労働時間108 夜勤勤務の休憩時間に関する未払割増賃金等支払請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、夜勤勤務の休憩時間に関する未払割増賃金等支払請求に関する裁判例を見ていきましょう。

医療法人みどり会事件(大阪地裁令和5年12月25日・労判ジャーナル147号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、介護老人保健施設において介護職員として勤務していたXが、Y社に対し、未払時間外割増賃金等の支払並びに労基法114条に基づく付加金等の支払を求め、また、同法39条の年次有給休暇の取得を申請していないのに、Y社が、Xに無断でこれを取得したこととしてその残日数を減少させたとして、不法行為に基づき、当該日数の賃金相当額の損害賠償等の支払を求め、さらに、令和3年度上半期及び下半期の賞与の算定にあたって、合理的な理由なく最低評価をしたとして、不法行為に基づき、それぞれ減額分2万円の損害賠償等の支払等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払割増賃金等支払請求一部認容

損害賠償等請求一部認容

【判例のポイント】

1 夜勤時の休憩時間に関して、本件運用変更前について、Xが、夜勤において、夜勤者2名の間で休憩に関する取り決めがなく、相勤者がナースコール等に対応するとは限らなかった以上、Xは、当該待機時間中、常にこれに対応する必要があったというほかなく、そして、ナースコール等の回数は、毎回の夜勤ごとに相当の回数に及んでおり、これがごく稀であって実質的に対応の必要が乏しかったとみることもできないから、Xは労働からの解放が保障されていたとはいえず、Y社の指揮命令下に置かれていたと評価するのが相当であり、本件運用変更後も、本件施設の介護職員は、夜勤時に休憩を取得すべきとされる時間帯においても、相勤者が巡視やナースコール等への対応を行っている間に利用者から重複ナースコール等があった場合における対応を免除する旨の指示を受けておらず、このような事態がごく稀であって実質的に対応をする必要がなかったともいえないから、休憩時間とされる時間についても、労働からの解放が保障されていたとはいえず、Y社の指揮命令下に置かれていたといわざるを得ないから、本件運用変更の前後を問わず、本件請求期間中のXの夜勤については、休憩時間を取得することができたものとは認められない

2 Y社の就業規則には、1か月単位の変形労働時間制を採用する旨の記載があるが、Y社の就業規則において、Y社が実際に作成した勤務割表の労働時間に対応する各日・各週の労働時間の特定がされているとは認められず、当該変形労働時間制は、労働基準法32条の2第1項所定の要件を欠くものといわざるを得ない。

上記判例のポイント1の理屈は異論のないところかと思います。

看護師に限らず、警備員等についても、同様の議論が妥当します。

法律の考え方はわかっていても、人手不足の昨今、実際にどのように労務管理をしたらよいのか悩ましいところです。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2130 その仕事、全部やめてみよう#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から4年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

サブタイトルは、「1%の本質をつかむ『シンプルな考え方』」です。

意味のない、たいした成果の出ない、つまらない、無駄な仕事はどんどん手放そうということです。

そんな仕事をしている場合ではないということです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

一番やめるべき仕事は、没頭できない仕事だ。没頭せずに何かにとり組むことは、普通以下の成果しか出せない非効率な仕事の仕方だ。」(221頁)

自由に自分の仕事を選択できる人にとっては、まさにこの内容がそのまま当てはまります。

普通以下の成果しか出せない分野は勇気をもって切り捨ましょう。

あれもこれも手を出しているほど時間が有り余っていませんので。

限られた事案で成果を上げるためには、勇気をもって、選択と集中をするべきでしょう。

セクハラ・パワハラ89 上司らの発言につき安全配慮義務違反に基づく損害賠償等請求が一部認容された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、上司らの発言につき安全配慮義務違反に基づく損害賠償等請求が一部認容された事案を見ていきましょう。

アリスペッドジャパン事件(東京地裁令和5年3月2日・労判ジャーナル146号52頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、雇用契約に基づき、未払残業代等の支払を求め、また、在職中に職場内でパワーハラスメント及びセクシャルハラスメントを受けたと主張して、安全配慮義務違反又は使用者責任に基づき、損害賠償金300万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払残業代等支払請求棄却

損害賠償等請求一部認容

【判例のポイント】

1 D課長の各行為は、職務上何らの必要性のない、粗暴又は性的な言動であって、Xの就業環境を害するものであることは明らかであるから、Y社はXに対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償義務を負うものというべきであり、また、C代表は、1年以上過去の出来事について、食事会の場で、他の従業員の前で叱責をすること自体、指導方法として極めて不相当であるといえるから、Xの就業環境を害するものであったといえ、Y社は、Xに対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償義務を負うものというべきである。
そして、Xは、C代表及びD課長が性的な言動を繰り返していたと主張するところ、上記の各行為から推認される両名の人物像及びY社の職場環境からすれば、そのような言動があったものと推認することができるが、その点については、慰謝料を算定する際の考慮要素の一つとするのが相当であるから、Xに生じた精神的損害に係る慰謝料額としては、60万円が相当である。

