Category Archives: 有期労働契約

有期労働契約29(リンゲージ事件)

おはようございます。

さて、今日は、語学教室外国人講師に対する雇止めの有効性に関する裁判例を見てみましょう。

リンゲージ事件(東京地裁平成23年11月8日・労判1044号71頁)

【事案の概要】

Y社は、リンガフォン事業、グローバルスタディ事業等を事業内容とする会社である。

Xは、平成10年、A社と期間1年の雇用契約を締結し、英会話の授業等の業務に従事した。

同契約は8回にわたり更新された。その後、Y社は、A社は、A社から事業譲渡を受け、その事業を引き継いだ。

Y社における組合の組合員はXを含め3名となり、組合が再結成され、Xが執行委員長に就任した。

Y社は、組合活動再開の動きの中で、各校の管理者に宛てて、本件組合の組合員3名について、「どんなに小さいことでも気になる行動は報告」すること等を求める内容の電子メールを発出した。

その後、Xは、レッスン中、生徒に自分の腹部を触らせる等の問題行動、不適切行為、業務命令違反が数多く発覚した。そのため、Y社はXに対して、3度にわたり警告書を発出したが、Xは、同警告書に署名することを拒否した。

Y社は、平成20年11月、Xに対し同年12月の期限経過をもって本件契約が更新されない旨を通知した。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 本件雇止めを受けるまで10年間にわたり、A社ないし同社から事業譲渡を受けたY社において雇用され、その間、A社とは8回、Y社とは1回の契約更新を経ているXが、本件契約が更新されると期待することに合理性があるとして、本件雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるものと解するのが相当である

2 A社及びY社においては、外国人講師の契約更新時に、当該講師のレッスン内容や適格性に応じた契約内容の見直しが一定程度予定されていたものと認められるから、本件雇止めに解雇権濫用法理の類推適用が認められるとは言っても、その際の判断基準は、通常の期間の定めのない契約における解雇の場合に比して、必ずしも厳格なものであることを要しないと解するのが相当である。

3 本件雇止めは、組合員のみをターゲットにした情報収集によって得られたネガティブ情報に基づいて行われたものであり、当該情報収集がなければ、本件雇止め自体が存在しなかったという関係にあるものと認められるから、本件雇止めが社会的に相当なものであると言えるかについては重大な疑問が存すると言わざるを得ない

4 本件雇止めについては、厳密な意味で不当労働行為に該当するかはともかく、Xが本件組合の組合員であったことに起因して課せられた不利益であると評価せざるを得ず、そうであるとすれば、本件雇止めは、社会的に相当なものであるとは認め難いから、無効と言うほかはない

雇止めを無効と判断した理由が変わっていますね。

情報収集のしかたが、相当でないことを理由としています。

このような理由から雇止めや解雇が無効になる可能性があるということは頭に入れておきたいですね。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約28(日本航空(雇止め)事件)

おはようございます。

さて、今日は、期間雇用の客室乗務員に対する雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

日本航空(雇止め)事件(東京地裁平成23年10月31日・労判1041号20頁)

【事案の概要】

Y社は、定期航空運送事業等を営む会社である。

Xは、平成20年5月、Y社との間で、雇用期間を平成21年4月末までとする雇用契約を締結し、客室乗務員として勤務した。

2年目の契約においては、雇用期間につき、勤務実績の総合評定が一定基準に達しない場合、Y社とX双方合意に基づき雇用期間を延伸することがあり、合意に至らない場合は雇止めとする旨の定めがあった。

Y社は、Xにつき、入社後4か月を得た時点で技術・知識の定着に危惧を抱いており、平成21年3月には、Xの業務への取組姿勢、業務知識、注意力、判断力、確実性等を問題視し、契約更新は実施するものの3か月を限度に経過観察期間と位置付けて「部長注意書」が交付されている。

その後、同年8月までの経過観察期間は延長された後、Y社は、Xの課題および職務遂行レベルのこれ以上の改善は困難と判断し、平成22年3月末、Xに対し、「会社の決定であなたの契約を終了する。今なら自己都合退職にしてあげることもできるので、4月5日までのなるべく早い段階までに気持ちをまとめて伝えて欲しい。」などと通告し、Xが就労の継続を希望すると、2年目の契約の雇止めの通知をした。

