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今日は、上司のパワハラ及び会社の違法なけん責処分につき、安全配慮義務違反が認められた事案を見ていきましょう。
アイエスエフネット事件(東京地裁令和6年2月1日・労判ジャーナル150号28頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の従業員Xが、Y社の上司らからパワーハラスメント等を受けて適応障害を発症したなどと主張して、Y社に対し、安全配慮義務違反又は使用者責任に基づき、慰謝料等の支払を求め、また、Y社から理由なく賃金を減額されたとして、Y社に対し、主位的に、不法行為に基づき、減額分等支払を、予備的に、雇用契約に基づき、減額分等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
一部認容
【判例のポイント】
1 G部長発言は、Xに対して、残業代の請求をした場合には人事評価が下がる旨を伝えたものであり、Xの権利行使のための行為を不当に阻害するものであるといえるから、違法なものといえ、また、本件けん責処分について、令和2年2月3日、Xは、C支店での勤務時間中、他の従業員と午後10時30分から約2時間30分にわたって通話をしていた時間について残業代を請求しているところ、XのC支店からの退出時刻は、前日は午後10時30分頃、当日は午前1時7分頃、翌日は、午後2時頃であったことが認められることからすれば、Xは実際に処理すべき業務量が多かったものと推認することができ、これを前提にすると、X供述のとおり、当日、Xは、業務に関連する電話を受けた後に、通話作業をしながら業務を行っていたものと認めるべきであり、このような行為が作業密度等の点において問題がないとはいえないとしても、それを理由にけん責処分までするのは重きに失し、相当性を欠いているというべきであるから、本件けん責処分は、違法なものといわざるを得ず、これらはXに精神的な苦痛を生じさせるものであるから、Y社の安全配慮義務違反を構成し得るものであるところ、Xは選択的に使用者責任に基づく請求もしているが、そちらの法律構成の方が認容額が増え得るという関係にはないので、Y社の安全配慮義務違反を前提に検討する。
2 Xは、Y社の安全配慮義務違反によって、自律神経失調症等を発症したというが、当該疾病の発生機序については立証が尽くされているということはできないから、Y社による安全配慮義務違反との間に相当因果関係を認めることはできないものの、Xに精神的苦痛が生じたこと自体は否定することができず、安全配慮義務違反の継続期間や、Xに与えた影響の大きさに照らせば、その慰謝料額としては30万円が相当である。
G部長の気持ちも理解できなくはありませんが、労働時間管理のしかたを根本的に変えないと問題は解決しません。
労務管理に関する抜本的な改善については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。