本の紹介1343 「あたりまえ」からはじめなさい#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から10年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

世間一般でいう「あたりまえ」からはじめることの大切さもさることながら、

何を「あたりまえ」にするかが人生に大きく影響します。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

給料が上がらない人は給料の低い人の集まりに参加して酒を飲む。そこで会社の愚痴を言う。給料が上がる人は給料の高い人の懐に飛び込んでいく。給料を増やしたいなら給料の高い人と付き合うことだ。」(139頁)

疑う余地のない真実です。

このような文章を読んで「なんかむかつく」とか言っている場合ではないのです。

日々、自分の武器を磨き、チャンスが訪れたときに遺憾なく発揮する。

コンフォートゾーンという名のぬるま湯から飛び出し、場違いさ、居心地の悪さを感じる場所にどんどん飛び込んでいくのです。

やっている人はずっと前からやっていることです。

労働時間84 パソコンのログイン時刻からログアウト時刻までが概ね労働時間と認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、パソコンのログイン時刻からログアウト時刻までが概ね労働時間と認められた事案を見ていきましょう。

学校法人目白学園事件(東京地裁令和4年3月28日・労経速2491号17頁)

【事案の概要】

本件は、時間外労働に係る賃金等を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、296万3031円+遅延損害金を支払え

Y社は、Xに対し、付加金219万3727円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、Y社に出勤するとまず研究室に向かい本件パソコンにログインの操作をしてカレンダーに時刻を記入して業務を開始し、終業時に本件パソコンにログアウトの操作をして上記カレンダーに時刻を記入していた、Xの主な業務内容の詳細は、「業務状況表」のとおりであった旨主張し、X本人もこれに沿う供述をするところ、Xの上記供述内容は自然かつ合理的なものといえ、基本的に信用できるというべきである。
これに対し、Y社は、本件パソコンのログイン・ログアウトの時刻のみでは証拠が不十分である旨主張しているが、本件雇用契約には「所定時間外労働の有無」が「無」との規定があるものの、Y社がXに所定労働時間外の各種業務を担当させていた事実が存すること自体は実質的に争いがなく、にもかかわらず、Y社がXの労働時間の管理を怠っていたのであり、上記X供述の信用性を否定すべき証拠を提出できていない

被告会社が前記のとおり。パソコンのログイン・ログアウトの時刻のみでは証拠が不十分である等と主張することはよくありますが、裁判所的には「じゃあ、会社のほうでログイン・ログアウトの時刻以上に原告の労働時間を正確に管理・把握していた証拠出してね。」という感じです。

立証責任的観点から単に信用性がないと主張するだけでは足りませんので、ご注意を。

日頃から顧問弁護士に相談の上、労働時間の考え方について正しく理解することが肝要です。

本の紹介1342 やりたくないことはやらずに働き続ける武器の作り方#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

著者を見ていると、比較的若いうちにある程度の資産を築けると、その後の人生の自由度が大幅に上がることがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

不安になるのは、他人の発言に揺さぶられてしまうから。他人が作った勝手な統計、勝手な子育て、勝手な老後なんて、ぜんぶ笑い飛ばしてしまえばいい。これからは、自分とは関係のない赤の他人が含まれている『平均』を捨て、自分基準の子育て、自分基準の老後、自分基準の生き方を自ら設計する時代だ。」(35頁)

日本人の国民性からすると、多くの方にとっては「わかっちゃいるけど、なかなかできない。」というのが本音ではないでしょうか。

永遠にマスクを着用しないといけない国で「平均」を捨てることは、多くの人にとってとても勇気がいることです。

世間体、他人の目、他人の評価を過度に気にして、同調圧力の中、多数派意見に従い、目の前に敷かれた「常識」という名のレールの上をただひたすら突き進む人生。

・・・考えただけ眩暈がします(笑)

みなさんが、もっと自由に、好きなように生きられることを心から願っています。

YOLO

管理監督者53 人事上の最終権限を有しない社員の管理監督者性が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、人事上の最終権限を有しない社員の管理監督者性が認められた事案を見ていきましょう。

