本の紹介1997 ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

タイトルだけで買ってしまう系の本です。

帯には「君たちはニホンという国ができて以来、最も過酷な時代を生きなくてはならないのだ・・・」と書かれています。

小論文の勉強にいいと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ニホンの学校は自分の頭で考えることを教えません。学校で行われることは、公務員が作ったカリキュラムであって教育ではないのです。そしてそれは国とマスコミの言うことを信じさせるための教育要綱ですから、大人になっても分析的に判断することができないのです。」(174頁)

残念ながら真実です。

そりゃ論理的な思考が苦手なわけです。

自分の意見を持たず「多くの人がそうするから」という理由で物事を判断する。

目立たないように、批判されないように。

もっと自由に、生きたいように生きればいいのに。

賃金252 時間外労働手当の定額払いの有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、時間外労働手当の定額払いの有効性に関する最高裁判決を見ていきましょう。

熊本総合運輸事件(最高裁令和5年3月10日・労判ジャーナル133号2頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され、トラック運転手として勤務していたXが、Y社に対し、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する賃金並びに付加金等の支払を求める事案である。

原審(福岡高裁令和4年1月21日判決)は要旨、次のように述べて、弁済により賃金の未払はなくなったなどとして、Xの各請求を棄却した。
本件割増賃金のうち調整手当については、時間外労働等の時間数に応じて支給されていたものではないこと等から、その支払により労働基準法37条の割増賃金が支払われたということはできない。他方、本件時間外手当については、平成27年就業規則の定めに基づき基本給とは別途支給され、金額の計算自体は可能である以上、通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の割増賃金に当たる部分とを判別することができる上、新給与体系の導入に当たり、Y社から労働者に対し、本件時間外手当や本件割増賃金についての一応の説明があったと考えられること等も考慮すると、時間外労働等の対価として支払われるものと認められるから、その支払により同条の割増賃金が支払われたということができる。

【裁判所の判断】

破棄差戻し

【判例のポイント】

1 労働基準法37条は、労働基準法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまり、使用者は、労働者に対し、雇用契約に基づき、上記方法以外の方法により算定された手当を時間外労働等に対する対価として支払うことにより、同条の割増賃金を支払うことができる。そして、使用者が労働者に対して同条の割増賃金を支払ったものといえるためには、通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である。
雇用契約において、ある手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否かは、雇用契約に係る契約書等の記載内容のほか、具体的事案に応じ、使用者の労働者に対する当該手当等に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの諸般の事情を考慮して判断すべきである。その判断に際しては、労働基準法37条が時間外労働等を抑制するとともに労働者への補償を実現しようとする趣旨による規定であることを踏まえた上で、当該手当の名称や算定方法だけでなく、当該雇用契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付け等にも留意して検討しなければならないというべきである(以上につき、最高裁平成30年7月19日判決、最高裁令和2年3月30日判決)。

2 新給与体系の下においては、時間外労働等の有無やその多寡と直接関係なく決定される本件割増賃金の総額のうち、基本給等を通常の労働時間の賃金として労働基準法37条等に定められた方法により算定された額が本件時間外手当の額となり、その余の額が調整手当の額となるから、本件時間外手当と調整手当とは、前者の額が定まることにより当然に後者の額が定まるという関係にあり、両者が区別されていることについては、本件割増賃金の内訳として計算上区別された数額に、それぞれ名称が付されているという以上の意味を見いだすことができない
そうすると、本件時間外手当の支払により労働基準法37条の割増賃金が支払われたものといえるか否かを検討するに当たっては、本件時間外手当と調整手当から成る本件割増賃金が、全体として時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否かを問題とすべきこととなる。

