Category Archives: 有期労働契約

有期労働契約9(高嶺清掃事件)

おはようございます。

さて、今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

高嶺清掃事件(東京地裁平成21年9月30日・労判994号85頁)

【事案の概要】

Y社は、一般及び産業廃棄物収集運搬処理業等を営む会社である。

Y社の業務は、公社部門(財団法人東京都環境整備公社から委託を受けたゴミの収集業務及び清掃工場の水質検査のための検体収集業務)、産廃部門(民間企業等の委託による産業廃棄物の回収、運搬業務及び中間処理業務)、局収部門(東京23区清掃協議会から委託を受けた一般廃棄物の回収車の運転業務)の3部門に分かれていた。

Xは、Y社にアルバイト社員(雇用期間1年)として雇用され、同社公社部門の水質検査関連業務に従事していた。

Y社は、公社部門廃止に伴い、Xを解雇した。

Xは、本件解雇は無効であると主張し、争った。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Y社においては、正社員を上回る人数のアルバイト社員が正社員とほぼ同様の業務を遂行してきていること、アルバイト社員との契約更新手続は厳格にはなされていなかったこと、Y社から、期間満了により終了するというわけではないという程度の説明を受けたに過ぎないことから、Xの労働契約は、1年間の期間の定めのある契約ではあるものの、実質的には期間の定めのない契約と異ならない状態に至っているものと認めるが相当であり、Xの労働契約の期間満了による雇止めについては、客観的に合理的な理由を要するものと解するのが相当である。

2 Y社公社部門は、大幅な経常赤字(4197万円程度)を計上し、公社部門の赤字が他部門の経常黒字を大幅に減殺することが予想された。
Y社が、公社部門の廃止を決め、当該部門に所属していた従業員全員に相当する人数の人員整理を行うと判断したことには、企業の合理的運営上やむを得ない必要性があったということができる。

3 とはいえ、公社部門以外の部門では経常利益を経常利益を計上しており、公社部門の従業員の大半は希望退職に応じ、退職しなかった正社員3名の雇用継続は確保できたこと等の事情からすると、さらなる人員整理をしなければ、倒産の危機が差し迫ったというような状態にあったとは認められない

4 Y社は、公社部門の廃止に伴う人員整理を行うに当たり、公社部門に限っていえば、まず派遣契約を打ち切り、正社員を含めて、希望退職の募集を行い、正社員2名とアルバイト社員のうちXを除く7名がこれに応じて退職し、希望退職に応じなかった正社員3名の雇用を継続し、これに応じなかったXを雇止めしたものである。
しかしながら、Y社は、Xの雇止めを回避するために、公社部門以外の2部門については、派遣契約や労働者供給契約を打ち切っていない。Y社が公社部門に限っていえば、派遣契約を打ち切っていることを踏まえれば、かかる一貫しない措置の合理性は乏しいものと言わざるを得ない。

5 希望退職の募集は、解雇回避のために有効な手段であったと考えられるが、Y社は、公社部門以外の部門については希望退職の募集を行っていない。Y社の業務は3部門に分かれていたものの、事務職を除けば、3部門を通じて、正社員もアルバイト社員も概ね類似の業務に従事していたものであり、従事する業務や従業員のの能力・適性等との関係で、各部門と従業員の間の関連性や非代替性は希薄であったものと認められること等から、Y社が公社以外の部門について、希望退職を募集しなかった措置の合理性も乏しいと言わざるを得ない
また、Xの従前の業務遂行実績に照らせば、希望退職によって不足が生じた他の部門にXを配置換えすることに特段の不都合があったものとも認められない。

6 Y社は、再三にわたり再就職の斡旋を行ったと主張するが、飽くまで退職を前提にした提案であり、再就職先や再就職後の身分等の内容も具体性を欠き、Y社での雇用継続が確保されたのと同視しるような提案を行ったとは認められないから、これをもって、雇止めの回避努力義務を尽くしたと評価することはできない

7 X以外のアルバイト社員については1年間の定めがあって、アルバイト社員の平均的な勤続年数はXのそれと比して短く、Xのように期間の定めのない契約と異ならない状態には至っていない者や、雇用継続の合理的な期待が認められない者も相当数いた可能性が否定できないから、Y社がそうした社員の雇止めを検討することも考えられるところである。
以上の事情を考慮すると、Xが雇止めの対象とされた人選について合理性があるとはいえない

