本の紹介2071 これからの世界をつくる仲間たちへ#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

「これからの時代」をどう生きていくのかが書かれています。

7年前の本ですが、今読んでも遜色ありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分の幸福感を明確にするには、仕事に対する考え方を最初に整理しておくべきでしょう。要するに、問題解決という行為そのものが幸福なのか、仕事以外の余暇が幸福なのかということです。」(165頁)

仕事もプライベートも両方とも幸せであるのがベストであることは言うまでもありません。

自由に自分が好きなように仕事をし、プライベートな時間も過ごせる。

このバランスを維持することが、私の幸せです。

まさにノーストレスな状態。

どれだけ経済的に豊かになっても、さまざまなことに制約があり不自由を感じるのであれば、幸福度はそれほど高くありません。

それゆえ、いかにして経済的・精神的「自由」を手に入れ、そのバランスを維持できるかが極めて重要なのです。

賃金274 免許取得のための教習費用相当額貸付け制度が労基法16条に違反しないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、免許取得のための教習費用相当額貸付け制度が労基法16条に違反しないとされた事案を見ていきましょう。

東急トランセ事件(さいたま地裁令和5年3月1日判決・労経速2513号25頁)

【事案の概要】

本件第1事件は、Y社が、Y社の従業員であったXに対し、消費貸借契約に基づき、貸金31万0800円+遅延損害金の支払を求める事案である。

本件第2事件は、Xが、Y社で就労中、上司らから、退職強要、パワハラ、不当な減給等を受けたために、精神的苦痛を受け、退職や離婚を余儀なくされたなどと主張して、不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償として、民法709条、715条1項に基づき、損害合計1882万円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Xは、Y社に対し、31万0800円+遅延損害金を支払え。

2
 Xの請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 Xは、本件消費貸借契約の契約書は、必ず提出するよう言われ、書くことを強要されたもので、自由な意思ではないから無効である旨主張する。
しかしながら、入社経緯に加え、そもそも、教習所の費用については、一般に、借り入れしなくても支払う選択肢もあり得るのであること、本件消費貸借契約には利息の定めもなく、Y社がかかる契約を強制するメリットも考えられないことに照らすと、Xが、本件消費貸借契約書の契約書について、記載を強要されたものと認めることはできない。

2 本件においては、本件消費貸借契約は、労働契約の履行、不履行とは無関係に定められており、単に労働した場合には返還義務を免除するとされている規定である。加えて、確かに、大型二種免許は、Y社のバス運転士としての業務に不可欠の資格であるが、国家資格として、X本人に付与される資格であり、他の業務にも利用できること(なお、Xは、後に交通事故に遭い、資格を生かすことができない旨主張するが、かかる事後的な事情が本件消費貸借契約の有効性に影響を与えるものではない。)、X自身も、Y社の養成制度を理解した上で本件消費貸借契約を締結したものと認められること、その金額も、31万0800円とXの月額給与二か月分程度であることなどに照らせば、本件消費貸借契約が、Xの自由意思を不当に拘束し、労働関係の継続を強要するものということはできない。
以上によれば、本件消費貸借契約は、Y社がXに対して貸付をしたものとして、本来労働契約とは別に返済すべきでものであるが、一定期間労働した場合に、返還義務を免除する特約を付したものと解するのが相当であって、労働契約の不履行に対する違約金ないし損害賠償額の予定であると解釈することはできない。

この種の事件は比較的多く発生していますので、ポイントをしっかりと押さえてください。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

本の紹介2070 はしゃぎながら夢をかなえる世界一簡単な法#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

限られた人生をいかに楽しく生きていくかということを真剣に考える本です。

どのように生きたって人生はあっという間に終わってしまいます。

好きなように生きればいいのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

嫌な人に気に入られるためにすごくエネルギーを使って、本当に共感してくれている人に少ししかエネルギーが使えないのは、どこか間違っています。エネルギーを注ぐ対象を絞ったほうがずっとラクになれます。そうすれば『本当にそれがいい』と共感してくれるいいお客さんだけが来てくれるようになります。」(223頁)

全く同感です。

つまり、万人から好かれようとしない、ということです。

これは、仕事でもプライベートでも、本当に大切な考え方です。

嫌われること、非難されることを過度に恐れるあまり、どんどんストレスが溜まっていくのです。

大丈夫です。万人から好かれなくても生きていきますので。

労働時間100 就業規則に記載がない勤務シフトの使用を理由に、変形労働時間制の適用が無効と判断した一審判決が維持された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、就業規則に記載がない勤務シフトの使用を理由に、変形労働時間制の適用が無効と判断した一審判決が維持された事案を見ていきましょう。

