おはようございます。
今日は、産後休暇明けの週勤務日数について、産前勤務より少ない日数を提案したことが、いわゆるマタニティーハラスメントに該当しないとされた事案について見ていきましょう。
A市事件(宮崎地裁令和5年7月12日・労経速2528号26頁)
【事案の概要】
本件は、医師であるXが、勤務していたB病院を運営するY市に対し、Xが産休から復帰する直前に次年度の勤務日を週5日から週1日に減らす変更を告げられたことによりXの抱える精神疾患が悪化したなどとして、国家賠償法1条に基づく損害賠償+遅延損害金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 B病院は、令和3年4月以降も会計年度任用職員として雇用することを前提として、週1日(水曜日)の勤務を提案した。この提案は、Xが精神障害の影響によって睡眠が十分にとれず、B病院から至近の官舎からの出勤でも勤務開始時刻等に配慮が必要であったところ、産休明けは育児の負担が重なるうえ、A市外からの通勤が予定されており、更なる配慮が必要であると思われたことからされたもので、育児をしながらの遠距離通勤での勤務に慣れていけば勤務日を増やす余地があるものであった。
2 B病院では医師が不足しており、Xが産休に入った直後に別の医師を採用したことによってXが余剰人員となったということではない。また、Xが雇用されてから産休に入るまでの間、Xの抱える精神障害等を踏まえて種々の勤務条件の配慮がなされており、妊娠や出産を理由としてXを勤務条件で不利益に取り扱う意図があったとは認めがたい。
前記提案の週1日の勤務では、Xが居住するZ市における保育所利用のための基準要件の一部を満たさないことになるが、B病院において、当該基準を把握していたとは認められないし、当該基準を一時的に満たさない場合において、直ちに入園許可が取り消されなくなるかどうかも定かではない。また、Xが当該要件を満たす働き方を希望した場合に、B病院がこれを受け入れなかったとも認定できない。
本件のような事案においては、多くの場合、「マタハラ」との関係で腫れ物に触るような対応を余儀なくされていることと思います。
本件では上記判例のポイント2のような事情が認定されたことから違法とは判断されませんでした。
社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。