【裁判所の判断】

雇止めは有効

本件退職勧奨は違法であり、慰謝料として20万円の請求を命じた

【判例のポイント】

1 本件雇用契約は、契約期間の存在が明記され、また、業務適性、勤務実績、健康状態等を勘案し、Y社が業務上必要とする場合に契約を更新することがあるという条件が明示され、契約の自動更新について何らの定めがない雇用契約であるから、契約社員の2年目契約が自動的に更新されることあるいは雇用期間が通算3年に達した後に正社員として雇用されることがXとY社間の雇用契約の内容となっているということはできない。したがって、契約社員の雇止めについて、当然に解雇権濫用法理の適用がある旨のXの主張は採用することができない。

2 確かに、雇用継続に対する合理的期待については、個別の雇用契約について検討されるべきものであるから、Y社が主張する事情が上記の点の検討に当たり無関係な事情とはいえない。しかし、それ自体が完成された一つのシステムであるといえる契約社員制度が問題となっている本件においては、上記合理的期待の有無の検討に当たっては、契約社員としての業務の性格・内容、契約更新手続の実態、Y社の継続雇用を期待される一般的な言動の有無などの事情を重視すべきものであって、当該契約社員の業務適性やこの点に関してY社とX間に生じた事情等を重視するのは相当ではない(本件は、Y社のXに対する勤務評価それ自体の相当性が争われている事案といえる。)。
以上検討してきたところからすれば、本件雇用契約において、その雇用期間経過によって、雇用契約が当然に終了するというのは相当ではなく、本件雇止めに当たっては、解雇権濫用法理が類推適用されると解すべきである。

3 客室乗務員は、緊急時の保安要員として乗客の安全に重大な責任を負う立場にあること、乗客に対して、高い水準のサービスを提供すべき立場にあることなどの同乗務員の職務内容を考慮すると、その基となったそれまでの評価・判断の妥当性を考慮した上で、Y社における最終的な評価・判断が不合理なものといえないとすれば、本件雇止めは相当なものであって、これが無効なものとなることはないというべきである

4 退職勧奨を行うことは、不当労働行為に該当する場合や、不当な差別に該当する場合などを除き、労働者の任意の意思を尊重し、社会通念上相当と認められる範囲内で行われる限りにおいて違法性を有するものではないが、その説得のための手段、方法が上記範囲を逸脱するような場合には違法性を有すると解される。
・・・同年9月14日及び15日の退職勧奨を趣旨とする言動は、Xが同月5日付け書面で明確に自主退職しない意思を示しているにもかかわらず、「いつまでしがみつくつもりなのかなっていうところ。」「辞めていただくのが筋です。」などと強くかつ直接的な表現を用い、また、「懲戒免職とかになったほうがいいですか。」と懲戒免職の可能性を示唆するなどして、Xに対して退職を求めているものであり、当時のXとAの職務上の関係、同月15日の面談は長時間に及んでいると考えられることなどの諸事情を併せ考慮すると、上記言動は、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱している違法な退職勧奨と認めるのが相当である

雇止めについては、有効と判断しています。

これに対して、退職勧奨については、一部、違法性を認めています。

従業員が自主退職しない意思を示しているにもかかわらず、「いつまでしがみつくつもりなのか」「辞めてもらうのが筋」などと発言したり、「懲戒免職になったほうがいいですか」などと自主退職を暗に強要する発言は、許容された退職勧奨の範囲を逸脱するというわけです。

気を付けましょう。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約27(E-グラフィックスコミュニケーションズ事件)

おはようございます。

さて、今日は、クリエイティブディレクターに対する雇止めの効力に関する裁判例を見てみましょう。

E-グラフィックスコミュニケーションズ事件(東京地裁平成23年4月28日・労判1040号58頁)

【事案の概要】

Y社は、自動車のカタログやパンフレット等の企画制作や印刷等を目的とする会社である。

Xは、美術大学を卒業後、数社での就労経験をした後、Y社に、平成18年4月から嘱託契約社員として、契約期間を9か月とする有期雇用契約を締結した。

Xは、当初はコピーライターとして入社応募したが、採用過程では、それまでの就労経験を考慮して、より統括的で重要な職種であり、当時欠員が生じていたクリエイティブディレクター(CD)での採用を打診され、業務内容をCDとすることで契約を締結するに至っている。

XとY社との間では、契約期間を1年とする有期契約が合計3回更新されてきたところ、Y社は4度目の契約期間満了の際、Xに対し、本件有期雇用契約は更新しない旨を通告した。

