Category Archives: 解雇

解雇65(ジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパン事件)

おはようございます。 

さて、今日は、業績悪化等を理由とする退職勧奨と解雇の相当性に関する裁判例を見てみましょう。

ジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパン事件(東京地裁平成23年9月21日・労判1038号39頁)

【事案の概要】

Y社は、アメリカ合衆国を本拠とし、世界的に広告事業を展開するJWTワールドワイドの日本法人である。

Xの職務内容は、広告表現の企画と制作を担当するクリエイティブ部門において、クリエイターを統括するチームリーダーであった。

Y社は、平成18年3月、Xに対し、Y社の業績悪化およびXの勤務成績不良を理由として退職勧奨をし、同年7月頃からXを仕事から外した。

Xは、東京地裁に対し、Y社を相手方として、労働審判、仮処分、本案訴訟を申し立て、Xの請求を全て認める旨の判決を得た。

Y社は、その後も、Xに対し退職勧奨を行ったが、Xは、退職勧奨には応じられない旨を回答した。

Y社は、平成21年10月、Xに対し、解雇する旨の通知をした。

【裁判所の判断】

解雇は無効

慰謝料として30万円の支払を命じた

【判例のポイント】

1 被告は、あくまで、人的理由と経済的理由が競合した普通解雇であり、仮に、本件が整理解雇と呼ばれる類型に該当する事案であるとしても、いわゆる「整理解雇の4要件(要素)」を本件に適用するのは相当でないと主張している。
当裁判所としては、整理解雇とその他の普通解雇とでは、相当程度性質が異なり、その判断要素ないし判断基準も異なる以上、基本的には本件解雇の有効性を立証すべき責任を有する被告の主張の力点の置き方を尊重することとし、まずは一般的な普通解雇の成否を検討することとし、整理解雇については予備的な主張と位置づけるのが適切であると思料する。なお、整理解雇の判断に及んだ場合の判断枠組みとしては、いわゆる要素説の観点から検討するのが相当であり、被告が指摘する事案の特殊性については、この判断枠組み自体を否定するほどの事情とはなりえず、あくまで諸要素の検討において考慮する余地があるにとどまるというべきである

2 Y社は、X側に対し、Y社の経営状況や本件退職勧奨の理由につき、一応の説明をしていることが認められるが、このうち、経営状況の説明については、本件訴訟において書証として提出された以上の説明はしていないものと推認される。また、Y社は、前件訴訟により、Xに関する雇用契約上の地位確認等につきほぼ全部敗訴の判決が確定したにもかかわらず、その後も約2年間にわたってXの出勤を許さず、したがって何ら成果を挙げる機会も与えられないまま、再び退職勧奨をするに至ったことが認められるのであり、これは、解雇の相当性に大きな疑問を生ぜしめる事情というべきである。

3 一方、整理解雇についてみると、・・・人員削減の必要性については、・・・こうした事情からは、本件解雇が、企業の収益性を回復すべく、組織再編等に伴う企業の合理的運営上の必要性から実施された人員削減策であるということはできるが、それを超えて、Y社の経営状況が客観的に高度の経営危機下にあることや、さらにY社が倒産の危機に瀕していることを認めるには足りない
また、解雇回避措置の相当性については、人員削減の必要性につき、企業の合理的運営上の必要性という程度にとどまるものと認定せざるを得ない以上、相当高度な解雇回避措置が実施されていなければならないと言うべきところ、本件で実施されたと評価できる解雇回避措置は、希望退職者を募集したことに加えて、せいぜい不利益緩和措置としての退職条件の提示を行ったという程度であって、甚だ不十分といわざるを得ない。
さらに、手続的相当性についても、必ずしも十分ではなく、また、本件解雇に至るまでの紛争の経緯については、本来、前件判決後にXを実際にY社で勤務させるなどして、X・Y社間の関係を一旦は原状に戻すという手続を踏むことが求められていたというべきであり、広い意味においては、これも本件解雇に至る手続的相当性を揺るがす大きな事情と評価するのが相当である。
結局、以上の要素を総合考慮すると、本件解雇は、整理解雇としても有効であるとは認められない。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇64(みくに工業事件)

おはようございます。

さて、今日は、整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

みくに工業事件(長野地裁諏訪支部平成23年9月29日・労判1038号5頁)

