本の紹介2032 日本のシン富裕層(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

サブタイトルは、「なぜ彼らは一代で巨万の富を築けたのか」です。

富裕層の判断傾向や習慣、関心事がよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

日本のサラリーマンは、上下関係を重んじ、目上の人を立てて丁寧な対応や言葉遣いをします。それ自体はいいことなのですが、企業勤めが長くなり、『自分の独自の考えよりも、上の指示に従って仕事をすべきだ』という働き方を長くしていると、どうしても考え方にまで影響が及んでしまい、判断力、目利き力が衰えていくように思います。」(91頁)

人は周りの環境から大きな影響を受けます。

また誰の影響を強く受けたかによって、その人の人格や考え方が形成されていきます。

人生において何を重視するか、という価値観についても同様です。

自由なのか、安定なのか、変化なのか。

一度作られた人格や価値観は、そう簡単には変わりません。

「最初が肝心」と言われる所以です。

不当労働行為306 使用者が「ユニオンとは何か-その実態と対応方法-」という資料を配布し読み上げた行為の不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、使用者が「ユニオンとは何か-その実態と対応方法-」という資料を配布し読み上げた行為の不当労働行為該当性に関する事案を見ていきましょう。

一般財団法人あんしん財団(資料配布)事件(東京都労委令和3年6月15日・労判1288号110頁)

【事案の概要】

本件は、使用者が「ユニオンとは何か-その実態と対応方法-」という資料を配布し読み上げた行為の不当労働行為該当性に関する事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 各支局長が本件資料を職員に配布し読み上げて説明した行為は、社会的にも財団にとっても好ましくない存在であるとの印象を与え、組合への敵対意識を醸成するものであり、また、組合員である職員に対しては、組合への不信感を抱かせ、組合活動への委縮効果を与えるものであるから、組合の組織運営に対する支配介入に該当する。

2 財団は、本件研修は、組合の違法不当な情宣活動に対抗するためにやむを得ないものであったと主張する。
しかし、組合の情宣活動に必ずしも適当とはいえない面があったとしても、それは、組合との交渉や組合への抗議、あるいは訴訟による法的手段等により解決を図るべきものであり、組合の情宣活動への対抗手段として支配介入行為が許されるものではないので、財団の主張は採用することができない。

財団側の気持ちは理解できなくはありませんが、労働組合法上のルールからしますと、上記結論自体には異論がないところかと思います。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介2031 誰も教えてくれなかった 運とツキの法則#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から11年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

まさに運とツキをつかむ方法が書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

物事に悲観的になっている人やしょげている人にはけっして運とツキはおとずれません。明るく頑張っている人、努力を惜しまない人に運とツキはやってくるものです」(38頁)

世の中の大半のことは「運」だと説く人もいます。

「運」の良し悪しはもう先天的に決まっているのでしょうか。

私にはわかりませんが、いずれにせよ、悲観的な人、批判的な人よりも楽観的でいつも何かに挑戦しているような前向きな人の方が運やツキが回ってくるような気がします。

プラスにはプラスが、マイナスにはマイナスが引き寄せられる法則の帰結です。

不当労働行為305 面談における支局長の発言が支配介入にあたるか(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、面談における支局長の発言が支配介入にあたるかが争われた事案を見ていきましょう。

一般財団法人あいんしん財団(解雇等)事件(東京都労委令和4年10月18日・労判1288号106頁)

【事案の概要】

本件は、面談における支局長の発言が支配介入にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

支配介入にあたる

【命令のポイント】

1 B支局長が、平成29年12月25日の面談において、Aに対して「早期退職って制度があるじゃん」、「辞めても裁判って続けられるじゃん」などと発言していることからすれば、この面談では、Aに退職の勧奨を行ったとみるのが相当である。
上記面談で、B支局長は、早期退職の募集とは無関係である係属中の訴訟を引き合いに出して、退職することを促している。当時、Aら7名の配転に係る訴訟が進行し、判決言渡し(平成30年2月26日)直前であったなど、労使が対立的な関係にあったといえる。
B支局長は、所属職員の管理監督に当たる立場であり、財団の利益代表者に近接する職制上の地位にあるところ、同人の発言は、上記のように損害賠償請求事件等をめぐる対立的な労使関係を踏まえたものであるから、使用者の意を体して行ったものといわざるを得ない。
そうすると、B支局長の発言は、財団の意を体して、組合員であるAを、早期退職募集の機会を利用して排除しようとしたものということができる。
よって、B支局長の上記発言は、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合員を排除することにより組合の弱体化を図る支配介入にも当たる。

組合との対立関係が生じているときに、組合員に対して直接退職勧奨をすると不当労働行為と評価される可能性が高いので注意しましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介2030 成功の掟#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

物語を通じて、成功哲学、成功するための心構えが伝わってきます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ずっと昔から賢人たちは、『人間の成長を妨げ、いちばんの障害となるものは、自己の精神的限界だ』と言っている。その限界をできるだけ広げようとしなさい。それで人生もひらけていく。」(72頁)