なお、Y社は、これに先立って、本件雇止めの理由を詳細に記載した書面をXに交付して納得を得ようとしたが、Xはその受領を拒否していた。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件各更新手続の回数は3回に過ぎず、本件有期雇用契約が期間の定めのない契約と実質的に同視することができる状態にないことは明らかであるから、本件雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるためには、本件有期雇用契約による雇用継続に対する労働者の期待利益に合理性があることが必要であると解されるところ、この合理性の有無は、(1)当該雇用の臨時性・常用性、(2)更新の回数、(3)雇用の通算期間、(4)契約期間管理の状況、雇用継続の期待を持たせる言動・制度の有無などを総合考慮し、これを決するのが相当である。

2 確かにXは、コピーライターとして入社応募したところ、その経験や意欲等が買われ、CDというワンランク上のポジションで採用されたものであって、その年齢等を併せ考慮すると、Y社との雇用契約が長期かつ安定的に継続されることに対して、それなりの期待を抱いていたということはできる。
しかし、(1)CDは資質として自由な発想等に基づく創造性、専門性を持った人材が求められることから、その職務は、本来常用というよりも、むしろ臨時的な性格を有しているものと認められること、(2)現にY社は、CD業務につき1年ごとの嘱託契約社員向きの業務であると位置付け、Xに対しても、その採用面接時はもとより入社直後のオリエンテーション等においても、その旨を明確に説明し、雇用継続に対する期待利益を抱かせるような言動をした形跡はうかがわれないこと、(3)本件各更新手続の回数は僅か3回にとどまっており、その通算期間も4年に満たないこと、(4)Y社は、本件各更新手続に先立って、各契約期間の成果等に関する評価資料に基づき、Xとその上長との間において面談を実施した上、これを踏まえ年俸の額等を決定し、Xとの間において有期雇用契約書等を取り交わしており、本件各更新手続の管理は厳格に行われていたものといい得ることなどの事情を指摘することができる
これらの事情を総合すると本件有期雇用契約による雇用継続に対するXの期待利益に合理性があるとはいい難く、本件雇止めに解雇権濫用の法理を類推適用する余地はないものというべきである。

非常に参考になる判例です。

会社側とすれば、有期雇用契約を締結する場合には、更新手続きをしっかりやること、雇用継続の期待を持たせる言動は慎むことなどの対策をとることになります。

ただ、これまでの多くの裁判例を見ればわかるとおり、解雇しやすくするために、あえて有期雇用にし、更新を続けてきたというような場合には、たいてい解雇権濫用法理を類推適用されます。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約26(エヌ・ティ・ティ・コムチェオ事件)

おはようございます。 

さて、今日は期間雇用の営業社員に対する雇止めの成否に関する裁判例を見てみましょう。

エヌ・ティ・ティ・コムチェオ事件(大阪地裁平成23年9月29日・労判1038号27頁)

【事案の概要】

Y社は、NTTコミュニケーションズ株式会社の100%子会社で労働者派遣事業の他、インターネット検定の運営や電気通信サービスに関する販売受託等を行っている。

Xは、平成13年4月から、A社との間で期間3か月の労働契約を締結・更新していた。

14年5月、A社の会社分割により同社の業務を引き継いだB社にXとの労働契約も引き継がれ、以降、期間3ヵ月の労働契約を17回更新した。

平成18年7月、B社がCに吸収合併され、それに伴ってXの労働契約もC社に承継された。

同年9月以降、XはC社との間で労働契約を締結し、以降10回更新された。

その間、19年12月時点でC社とXは労働者派遣契約を締結し、20年1月からY社勤務後の就労場所と同じ勤務地で勤務した。

Xは、21年1月、C社から同年3月末をもって派遣契約を終了する旨の告知を受けた。

Y社は、平成21年2月、Xを含むC社の従業員に対し契約社員の募集を行った。XはC社の同僚とともにこれに応募し、同年4月からY社との間で期間6ヵ月の有期契約を締結し、同年10月に22年3月末まで更新された。

平成21年4月以降、Xは、データ入力の遅れや行動計画表の未提出があった。また、同年11月、Y社はXの旅費の不正請求や不要な時間外勤務の疑いを持ち、Xの行動を監視したところ、Xの報告に不備があり、報告どおりに取引先を訪れていないことが判明した。

Xは、平成22年2月、同年3月末の契約満了後の更新はしない旨の説明を受け、退職予告通知書、雇止め理由説明書の交付を受けた。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