土地家屋調査士法人ハル登記測量事務所事件(東京地裁令和4年3月23日・労経速2490号19頁)

【事案の概要】

本件は、土地家屋調査士法人であるY社の社員兼従業員であったXが、Y社に対し、①雇用契約に基づき、令和2年2月分以前の未払残業代527万9952円+遅延損害金の支払、②雇用契約に基づき、同年3月分以降の未払残業代86万1219円+遅延損害金、③労働基準法114条に基づき、付加金407万4886円+遅延損害金の支払、④Y社がXに対してした同年7月10日付け普通解雇が無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、並びに、⑤民法536条2項に基づき、本件解雇後の賃金+遅延損害金の支払を、各求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、1万2121円+遅延損害金を支払え。

Y社はXに対し、付加金1万2121円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 職務権限について、Xは、Y社代表者とともに、Y社設立時からの社員であり、社内でY社代表者に次ぐ地位であった。Y社における人事上の最終権限はY社代表者が有していたが、これは、Y社代表者が経営と営業、Xが登記申請等の現場実務の取り仕切りという社員間の役割分担があったことに起因する
現場実務の遂行方法の取り決めや現場での従業員の指導はY社代表者が口を挟むことはなく、Xに一任されていた。名古屋事務所の開設等の重要な経営事項についても、Xに相談の上で決定されていたことがうかがわれる。

2 勤務態様について、Xは、勤務時間中に歯科医院に通院するなどしていたが、仕事を抜けた時間に指導もなかった。また、平成31年1月以降は、自らの裁量で休日出勤や代休の日を決めていた

3 待遇について、Xは平成30年以降は月額60万円の報酬を得ていて、同じ土地家屋調査士の資格者である他の社員2名よりも月額で10万円以上も高く、他の従業員の基本給やXの前職での報酬水準(年収450万円程度)よりも大幅に高い

4 以上によれば、Xは、経営者(Y社代表者)と一体的な立場において、労働時間、休憩及び休日等に関する規制の枠を超えて活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され、また、そのゆえに、待遇及び勤務態度においても、他の一般労働者に比べて優遇措置が講じられていたということができ、実質的に上記のような法の趣旨が充足されるような立場にあったと認められるから、労基法41条2号の管理監督者に該当するものと認めるのが相当である

開かずの扉で有名な管理監督者性ですが、今回の事案では珍しく扉が開きました。

いずれにせよ、世の管理職の圧倒的多数は管理監督者としては認められませんのでご注意ください。

労務管理は事前の準備が命です。顧問弁護士に事前に相談することが大切です。

本の紹介1341 決めた未来しか実現しない(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

タイトルのとおり、「『こうなりたい』という未来の一点を『決めた』とき、現実が変わります」と著者は説いています。

私はやや異なる意見を持っていますが、何も決めないよりはいいと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

何も行動せずにいたら、五年後も十年後も彼はずっといまのままでしょう。・・・これからも、これまでと同じ人とつきあい、同じ仕事のやり方をして、同じお金の使い方をし、考え方を変えず、住む場所も変えずにいたら、五年後、十年後、どうなっているでしょうか?」(73頁)

進化・向上するために何の努力もせず、ただ昨日と同じ今日を生きているだけでは、5年後も10年後も今と何一つ変わりません。

みなさん、すでにお気づきのとおり、日本はもはや経済大国でもなんでもありません。

もう今は昔の話です。

たいして給料も上がらない一方で、物価はどんどん上がり、年金もまったくあてにならない状況。

出稼ぎが当たり前になりつつある昨今、もはや働かないことを意味する「老後」や「専業主婦」は死語になりつつあります。

平和ぼけ、経済大国幻想を捨て、寸暇を惜しんで勉強しましょう。

自分の商品価値を高めることこそが、VUCA時代をサバイブする術だと確信しています。

解雇376 職場における暴言等を理由とする解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、職場における暴言等を理由とする解雇に関する裁判例を見ていきましょう。