みな、自分の限界を打ち破る勇気がないのだ。自分で限界を定めてしまうことで、やがてそれが連中の気質となり、平凡に生きることに慣れきってしまう。そして『人生とはこんなものだ』と思い込む。臆病さが夢を捨てているのだ。」(74頁)

That’s life…

「限界」は多くの場合、主観的なものです。

「もうだめだ」「もう無理だ」と思わなければ限界はありません。

ただ、平凡な生活に慣れきってしまうと、いざ挑戦しようと思っても、もう体が言うことを聞かないのです。

そして、「俺の人生、こんなもん・・」とあきらめてしまう。

コンフォートゾーンに浸からないように意識しなければいけません。

常に何かに挑戦し続けることがとっても大切なのだと思います。

セクハラ・パワハラ75 民事訴訟法における違法収集証拠の取扱い(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、妊娠した歯科医師の診療予約をしにくくした行為が不法行為に該当するとされた事案を見ていきましょう。

医療法人社団A事件(東京地裁令和5年3月15日・労経速2518号7頁)

【事案の概要】

本件は、Y法人と労働契約を締結しているXが、①Aから、「不法行為一覧表」記載の不法行為を受けたと主張して、不法行為に基づく損害賠償並びに医療法46条の6の4が準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条に基づき、Y社らに対し連帯して、336万4362円+遅延損害金の支払を、②令和2年1月支給分の給料について、有給休暇取得分(1日)が反映されておらず、未払賃金があると主張して、5万3345円+遅延損害金の支払を、③令和2年10月支給分の給料について、有給休暇取得(1日)が反映されておらず、未払賃金があると主張して、6万4849円+遅延損害金の支払を、④安全配慮義務が果たされていないため、労務の提供ができないと主張して、未払賃金として、48万4877円+遅延損害金の支払を、令和4年7月から本判決確定の日まで、毎月15日限り88万4389円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、5万3345円+遅延損害金を支払え

Y社はXに対し、6万4849円+遅延損害金を支払え

Y社はXに対し、45万6036円+遅延損害金を支払え

Y社はXに対し、令和4年7月から本判決確定の日まで、毎月15日限り、83万1595円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 民事訴訟法が証拠能力(ある文書や人物等が判決のための証拠となり得るか否か)に関して何ら規定していない以上、原則として証拠能力に制限はなく、当該証拠が著しく反社会的な手段を用いて採集されたものである場合に限り、その証拠能力を否定すべきである。
これを本人についてみると、①証拠Aは、許可なく診療録を写真撮影したもの、②証拠Bは、許可なく予約画面等を写真撮影したものであるが、これらを前提としても、著しく反社会的な手段を用いて採集されたとはいえないから、証拠能力を肯定すべきである。
③証拠Cは、控室の会話に関する秘密録音の反訳書面で、控室におけるXとAとの会話、Xが不在時の控室内における本件歯科医院のスタッフの会話を、X以外の発言者の知らないところでその発言を録音されたというものであって、これを前提としても、当該録音が著しく反社会的な手段を用いて採集されたとはいえないから、証拠能力を肯定すべきである。
また、甲第107号は、診察ブースにおけるXと患者との会話の秘密録音の反訳書面である。当該患者は、守秘義務を負っている歯科医師のXが許可なく、会話を録音し、それを外部に提出することは全く想定していないのが通常であり、当該患者の人格権に関する侵害の度合いは高いことは否定できないが、これを前提としても、録音された当該患者が証拠の排除を求める場合はさておき、少なくともY社らとの関係においては、著しく反社会的な手段を用いて採集されたものとまではいえないので、証拠能力を肯定すべきである。

ご覧のとおり、民事訴訟においては、かなり広く証拠能力が認められています。

とはいえ、一線を越えてしまうと大きな問題になりますので注意が必要です。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。

本の紹介2029 Super Free Agent Style#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から10年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

今では全く状況が異なる与沢さんですが、今も昔も、お金を生み出すプロです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

成功していないのに貯金ばかりしている人は、お金の性格を知らないため、成功には程遠い。お金は自分の潜在意識をよりよい方向に導くために使うのがベストだ。成功にとって一番重要なのは、お金でも人脈でも物でもなく、潜在意識の変革だ。」(186頁)

心の底で「どうせ無理」「どうせ失敗する」と思っているのか、「どうせできる」と思っているのか。

この差は本当に大きいです。

土壇場で踏ん張れるか。

すぐに諦めてしまうか。

知識の差よりも意識の差です。

セクハラ・パワハラ74 大学教授らの厳しい叱責等が違法なハラスメント行為にあたらないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、大学教授らの厳しい叱責等が違法なハラスメント行為にあたらないとされた事案を見ていきましょう。

国立大学法人A大学事件(旭川地裁令和5年2月17日・労経速2518号40頁)