【事案の概要】

Y社は、工作機械類の製造および販売等を目的とする会社である(従業員数211名)。

Xは、平成10年2月、Y社のパート社員として雇用され、12年6月、準社員となった。

Y社における準社員とは、Xのこのようにパート社員から昇格するものであった。

Y社は、平成21年3月頃、希望退職者を募集し、同年8月、30名の希望退職者が確保された。

Xはこの希望退職者募集の対象に含まれていなかったが、Y社はXを退職勧告の対象とし、4回の面接が行われたが、Xは、雇用の継続を希望した。

そこで、Y社は、Xの配転について検討し、Xに配転先の候補を伝えたが、Xは納得できないと回答した。

その後、Y社は、Xを解雇する旨の意思表示をした。

Xは、本件解雇が整理解雇の要件を満たしておらず無効であると主張した。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 本件解雇は、いわゆる整理解雇に該当するところ、整理解雇は、労働者の責めに帰すべき事由による解雇ではなく、使用者の経営上の理由による解雇であって、その有。効性については、厳格に判断するのが相当である。そして、整理解雇の有効性の判断に当たっては、人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性及び手続の相当性という4要素を考慮するのが相当であり、以下のような観点から本件解雇の有効性について検討する。

2 正規社員や準社員から派遣社員等への従業員の入替えについては、会社として長期的にかかる構造転換の方針をとることそのものは、経営合理化の観点からみて理解できないではないが、本件解雇を有効たらしめるための要素としての人員削減の必要性の有無という観点からみた場合、かかる実態を安易に容認することはできない。

3 Y社が、Y社においては客観的にXの受入れが可能であり、かつ、Xにおいても受諾する可能性があるIK製造部におけるA勤務のみの条件提示を、これが可能であるにもかかわらずしていないことは、提示すればXの解雇を回避することができる可能性がある提案の不行使に当たるものと評価せざるを得ず、これによれば、Y社による本件解雇を回避するための努力の履行が十分でなかったものと認めるのが相当である。

4 Y社における準社員という地位は、パートタイマー、アルバイト、臨時工、期間工、請負社員、派遣社員、嘱託社員など終身雇用の保証がなく、仕事量の多寡に応じて雇用され、雇用調整が容易な労働者とは、正規社員と同じ終身雇用制の下で雇用されているという点で本質的に異なり、会社との結び付きの面でも、正規社員と全く同一ではないもののこれに準じた密接な関係にあるものと解され、解雇の相当性判断に際しては、正規社員と同様に判断するのが相当である。したがって、Xが準社員であったことを、Xを解雇の対象者として選定した事情として合理的なものと認めることはできない

5 使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職について利益(中間利益)を得たときは、使用者は、当該労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり中間利益の額を賃金額から控除することができるが、上記賃金額のうち労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である。したがって、使用者が労働者に対して負う解雇期間中の賃金支払債務の額のうち平均賃金額の6割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許されるものと解すべきである(最高裁昭和37年7月20日判決)。

この裁判例も4要素で判断しています。 最近、4要件で判断している裁判例がとても少ないですね。

もともと解雇権濫用法理は総合判断ですから、整理解雇だけ要件と考える理由はないので、それはそれでいいと思いますが。

さて、今回のケースでも、整理解雇は無効と判断されています。

判決の理由を読むと、会社側は、それなりの解雇回避措置を講じていますが、やはり有効とはなりませんでした。

会社側からすると、本当に整理解雇を適切に行うのは難しいと思います。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇63(河野臨床医学研究所事件)

おはようございます。

さて、今日は、職員の非違行為等に対する懲戒解雇と割増賃金に関する裁判例を見てみましょう。

河野臨床医学研究所事件(東京地裁平成23年7月26日・労判1037号59頁)

【事案の概要】

Y社は、クリニックや研究所を有する文部科学省・厚生労働省認可の財団法人である。

Xは、平成2年、Y社と雇用契約を締結し、13年から電算課における課長心得という地位にあった。

Y社は、平成20年12月、Xの行為につき、(1)無断欠勤、緊急の欠勤に当たり速やかな連絡がないこと、(2)私物パソコンを大量に持ち込み私的行為を行ったこと、(3)病院事務部のAに対するパワハラ、(4)職制の指示命令に従わないこと、(5)以上の行為について反省がないこと、再三の繰り返しがあり悪質であることにより懲戒事由に該当するとして、懲戒委員会を開催し、弁明の機会を設けた上で、Xを懲戒解雇した。

