本の紹介2081 挑戦する会社(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

神田さんらしい本です。

今から9年前の本ですが、ビジネスのベーシックな点は今読んでも遜色ありません。

物価高、労働力不足、後継者不在、労働時間削減といった条件の下、いかにサバイブするのかを考える必要があります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ダントツの結果を出したいなら、ダントツの結果を出す人の多い環境に身を置くべきだ。コミュニティに入り、パワフルな仲間に囲まれていることで、自分を急加速させることができる。」(22頁)

周りの環境がいかに重要であるかについては多言を要しないと思います。

優秀で向上心の強い従業員が「ホワイトすぎるから」という理由で退職するのもまさにこれです。

居心地はいいけど、本当にこんな生ぬるい環境に浸かって、10年後、自分がどうなってしまうのだろうかと心配になるわけです。

5年も10年も生ぬるい環境で甘やかされて仕事をすると、もう弱肉強食のジャングルで生きていくのは難しいと思います。

とはいえ、今の時代、ご覧のとおり、どこもかしこもぬるま湯ですからね。

自ら積極的に厳しい環境を求めない限り、ずっとぬるま湯です。

差はますます開く一方です。

労働災害117 通勤中の電車内で注意をした相手方から蹴られたことによる傷害が通勤災害に当たらないとされた事案(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、通勤中の電車内で注意をした相手方から蹴られたことによる傷害が通勤災害に当たらないとされた事案を見ていきましょう。

中央労働基準監督署長事件(東京地裁令和5年3月30日・労経速2535号22頁)

【事案の概要】

本件は、ファミリーレストランの経営等を業とする株式会社に雇用されていたXが、通勤中の電車内において、迷惑行為を行っていた男性に注意したところ、男性から蹴られて左脛骨顆間隆起骨折の傷害を負うという通勤災害に遭遇したとして、中央労働基準監督署長に対し労働者災害補償保険法に基づき療養給付たる療養の給付、療養給付たる療養の費用並びに休業給付及び休業特別支給金の請求をしたところ、同労働基準監督署長から、上記の傷害は通勤に起因する負傷とは認められないとして、令和2年7月31日付けでこれらをいずれも不支給とする旨の処分を受けたことから、上記の各処分には違法があると主張し、被告に対し、上記の各処分の取消しを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件加害者はXから迷惑行為を注意されて本件電車から降りるように申し向けられた後、D駅で自ら電車を降りたことが認められる。そうすると、Xの注意により本件加害者が迷惑行為を中止して降車した段階で車内における迷惑行為の存在という問題は解消されたといえるから、その後に、Xがホーム上で罵声を発する本件加害者に対して更に酔いをさますよう申し向けた行為等は、通勤にも通勤と関係する行為にも該当せず、その後に本件加害者から左足を蹴られて本件傷害を負ったとしても、それは通勤の中断中ないし中断後の負傷であって、通勤による負傷には該当しないものといわざるを得ない。、
なお、Xがホーム上での本件加害者との喧嘩闘争中に本件傷害を負った可能性も否定されないところ、その場合には、本件加害者を制圧するという通勤とは関係のない行為の際に負傷したものであるから、通勤中断中の負傷であることは明らかというべきである。

原告の方の勇気ある行動に敬意を表します。

通勤災害の要件である「通勤」については、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとされていますが、移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはなりません。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2080 山田昭男の仕事も人生も面白くなる働き方バイブル#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

仕事のしかたが詰まった本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

損のリスクは小さく、儲けだけが大きい商売なんてめったにない。他人より稼ぎたいなら、他人より数多くの失敗や、損をするリスクを恐れない覚悟がいる。『成長するのに必要な失敗がある』ことを忘れてはいけない。」(146頁)