アドバネット事件(東京地裁令和4年2月10日・労判ジャーナル125号34頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社による解雇は無効であるとして、労働契約に基づき、労働契約上の地位確認、未払賃金等の支払、Y社及びY社の従業員からXが受けた言動及び処分等にかかる不法行為及び使用者責任に基づく慰謝料100万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、従業員であるK及び上司であるHにスマートフォンを向け録音撮影する、Hをにらむ、Hに対し紙を丸めて投げつける、K及びHの席周辺を歩き回る、監視カメラが設置されていると訴えて他の従業員に探させるなどしたほか、H及び従業員であるQに対し、殺すぞなどと殺害をほのめかすような発言をし、執務室においてもお前らのやっていることは犯罪だからななどと発言し、同僚に態度が大きいなどと詰問しY社代表者が止めに入ってもすぐに止めないなど、社会通念上、職場において行われる言動を逸脱し、周囲にいる者に恐怖や身の危険を感じさせる言動を行っていたことが認められ、そして、E支社の従業員のほとんどがXに対して恐怖を抱き、Xのいる場所では仕事ができないと訴え、Xとの業務を避ける、執務室外で業務を行うことをやむなくされるなどの状況が生じており、通常どおりの業務遂行に支障が生じていたことが認められ、Xの行為及び挙動は、就業規則所定の諭旨退職・懲戒解雇事由に該当するというべきであるところ、Y社として、できる限りXとの労働契約を続ける努力をしたものの、最終的にXが約束を破ったことで完全に信頼関係が破壊されたとして本件解雇を選択することもやむを得なかったというべきであるから、本件解雇は客観的合理性があり社会通念上相当であって有効である。

上記判例のポイント1の前半部分に記載されている内容をいかに立証するかという観点で証拠を残す必要があります。

どのような方法で証拠を残すかについては、顧問弁護士にご相談ください。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

本の紹介1340 京大理系教授の伝える技術#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から10年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

「伝え方」にフォーカスした本です。

仕事ができる人は、例外なく伝える力に長けています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『話が長い』と言われるのは、話している相手をきちんと見ていないからです。それは『相手の関心に関心をもつ』ことで回避することができます。」(48頁)

とにかく端的に、要点を伝えましょう。

そうすれば話が長くなりようがありません。

特に忙しい相手に対しては。

話が長い人の話を根気強く聞き続けても、たいていは、要領を得ません。

自分自身が重要な点を理解していないために話が長くなっている以上、やむを得ません。

「よく話が長い」「何を言っているのかよくわからない」と言われる方は、気を付けましょう。

労働時間83 事業場外労働みなし制度適用が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、事業場外労働みなし制度適用が認められた事案を見ていきましょう。

セントリオン・ヘルスケア・ジャパン事件(東京地裁令和4年11月16日・労経速2490号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され就労していたXが、Y社に対し、未払割増賃金等の支払及び未払賞与等の支払及び労働基準法114条に基づく付加金請求等の支払を求め、また、XはY社による違法な行為により精神的苦痛を被ったなどとして、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料150万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、その労働時間について事業場外で業務に従事しており、各日の具体的な訪問先や訪問のスケジュールはXの裁量に委ねられており、上司が決定したり指示したりするものではない上、業務内容に関する事後報告も軽易なものであることなどからすれば、使用者であるY社は、労働者であるXの状況を具体的に把握することは困難であったと認めるのが相当であるから、XのY社における業務は事業場外での労働に当たり、かつ、Xの事業場外労働は労働時間を算定し難い場合に当たるといえ、事業場外労働みなし制が適用される