Xは、本件懲戒解雇は無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は有効

時間外・休日・深夜手当333万余円の支払いを命じたが、付加金の支払いは命じなかった。

【判例のポイント】

1 使用者による懲戒権の行使は、企業秩序維持の観点から労働契約関係に基づく使用者の権能として行われるものであるが、就業規則所定の懲戒事由該当事由が存する場合であっても、具体的状況に照らし、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当性を欠くと認められる場合には権利の濫用に当たるものとして無効になる(労働契約法15条)。

2 Xについては、(1)本件穿孔行為、(2)上司の承諾を得ない欠勤、(3)新医療システム導入委員会における議場からの不退出、(4)Aに対するパワーハラスメントというべき言動という懲戒事由が認められるところ、既にみたように、(1)は、Y社所有建物の躯体部分に損傷を加えるものでそれ自体重大な非違行為というべきであるし、(4)についても、後輩職員に対し心ない攻撃を加え、精神的に多大なダメージを与え長期間の欠勤に追い込んだものであって、重大な非違行為といえる。また、(2)及び(3)についても、それら自体で直ちに懲戒解雇に該当するとまではいえないにしても、Xが事務長から繰り返し注意を受けていたにもかかわらず、これらの行為に及んだことからすれば、これらの行為も軽視することはできない規律違反行為であるといえる
以上を総合すると、上記各事実を懲戒事由とする本件懲戒解雇には合理的な理由があるというべきであるし、それが社会通念上相当性を書くということもできない。

3 Y社は、Xに時間外労働手当を支払ってこなかったが、他方で、Xが管理監督者とはいえないものの、Y社がXに職務手当として月額5万円を支給していたほか、休日ないし深夜労働についてXから求めがあれば承認し、これに対する手当を支払っており、その額は、期間累計で約260万円、月平均でみれば約10万円に上るという事情がある。
また、本件請求期間にかかるXの時間外労働が相当長期間に及んでいることは事実であるが、Xが、少なくともY社から積極的に残業を強いられた形跡はない(X自身もそのような供述はしていない。)。Xは、特に上司である事務長との確執があって意思の疎通を欠いていたところ、Xが必要のない残業を行っていたとは言わないまでも、両者間で業務に関する十分な打ち合わせがなされていれば、そこまで長期間の残業を行う必要性はなかった可能性も高い。
さらに、Y社は、品川労働基準監督署監督官の調査を受けた際にも、Xが管理監督者であるとの認識を示し、
同監督署監督官も一応の理解を示していた

このような事情を総合的にみると、Y社の時間外・深夜・休日手当の不払が付加金の支払を命ずる必要があるといえる程度に悪質であるとはいえない。したがって、本件においては、Y社に対し付加金の支払いを命じないこととする。

本件では、懲戒解雇が有効であると判断されました。

Y社側が提示したXの懲戒事由は多岐にわたりますが、数が多いから懲戒解雇が有効になるというわけではありません。

軽微な懲戒事由をたくさんかき集めても、解雇は有効にはなりません。

また、本件では、300万円以上の未払残業代の支払を命じました。

Y社は明確に残業をするように命じていませんが、黙示の業務命令に基づくものであると認定されています。

会社が、従業員の残業を認識していながら禁止していないと、黙示の業務命令と判断される可能性があります。

付加金については、諸事情を考慮して、今回はなしとなりました。

ラッキーでしたね。

仮に付加金の支払いを命じられても、Y社とすれば、控訴して、その間に、未払残業代を全額支払えば、付加金の支払は免れられます。

付加金の支払いを命じられたら、とりあえず控訴することをおすすめします。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇62(学校法人福寿会事件)

おはようございます。

さて、今日は、専任教師に対する懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人福寿会事件(福島地裁郡山支部平成23年4月4日・労判1036号86頁)