非常に参考になる裁判例です。

雇止めの理由が、実質的には整理解雇と異ならない場合です。

判決理由を読んでいると、この会社は、顧問の弁護士なり社労士にちゃんと相談して、ある程度慎重に手続を進めていたように感じます。

それでも、裁判所は、雇止めを認めませんでした。

一言でいえば、「おしい」という感じです。

会社を擁護するわけではありませんが、手続としてめちゃくちゃなことをやっているとは思いません。

ただ、整理解雇の要件は、それほどまでに厳しいということです。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約8(ドコモ・サービス(雇止め)事件)

おはようございます。

さて、今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

ドコモ・サービス(雇止め)事件(東京地裁平成22年3月30日・労判1010号51頁)

【事案の概要】

Y社は、NTTドコモ社の委託を受けて、関東甲信越地方の携帯電話料金の回収業務を行う会社である。

Xは、Y社との間で、契約期間1年の定めのある委嘱契約を締結し、携帯電話料金の回収業務を行ってきた。同契約は、これまで5回更新されている。

Xの賃金は、基本給およびインセンティブ(回収額に応じて支給される野能率給)などにより構成されていた。

Y社は、インセンティブを廃止を決定し、数回にわたり説明会を開き、Xらに対し、その廃止に伴う補償措置などの説明をした。

具体的には、廃止により失われる賃金などについては一定の補償措置をとる、その主なものは一時金の支給、基本給の増額、退職金積立制度や業績評価による昇給の導入などである。

しかし、Xは、Y社の説明に納得せず、インセンティブ廃止等に合意しない旨を回答した。

そこで、Y社は、Xを雇用期間満了により退職をしたものとして雇止めをした。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 実質的に期間の定めのない契約と変わりがないものとは認められないが、XとY社の間の雇用期間を1年とする契約は、期間満了1か月前までに双方から何らの意思表示がないときは更新されると定められていたこと、外勤パート従業員制度見直しの説明会において、当時の東京料金センター所長が、外勤パート従業員であった者に対し、60歳に達するまで契約更新ができると述べていたこと、Xは、これまで5回更新され、意思に反して更新されなかった者はいないこと、などの事実からすると、Xの雇用は、ある程度継続が期待されたものというべきであり、本件雇止めには、解雇権濫用法理の類推適用がある

2 インセンティブ廃止等の必要性については、廃止の必要性があるとのY社の判断を直ちに不合理ということはできないが、回収コストの削減(Xらの賃金減額)もその廃止等の目的であったといえるから、必要性が認められるとしても、これに対する補償措置には相当高度の合理性が要求される

3 補償措置等の合理性については、Y社が提案した補償措置などを全体的に観察すると、インセンティブの支給額が年々減少するという見通しに基づく将来の年収(試算)をも下回っており、平成17年、18年度の当期純利益が10億円を超えているY社の財務状況において、Xがこれに納得しがたいのはやむを得ないものと考えられるから、(Y社の試算が正しいとしても)補償措置等の相当高度の合理性があるということはできない。

4 手段・経緯の合理性については、Y社は、Xがインセンティブの廃止などに合意しない場合でも、就業規則や給与規程などを変更するなどして、Y社の目的であるXらの賃金減額を実現できたと考えられるところ、そのような方法をとらず、Y社の提案に合意しないXを、雇用期間満了による退職と扱って雇止めするのは、雇用期間満了の機会を捉えてY社から排除したものと認められるのであり、手段・経緯に合理性を欠く。

このケースは、労働条件の変更に応じないことを理由とする、有期雇用の嘱託社員に対する雇止めの事案です。

判例のポイント4は、非常に参考になります。

また、会社としては補償措置を講じたからいいではないか、と思いたいところですが、その補償措置が十分でないと判断される可能性があります。

会社側とすれば、程度が難しいところですね。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約7(京都新聞COM事件)

おはようございます。

さて、今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

京都新聞COM事件(京都地裁平成22年5月18日・労判1004号160頁)

【事案の概要】

Y社は、京都新聞社の事業部門である京都新聞の販売、広告等の各業務について、京都新聞社の委託によりそれらを行うために京都新聞社の全額出資により設立された子会社である。

Xらは、Y社との間で、雇用契約期間6ヶ月とする雇用契約を締結した。

X1は、勤続年数7年9か月、更新回数10回、X2は、勤続年数4年11か月、更新回数4回に及ぶ。

Y社は、Xらに対し、雇用契約を更新しない旨の通知をした。

Xは、本件雇止めは無効であるとして提訴した。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 使用者と労働者の間で期限の定めのある雇用契約が締結された場合であっても、(1)更新が繰り返され、更新手続が形式的であるなど、当該雇用契約が期間の定めのない契約に転化したり、実質的に期間の定めのない雇用契約と異ならない状況になった場合には、普通解雇の要件に準じた要件がなければ使用者において雇用契約を終了させることができず、(2)労働者が継続雇用の合理的期待を有するに至ったと認められる場合には、期間の満了により直ちに雇用契約が終了するわけではなく、使用者が更新を拒絶するためには、社会通念上相当とされる客観的合理的理由が必要とされると解される。