未払賃金額は、雇止め前の賃金額を基礎にし、インセンティブ給を3分の1として算出した額の1ヶ月当たりの平均額を、雇止め後の賃金月額とするのが相当である

【判例のポイント】

1 確かに、Y社は、Xとの間で本件労働契約を締結したのち、1回、労働契約を更新し、同更新時、事前に、Xに対して更新意思の確認をしている上、更新後の雇用契約書も取り交わしている。
しかし、Xが従事していた業務内容は、コミュニケーションズの商品であるフリーダイヤルやナビダイヤルの営業で恒常的な業務であって、Y社自身もX採用時、Xの関西以前での業務経験を踏まえて採用していること、X更新も同労働契約が更新されるとの認識を持っていたこと、同更新時取り交わした契約書のうち、X保持分については作成日付も抜け、Xの記名捺印もなく厳格になされたことが窺えないことがある。以上の事実を踏まえると、Xは、本件雇止め当時、同労働契約が更新されるとの合理的期待を有していたことが推認され、同認定を覆すに足りる証拠はない。
そうすると、Xに対する本件雇止めには解雇権濫用法理が類推適用されるとするのが相当である。

2 Xに対して一定の責任を問う余地は十分あるが、本件雇止めが正当化されるまでの事由があるか、疑問といわざるを得ず、その他、同雇止めを正当化させるに足る事由があると認めるに足る証拠はない。
そうすると、本件雇止めは、濫用があり無効といわざるを得ない。

3 本件雇止めが無効とすると、原則として、期間を含めて同雇止め時までの労働条件で更新されたと解するのが相当である。
Xが、労働契約の更新が認められて平成22年4月以降勤務を継続したとしても、同更新時の新たな契約によって上記改正されたインセンティブ給制度の適用を受けるため、同更新後受給できるインセンティブ給は同改正後のインセンティブ給制度の範囲内であるというべきである

本件では、裁判所は、雇止めの合理性を判断するにあたり、データ入力の送れや個人行動計画表の未提出、虚偽報告と旅費の不正請求を認定しつつも、個人成績に特段問題があるとは認められないこと、顧客から一定の評価を受けていること、旅費の不正請求が認められるものの、その不正受領額は2190円であること、データ入力ではY社から指導を受けているものの、処分までは受けていないことを指摘し、雇止めは濫用であると判断しています。

こういうケースは、よくありますね。

従業員側としても、全く落ち度がないわけではない場合であっても、解雇や雇止めの効力が否定されることはよくあります。

結局、総合判断なので、解雇や雇止めをする時点で、間違いなく有効になるとか無効になるという判断はほとんど不可能だと思います。

会社としては、「できるだけ慎重に行う」というのが限界だと思います。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約25(鈴蘭交通事件)

おはようございます。

さて、今日は、60歳定年後の定時制乗務員の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

鈴蘭交通事件(札幌地裁平成23年7月6日・労判1038号84頁)

【事案の概要】

Y社は、タクシー事業を営んでいる会社である。

Xらは、平成21年12月当時、定時制乗務員としてY社に勤務していた。

定時制乗務員に対する給与は、稼働率の50%という完全な歩合給であった。

Y社は、平成21年12月、書面をもって、Xらに契約期間満了を理由に雇止めとする旨通知した。

なお、X1は、正社員として14年間勤務した後、平成18年11月に満60歳の定年となったが、改めて定時制乗務員として労働契約を締結し、2回の契約更新を経ていた。

Xらは、本件雇止めは解雇権濫用法理により無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Y社が本件雇止めにおいて前提とした必要な人員削減数は、平成21年12月中旬時点での乗務員数と、その時点での車両数を20台減車した場合の必要な乗務員数を比較して決せられたものであり、乗務員の自然減が一切考慮されていないことは明らかである
しかして、本件事業譲渡による10台の減車のみでは、遊休状態にあった営業車を削減すれば足り、本件雇止めの必要は全くない。そして、新法減車は、平成21年12月の段階では減車の時期や台数は具体化していなかったのであるから、Y社としては、協議会での議論の推移や他社の動向、例年25名ほども出る自主的な退職者の状況を勘案しつつ、減車の時期と台数が具体化した段階で、必要な措置をとれば足りたはずである。平成21年12月の段階で、しかも自発的な退職者が出ることを一切考慮しないまま行われた本件雇止めは、必要性と合理性を欠いていたものといわざるをえない

2 現に、Y社においては、本件雇止めが完了した平成22年12月までに、24勤の乗務員22名が退職し、24勤者換算で29.5名が不足する状態になったのであり、結果的に見れば本件雇止めは、少なくとも余剰人員対策としては無意味であったことになる。この点、証拠中には、実際の自然退職者数がY社の想定より多かったとするものがあるが、Y社は、もともと自然数を全く考慮しなかったのであり、採用できない。