【事案の概要】

Y社は、平成13年2月に設立された学校法人であり。A学校を運営している。

Xは、平成12年4月、A学校の専任教員として雇用され、勤務してきた。

Xは、Y社との間で、平成14年4月から平成15年3月末までとする雇用契約書を作成した。

その後、Xは、Y社がXに対し平成22年3月に委嘱期間を更新しない旨の通知をするまでの間、同学校で勤務していた。

Y社は、これとは別にXを懲戒解雇した。

懲戒解雇事由は、Xが報道関係者の取材を受け、A学校に関わる紛争や問題点を指摘する旨の報道がなされたことである。

Xは、本件通知は解雇権濫用に該当すること、懲戒解雇は懲戒解雇事由がなかったなどと主張し争った。

【裁判所の判断】

本件通知は解雇であり、解雇は無効

懲戒解雇も無効

【判例のポイント】

1 ・・・当事者間で雇用契約書が作成されたのは1回だけであり、XとY社の雇用契約書には年1回の昇給に関する記載がある等、雇用契約が1年を超えて継続することをうかがわせる記載もあった。・・・そうすると、Xらの職務内容が一時的・臨時的なものであったとは認め難い。結局、XらとY社の各雇用契約書には雇用期間を1年とする旨の記載があるが、これらの雇用契約書は本件雇用契約の内容を正確に反映したものではなかったと認めるのが相当である
・・・そうすると、本件契約は、Y社が主張するように、期間を1年とする有期雇用契約の更新が繰り返されていたものとは認められず、むしろ、本件就業規則に従い、特段の事情がない限り、Xらが定年まで勤務することを前提にした期間の定めのない雇用契約であったと認めるのが相当である

2 ・・・報道は報道機関の判断等によってなされるものであり、仮に報道によってA学校が損害等を受けたとしても、直ちにXらの行為によるものといえるかは疑問の余地がある。また、本件就業規則49条は、本件学校に関する取材に応じることを禁じたものとは認められない。加えて、Xらが取材を受けたのは本件通知の後であり、XらとY社は紛争状態にあり、Y社はXらとの雇用関係が終了したとの立場であったことを考慮すると、なおさら、XらがY社との紛争や自らの見解について、報道機関の取材に応じない義務を負っていたと認めることはできない。さらに、Xらは、報道機関の取材に対して、Y社に対し、地位保全等仮処分を申し立てた等の事実を述べたり、本件学校内の問題に対する自らの認識や見解を明らかにしたに過ぎず、虚偽の事実を述べてA学校の業務を妨害したり、学校の信用を毀損したり、本件学校に損害を及ぼしたりするために取材に応じたと認めるに足りる的確な証拠はない。そうすると、Xらが取材に応じたことにより、結果として本件学校に関わる紛争が生じている旨の報道や、本件学校の問題点を指摘する旨の報道がなされたとしても、このことをもってXらが本件就業規則49条(1)、(6)に反し、学校の業務を妨害したり、学校の信用を低下させたり、学校に損害を与えたりしたと認めることはできず、Y社の主張する懲戒解雇事由があったと認めることはできない
したがって、その余の点を判断するまでもなく、本件懲戒解雇は無効である。

上記判例のポイント1、2ともに、事実認定の勉強になりますね。

有期雇用の契約書があったとしても、それ以外の資料から期間の定めのない雇用契約を想定していると評価されれば、有期雇用とはなりません。

これはもう常識といえば常識です。

形式では勝負はつきません。 あくまでも実質が重視されるわけです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇61(泉州学園事件)

おはようございます。

さて、今日は、専任教員に対する整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

泉州学園事件(大阪高裁平成23年7月15日・労判1035号124頁)

【事案の概要】

Y社は学校法人である。

Xら7名は、Y社が設置する高等学校の専任教員として雇用されていたが、平成20年3月、整理解雇された。

本件高校の生徒数は、平成元年度以降、毎年度減少傾向が続き、Y社の主要な収入である学生生徒等納付金も減少した。平成19年度のY社の補正運用資産外部負債比率は91%であり、外部負債の返済能力が不十分であり、金融機関からの借入れ等の外部資金の調達が相当困難であり、極めて資金繰りに窮した状態であった。

Xらは、本件整理解雇は無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 整理解雇は、使用者の業務上の都合を理由とするもので、解雇される労働者は、落ち度がないのに一方的に収入を得る手段を奪われる重大な不利益を受けるものであるから、それが有効かどうかは、(1)解雇の必要性があったか、(2)解雇回避の努力を尽くしたか、(3)解雇対象者の選定が合理的であったか、(4)解雇手続が相当であったかを総合考慮して、これを決するのが相当である。