3 Y社は、労働基準監督署から適正な労働時間の管理を行うよう指導を受けたことを契機として新給与体系を導入するに当たり、賃金総額の算定については従前の取扱いを継続する一方で、旧給与体系の下において自身が通常の労働時間の賃金と位置付けていた基本歩合給の相当部分を新たに調整手当として支給するものとしたということができる。
そうすると、旧給与体系の下においては、基本給及び基本歩合給のみが通常の労働時間の賃金であったとしても、Xに係る通常の労働時間の賃金の額は、新給与体系の下における基本給等及び調整手当の合計に相当する額と大きく変わらない水準、具体的には1時間当たり平均1300~1400円程度であったことがうかがわれる。一方、上記のような調整手当の導入の結果、新給与体系の下においては、基本給等のみが通常の労働時間の賃金であり本件割増賃金は時間外労働等に対する対価として支払われるものと仮定すると、Xに係る通常の労働時間の賃金の額は、19か月間を通じ、1時間当たり平均約840円となり、旧給与体系の下における水準から大きく減少することとなる。
また、Xについては、上記19か月間を通じ、1か月当たりの時間外労働等は平均80時間弱であるところ、これを前提として算定される本件時間外手当をも上回る水準の調整手当が支払われていることからすれば、本件割増賃金が時間外労働等に対する対価として支払われるものと仮定すると、実際の勤務状況に照らして想定し難い程度の長時間の時間外労働等を見込んだ過大な割増賃金が支払われる賃金体系が導入されたこととなる
しかるところ、新給与体系の導入に当たり、Y社からXを含む労働者に対しては、基本給の増額や調整手当の導入等に関する一応の説明がされたにとどまり、基本歩合給の相当部分を調整手当として支給するものとされたことに伴い上記のような変化が生ずることについて、十分な説明がされたともうかがわれない
以上によれば、新給与体系は、その実質において、時間外労働等の有無やその多寡と直接関係なく決定される賃金総額を超えて労働基準法37条の割増賃金が生じないようにすべく、旧給与体系の下においては通常の労働時間の賃金に当たる基本歩合給として支払われていた賃金の一部につき、名目のみを本件割増賃金に置き換えて支払うことを内容とする賃金体系であるというべきである。そうすると、本件割増賃金は、その一部に時間外労働等に対する対価として支払われているものを含むとしても、通常の労働時間の賃金として支払われるべき部分をも相当程度含んでいるものと解さざるを得ない。
そして、前記事実関係等を総合しても、本件割増賃金のうちどの部分が時間外労働等に対する対価に当たるかが明確になっているといった事情もうかがわれない以上、本件割増賃金につき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と労働基準法37条の割増賃金に当たる部分とを判別することはできないこととなるから、被上告人の上告人に対する本件割増賃金の支払により、同条の割増賃金が支払われたものということはできない。
したがって、Y社のXに対する本件時間外手当の支払により労働基準法37条の割増賃金が支払われたものとした原審の判断には、割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。

有名な最高裁判決です。

振り分け方式に基づく賃金体系については、今後は採用しにくくなることは明らかです。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

本の紹介1996 人生を変える80対20の法則#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「最小限の努力で最大限の成果が上がる!」と書かれています。

みなさんご存じの「パレートの法則」です。

選択と集中がいかに大切かよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

80対20思考の出発点として、まず取り上げたいのが時間の問題である。われわれは、時間の質というものをあまりよく考えない。時間が大事だということは、みんなわかっているにちがいない。だから、大忙しのビジネスマンは『時間管理』に救いを求めているのだろう。しかし、枝葉末節のことで右往左往しているのが実態である。時間に対する考え方を、すべて白紙に戻す必要がある。求められているのは、『時間管理』ではなく『時間革命』なのだ。」(221頁)

まさにそのとおり。

雑務で埋め尽くされている日常生活からいかに脱却するか、が極めて重要なのです。

もっと時間を投入すべきことがあるはずです。

そのために大切な考え方は、

「やらないことを決める」

ということです。

すべては自分の選択です。

賃金251 業務関連費用を労働者に負担させることの労基法24条1項違反該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、業務関連費用を労働者に負担させることの労基法24条1項違反該当性について見ていきましょう。