性的言動を繰り返していたという主張について、仮に客観的な証拠が存在しない場合でも、上記のような推認により認定されることがありますので注意しましょう。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。

本の紹介2129 ナイチンゲール 心に効く言葉#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から11年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

ナイチンゲールさんの言葉を集めた本です。

ナイチンゲールさんは、クリミア戦争の際、看護師として戦地に行き、野戦病院の総責任者となった方です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私たちはまた、状況が変わることによって起こる変化を考慮することもしません。そのため、いまの自分にある、自分の仕事について学ぶのに必要な気力や機会が、これからもずっとあるように思っています。そして何も改善しないまま、訓練の期間は終わってしまいます。」(16頁)

人の人生は、まるで四季のように変化していきます。

ずっと春や夏の時期が続くかのような幻想を抱いてしまうかもしれませんが、必ず、秋が来て、そして冬になります。

20代、30代のような体力、エネルギーをずっと保ち続けられるわけではありません。

アリとキリギリスの話を持ち出すまでもなく、春や夏の間に、冬に備えた準備が必要なのだと思います。

賃金283 賃金の男女差別的運用に基づく差額賃金・賞与等支払請求が棄却された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、賃金の男女差別的運用に基づく差額賃金・賞与等支払請求が棄却された事案を見ていきましょう。

原田産業事件(大阪地裁令和6年1月31日・労判ジャーナル147号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において、事務職区分でY社に採用された女性であるXが、Y社において採用されていた賃金表は実質的に男女別の賃金表に当たり、労働基準法4条に違反する違法な賃金差別に当たるなどと主張して、民法709条に基づき、総合職に属する企画職区分の従業員との差額賃金・賞与等の支払及び慰謝料等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、他の商社と同様、Y社においても男女別賃金表が用いられていた旨主張するが、平成14年人事管理規定、本件人事管理規定やY社の新卒者を対象とした求人票には男女で賃金を区別する旨の記載はなく、また、Xが採用された平成19年5月以降のY社の賃金表には男女で賃金額を区別する旨の記載は見当たらず、Xが採用されてから、Y社において男女別賃金表が用いられた事実は認められず、その余の事情を検討しても、XがY社に採用されて以降、Y社が女性であれば全て事務職として処遇したり、賃金において男女差別的な運用をしたりしていたことを推認することはできず、その余の点を論ずるまでもなく、Xの請求は理由がない。

一見すると、非常に形式的な判断のようにも思いますが、この論点は今後、より活発に議論されることが予想されますので注意が必要です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2128 先が見えない時代の「お金」と「幸福」の黄金比(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは、「最短最速で結果を出して幸せに生きる!新しい『お金の思考法』」です。

また、帯には「稼ぐだけでは幸せになれない」と記載されています。

そのとおりです。お金を稼ぐことばかりにフォーカスしても一向に幸せにはなれません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

僕はこれまで、一時的に稼いだはいいけれど、生活水準を上げて悲惨な末路を迎えた人をいっぱい見てきました。たとえば、ビジネスで一時的に成功してお金がガーっと入ってきて、すごい高級時計を買って、ブランド物を買いまくって、キャバクラの沼から抜けられなくなった人とか…。3億円稼いでそれを全部使ってしまって、支払いがどうにもならなくなって、海外に逃げてしまった人とか…。」(132頁)

これは一般的な傾向としてよく見かける光景です。

収入が上がるのに比例して、支出が増えるのは世の常です。

ビジネスは、瞬間的にうまくいってもしかたなく、それを持続させることこそが重要です。

景気と一緒で波もあります。

だからこそ、一時的に収入が増えたとしても、調子に乗らないことが本当に本当に大切です。

私は、特に固定費を増やす選択には細心の注意を払っています。

うまくいっている時ほど注意をする、ということです。

セクハラ・パワハラ88 マタハラにより精神疾患が悪化し、退職を余儀なくされた医師の損害賠償請求が棄却された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、マタハラにより精神疾患が悪化し、退職を余儀なくされた医師の損害賠償請求が棄却された事案を見ていきましょう。