【事案の概要】

第1事件は、Y大学の准教授であるA及び同助教であるBが、同享受であるC及び同講師であるDから、ハラスメント行為を受け、抑うつ状態となり、病気休暇取得を余儀なくされるなどの精神的苦痛を受けたと主張して、それぞれCらに対し、不法行為に基づき、330万円の損害賠償+遅延損害金の連帯支払を求める事案である。

第2事件は、Aらが、Cらによるハラスメント行為を受け、精神的苦痛を受けたと主張して、それぞれY大学に対し、民法715条、415条又は国家賠償法1条1項に基づき、第1事件と同額の330万円の損害賠償+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Cの各発言は、Aの引越業者への連絡の失念という業務上のミスに端を発し、その報告を怠ったことに関する業務態度を指導する中でされたものと認められる。そして、Cが、A、B両名に対し、以前から同様の業務態度に関する指導を繰り返していたことや、上記ミスにより本来不必要な費用負担が生じたことに加えて、上記のとおり、Cは、Iから、A、B両名が研究ばかりして動物実験施設の業務を職員に丸投げしているとの報告を受けていたところ、当時、Aは、Cの知らないところで研究助成金の学内申請をしており、そのことに関して、共同研究者への配慮を理由として、Cに報告しないことを正当化する発言をしたことや、H棟の運用開始に向けた業務に遅れが生じていたことなどが認められ、Cが、同会話の中で、Aの返答に怒りを覚えたことは、ある程度、理解し得るものといえる。
Cの「どつき倒したいくらいむかついてんだよ」という発言自体は、当該部分のみを見れば、部下に対する発言として、不適切なものといわざるを得ないが、他方で、会話中、同程度に不適切な発言が繰り返されているものではなく、むしろ、他の場面では、Aのキャリアや成長に期待する趣旨の発言もされているなど、会話全体の内容を踏まえると、Cによる叱責が相当長時間に及んだことを考慮しても、いまだ業務指導として適正な範囲を超えるものとまではいえず、違法なハラスメント行為に当たるとまでは認められない。

ぎりぎりの評価ですが、発言の一部分を切り取るのではなく、会話全体の内容を考慮するという考え方は理解しておくべきです。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。

本の紹介2028 情熱経営#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

著者は、湘南美容クリニックの代表の方です。

タイトルのとおり、経営に対する情熱が伝わってきます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間の本質は他人の力で変えることはできません。しかしながら、本人が自分を変えようと思ったら、変わることはできます。どんなにお金と時間をかけて研修し、教育しても、自分が変わろうと思わなければ、人は変わりません。」(143頁)

真実です。

人間はそう簡単には変わりません。

良くも悪くも。

表向き変わったように見えても、本質的な部分、根っこの部分は、まさに「三つ子の魂百まで」です。

あまり多くを期待しないことです。

賃金264 有期労働契約を理由とする労働条件の相違と同一労働同一賃金の原則(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、有期労働契約を理由とする労働条件の相違と同一労働同一賃金の原則について見ていきましょう。

日東電工事件(津地裁令和5年3月16日・労判ジャーナル136号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と期間の定めのある労働契約を締結していたXら60名が、期間の定めのない労働契約を締結している労働者とXらとの間で、通勤手当、扶養手当、リフレッシュ休暇、賞与及び賃金、年次有給休暇、特別休暇及び福利厚生等に相違があったことは改正前労働契約法20条に違反するものであったと主張し、Y社に対し、主位的に、不法行為に基づき、損害賠償金等の支払を求めるとともに、Xらは、Y社との当初の労働契約締結時から雇用区分の中における有期雇用契約社員ではなく準社員であったのに賞与が支払われなかったとして、主位的に、不法行為に基づく損害賠償金等の支払を求め、予備的に、準社員としての地位に基づく賞与支払請求権に基づき未払賞与等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 通勤手当は、正社員は正社員就業規則によりその支給がされるが、有期雇用契約社員にはその規定がなく、実際に支給されていなかったことから、この相違は労働契約の期間の定めの有無によるものと認められるところ、Y社において、通勤バスを手配し、その経路についても有期雇用契約社員にある程度配慮した上で決定されており、通勤手当を支給しない代わりの代替手段が存在し、十分に機能していたものといえるから、通勤手当の相違が、不合理であるとは認められない

2 扶養手当は、正社員賃金規則所定の条件を満たせば扶養手当が支給される一方で、有期雇用契約社員らにはその規定がなく、実際に支給されていなかったから、この相違は労働契約の期間の定めの有無によるものと認められるところ、Y社の正社員に対して扶養手当が支給されているのは、正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから、その生活保障や福利厚生を測り、扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせることを通じて、その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられ、上記目的に照らせば、有期雇用契約社員らにおいても、扶養親族があり、かつ、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、扶養手当を支給することとした趣旨は同様に妥当するというべきであり、正社員とXらのように長期にわたって勤務している有期雇用契約社員らとの間に扶養手当に係る労働条件の相違があることは、不合理であると認められる。

うーん・・・なんというか、言葉遊びというか物は言いようというか。

どう説明するかだけの問題のように思えてきます。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。