3 なお、乙第68号証によれば、事業譲渡と新法減車で17台の削減をした平成22年4月の段階では、遊休車両が0.5台となって、乗務員の過不足がほぼなくなり、その時点では本件雇止めが功を奏した形にはなっている。しかしながら、本件雇止めに伴い、Y社は乗務員募集を停止し、年末年始の繁忙期を、遊休車を抱えたまま、増員をしないばかりか、かえってXらを雇止めにすることで機会損失を増加させたのであり、札幌におけるタクシー事業の閑散期である4月に遊休車を最小化したとしても、これをもって本件雇止めの結果が合理的であったと評価することはできない。

4 以上によれば、本件雇止めは、利益の向上の見込みがあるとした判断に合理的裏付けが欠けていた上、新法減車の時期や台数が不確定な中、自然退職者が出ることを一切考慮せずに行われたものであり、必要性と合理性を欠くものであったといわざるをえない。これは、解雇であれば解雇権の濫用に相当するものである

5 Xらの労働契約が期間1年の有期雇用であるとのY社の主張を前提としても、解雇権濫用法理の類推によって、XらとY社との契約期間満了後における法律関係は、従前の労働契約が更新されたものと同様のものとなる(最判昭和61年12月4日判決)。このことは、本件雇止め後、再度契約期間が満了した後においても同様と解される。したがって、XらとY社とは、定時制乗務員としての地位を現在まで継続して有していることとなり、本件雇止め以降の得べかりし賃金についても、労働の提供はしていないものの、これは無効な本件雇止めをしたY社において責めに帰すべき事由があるので、これを請求することができる(民法536条)。

上記判例のポイント1や4を読むと、結論としてはこうなりますね。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約24(トーホーサッシ事件)

おはようございます。

さて、今日は、60歳定年再雇用契約後の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

トーホーサッシ事件(福岡地裁平成23年7月13日・労判1031号5頁)

【事案の概要】

Y社は、サッシなどの製造販売を営む、従業員数約40人の会社である。

Xは、平成12年8月に51歳でY社に入社し、平成21年9月に定年を迎えたものである。

XとY社は、定年後、雇用期間を6か月ごとの更新とし、雇用継続は最大65歳の誕生日の前日までとする旨の記載がなされた確認書を作成した。

Y社は、平成22年8月、Xに対し、同年9月をもって、本件雇用契約を更新しない旨通知した。

Xは、本件雇止めは無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

本件雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Xには、定年を迎えた後もY社での就労が認められ、少なくとも64歳に達するまで雇用が継続されるとの合理的期待があったものということができる。したがって、かかるXは、自らの就労能力が衰えるなどそれまでと事情が大きく変化しない限り、再雇用が続けられる期待を持つというべきであり、本件雇止めについては、労働契約法16条の解雇権濫用法理が類推適用されると解することが相当である。

2 いわゆる従業員代表との間の労使協定は、法律上明文がある場合に労働基準法等の法律上の規制を免除する効果を及ぼすものであるが、他の労働者に対して規範的効力が及ぶものではなく、そのような効力までは認めることは困難である

3 Xの陳述どおり、本件雇用継続制度にかかる協定書は公表されておらず、Xは平成22年8月の団体交渉で初めて知ったことを、一応認めることができる。
そうすると、いかに他の従業員との関係で統一的な運用をするためとはいえ、肝心の本件雇用継続制度を周知しないままにその基準を雇止めの要素として考慮することは相当とはいい難い。
したがって、本件基準を満たしているか否かを、本件雇止めが合理的理由を備えるか否かの判断資料とすることは相当ではなく、この点についてのY社の主張を採用することは困難である。

4 ・・・以上によれば、Y社の主張する事実を総合考慮したとしても、少なくともXの就労状況がこれまでに比べて大きく衰えたことを認めるに足りる的確な疎明資料はなく、また、Y社の経営状況がこれまでと比して大きく変動し、ワークシェアリング等の解雇回避努力を行っても、Xの雇用を継続することができなかったとまでは認め難いから、本件雇止めに合理的な理由があるとは認められない

賃金仮払いの仮処分が認められた事案です。

地位確認の仮処分は、従来通り、必要性を否定されています。

上記判例のポイント4ですが、継続雇用した従業員を雇止めする場合、ワークシェアリングまで検討し、解雇回避努力を尽くさなければならないとされています。

もちろん、本件では、Xに解雇事由がないため、整理解雇同様の要件を要求しているわけですが。

嘱託社員であろうとも、整理解雇をするには、厳しい要件を満たす必要があるわけです。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約23(マイルストーン事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣社員の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

マイルストーン事件(東京地裁平成22年8月27日・労経速2085号25頁)