日南市事件(福岡高裁宮崎支部令和6年2月14日・労経速2547号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が運営するa病院に勤務していた医師であるXが、産休から勤務に復帰する前に行われたa病院の事務局長であるBとの面談において、同事務局長から安全配慮義務ないし信義則上の義務に違反する通知(Xに対し、復帰後の勤務日を週5日から週1日に減らす旨を内容とするもの)を受けたことにより、持病の精神疾患が悪化し、勤務に復帰することが困難となってa病院を退職することを余儀なくされたなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として918万8370円+遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は、Xの請求を棄却したところ、Xがこれを不服として本件控訴を提起した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Xは、B事務局長による本件通知は、Xに対し、希望・意向を一切聞くことなく、週1日勤務に変更するものであるから、出産を理由とする明らかな不利益な取扱いに当たる上、本件通知は、事実上修正の余地のない一方的なもので、Xは産休後の勤務条件について要望を述べ、必死に食い下がっていたが、受け入れられなかったものであり、仮に、本件通知が、Xの体調に配慮した提案であったとしても、本件通知の結果、Xの持病の著しい増悪を招いたことからすると、本件通知は違法であり、安全配慮義務違反の評価を免れず、Y社は、子を養育する女性医師に対する無意識の思い込みや障害に対するバイアスを背景に、Xの意向とすり合わせをする努力を全く欠いた極端な労働条件の不利益変更、妊娠等を理由とする違法な不利益取扱いをしたもので、女性職員が妊娠、出産後の健康の確保を図る措置を受けつつ、充実した職業生活を営むことができるように配慮する義務、妊娠等を理由とする差別や不利益取扱いを行わない義務、ハラスメント対処義務に違反するものであって、Xの働きやすい職場環境の中で働く人格的利益を侵害し、Xに甚大な精神的苦痛を与えたもので、地方公務員法13条及び男女雇用機会均等法1条、2条、11条の3に基づき、a病院が任命権者として負っている各種義務に違反したから、違法であると主張する。
しかしながら、①本件面談におけるB事務局長の提案内容は、産休前のXの勤務条件とは異なるものの、確定的なものでなく、初回の提案内容として不適切なものとはいえず、②本件面談日の設定や、③B事務局長の提案方法が適切なものでなかったとも、④精神障害を抱えるXに対する配慮に欠ける時期にされたものともいい難く、また、本件面談当時、B事務局長において、上記提案をすることで、Xの心身の状況を悪化させることを予期すべき状況にあったともいえないから、B事務局長が、本件面談において、Xに精神的、財産的損害を与えないようにする安全配慮義務及び交渉当事者に求められる信義則上の義務に違反したということはできないことは前記補正して引用する原判決第3の2(1)のとおりであり、これをもって、a病院がXを妊娠、出産、育児を理由として不利益に取り扱ったと認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

結果としては、違法ではないという判断になっていますが、産休から復帰するタイミングということもあり、労働者からマタハラと主張されることは覚悟をしなければいけません。

腫れ物に触るような対応になってしまうケースも散見されるように、現場での判断は本当に難しいことが多いです。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。

本の紹介2127 記憶に残る人になる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

サブタイトルは「トップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール」です。

トップ営業の方はたまたまトップになったわけではありません。

業種を問わず、参考になる考え方が書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

お客様を感動させたいと願うのであれば、真っ先に自分が感動することです。感動を知らない人が、人を感動させることはできません。あなたは最近、感動できているでしょうか。」(304頁)

おいしいものを知らない料理人が、おいしい料理をつくることができないと同じことです。

顧客のほうが料理人よりもおいしいものを知っているという逆転現象が至るところで起こっていることは、決して対岸の火事ではありません。

日頃、多忙を極め、インプットする時間的余裕がなく、結果、アウトプット過多になってしまっている方は要注意です。

意識して時間をつくり、インプットをしていくことで、進化をしていかないと、結果、時代に取り残されてしまいます。

昔取った杵柄で仕事ができるほど、甘くはありません。

管理監督者60 取締役統括部長であった原告の管理監督者性が否定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、取締役統括部長であった原告の管理監督者性が否定された事案を見ていきましょう。

アスク事件(東京地裁令和5年4月12日・労経速2547号32頁)

【事案の概要】

1 本訴は、Y1社において営業職として勤務していたXが、Yらに対し、次の各請求をする事案である。
ア Y1社に対し、時間外労働等に対する未払賃金として594万5288円+遅延損害金の支払
イ Y1社に対し、付加金として497万0113円+遅延損害金の支払
ウ Y1社に対し、退職金として、424万6504円+遅延損害金の支払
エ Xは、Y1社から退職金の現物給付として本件自動車を支給することが決まっていたのに、これが履行されていないと主張し、①Y2社に対し、Y2社との間の退職金の支給に係る債務引受合意に基づき、本件自動車の所有権移転登録手続の請求(主位的請求)、②Y1社に対し、本件自動車を支給しなかったとの債務不履行に基づき、損害賠償として230万円(本件自動車の時価)+遅延損害金の支払(予備的請求)
2 反訴は、①Y1社が、XにはY1社に在任中に労働契約上の義務違反(債務不履行)及び不法行為を構成する行為があったとして、Xに対し、これらの行為による損害賠償(債務不履行による損害6万2670円、不法行為による損害232万3269円)+遅延損害金を請求するとともに、②Y2社が所有権に基づき、Xに対し、Xが占有する本件自動車の引渡しを請求する事案である。