大陸交通事件(東京地裁令和3年4月8日・労判1282号62頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され、タクシー乗務員として勤務していたX1が、Y社に対し、
ア 乗務員の歩合給の算定にあたり、クレジットチケット、クレジットカード及びID決済の取扱手数料を乗務員に負担させることは、労働基準法24条1項本文に定める賃金全額払の原則に反する違法行為であるから許されず、本件手数料を乗務員に負担させない場合の賃金と実際に支払われた賃金との差額が未払であると主張して、
①主位的には、賃金請求権に基づき、平成27年8月25日から平成29年7月25日までを支払日とする未払賃金+遅延損害金の支払を求め、
②予備的には、民法704条に基づき、上記未払賃金相当額の不当利得金+利息の支払を求め、
また、③民法704条に基づき、平成19年8月25日から平成27年7月25日までを支払日とする未払賃金相当額の不当利得金+利息の支払を求め、
イ 歩合給の算定にあたり本件手数料を負担させられ続けたことや、定年を迎えた際に退職を余儀なくさせられたことなどにより、精神的苦痛を受けたと主張して、民法709条に基づき、慰謝料+遅延損害金の支払を求め、
ウ 過失によりY社の営業車両を損傷したことから、被告の規定に基づき、事故負担金を支払ったが、Y社は、損傷部分の全てを修理しておらず、修理未了の部分に係る事故負担金を不当に利得していると主張して、民法703条に基づき、修理未了の部分に係る事故負担金相当額+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 労働契約の内容となる賃金体系の設計は、法令による規制及び公序良俗に反することがない限り、私的自治の原則に従い、当事者の意思によって決定することができるものであり、基本的に労使の自治に委ねられている事柄というべきである。歩合給に関し、出来高払制の保障給(労基法27条)及び最低賃金(同法28条)の規制はあるものの、歩合給の定め方を指定し、あるいは規制した法令等は見当たらない
そして、歩合給は、成果主義に基づく賃金であり、労働の成果に応じて金額が変動することを内容とするものである以上、労働の成果ということのできる使用者の得た利益に応じて歩合給の金額が変動する賃金体系は、合理性を有するものといえる。
Y社における歩合給は、本件改正前から一貫して「月間営業収入」(旧給与規定7項の「月間運送収入」と同じ意味である。)のうち44万円を超える金額に45%を乗じて算定するとされているところ、本件給与規定14条本文は、労働の成果ということのできる使用者の得た利益に応じて歩合給を算定するために、タクシーの乗客が支払う運賃料金総額から、被告にそもそも入金されず、被告の利益とはならない本件手数料を控除した残額を歩合給算定の基礎となる「月間営業収入」とする旨を内容とするものであるから、成果主義に基づく賃金を算定するための合理性を有する規定ということができる。

2 そして、本件給与規定14条本文は、同規定6条1項に基づき算定された従業員の歩合給から本件手数料を控除するという内容ではなく、あくまでも、成果主義に基づく賃金である歩合給を算定するにあたり、その算定基礎となる「月間営業収入」を算定する過程で、本件手数料の存在を考慮するものにすぎない
したがって、本件給与規定14条本文は、労基法24条1項本文の賃金全額払の原則に反するものではない

3 なお、旧給与規定には、本件給与規定の「月間営業収入」と同じ意味である「月間運送収入」について、タクシーの乗客が支払う運賃料金総額から本件手数料を控除したものとする旨の明文の規定は存在しなかったことから、本件給与規定14条本文の新設は、外形上、就業規則の不利益変更に当たるとみる余地もある。
しかしながら、Y社は、クレジットカード決済機の導入前から、歩合給を算定するにあたり、タクシーの乗客が支払う運賃料金総額から被告の収入とはならない消費税等を控除したものを「月間運送収入」とする取扱いをしており、旧給与規定は、歩合給について、労働の成果ということのできる使用者の得た利益に応じて金額を変動させるとの考え方を採用していたと解することができる。
そうすると、本件給与規定14条本文の内容は、旧給与規定の適用時における歩合給の算定に関する上記の考え方を明確にしたものにすぎず、実質的には、従前の労働条件を労働者に不利益に変更したと評価することはできない。

タクシー会社や運送会社でよく見かける給与体系ですが、歩合給に関しては、どのように賃金額を計算するのかを巡って争われるケースが少なくありません。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。 

本の紹介1995 マレーシア大富豪の教え#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

一攫千金を狙っているうちは、いつまでたってもお金持ちにはなれません。

日々の努力の積み重ねが必要不可欠であることがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

世界は不確実性を増しています。・・・社会変動のスピードは速くなる一方で、一寸先を見通すことができる人などひとりもいません。そして、まったく想定外の事態が次々と襲いかかってくる。何が起きてもおかしくない。そんな時代を迎えているのです。
このような時代を生きるうえで最も危険なのは、自分以外の『何か』になんとなく追随するような生き方をすることです。」(300頁)

とはいえ、現実には、圧倒的多数の方が自分以外の「何か」になんとなく追随して生きています。

高度経済成長期ならそれでもよかったのでしょう。

しかし、それも今は昔。

世の中には、みんなと同じであることで安心する人と、みんなと同じであることで不安になる人がいます。

大勢の中に埋もれることで安心するか、不安になるか。

あなたはどちら?