2 そもそも、人件費削減の方法として、人件費の高い労働者を整理解雇するとともに、他方では人件費の安いほぼ同数の労働者を新規に雇用し、これによって人件費を削減することは、原則として許されないというべきである。なぜならば、同程度の人件費の削減を実現するのであれば、人の入れ替えの場合よりも少ない人数の整理解雇で足りると解されるし、また、このような人を入れ替える整理解雇を認めるときは、賃金引き下げに容易に応じない労働者の解雇を容認し、その結果として労働者に対し賃金引き下げを強制するなどその正当な権利を不当に侵害することになるおそれがあるからである。もっとも、本件の11名のように、任意又は雇止めによる退職の場合に人を入れ替える措置を講じることには特段の法的問題はないと解される。

3 ・・・以上のように、本件においては、(1)11名の退職が予定された段階においては、同退職により一時的な退職金差額の負担を除き少なくとも4128万円程度の人件費の削減になり、これにより財務状況は相当程度改善されると予測されたから、この点で本件整理解雇の必要性があったとは認め難いこと、(2)本件整理解雇は人を入れ替えることを意図したものと解され、その観点からもその必要性を肯定し難いこと、(3)予算ではなく平成19年度の実際の財務状態を前提に1審被告の計算式を適用すると削減人数は13名になり、その結果整理解雇の人数は2名になるから、本件整理解雇の段階で予算になる従前の計算をそのまま使用することは妥当でないことといった問題点があったことを指摘することができる。そこで、これらの諸点を総合すると、本件整理解雇時に7名の専任教員の解雇を要するだけの必要性があったとは認めることができない

4 本件では、Xらないし組合とY社は、相手方の行動、対応を逐一批判ないし非難する傾向にあり、相互不信は根深いものと認められるから、Y社が、その財務状況を踏まえて人件費削減の必要性を訴えても、Xらあるいは組合との間で結局話合いは平行線をたどった可能性も否定できないものと推測される。しかし、そうではあっても、整理解雇を行う使用者は、組合ないし労働者との間で説明や交渉の機会を持つべきである。整理解雇のような労働者側に重大な不利益を生ずる法的問題においては、関係当事者が十分意思疎通を図り誠実に話し合うというのが我が国社会の基本的なルールであり、公の秩序というべきである。したがって、Y社がこれを持とうとしなかったことに整理解雇に至る手続に相当性を欠く瑕疵があるといわなければならない

一審とは異なる判断をしました。

上記判例のポイント4は、手続きの相当性を考える上で、留意しなければいけません。

「どうせ話したってわかってもらえないよ」というあきらめは、基本的には認められません。

会社側とすれば、やはり被解雇者や組合と事前協議を行うべきだということです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇60(静岡フジカラーほか2社事件)

おはようございます。

さて、今日は、事業譲渡と整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

静岡フジカラーほか2社事件(東京高裁平成17年4月27日・労判896号19頁)

【事案の概要】

Y1社は、営業の全部をY2社に譲渡して解散したことに伴い、Y1社に勤務していたXらを解雇した。

Xらは、本件解雇が不当労働行為又は解雇権の濫用により無効であると主張するとともに、Y1社、Y2社の親会社であるY3社に対し、違法な営業譲渡契約を締結させたとして不法行為に基づく損害賠償を請求した。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xらは、本件ではY1社の正規従業員の半数についてY2社への雇用が決定されたことにつき、その経営上の必要性について労働組合との交渉で一切説明がなく、整理解雇法理の要件の一つである差し迫った必要性を欠き、Y1社は希望退職の募集を一切行っていないことから整理解雇要件の一つである解雇回避努力をも欠く旨を主張する。しかし、Y1社の経営が危機的状況にあり、会社は、経営協議会や団体交渉等で、関係資料も交付してこれを説明していたことは前記のとおりであること、希望退職募集を行っていないことは主張するとおりではあるが、これを行うことが経営上困難であったことも前記のとおりであって、Y1社に会社解散、営業譲渡、全員解散の必要性がなかったということはできないし、その回避努力を欠くということもできず、上記主張は理由がない