原告は、製薬会社のMR(医療情報担当者)のため、営業先への移動や訪問に多くの時間を割いていた方です。

周知の通り、事業場外労働みなし制の要件はかなり厳しいため、裁判所はなかなか有効だと判断してくれませんが、本件では上記のとおり、有効と判断されています。

日頃から顧問弁護士に相談の上、労働時間の考え方について正しく理解することが肝要です。

本の紹介1339 あなたを変える52の心理ルール(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

メンタリストDaiGoさんの本です。

タイトルのとおり、心理学に基づいたアドバイスが載っています。

テクニックっぽい感じもありますが、知っておくと便利です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

なぜ分かりやすい『いい本』を読んだのに、成功しないどころか、何も変わらないままになることが多いのか。
答えは簡単です。ほとんどの人が学んだことを実践しないからです。」(3頁)

正解。

世の中には、3種類の人間しかいません。

「知らない」人。

「知っているけど行動に移さない」人。

「知っていることを行動に移す」人。

前二者は結果的には何も変わりはありません。

実際に動かなければ物事は何も変わりません。

これは能力の問題ではなく意識・習慣の問題です。

配転・出向・転籍51 転勤を拒んだ総合職社員に、地域限定総合職との半年分の賃金差額返還を求める旨の請求が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、転勤を拒んだ総合職社員に、地域限定総合職との半年分の賃金差額返還を求める旨の請求が認められた事案を見ていきましょう。

ビジネスパートナー事件(東京地裁令和4年3月9日・労経速2489号31頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、その従業員であるXに対し、給与規定に基づき、支払済みの基本給の一部である12万円の返還+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件規定は、総合職として賃金の全額が支払われた後、転勤ができないことが発覚した場合に、就業規則の規定に従って、本来支払われるべきでなかった総合職と地域限定総合職の基本給の差額を半年分遡って返還させるというものであること、その金額も、月額2万円半年分で12万円)にとどまること、従業員としては、自身の転勤の可否について適時に正確に申告していれば、上記のような返還をしなければならない事態を避けることができることが認められる。
これらの事情に照らせば、本件規定は、労働者に過度の負担を強い、その経済生活を脅かす内容とまではいえず、前記賃金全額払いの原則の趣旨に反するとまではいえないから、実質的に同原則に反し無効であるということはできない。

2 Y社では、Y社グループ内における人員の適正配置の観点のほか、金融業という業種を踏まえて、不正を防止するとともに、ゼネラリストを育成するという観点から、Y社グループ内でジョブローテーションを行うこととしており、現に広く転勤を行っていること、従業員が自身のライフステージに合わせて職群を選択することで、転勤の範囲を自由に選択、変更できる人事制度を整備する一方、転勤可能者を確保する趣旨から、総合職と地域限定総合職との間に月額2万円の賃金差を設けていること、上記のような制度を前提として、従業員らに自らの転勤の可否について適時に正確な申告を促し、賃金差と転勤可能範囲に関する従業員間の公平を図る趣旨で、本件規定を設けていることが認められる。
そして、本件規定の内容については、Y社の側で当該従業員の転勤に支障が生じた時期や事情を客観的に確定するのが通常困難であることから、原則として、転勤に支障が生じた時期や事情にかかわらず、一律に半年分の賃金差額を返還させることとしており、仮に転勤に支障が生じた時期が半年以上前であっても、半年分を超える返還を求めていない
本件規定を含む上記のような人事制度は、従業員が自身のライフステージに合わせて職群を選択することができるなど、従業員にとってもメリットのある内容といえ、返還を求める金額や適時に正確な申告をしていれば返還を免れることができる点等に鑑みると、労働者に過度の負担を強いるものともいえず、一律に半年分の返還を求める趣旨についても前記のとおり合理的であるから、Y社の業種、経営方針等に照らして、合理的な内容というべきである。

わずか12万円の返還を求めるためにその数倍の弁護士費用を支払って訴訟を提起するわけですから、会社としても「お金の問題ではない」わけです。

最大12万円の返還という規定内容からしますと、はたして抑止力になるのか、個人的には疑問です。

制度の運用については顧問弁護士に相談しながら行うことをおすすめいたします。