周りを見ていても、こういう感覚が身についている人は、結果として大きな利益を得ていますね。

リスクとリターンの大きさは基本的に同じです。

損をしたくないという気持ちが強い人は、なかなか大きなリターンを得ることができません。

打率ばかりを気にするのではなく、たくさん打席に立って、空振りをしながら、ヒットやホームランを狙うということが、今の時代の勝ち方なのではないでしょうか。

競業避止義務33 在職中の競業行為等が自由競争の範囲を逸脱し違法とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、在職中の競業行為等が自由競争の範囲を逸脱し違法とされた事案を見ていきましょう。

コアコーポレーション事件(名古屋地裁令和5年9月28日・労判ジャーナル142号38頁)

【事案の概要】

本件は、X社が、X社の幹部従業員であったYが在職中にZ社を設立し、平成31年2月1日には主要な取引先3社をしてX社との契約関係を終了させると同時に部下従業員とともに一斉にX社に退職願を提出した上で、Z社で競業行為に及んだことは労働契約上の債務不履行(誠実義務違反)又は不法行為に該当すると主張して、Yに対しては債務不履行又は不法行為に基づき、Z社に対しては会社法350条に基づき、それぞれ、損害賠償として、当該取引先3社との取引から得られたはずの逸失利益等の損害の一部である9億円+遅延損害金の支払を求める事案である。

本事件は、令和3年1月14日に、Yの上記行為がX社の禁止する競業行為に該当するとして不法行為の成立を認めた中間判決が出されており、本判決では、かかる中間判決を受け、具体的な損害の有無及び損害額が争点となった。

【裁判所の判断】

Yらは、Xに対し、各自8178万6120円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 提携先3社との取引に係る逸失利益のうち、自衛隊をエンドユーザーとするものについては、X社が平成31年度(令和元年)に得られたであろう利益の限度で本件行為との間の相当因果関係を認めることができる。しかし、Yの退職後1年を超える令和2年度以降については、Yの不法行為がなくてもX社が提携先3社から取得した独占販売代理権を利用して利益を上げられた蓋然性が高いとは認められない
したがって、逸失利益の金額は、Z社が現に平成31(令和元)年度に自衛隊との間で契約を締結した取引金額を基礎に算定するのが相当である。算定の基礎となる契約金額は7億0857万1600円で、X社が経費の支出を相当程度免れていること、X社が提携先3社との間で合意していたコミッション料の割合を総合すると、本件行為と相当因果関係のある逸失利益は上記契約金額の約1割の7058万7160円である。
他方、民間企業をエンドユーザーとする取引は従前の取引の頻度に照らすと、本件行為から1年程度の期間のうちに新たな取引が行われていた蓋然性が高いとはいえないため、逸失利益の損害が生じたとは認められない

「在職中の」というミソです。

この種の事案では、裁判所は損害額の認定を非常に謙抑的に行います。

原告からしますとなかなか納得しにくい認定額かと思います。

競業避止義務の考え方については顧問弁護士に相談をし、現実的な対策を講じる必要があります。

本の紹介2079 なめらかなお金がめぐる社会。あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯に書かれている「『お金がすべて』の社会のその先に。」という発想が本全体に流れています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

最近流行りのミニマリズムも明らかに商業主義、成長を続ける資本主義への反動だ。ミニマリズムとは必要最低限のもの以外は持たず、モノに対する執着から距離を置くことで自分にとって本当に大事なものを浮かび上がらせる生き方。」(36頁)

モノに対する執着がないと、お金の使い道があまりありません。

ほしいものがないからです。

時計はしないし、車は動けばいいし、服はユニクロだし、家は賃貸だし。

モノが溢れかえっている生活よりも必要最低限のモノだけがある生活のほうが私には合っています。

解雇404 解雇の意思表示の存否及び離職証明書の不実記載(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、解雇の意思表示の存否及び離職証明書の不実記載に関する裁判例を見ていきましょう。

ビッグモーター事件(水戸地裁令和5年2月8日・労判ジャーナル140号2頁)