日本マクドナルド事件(名古屋高裁令和5年6月22日・労経速2531号27頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結していたXが、Y社に対し、
①Y社が、XとY社との労働契約が平成31年2月10日付け退職条件通知書兼退職同意書による合意解約により終了したと主張するのに対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、
②主位的に退職の意思表示が無効であることを理由とする労働契約に基づく賃金請求として、予備的に違法な退職強要があったことを理由とする不法行為又は債務不履行(安全配慮義務違反)に基づく損害賠償請求として、退職日の翌日である令和元年5月1日から本判決確定の日まで、毎月末日限り45万4620円+遅延損害金の支払、
③時間外労働を行ったと主張して、労働契約に基づき平成29年3月13日から平成31年2月12日までの未払割増賃金合計486万0659円の一部である61万0134円+遅延損害金の支払、
④付加金+遅延損害金の支払
⑤(ア)Y社における業務や違法な退職強要等により労作性狭心症及びうつ病を発病したことを理由とする不法行為又は債務不履行(安全配慮義務違反)に基づく損害賠償請求若しくは(イ)上司らによるパワーハラスメント等により人格的利益を侵害されたことを理由とする使用者責任(民715条)に基づく損害賠償請求として、慰謝料500万円の一部である200万円+遅延損害金の支払
を求める事案である。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 変形労働時間制の有効性について
当裁判所の判断は、原判決41頁10行目から42頁16行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
したがって、Y社の定める変形時間労働制は無効であるから、本件において適用されない。

第1審判決は、こちらをご覧ください。

そういうことのようです。

多くの事案で変形労働時間制の適用が無効と判断されています。

有効要件をしっかりと満たしているかを専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2069 2030 未来のビジネススキル19(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

タイトルのとおりの内容です。

この19のスキルは、決して近未来で活躍するためだけに必要なものではなく、これまでもずっと必要とされてきたであろうものです。

今後はより必要とされるスキルであることは言うまでもありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

メンバーシップ型雇用では新入社員は同じ額の給料から一斉にスタートしますが、ジョブ型雇用の場合は入社した段階から専門的な能力に応じて給料の額に倍以上の差がつけられることも珍しくありません。つまり、世の中は完全に能力主義に向かっているんです。ですから、各人は能力を高めなければ仕事に就けなくなるし、高い給料ももらえなくなるわけです。この変化に対応するのは、自らの能力を高めるための投資をする必要があります。」(322頁)

ほらね。

自己投資の重要性については、昨日今日言われ始めたことではなく、もうかなり前から言われ続けていることです。

やっている人は、ずっと前から当たり前のようにやっています。

自らの商品価値を高める努力を続けなければ、顧客から選ばれなくなってしまいます。

人が寝ているとき、休んでいるとき、遊んでいるときにいかに準備をし続けるのか。

ただそれだけの話です。

労働時間99 研修医のオンコール待機時間等の労働時間該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、研修医のオンコール待機時間等の労働時間該当性について見ていきましょう。

医療法人社団誠馨会事件(千葉地裁令和5年2月22日・労判1295号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が開設する病院において後期研修医として勤務していたXが、Y社に対し、①雇用契約又は労働基準法37条1項及び同条4項に基づき、①未払の割増賃金658万2125円+遅延損害金、②付加金+遅延損害金、③上級医によるパワーハラスメントのために適応障害を発症し退職を余儀なくされ損害を被ったと主張して、安全配慮義務の違反による損害賠償請求権に基づき、703万9522円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、503万3005円+遅延損害金を支払え。

Y社はXに対し、付加金322万0483円+遅延損害金を支払え。

Y社はXに対し、233万9522円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件契約では、年俸922万8000円を12等分割(月額基本給76万9000円)にて支給する、原則として日直・当直などを行った場合は、別途規程により加算されるが、臨時日・当直及び時間外手当、早出、呼出、待機、手術手当等の手当については本給に含まれるとの合意がされたにとどまり、固定残業代額の明示はなく、また、Y社が、Xに対し、本件契約締結の際、基本給のうち20万4000円を固定残業代として支払う趣旨であるとの説明をしたとの的確な証拠もない。そうすると、Xが、月額基本給のうち時間外労働に対する対価がいくらかであるかを判別できたとはいえないから、上記合意は無効である。

2 オンコール当番医は、本件病院外においては、緊急性の比較的高い業務に限り短時間の対応が求められていたに過ぎないものであり、Xについても、これを求められる頻度もさほど多くないものと認められる。そうすると、本件病院外でのオンコール待機時間は、いつ着信があるかわからない点等において精神的な緊張を与えるほか、待機場所がある程度制約されているとはいえるものの、労働からの解放が保障されていなかったとまで評価することはできない

3 本件病院に出勤して勤務した時間は、別紙5の「病院側試算」欄の「オンコール対応」欄記載のとおりであり、その時間が労働時間であると認められる。

上記判例のポイント2の判断は、最高裁の考え方に沿うものですが、なぜこのような事情があると労働から解放されていると評価できるのか、いまだによくわかりません。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

 

本の紹介2068 セクシープロジェクトで差をつけろ!#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

つまらない仕事などない。目の前の仕事をつまらないと感じる自分がいるだけだ、ということがよくわかる本です。

幸せは、事実ではなく解釈によるということを学ぶにはとても良い本です。

このことを知っているだけ人生の幸福度は大きく変わります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

成功にも失敗にも等しく報いる。罰するのは怠惰だけだ」(196頁)