不当労働行為302 弁護士事務所の人間を称する者に実質的に代理させて交渉に当たらせたことが不誠実団交にあたるとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、弁護士事務所の人間を称する者に実質的に代理させて交渉に当たらせたことが不誠実団交にあたるとされた事案を見ていきましょう。

辰巳事件(群馬県労委令和4年5月19日・労判1282号96頁)

【事案の概要】

本件は、会社が、弁護士事務所の人間を称する者に実質的に代理させて交渉に当たらせたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【判例のポイント】

1 会社がBにどのような権限を与えたかを明確に示さずに実質的に代理させて交渉に当たらせたこと及び予め要求書に記載された要求事項に回答できる者を出席させなかったことは、合意達成の可能性を模索する義務に反している
さらに、Bが、C社がAの無断欠勤を問題にしている等の組合の適切な判断を誤らせるおそれのある虚偽の主張を繰り返したことは、誠実な交渉態度であったとは評価し難い。
したがって、第3回団体交渉における会社の対応は、不誠実であったといえる。

2 第4回団体交渉においては、会社の代表であるDが出席しており、Bが出席していたとしてもDの権限は明確であるから、会社側の出席者に特段の問題はない。また、第4回団体交渉において、第3回団体交渉におけるBの虚偽の発言が組合の判断に影響を与えていたと評価すべき事実は存在しない。よって、第3回団体交渉が不誠実なものであっても、第4回団体交渉に問題性が継続しているとまではいえない

上記判例のポイント1は、実際に団体交渉に携わる身としては、俄かには信じがたいです。

弁護士に代理人として同席してもらうようにしましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介1994 人に好かれたら、仕事は9割うまくいく#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

何でもそうですが、人に好かれるタイプのほうが結果が出やすいことは言うまでもない真実です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間関係において、相手を安心させるということはとても重要なことです。・・・そこで『どうしたら相手に安心感を与えることができるか』を、常に考えながら行動することが、人に好感を持って迎えられるための秘訣です。」(49頁)

報連相が大切だと言われる所以です。

そして、仕事がデキル人は、この報連相の塩梅が絶妙なのです。

逆に、仕事自体はちゃんとしているのに、報連相ができない人は、とっても損をしています。

報連相の頻度やタイミング、その内容の的確さを見るだけでも、「あー、この人、仕事できるわー」と思ってしまいます。

こういう人は、常に他者への想像力に長けているので、一事が万事、上手なのです。

報連相によって相手に与えているのは、情報ではなく、安心感なのです。

不当労働行為301 団体交渉における会社側の対応が不誠実団交に該当するとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、団体交渉における会社側の対応が不誠実団交に該当するとされた事案を見ていきましょう。

たくみ運輸事件(兵庫県労委令和4年9月6日・労判1280号101頁)

【事案の概要】

本件は、団体交渉における会社側の対応が不誠実団交に該当するかが争点となった事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 B1が査定根拠として説明した内容は、「収入とね。まあ売上げ。もう分かりやすく今回言うたったな、ETCの額こんだけ違いますよ。」など、客観性のない極めて曖昧なものであり、組合が考慮要素に対する計算式などの具体的な評価基準を質したことに対しても回答したことは認められず、会社は、支給基準に関し、何ら具体的な説明をしていないというほかはない

2 組合が改めて査定資料の提出を要求したことに対しても、会社は、個人情報を理由に応じておらず、自らの主張の論拠となる資料等を提示し、組合の要求及び主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に説明できていたとは認められない。
本件団体交渉の経緯に鑑みれば、会社は、組合に対し、本件一時金の算定に用いた相関表や計算過程が、記録・保存されていたならばその記録に基づき具体的に説明すべきであり、仮に、会社が、それらを記録・保存していなかったならば、可能な限りその内容を具体的に説明すべきであったというべきである。

3 会社の業績は一時金の支給原資に影響していると認められ、会社の業績が分かる資料を何ら示そうとしなかった会社の対応に理由があったとはいえない

4 本件一時金の交渉が継続しているにもかかわらず、会社が一方的に一時金を支給したことは、組合との団体交渉を軽視したものといわざるを得ず、不誠実な対応であったと判断する。