【事案の概要】

本件は、自動車及び自動車部品販売業並びに自動車修理、解体業及びレッカー作業等を目的とするY社に雇用されていたXが、Y社から解雇されたが、本件解雇は違法であり、また、Y社が離職票に不実の記載をしたことにより国民健康保険税の軽減を受けることができなかったとして、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、損害金合計452万5959円等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求一部認容(Xの請求額452万5959円を認容)

【判例のポイント】

1 Y社は、解雇の意思表示について否認しており、本件解雇に客観的合理的理由があり、社会通念上相当であることについての具体的主張をしていない。そして、Xが、他の従業員に自分の業務を手伝わせたり、車検の台数制限などを行ったりしていたという問題のある言動があったとは認められず、XとY社との間の雇用契約を直ちに一方的に解消し得る解雇事由があるとは認められないこと、Dエリアマネージャーは、Xについて解雇が認められるとは思っていなかったことに照らせば、本件解雇は、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、違法である。

2 Xは、本件解雇により離職したものであり、「非自発的理由による失業」であり、Xは、Y社に対して、解雇されたとの認識を明示していたにもかかわらず、Xに、離職証明書に記載する離職理由について何ら確認することなく、本件離職証明書に「労働者の個人的な事情による離職」であり、「離職理由に異議」がないとの虚偽の記載をしたものと認められる。
事業主が離職証明書について虚偽の記載をした場合について、罰則が設けられているものであること(雇用保険法83条1項1号)に照らしても、上記のY社による虚偽記載が、Xに対する違法な行為であると認められることは明らかであり、Y社に上記記載が違法であることについての認識があったものと認められる
したがって、Y社による本件離職証明書の不実記載は、Xに対する不法行為に当たる。

上記判例のポイント2については注意が必要です。

このような事態にならないように慎重に手続きを進めることが求められます。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2078 年収1億円は「逆」からやってくる#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

さまざまな成功者を観察した内容が書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

夢に義務感を発生させないようにするには、自分にとってそれが『しなければならない』ことなのか『やりたい』ことなのかを常にチェックすることです。」(46頁)

人生の中でいかに「must」と減らし「want」を増やすか、という発想はとても有効だと思います。

本当はやりたくないんだけど、やらないといけないからやっているというルーティンをどれだけなくせるか。

それによって生まれた時間を「want」にあてることができるわけです。

時間は有限です。

そして、人生も。

労働時間102 変形労働時間制は無効であるとして、未払割増賃金等支払請求が一部認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、変形労働時間制は無効であるとして、未払割増賃金等支払請求が一部認められた事案を見ていきましょう。

サカイ引越センター事件(東京地裁立川支部令和5年8月9日・労判ジャーナル140号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され、Y社において引越運送業務に従事していたXらが、時間外労働に係る割増賃金等が未払であると主張し、Y社に対し支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 本件就業規則において現業職の始業・終業時刻シフトの組合せの考え方、公休予定表の作成手続及び周知方法等の定めはなく、D支社は、労使協定上、いずれのシフトを採用するか明示せず、公休予定表ないし出勤簿においてもシフトの記載は見当たらないところ、時期によって異なるシフトを採用し、シフトAからシフトBへの移行日も全現業職において一律ではなかった上、顧客の引っ越しの関係上個別の従業員ごとに早出・遅出のシフトも組まれていたというのであり、また、現業職の労働時間が、書面により始業・終業時刻をもって特定されていたと評価することはできず、さらに、D支社においては、各月の30日前までに従業員の公休予定表を作成・周知する取扱いが徹底されておらず、公休予定表の作成後も、従業員らの申出以外の理由により、公休予定日が変更されることがまれではなかったことに照らすと、各月の30日前までに公休予定表が作成される形がとられていたとしても、実態として、各期間の労働日が特定されていたと評価することはできないといわざるを得ないから、本件請求対象期間におけるD支社の変形労働時間制の定めは、労働基準法32条の4の要件を充足しないものとして無効である。

