなります。

人が寝ているとき、遊んでいるときに死に物狂いで勉強しましょう。

未来は自分の力で切り拓くほかありません。

解雇407 頻繁に傷害事件を起こした従業員の解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、頻繁に傷害事件を起こした従業員の解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

建設会社S事件(大阪地裁令和5年10月27日・労判ジャーナル144号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、勤務していたXが、Y社による解雇が無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、平成30年4月3日にY社の従業員に対する傷害事件を起こした後、令和2年3月6日及び同月9日に立て続けにY社の協力業者に対する傷害事件を起こし、いずれもY社の業務遂行中に起こしたものであり、Y社の企業秩序を害したものというべきであるし、特に、同月9日のGに対する傷害事件は、手術を要するものであり、結果が重大であり、Xは、Y社代表者からF及びGに対する謝罪を求められたにもかかわらず、同人らに対し、一切謝罪をせず、損害賠償についても、Y社が行い、Xは何ら対応しないなど、態度を改めることがなかったところ、Y社は、Xを直ちに解雇せず、現場作業員から営業職への配置転換を行ったものであり、これは解雇回避措置と評価できるものであるが、Xは、F及びGに対する傷害事件の約1年5か月後に実父に対する傷害事件を起こし、逮捕、勾留、起訴及び公判を経て、執行猶予付き有罪判決を言い渡されたものであるから、Xの粗暴傾向は、非常に根深く、もはや改善の余地はないと評価し得る状況であったと認められ、Y社は、保釈前にXを直ちに解雇することなく、保釈後にXと面談し、事情を聴取した上で、退職勧奨をし、Xがこれに応じなかったことから、最終的に本件解雇の意思表示をしたものであることに照らせば、本件解雇は、客観的に合理的な理由が認められ、社会通念上相当として是認できる場合に当たると認められる。

丁寧に丁寧に手続きを進めたということがよくわかります。

民事事件でありながら刑事事件の判決を見ているようです。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

 

本の紹介2112 シェアライフ#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

タイトル通り、あらゆるものをシェアすることを提唱しています。

家や車に限らず、日用品についてもシェアする時代になりつつあるのは確かです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『家』とは、人生において最も重要なものであり、生活の基礎となるものですが、一方で、人生で新しい選択をしたいときなど、ときに自由を阻む大きな制約やハードルになるのも『家』なのです。」(90頁)

賃貸と持ち家、どちらのほうがいい?みたいな論争はどうでもよくて、自分の好きにすればいいのです。

どちらのほうが自分の価値観に合うか、ただそれだけの話です。

私のようにモノを所有することに幸せを感じない人にとっては、持ち家は不要です。

荷物を持ちすぎると動きが鈍くなるのは、人生も同じだと思っています。

労働時間104 三六協定が過半数要件を満たさなかったこと等に基づく慰謝料請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、三六協定が過半数要件を満たさなかったこと等に基づく慰謝料請求に関する裁判例を見ていきましょう。

オーエスティ物流事件(大阪地裁令和5年11月16日・労判ジャーナル145号28頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社従業員であるCから職場において大声で脅されるなどの行為をされ、これに対してY社が適切な対応をとらなかった旨や、Y社が労働組合との間で締結した三六協定やいわゆるユニオン・ショップ協定について、要件を欠いているのにこのことを周知しなかったなどと主張して、Y社に対し、不法行為又は使用者責任に基づき、①Cらによるパワハラやいじめをやめさせるように求めるとともに、②慰謝料として550万円を求めた事案である。

【裁判所の判断】

①は却下、②は棄却

【判例のポイント】

1 三六協定が過半数要件を満たさなかったとしても、特別の事情がない限り、このことによって、労働者の権利又は法律上保護される利益が侵害されるものということはできず、本件違反がXに対する不法行為を構成するとは認められず、また、Xは、Y社が本件違反を周知しなかったことが、労働基準法106条に違反し、不法行為に当たる旨も主張するが、本件違反があったとしてもこれがXに対する権利又は法律上保護される利益を侵害するものとはいえないから、Y社がXに対して本件違反を通知する義務を負っていたとはいえず、労働基準法106条1項は、そもそも公法上の義務を定めるものであって、使用者の労働者に対する私法上の周知義務等を基礎付ける規定ではないし、その文言上、使用者が同条所定の協定を締結したなどの場合に、当該協定等を周知すべき義務を課すものであって、その効力が失われた場合にこれを周知すべき旨までを定めたものと解することはできないから、不法行為が成立するとは認められない

法律違反がすべて不法行為に該当するわけではありません。

公法と私法という視点も忘れずに押さえておきましょう。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。