私見ですが、怠惰であるか、勤勉であるかは、先天的なものとまでは言いませんが、人生の早い段階で決まってしまっているように思います。

可塑性がある段階における親や友人関係等の周りの環境が強く影響しているものと思われます。

大人になって、ある日突然、両者が逆転するという事例を私は見たことがありません。

勤勉な人はずっと前から勤勉ですし、その逆もまたしかり。

三つ子の魂百まで。

人はそう簡単には変わらないということです。

不当労働行為311 救済申立てが申立期間を徒過していることを理由に却下された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

今日は、救済申立てが申立期間を徒過していることを理由に却下された事案を見ていきましょう。

ジェコー事件(埼玉県労委令和4年10月20日・労判1295号100頁)

【事案の概要】

本件は、申立人Xに対するパワハラ・セクハラを議題とした団体交渉において、Y社が事実をねつ造して回答し、Xを職場離脱の常習者に仕立て上げ、Xに精神的な虐待をしたことが、労組法7条1号及び3号の不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

申立て却下

【命令のポイント】

1 労組法27条2項は、救済申立期間を行為の日から1年としており、これは、行為の時点から長期間経過することにより、証拠収集や事実認定が困難となり、救済命令を出したとしても実益がないか、又はかえって労使関係の安定を阻害するおそれもあるとして定められた客観的な期間というべきである。
本件救済申立てに係るY社の行為としては、令和2年5月21日付けで文書を発出したことが最後であり、本件救済申立ては令和3年8月20日になされているから、本件救済申立てがY社の行為の日から1年を超えてなされているのは明らかである。

この論点の場合、ほとんど例外なく、「継続する行為」に該当するか否かが争われます。

「継続する行為」であるときは、その終了した日から1年となるため、起算日を遅らせることができるからです。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介2067 ブランド人になれ!#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

約25年前の本ですが、今、読んでも全く色褪せる内容ではありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

世の中をはすに眺めていて、成功した人など見たことがない。たしかに世の中にはくだらないものもある。だが、自分の仕事、自分のプロジェクトをくだらないと思っていて、成功した人などいるはずがない。マイケル・ジョーダンはバスケットボールなんてくだらないと思っているか。マグワイアは野球なんてくだらないと思っているか。スピルバーグは映画なんてくだらないと思っているか。思っているはずがない!」(54頁)

こういう人たちは、だいたいが仕事が大好きで、時間も忘れて仕事に没頭できる人です。

したがって、休みもなく仕事をしていても、好きでやっているので、苦労・苦痛とは思っていません。

まさに「好きこそ物の上手なれ」です。

自分の仕事、職業を愛している人には敵わない所以です。

賃金273 未払賃金等請求訴訟において出退勤時刻等を手書きで記載した文書の提出命令が発せられた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、未払賃金等請求訴訟において出退勤時刻等を手書きで記載した文書の提出命令が発せられた事案を見ていきましょう。

對馬事件(東京地裁令和5年8月4日・労経速2530号20頁)

【事案の概要】

基本事件は、Y社との間で労働契約を締結し、Y社が経営する中華料理店で勤務していたXらが、時間外労働等をしたほか、交通費を支出し、経費を立て替えたと主張して、Y社に対し、労働契約に基づき未払割増賃金、交通費及び立替経費の支払を求めるとともに、労基法114条に基づき付加金の支払を求めた事案である。

Xは、本件文書1及び2の各文書について、Y社が所持しており、民訴法220条4号イないしホの除外事由に該当せず、取調べの必要性があると主張する。
これに対し、Y社は、Xらとの間で本件文書1は作成していない、Xらに関する本件文書2は給与の計算等が完了するとその都度は破棄していたため、存在しないと主張する。

(別紙1)

1 XらとY社との間で締結した労働条件通知書兼雇用契約書

2 令和3年1月から令和4年10月において、Y社が経営する麻布十番の高級料理店「對馬」でXらが出勤時、退勤時、休憩開始時、休憩終了時の都度手書きでそれら時刻を記載した紙

【裁判所の判断】

Y社は、本決定確定の日から2週間以内に、別紙1文書目録記載2の文書を提出せよ。

【判例のポイント】

1 Y社は、タイムカードを導入しておらず、Xらの労働時間を管理する文書としては本件文書2しかないのであるから、本件文書2は、「労働関係に関する重要な書類」(労基法109条)として、使用者たるY社が5年間の保存義務を負っていると認められる。しかも、違反した場合は罰金の罰則もあるのであるから(同法120条1号)、所持している蓋然性が非常に高いといえる。
このような点に照らすと、本件文書2は給与の計算等が完了するとその都度破棄していたとのY社の上記主張は、破棄の事実について具体的な裏付けもないまま、採用することはできないといわざるを得ない。
したがって、本件文書2は相手方が所持しており、民訴法220条4号イないしホの除外事由に該当しないから、相手方は本件文書2の提出義務を負う。
また、基本事件において、Xらの労働時間に争いがあるから、本件文書2を取り調べる必要がある。

文書提出命令が出された事案です。

文書所持者が文書提出命令に従わない場合や、裁判での使用を妨害する目的で当該文書を滅失した場合、「当該文書の記載に関する相手方の主張」あるいは「その事実に関する相手方の主張」を、裁判所は真実と認めることができます。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。