本件同様、変形労働時間制の有効要件を満たさず、無効と判断されているケースが後を絶ちません。

安易に同制度を導入することは控えるべきでしょう。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

 

本の紹介2077 自分を成長させる極意#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

いかにして身体・感情・知性・精神のレベルを向上させるかが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

日常の生活習慣に『自分の価値観』を反映させる
これも、多くの人にとって難しい課題である。たいていの人が恐ろしいペースで生活しており、『何に拠って立つべきか』『自分は何になりたいのか』、ゆっくり考えることがほとんどない。その結果、外部からのさまざまな要求に応えるだけの生活に終始している。」(135頁)

そう。

みなさん、毎日忙しすぎるのです。

新しいことに挑戦する気も起きない程に、毎日やることが多くないですか?

もうそれどころではないですよね(笑)

まずはその超多忙な生活から抜け出すことが肝なのですが、実際のところ、至難の業です。

一度、リュックの中に入れたら、そう簡単に取り出せないものばかりだからです。

「自らの自由や時間を奪うありとあらゆるモノを、極力、リュックに入れない」ということがいかに大切か、ということなのだと思います。

労働時間101 過半数代表者の選出に違法があるとして、変形労働時間制・36協定が無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、過半数代表者の選出に違法があるとして、変形労働時間制・36協定が無効とされた事案を見ていきましょう。

未払割増賃金等支払請求事件(釧路地裁帯広支部令和5年6月2日・労判ジャーナル140号32頁)

【事案の概要】

本件は、社会保険労務士であるBと雇用契約を締結して就労していたAが、Bに対し、①労働契約に基づき、平成31年4月から退職した令和3年4月までの時間外割増賃金等の支払、②不法行為に基づき、有効な労働基準法36条に基づく協定を欠き時間外労働を命ずる適法な権限がないのに、労働基準法32条及び同法36条に違反してBがAに対し違法な残業命令を繰り返して勤務をさせてきたことに対する慰謝料150万円等の支払、③労働契約に基づくBの私生活時間配慮・職場環境調整義務違反による慰謝料の支払、④時間外割増賃金に係る付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 過半数代表者の選出手続は、法に規定する協定等をするものを選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法によらなければならない(労働基準法施行規則6条の2第1項第2号)ところ、Bの事業所においては、平成16年に1年単位の変形労働時間制を採用した際に、従業員の間で従業員代表としてCを選出する話し合いが持たれた後は、従業員間で話し合いがされないままCが従業員代表としてBとの間で1年単位の変形労働時間制についての協定を締結しており、これによれば、前記の協定に先立って、選出目的を明らかにした投票、挙手等の方法によるCを従業員代表とする民主的な手続は行われていないのであるから、前記各協定届には、労働基準法施行規則6条の2第1項所定の手続によって選出された者ではない者が、Bの労働者の過半数代表者として署名押印しているといわざるを得ないから、Bにおける1年単位の変形労働時間制は無効である。

2 確かに、36協定が無効となれば、使用者は労働者に対して時間外労働を命ずる労働契約上の根拠を欠くことになることから、時間外労働を命ずる業務命令権の行使は違法となるというべきであるが、BにおけるA以外のいずれの労働者もCについて労働者代表としての適格性を否定する者はおらず、仮に従業員代表を選出する手続が行われていれば、Cが従業員代表に選出されていた可能性が高いこと、Aも36協定がCによって締結されていることをBの事業所における勤務開始後数年以内に認識しながら、これに対して異議を述べることをしていなかったこと、法定外労働に対しては、時間外割増賃金の支払が命じられることになることに照らせば、36協定が無効と判断されたとしても、その違法性は、慰謝料を命ずべき違法性があるとは認められない

変形労働時間制の無効例が後を絶ちません。

「例外規定の厳格解釈」がここでも影響しています。

労使協定締結時の過半数代表者の選出方法には気を付けましょう。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。