決算書類等の非開示の不当労働行為該当性が争点となる事案は少なくありません。

会社としてはできるだけ見せたくないと思う気持ちも理解できますが、不当労働行為と判断される可能性が高いのでご注意ください。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介1993 ダントツになりたいなら、「たったひとつの確実な技術」を教えよう#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

みんなと同じであることを美徳とする国ですから、ダントツになりたい等と考えている人の割合は極少数だと思いますので、極少数の方向けの本かと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人は、一年後の自分の達成度を過小評価し、10年後の達成度について過大評価しがちだ。スポーツ選手でもビジネスマンでも同様である。・・・この局面で重要なキーワードになるのが、忍耐である。粘り強いことが、力になる。特定の分野のスペシャリストになるには、あと一歩踏ん張る力が必要なのだ。」(100頁)

結局、多くの本に書かれている「大切なこと」は同じなのです。

継続すること、やり続けることがいかに大切であるか。

面倒なことを避けて、結果だけを求めることがいかに無意味であるか。

結果を出している人たちは、皆、勉強熱心で努力家です。

「努力するのは面倒くさい、でも成功したい。」

人は、これを「わがまま」と呼びます。

有期労働契約118 無期転換直前の雇止めの適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、無期転換直前の雇止めの適法性に関する裁判例を見ていきましょう。

日本通運(川崎・雇止め)事件(東京高裁令和4年9月14日・労判1281号14頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある雇用契約(最初の雇用契約開始日から通算して5年を超えて更新することはない旨の条項が付されていた。)を締結し、4回目の契約更新を経て勤務していたXが、Y社に対し、Y社が当初の雇用契約から5年の期間満了に当たる平成30年6月30日付けでXを雇止めしたことについて、①上記条項は労働契約法18条の無期転換申込権を回避しようとするもので無効であり、Xには雇用継続の合理的期待があった、②同雇止めには客観的合理性、社会通念上の相当性が認められないなどと主張し、Y社による雇止めは許されないものであるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同契約に基づく賃金請求権に基づき、上記雇止め後である同年8月25日から毎月25日限り月額賃金26万9497円+遅延損害金の支払を求める事案である。

原判決は、Xの請求をいずれも棄却したため、Xは、原判決の全部を不服として控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 労働契約法18条の規定は、有期労働契約が反復更新され、長期間にわたり雇用が継続する場合においては、雇止めの不安があることによって、年次有給休暇の取得など労働者の正当な権利行使が抑制される問題が生じることなどを踏まえ、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、有期雇用労働者の申込みにより期間の定めのない労働契約に転換する仕組みを設けることによって、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的とするものと解される。他方で、同条の規定が導入された後も、5年を超える反復更新を行わない限度において有期労働契約により短期雇用の労働力を利用することは許容されていると解されるから、その限度内で有期労働契約を締結し、雇止めをしたことのみをもって、同条の趣旨に反する濫用的な有期労働契約の利用であるとか、同条を潜脱する行為であるなどと評価されるものではない
もっとも、5年を超える反復更新を行わない限度で有期労働契約を利用することが同条に反しないとしても、同法19条による雇止めの制限が排除されるわけではないから、有期労働契約の反復更新の過程で、同条各号の要件を満たす事情が存在し、かつ、最終の更新拒絶が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、同条により、労働者による契約更新の申込みに対し、使用者が従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で承諾したものとみなされ、その結果、労働契約が通算5年を超えて更新されることとなる場合には、有期雇用労働者は、同法18条の無期転換申込権を取得することとなると解される。

2 使用者が、一定期間が満了した後に契約を更新する意思がないことを明示・説明して労働契約の申込みの意思表示をし、労働者がその旨を十分に認識した上で承諾の意思表示をして、使用者と労働者とが更新期間の上限を明示した労働契約を締結することは、これを禁止する明文の規定がなく、同法19条2号の適用を回避・潜脱するものであって許容されないと解する根拠もないというべきである上、使用者と労働者とが更新期間の上限を明示した労働契約を締結したという事情は、上記にいう契約期間管理の状況、雇用継続の期待を持たせる使用者の言動の有無といった考慮事情と並んで、契約の更新への期待の合理的理由を否定する方向の事情として、当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められるか否かを判断する際の考慮要素となるというべきである。

この論点については、だいたい決着がついたと見ていいと思います。

一番最初の契約締結時に更新上限を設定することが大切です。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。