2 XらとY社との雇用契約の更新が形式だけのものであったということはできず、XらとY社との雇用契約が、期間の定めのない雇用契約に転化した、又はそれと実質的に異ならない関係が生じたと認めることはできない。

3 Y社は、契約社員については3年を超えて更新されないという「3年ルール」が存在すると主張する。
京都新聞社グループにおいて、正社員と契約社員との採用方法や勤務体系の違い等からすると、「3年ルール」は一定の合理性を有しているということができる。
しかし、Y社においては、「3年ルール」が厳格に守られ、契約社員に周知されていたとは考えられず、Xらに対してもその旨の説明がされていたと認めることはできない。
したがって、「3年ルール」について説明をしていたことを理由としてXらにおいて契約期間満了後も雇用継続を期待することは合理的ではないとするY社の主張は採用できない。

4 契約期間であるが、X1については、勤続年数7年9か月、更新回数10回、X2については、勤続年数4年11か月、更新回数は4回に及んでいること、Xらの業務は、広告記事の作成やイベントの運営など、新聞編集等の業務と比べると軽いものではあるが、ほぼ自分の判断で業務を遂行しており、誰でも行うことができる補助的・機械的な業務とはいえないこと、Xらは、契約の満了時期を迎えても、翌年度に継続する業務を担当しており、当然更新されることが前提であったようにうかがえることなどからすると、Xらとしては、契約の更新を期待することには合理性があるといえる。

この裁判例をみても、そう簡単に雇止めはできないことがよくわかります。

会社のみなさんも、「期間雇用だから、いつでも解雇できる」と思っていると、裁判で負けてしまいます。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約6(日本郵便輸送(雇止め)事件)

おはようございます。

さて、今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

日本郵便輸送(雇止め)事件(大阪地裁平成21年12月25日・労判1004号174頁)

【事案の概要】

Y社は、郵便物および通信事業に関連する物品の運送事業を目的とする会社である。

Xは、平成7年に期間臨時社員としてY社に雇用され、以降、平成20年までの間、約13年間にわたって勤務してきた。

Y社の業務は、その大半を郵便事業会社からの受託に依存し、郵便輸送自体、業務量の確実な予測が難しいという特殊性があること等から、非正規雇用への依存によらざるを得ない状況であった。他方、期間臨時社員について、雇用契約の反復継続が多数回にわたり、必ずしも「期間臨時」とは言い難い雇用状況にあり、また、待遇の安定を求める意見が出るなど問題が生じていた。

そこで、Y社は、期間臨時社員の身分の安定・向上を目的として、期間臨時社員の正社員化に向け、期間臨時社員制度そのものを廃止し、「地域社員制度」の創設に際し、期間臨時社員の全員を原則として正社員に移行することとした。

Y社は、Xに対し、地域社員制度に応募するよう促したが、Xは、地域社員制度の条件等に不満があるから応募しないと返答した。

Xは、応募期間内に応募しなかったことから、契約期間満了により、雇用関係が終了した。

Xは、Y社の対応に不満があるとして、提訴した。

【裁判所の判断】

雇止めは有効

【判例のポイント】

1 有期期間雇用労働者に関する雇止めについては、(1)期間の定めのない契約に転化しているか、(2)雇用契約継続に対する合理的な期待が存在する場合に、期間の定めのない契約に適用される解雇権濫用法理(労働契約法16条)が類推適用されると解されるところ、XとY社におけるこれまでの期間臨時社員有期雇用契約の更新回数及びXの業務内容(大型トラックによる郵便物の輸送業務)等からすると、XとY社の有期期間雇用契約が期間の定めのない契約に転化しているとは認められないものの、Xには同契約更新に対する合理的な期待が存在していたと認めるのが相当である

2 本件地域社員制度の導入には合理性が認められること、期間臨時社員に比して地域社員のほうが退職金、各種手当等の点において優遇されていること、制度移行に際しXには応募するか否かを検討する機会が保障されていたこと、Xにはパート従業員としての雇用継続の選択肢も用意されていたことなどを総合考慮すれば、本件雇止めには客観的な合理性があり社会通念上相当である。

結論は妥当であると考えます。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約5(東京都自動車整備振興会(嘱託職員)事件)