2 Xらは、Y1社の解散、全員解雇、Y2社への労働契約不承継条項付きの営業譲渡、Y2社における半数雇用という一連の事態の中で整理解雇が行われたものであって、整理解雇の要件を欠いている旨を主張するが、本件がいわゆる整理解雇とは事案を異にすることは前記のとおりであり、仮に、整理解雇の要件具備を要するとしても、これを充足すると認められることは前示のとおりである。

事業譲渡においては、基本的に、他の権利義務と同様に特定承継となります。

そのため、労働契約の承継については、譲渡会社と譲受会社との間の個別の合意が必要とされます。

また、民法625条1項により、承継には労働者の個別の同意が必要です。

最近の裁判例も、労働契約の承継については、このように考えるのが多数です。

もっとも、裁判所は、この原則を貫くと具体的妥当性を保てないと考える場合、例外的に、明示の合意がなくても、黙示の合意の推認や法人格否認の法理等を用いて、妥当な解決を図ろうとします。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇59(萬世閣(顧問契約解除)事件

おはようございます。

さて、今日は、調理部長に対する執行役員からの解任、顧問契約解除の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

萬世閣(顧問契約解除)事件(札幌地裁平成23年4月25日・労判1032号52頁)

【事案の概要】

Y社は、温泉旅館業を営む会社である。

Xは、昭和45年、Y社に調理職として採用され、調理長等を経て、平成8年2月頃、Y社の取締役に就任するともに、Y社における総調理部長に任命された。

Xは、平成14年12月頃、取締役を解任され、常務執行役員となり、さらに、平成18年9月、執行役員を解任され、調理部顧問に配属された。

Xは、職務として調理人の手伝いや自動車の移動、テラスの鉢植えの花の手入れなども行うようになった。その後、Xは、Y社就業規則に定める定年年齢(60歳)となった。

Xは、平成20年10月、他の顧問とともに、Y社における長時間労働や時間外手当の不支給等を労基署に申告し、これを受けて、労基署がY社に立入検査を行った。

Y社は、Xに対し、退職についての話をし、その後、顧問契約を解除する旨記載された書面を送達し、以後Xの就労を拒んだ。

Xは、顧問契約の解除は、解雇権の濫用であり無効である等と主張し、争った。

【裁判所の判断】

解雇は無効

解雇は不法行為にあたるとして、慰謝料40万円の支払を命じた

【判例のポイント】

1 (1)Xは、昭和46年から、洞爺湖萬世閣調理部長として、洞爺湖萬世閣のみならず、登別萬世閣の各調理部門の調理全般及び原価計算、メイド管理等の統括業務に当たっていたこと、(2)Xは、平成8年2月、Y社の取締役に任じられると同時に、総調理部長となり、従前担当してきた洞爺湖萬世閣及び登別萬世閣に加え、定山渓ミリオーネの各調理部門の総括に当たるようになったこと、(3)Xは、取締役に就任後も、Y社取締役会には1回しか出席したことがなく、その職務内容は、その担当に定山渓ミリオーネや企画商品の打合せ等が加わったほかは、基本的に従前と変わりがなかったこと、(4)取締役在任中、Xは、Y社から給与を支給され、雇用保険に加入しているものとして、その保険料を控除されていたことが認められる。そして、Xが取締役に就任すると同時に従業員としての退職の意思表示をしたか、Y社と退職の合意をしたという事情もうかがわれないのであるあから、Xは、平成8年2月にY社の常務取締役に就任後も、従前の労働契約を維持したままであり、取締役であるとともに使用人たる地位も兼任していたものと認められる

2 これまでY社の常務執行役員として名目だけにせよその経営陣に名を連ね、洞爺湖萬世閣、登別萬世閣及び定山渓ミリオーネの各調理部門の調理部長や調理長に指示を下すべき立場にあったのに、あからさまではないにせよ、今度は一介の調理人同然に補助業務をすることとなり、その他雑務も指示されたというのであって、これは左遷ないし降格と受け取られる人事異動といい得ること等に照らすと、これが不利益処分という性質を有することは否定できないのであって、前記のようにA執行役員をY社代表取締役の後継者とするためにXを執行役員から解任するという動機は正当な理由とはいえないから、かかる人事上の不利益処分は、故意にXの名誉ないし社会的評価を傷付けた違法なものとして不法行為を構成するというべきである