【裁判所の判断】

 Y1は、Xに対し、448万8522円+遅延損害金を支払え。
 Y1は、Xに対し、100万円+遅延損害金を支払え。
 Y2は、Xに対し、別紙2車両目録記載の自動車について所有権移転登録手続をせよ。
 Xは、Y1に対し、6万2670円+遅延損害金を支払え。
 Xのその余の本訴請求を棄却する。
 Y1のその余の反訴請求及びY2の反訴請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 ①Xは、従業員の人事考課を行っていたものの、最終的な決定は代表取締役が行っており、Xの意見が覆されることもあった。
②Xは、人材の採用に関して、応募してきた者の面接を行い、社長に意見を述べていたものの、Y社代表者が最終的な決定を行い、Xが採用すべきとの意見を述べた場合(6件)のうち、2件についてはY社代表者がこれと異なる意見を述べて、不採用となった。
③Xは、部下の異動について代表取締役に意見を述べていた。
④Xは部下の日報を確認していた。
以上の認定事実を踏まえて検討すると、たしかに、Y1社の機材の購入計画及び廃棄計画並びに売上管理表の原案を作成していた点では経営に関与しているとともに、人事考課、人材の採用等の場面において、代表取締役に意見を述べて、人事・労務管理に一定の役割を果たしたこと自体は否定できない
しかしながら、①Xは取締役ではあったものの、取締役会を通じて経営に参画していたとはいえないこと、②合同会議で議題されていた内容は経営方針そのものというよりは、それぞれの部門の実務的な課題と評価されるものであること、③統括部営業会議は、部門長が出席する会議であり、会議の内容を考慮しても、経営に関する意思決定が行われていたとはいえないこと、④Xには建設機械を購入する権限がなかったことからすると、Xが経営上の決定に参画していたとはいえない。
また、人事・労務管理上の権限に関しても、Xは意見を述べるにとどまり、最終的な決定権限は代表取締役にあり、代表取締役の権限が形骸化していたとも評価できない。Y社代表者は、Y社代表者が面接をしないで採用が決まったこともある旨供述するが、その数は少ないとも供述しており、採用の決定権限がY社代表者にあったとの認定を左右しない。また、日報については、Y社代表者は、日報は労務管理のためのものである旨供述する一方で、Xは部下に営業の指導、アドバイスをするために部下の日報を見ていた旨供述しており、C専務もXは日報とタイムカードの双方を確認していない旨供述していることからすると、日報が労務管理を目的として作成されていたとまでは認められない。そうすると、Xが部下の日報を見ていたとしても、人事・労務管理上の権限を有していたこととはいえない。
以上によれば、Xは機材の購入計画及び廃棄計画並びに売上管理表の原案を作成していた等の点で一定程度経営に関与していたことは否定できないものの、それ以外に経営に関与していたと評価できる事情はなく、特に人事・労務管理上の権限に関しては、最終的にはY社代表者に権限があったと認められるのであって、Xは、経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任、権限を付与されていたとまではいえない。

ご覧のとおり、もはや管理監督者性についてはあきらめたほうが無難かと思います。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。   

本の紹介2126 あっという間に人は死ぬから 「時間を食べつくすモンスター」の正体と倒し方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

気付いたらスマホをいじって時間を浪費してしまうという方や「忙しい」が口癖の方のための本です。

もっとも、そのような方はこの本を読む時間もないですかね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

古代ローマの哲学者セネカは『人生の短さについて』で、このようにいっています。
『人生は短いのではなく浪費している』。
つまり、やるべきことをやらずにどうでもいいことに時間を使っているから、気づいた時には人生が終わっている、というのです。」(47頁)

同感。

どれだけの時間を浪費しておきながら、本来やるべきことについて「時間がない」といってやっていないことか。

ただ、この話は、つまるところ、人生の目標をどこに設定しているかと極めて密接に関係しています。

人生は、一発のホームランで決まるのではなく、日々の小さいヒットの積み重ねによって構成されています。

どのようなことに時間を費やしてきたのかが、年齢を重ねれば重ねるほど、はっきりと目に見える形で表れます。

残酷ですが、真実です。