おはようございます。

さて、今日は、有期雇用契約における期間途中での解雇に関する裁判例を見てみましょう。

東京都自動車整備振興会(嘱託職員)事件(東京高裁平成21年11月18日・労判1005号82頁)

【事案の概要】

Y社は、国土交通省関東運輸局管轄の公益社団法人であり、道路運送車両法により、自動車の整備に関する設備の改善及び技術の向上を促進し、並びに自動車の整備事業の業務の適正な運営を確保するとの趣旨の下に、意見の公表等を行うこと、必要な調査研究等を行うこと等を事業目的とすることが法定されている。

Xは、Y社との間で、嘱託雇用契約書により雇用契約を締結し、専任講師として勤務してきた(期間1年。更新可)。

Y社の就業規則上、正職員には60歳定年制度が導入されているのに対し、1年間の嘱託雇用期間を、65歳まで更新していく者が多かった。

Xは、定年に達するまでに、17回にわたり契約更新をしてきた。

Y社は、Xに対し、Xが満60歳に達し、雇用契約が終了する旨の通知を交付すると同時に、再雇用嘱託契約書(雇用期間1年。65歳まで更新可)を提示した。

Xは、本件雇用契約では、Xが65歳まで勤務することが条件とされていたのであるから、契約終了には納得できない、今後も退職せず勤務を続けていく旨の意思表示をした。

【裁判所の判断】

1 本件雇用契約終了は、契約期間内の解雇にほかならない

2 本件解雇は有効

【判例のポイント】

1 Y社が、満60歳到達日での契約終了を通知したことにつき、本件雇用契約終了は契約期間内の解雇にほかならない。

2 本件解雇事由の存否につき、Y社は、改正高年雇用安定法の施行に伴って、正社員については、60歳での雇用契約終了とその後再雇用契約締結の制度を導入し、経済的事情から再雇用契約の給与額上限を従前の額を問わず月額25万円としたものであり、組織内の均衡を保つために、Xとの本件雇用契約(給与月額35万円)についても、上記上限額での再雇用契約締結を前提に、契約終了の告知をしたのであって、Y社には事業運営上やむを得ない事情があったといえ、本件解雇が客観的合理性あるいは社会的相当性を欠くとは認められない

裁判所の判断は妥当であると考えます。

第一審(東京地裁平成21年1月26日)では、解雇無効と判断されています。

高裁は、最後に以下のとおり判断しています。

「以上のとおりであって、Xの請求はいずれも理由がない。Xは、前記認定の社会経済情勢の変化等の諸制約をみないまま、公益法人であるY社組織全体の今後の在り方を度外視して、法的には本来1年の雇用期間でしかない契約であるにもかかわらず65歳まで継続勤務できる権利があるなどと強弁し、併せてY社の置かれた経済事情を踏まえれば証拠上合理性の認められないことが明らかな高額な給与を要求するという主張に終始して本件紛争を継続してきたものというほかなく、その方針は紛争の合理的解決から著しく外れるものといわなければならない。」

・・・なんか怒ってます?

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約4(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準)

おはようございます。

さて、今日は、厚生労働省の告示「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」について紹介します。なお、この基準は、平成20年1月23日に、一部改正されています。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

(契約締結時の明示事項等)
第1条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)の締結に際し、労働者に対して、当該契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示しなければならない
2 前項の場合において、使用者が当該契約を更新する場合がある旨明示したときは、使用者は、労働者に対して当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない
3 使用者は、有期労働契約の締結後に前二項に規定する事項に関して変更する場合には、当該契約を締結した労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければならない。
(雇止めの予告)
第2条 使用者は、有期労働契約(当該契約を三回以上更新し、又は雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第二項において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の三十日前までに、その予告をしなければならない。

(雇止めの理由の明示)
第3条 前条の場合において、使用者は、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。

2 有期労働契約が更新されなかった場合において、使用者は、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。

(契約期間についての配慮)
第4条 使用者は、有期労働契約(当該契約を一回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。

この基準に関するリーフレットです。
有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(PDF)

有期労働契約3(東大阪市環境保全公社(仮処分)事件)

おはようございます。

今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

東大阪市環境保全公社(仮処分)事件(大阪地裁平成22年1月20日決定・労判1002号54頁)

【事案の概要】

Y公社は、東大阪市の環境を保全し、条件の整備を図り、市民生活の安全清潔を確保すること等を目的として、東大阪市の全額出資で、昭和47年に設立許可された財団法人である。