【事案の概要】

Y社は、労働者派遣事業事業等を営む会社である。

Xは、Y社との間で登録型有期雇用契約を締結し、約2年9か月にわたり契約を反復更新して、同一の派遣先に就労していた。

平成21年2月、Y社の責任者は、本件派遣先責任者から、本件派遣契約の期間満了による終了の申出を受け、そのことをXに伝えた。

Y社は、Xとの雇用契約を、期間満了により平成21年3月、終了させた。

Xは、Y社に対し、違法・不当な雇止めにより契約を終了したと主張し、損害賠償を請求した。

【裁判所の判断】

雇止めは有効→請求棄却

【判例のポイント】

1 Xが平成18年7月以降、Y社との間で締結した雇用契約は、いずれも「登録型」有期雇用契約であるところ、Xは、Y社との間において、かかる雇用契約を5回更新した上、平成20年10月、本件雇用契約の締結に至ったこと、いずれの更新時においてもY社担当者(派遣元責任者)とXとの面談が行われ、その際、他の従業員とのトラブルが問題とされた経緯はあるものの、更新の可否それ自体については特に大きな問題が生じたことはなく更新手続が繰り返されていたこと、またXは、本件派遣先の前身であるA社を紹介してもらった人物から本件派遣先の正社員に登用される可能性が十分にあるとの説明を受けており、本件派遣先の専務理事や本部長等もXの仕事ぶりを一応評価し、Xに対し、正社員への登用の可能性をほのめかしていたこと、そして、Y社の派遣元責任者も、平成21年2月初めに本件派遣先の責任者から連絡が入るまでは、本件雇用契約の更新について特に問題はないものと認識していたことなどの事情が認められる。
これらの事情によると雇止めとなった平成21年3月当時、Xは、本件派遣先幹部らの発言から、将来本件派遣先の正社員に登用される可能性が十分にあるものと考え、本件雇用契約が更新継続されることに、かなり強い期待を抱いていたことが認められる

2 しかし、登録型有期労働契約の場合、派遣期間と雇用契約期間が直結しているため、労働者派遣が終了すれば雇用契約も当然に終了する。そうすると本件雇用契約は、本件派遣先との本件派遣契約を前提としていることになり、本件派遣先幹部らの発言のとおりXが本件派遣先の正社員に登用されると、本件派遣契約は終了し、その結果として本件雇用契約も当然終了することになるのであるから、Xの上記期待は自己矛盾を含むものといわざるを得ない

3 そもそも労働者派遣法は、派遣労働者の雇用の安定だけでなく、常用代替防止、すなわち派遣先の常用労働者の雇用の安定をも目的としているものと解されるのであるから、この解釈の下では同一労働者の同一事業所への派遣を長期間継続することによって派遣労働者の雇用の安定を図ることは、常用代替防止の観点から労働者派遣法の予定するところではないものというべきである。
そうするとXの上記期待は、労働者派遣法の趣旨に照らしても合理的なものであるとはいい難く、民法709条ににいう「法律上保護される利益」には当たらないと解すべきである

派遣法の趣旨に照らすとこのような結論となります。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約22(スカイマーク事件)

おはようございます

さて、今日は、客室乗務員の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

スカイマーク事件(東京高裁平成22年10月21日・労経速2089号27頁)

【事案の概要】

Y社は、定期航空運送事業等を行う会社であり、福岡・羽田間等に定期便を運航している。

Xらは、Y社の有期雇用契約社員で客室乗務員として勤務していた。

Xらは、Y社の不当な勤務形態の変更等に抗議したことに対する報復として雇止めを受けたとして、雇用契約上の地位確認と賃金請求、不法行為に基づく損害賠償請求をした。

【裁判所の判断】

雇止めは有効

不法行為は成立しない

【判例のポイント】

1 X2は、みずから3月31日に退職すると記載して退職届を提出したのであるから、X2について退職の意思表示が存在したと認められる。この意思表示に瑕疵がなければ、Y社とX2の間の雇用契約は、X2の退職の意思表示(及びY社の承諾)により終了することになる。

2 X2は、業務評価不良(135人中133位、ランクD)を理由に雇止めの通告を受けても納得できず、労働組合の関係者からも雇止めは無効と助言されていたが、3月2日、それほど強く説得された形跡がないのに、みずから3月31日に退職すると記載して退職届を提出した
・・・そうだとすると、X2が退職届を提出した時点で、退職の意思がないのに形だけのつもりであったとか、退職の意思表示になるとは思わなかったなどと認めることはできないから、X2の退職の意思表示が心裡留保または錯誤により無効とはいえない。したがって、Y社とX2の間の雇用契約は、X2の退職の意思表示(及びY社の承諾)により終了したというべきである。それ以上に雇止めの相当性について判断する必要はない

3 X1が、カウンター業務支援により疲労状態での業務になりかねず、保安業務等に不安を感じたという点は理解できなくもない。しかし、そうであるからといって抗議目的で欠勤までするというのは、やや行き過ぎというべきであり、一定のマイナス評価を受けてもやむを得ないものと考えられる
X1について、前年度は相当の評価を受けて滞りなく更新を終えたのに、平成19年度は業務評価のうち特に社会人的資質項目が下から2番目であり雇止めになったが、このような悪い評価には、上記の欠勤の問題が大きく影響していると考えられる。Xらは、Y社が欠勤の問題を恣意的に評価したと主張するが、人事総務部における更新・不更新の判断は、15に及ぶ項目を数値化したうえで所定の基準に従い成績下位者から雇止め候補者を抽出して検討するなどの方式に基づいており、一応の公正さが担保されているということができる
・・・このような事実等によれば、Y社が、業務内容の変更に抗議をしたX1に対する報復として、恣意的に評価を低く抑えて雇止めを断行したと認めることはできない。そうだとすると、Y社のX1に対する不法行為は成立しない

本件では、雇止めの前に、従業員が退職の意思表示をしており、性格には、雇止めの問題ではありません。

退職の意思表示が有効か否かが問題となっています。

また、雇止め自体が報復等の不当な動機に基づいて行われたか否かについては、否定されています。

雇止めの対象者を選ぶ際、会社としては、上記判例のポイント3は参考になりますね。

 客観的に、「恣意的ではない」と見えるように準備することが大切です。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約21(江崎グリコ事件)

おはようございます。

さて、今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

江崎グリコ事件(秋田地裁平成21年7月16日・労判988号20頁)

【事案の概要】

Y社は、菓子、食料品の製造及び売買等を目的とする会社である。

Xらは、Y社に営業担当従業員として採用され、以来1年ごとに契約を更新してきた。

Y社は、平成20年4月、Xらに対し、契約期間が満了する同年5月をもって雇用を打ち切る旨通告した。

その後、Y社とXらとの間で雇用の打ち切りについて交渉が行われ、雇用契約は、2ヶ月間、2度にわたって更新された。

しかし、Y社は、Xらに対し、同年12月、雇用契約を更新せず、雇用関係を終了させる旨通告した。

Xらは、本件雇止めは無効であると主張し、争った。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 有期の雇用契約において更新が繰り返されたときには、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態になったと認められる場合、又は期間の定めのない契約と必ずしも同視できなくても雇用継続に対する労働者の期待利益に合理性があると認められる場合には、雇用契約の反復更新後の雇止めには解雇権濫用法理が類推され、合理的な理由のない雇止めは、解雇権の濫用に当たり無効となるというべきである

2 Xらは、Y社に採用されて以来、本件雇止めまで約15年間、合計16回にわたってY社から雇用契約を更新されているのであって、平成19年まではXらとY社との間で具体的な交渉もなく当然に雇用契約が更新されてきたこと、ストアセールスについて雇止めの前例はほとんどなかったことに照らせば、XらとY社との間の雇用契約は、形式的には期間の定めのあるものであったが、更新を繰り返すことが当然に予定されており、雇用継続に対するXの期待利益に合理性があると認められるから、本件雇止めの効力を判断するに当たっては、解雇権濫用法理が類推されるというべきである

3 Y社は、本件雇止めに解雇権濫用法理が類推されるとしても、本件雇止めは整理解雇が有効とされるための要件を具備している旨主張する。
整理解雇が有効とされるためには、(1)人員削減の企業経営上の必要性、(2)整理解雇回避努力義務の履行、(3)被解雇者選定の合理性、(4)労使間における協議義務の履行等の手続の妥当性が必要であると解される。

4 Y社の売上高は年々減少傾向にあり、平成20年度には過去15年間で初めての営業損失を計上するに至っているなど、Y社の経営状態は相当程度悪化している。また、「標準コール数」で示されるY社の秋田事務所におけるストアセールスの仕事量は、訪問すべき店舗数や各店舗における活動可能な業務内容の減少等を反映して、平成20年2月の時点で5名の合計値が319.3と東北管内の他の県と比べると4名分程度の仕事量しかなく、本件雇止めが行われた同年12月の時点では5名の合計値255.4と3名分程度の仕事量しかなかった。
こうした状況に照らすと、本件雇止めの時点において、Y社の秋田事務所におけるストアセールス合計5名のうち、2名については人員を削減する企業経営上の必要性があったというべきである