Y公社の業務内容は、東大阪市から委託を受けたし尿およびごみ収集業務等である。

Xらは、臨時雇用者(雇用期間6ヶ月)としてY公社との間で雇用契約を締結し、10回~24回、契約を更新してきた。

Y公社では、毎年4月と10月に契約更新手続がとられてきた。

Y公社は、Xらに対し、平成21年9月30日をもって契約期間が満了となり、それ以降は新たな契約は行わない旨を書面で通知した(本件雇止め)。

Xらは、臨時雇用者としての権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同雇用契約に基づく賃金の仮払いを求めた。

【裁判所の判断】

(1) 毎年10月1日の契約更新については特段の事情のないかぎり自動更新されるとの期待が生じており、本件雇止めについては、解雇権濫用法理の類推適用を検討する必要がある。

(2) 本件雇止めには、合理的な理由があるとはいえず、無効である。

【決定のポイント】

(1)について
1 毎年10月1日時点での契約更新については、特に継続雇用の意思確認等を目的とする面接を実施していない

2 Y公社の業務が東大阪市から委託を受けたし尿収集等の作業であって、これらの業務にかかる予算等は1年間単位で計画等が策定・実施されるのが通常である

3 毎年10月1日の更新手続は、形式的なものと言わざるを得ず、特段の事情のないかぎり、自動的に更新されるものと考えていたと認められる。

(2)について
1 Y公社は、本件雇止めの理由について、以下の3点を主張した。

① Y公社における平成20年度の累積債務が多額に上ること

② Xらが担当していた業務量の減少

③ 臨時雇用者について、日々雇用の代替策を提供していること

2 しかし、裁判所は、Y公社の主張に対し、以下のように判断した。

① 累積債務については、平成21年9月時点で発生したものとは言い難く、それにもかかわらず同年4月にはXらとの雇用契約を更新している

② 業務量の減少の点については、東大阪市の予算状況等から、ある程度予想できたと考えられ、それにもかかわらず平成21年4月時点において、Xらと雇用契約を更新している

3 これらの点からすると、上記③を考慮してもなお、本件雇止めには、合理的な理由があるとは言い難い。

なお、裁判所は、契約更新回数が10~24回と多いにもかかわらず、Y公社とXらとの間の雇用契約が期間の定めのない契約に転化しているとはいえず、毎年4月1日時点での契約更新手続については、自動更新されることに対する合理的な期待が存在していたとは認められないと判断しています。

理由は以下のとおりです。

1 雇用契約書に6ヶ月の雇用期間の記載があり、正社員とは明確に区別されている。

2 Y公社は毎年3月頃、継続雇用の意思等について確認する手続を行っていた。

3 Xらは臨時雇用者としての契約であり、就業規則上「一定期間を定めて雇用する者」と定められている。

Y公社が、4月の契約更新の際に、Xらを雇止めした場合には、有効となる可能性があるようです。

決定理由を読むと、Y公社がXらを雇止めした本当の理由は、別にあるようです。

裁判所は、Y公社の表向きの理由では、雇止めは無効と判断したわけです。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約2(概要)

おはようございます。

さて、今日は、有期期間雇用労働者に関する雇止めについて見ていきます。

まずは、一般論から。

有期労働契約であっても、

(1)期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っている契約である場合

(2)反復更新の実態、契約締結時の経緯等から雇用継続への合理的期待が認められる場合

は、更新拒否(雇止め)について、解雇権濫用法理(労働契約法16条)の類推適用がなされるとする判例法理(雇止め法理)が形成されています(東芝柳町工場事件(最一小判昭和49年7月22日・労判206号27頁)や日立メディコ事件(最一小判昭和61年12月4日・労判486号6頁)など参照)。

次回以降、個々の裁判例が、どのような事情に着目し、どのような判断を下しているのかを検討していきたいと思います。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約1(有期労働契約研究会報告書)

厚労省から「有期労働契約研究会報告書」が公表されました。

報告書では、「有期労働契約の不合理・不適正な利用を防止するとの視点を持ちつつ、雇用の安定、公正な待遇等を確保するためのルール等について検討すべき」としています。

「具体的には、契約締結事由の規制、更新回数や利用可能期間に係るルール、雇止めに関するルール、有期契約労働者と正社員との均衡待遇及び正社員への転換等」について整理されています。

現状についての報告。

「『臨時雇(1ヶ月以上1年以内の期間を定めて雇われている者)』「日雇(日々又は1ヶ月未満の契約で雇われている者)」の合計で見たとき、昭和60(1985)年の437万人から平成21(2009)年には751万人雇用者総数の13.8%)に量的に増加し」ている(有期労働契約研究会報告書2頁)。

有期労働契約に関する問題についても、後日、検討していきたいと思います。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。