しかしながら、Xら3名の本件雇止めのうち1名については、人員削減の必要性が認められず、解雇権濫用法理が類推適用されてその雇止めが無効となると解される。

本件は、整理解雇の雇止め版です。

裁判所は、4要件のうちの1つ目の要件である「人員削減の必要性」について一部否定しました。

ストアセールス5名のうち2名については削減の必要性があったという認定です。

特徴的なのは、「標準コール数」という数値を根拠として、「一部」については人員削減の必要性を肯定し、「一部」については否定したという点です。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

有期労働契約20(エフプロダクト事件)

おはようございます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、継続雇用制度による再雇用と雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

エフプロダクト事件(京都地裁平成22年11月26日・労判1022号35頁)

【事案の概要】

Y社は、百貨店を主要取引先としてマネキンの貸出しや百貨店における内装展示等を主力業務とするA社の子会社として、マネキンの製造・メンテナンス、内装展示のための陳列器具の商品管理および物流業務等を業とする会社である。

Xは、Y社の西営業所において、商品管理業務、マネキンメンテナンスとそれに付随する業務を担当し、労働組合の委員長をしていた。

Y社は、平成20年2月、再雇用制度に関する就業規則を制定した。

Xは、平成20年6月、60歳の誕生日をもって、Y社を退職し、翌日付で、平成21年6月を再雇用期限として再雇用された。

その際に作成された契約書には、「業務量の減少等により契約の必要がなくなったとき」や「会社の経営の都合で人員削減の必要上やむを得ないとき」には、契約を更新せず、契約の終了とする旨が記載されていた。

Y社は、平成21年3月、Xに対し、「業績不振のため」を理由として、同年6月をもってXとの雇用契約を期間満了により終了させる旨の雇用契約満了予告通知をした。

Xは、本件雇止めは無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Y社は、就業規則41条4項が「再雇用に関する労働条件等については、個別に定める労働契約(労働条件通知書)によるものとする。」とし、本件再雇用の契約書13条で会社の経営上の理由により契約更新が行われない場合を規程していることから、Xが主張するような定年後の継続雇用に対する合理的期待が生じる余地はない旨主張する。

2 しかし、就業規則41条1項、4項を素直に読むと、4項のいう「労働条件等」とは、賃金や労働時間等、雇用の継続を前提とした労働条件等を意味するわけではないと解される。したがって、上記契約書13条の規定は、就業規則に違反し、無効である(労働契約法12条)。

3 就業規則で、再雇用に関し、一定の基準を満たす者については「再雇用する。」と明記され、期間は1年毎ではあるが同じ基準により反復更新するとされ、その後締結された本件協定でも、就業規則の内容が踏襲されている。そして、現にXは上記再雇用の基準を満たす者として再雇用されていたのであるから、64歳に達するまで雇用が継続されるとの合理的期待があったものということができる。

4 ・・・本件再雇用契約の実質は、期間の定めのない雇用契約に類似するものであって、このような雇用契約を使用者が有効に終了させるためには、解雇事由に該当することのほかに、それが解雇権の濫用に当たらないことが必要であると解される。したがって、本件雇止めには、解雇権濫用法理の類推適用があるとするのが相当である。

5 本件雇止めが整理解雇の要件を満たすかどうかを検討する必要があるところ、整理解雇については、人員整理の必要性があったか、解雇を回避する努力がなされたか、被解雇者の選定基準に合理性があるか、労働者や労働組合に対する説明・協議が誠実になされたかという点を総合的に考慮して判断するのが相当である。

6 ・・・昨今の百貨店各店の業績からすると、Xを雇止めにした平成21年6月時点において、Y社における今後の売上高の上昇が期待できる見込みに乏しく、人員を削減すべき必要性を認めることができる。

7 ・・・平成21年4月には、親会社に移籍する予定とはいえ新規に大学卒を採用している。そして、Y社において一時帰休を実施したのは平成21年7月、希望退職を募集したのは同年12月であって、こうした経緯からすると、Y社において、本件雇止め以前にそれを回避すべき努力義務を尽くしたということはできない

8 以上の検討からすると、本件雇止めについて、整理解雇の要件を満たしていると認めることはできず、Y社の業績不振を理由とする本件雇止めは、解雇権の濫用に当たり無効である。

本件は、雇止めが整理解雇として行われた事案です。

このような場合、雇止めであっても、整理解雇の要件を満たしていなければ、無効となります。

解雇回避努力について、厳しく判断されますので、新規採用等の矛盾した行動はやめましょう。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。