3 Xは、Y社との労働契約に基づき、その常務執行役員に就任したものであるところ、Xが、洞爺湖萬世閣調理部顧問に配属されるに当たって、退職の意向を示したとか、退職の合意をしたなどとうかがわせる事情は何もなく、退職金が支払われたなどといった事情もないのであるから、Xを洞爺湖萬世閣調理部門に配属させたのも従前の労働契約に基づくものというべきである
そして、Xの職務の性質に加え、平成20年3月31日当時、洞爺湖萬世閣には定年である60歳を超えて雇用される者が多数いたこと、Xの給与が42万円から30万円に引き下げられたのは、Xが定年に達した平成20年2月ではなく、同年4月分の給与からであること等に加え、Y社代表取締役がXを65歳になるまで使用することを考慮している旨伝えたこと等に照らすと、上記労働契約については少なくとも60歳の定年後もXの雇用を継続する旨の合意がされていたというべきである

この事件、原告側にいっぱい弁護士がついています。合計27人。

実働は何人なんでしょうか?

判決を読み込んで、両当事者がどのような主張、反論を繰り広げているかを見ていくと、勉強になります。

被告側の主張を見てみると、実際のところ、原告に不利な事情もいくつか散見されますが、そこは、総合判断ですので、多少、不利な事情があっても、トータルでは原告の主張が認められるのだと思います。

被告側は、控訴していますが、どうなったのでしょうか。 和解で終わったのかしら。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇58(NTT東日本(出張旅費不正請求)事件

おはようございます。

さて、今日は、出張旅費不正請求と懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

NTT東日本(出張旅費不正請求事件)(東京地裁平成23年3月25日・労判1032号91頁)

【事案の概要】

Y社は、電話等の事業会社である。

Xは、昭和57年4月、Y社に入社し、その後関連会社に出向して、営業担当の課長代理を務めていた。

Y社は、平成20年5月、Xに対し、Xが日帰出張旅費を不正に請求して私的流用をしたという理由で懲戒解雇処分をした。

なお、Xは、Y社に対し、旅費を申請して受給しており、平成16年4月から平成19年9月までの42か月間に、171万2560円の旅費を申請し受給した。

Xは、本件懲戒解雇について、旅費を不正に請求して私的流用をしたことはなく懲戒事由が存在しないこと、弁明の機会を一切与えられずに私的流用の事実の自白を強要されたことなどから無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xは、トップクラスの営業成績を上げて、Y社の利益によく貢献しており、そのために相当の努力を重ねていたものと考えられる。その努力のひとつとして、Xは、顧客を訪問する際、いつも当該顧客に関する資料が整理されたキングファイルを携行していたが、これは非常に分厚く重いものであったから、1日に複数の顧客を訪問する場合、オフィスと各顧客との間をそれぞれ往復する必要があったと主張する
しかし、通信機器販売の営業活動にはさまざまな段階や場面があるはずであり、いつも分厚く重いキングファイルを携行して各顧客との間を往復する必要があったなどというのは、それ自体説得力に乏しいものといわざるを得ない。G証人の陳述書の記述や法廷での証言には、Xが顧客との間を頻繁に往復していたという部分があるが、この証言等に裏付けはないし、そもそも、Xの主張は、単に携行したことを強調するだけで、ファイルを顧客先でどのように活用したかなど、携行の目的や効果について説明をしておらず、合理的なものとはいえない

2 Xは、70万円を上回る額の旅費の過大請求をして、その私的流用をしたものと認めることができる。この行為は、就業規則76条1号、7号、11号に該当するものというべきである。したがって、本件懲戒解雇は、懲戒事由の存在が認められる

3 認定事実によれば、Xは、始末書や旅費請求の内訳の作成過程を通じて、私的流用をしたか否か、営業上の費用の額はいくらか、その内訳はどのようなものかなどについて、弁明の機会を付与されていたことが明らかである。
Xは、J課長がXに対し、事実を認めて謝罪しなければ懲戒解雇になると脅したり、始末書を提出すれば処分が軽くなるなどという利益誘導をしたりして、旅費の私的流用の自白を強要し、その旨の始末書を提出させたなどと主張するが、このような事実を認めるべき証拠はない

上記判例のポイント1の事実認定は、原告側にとっては納得のいかないものでしょう。

原告は控訴しています。

一般的に、経費の私的流用に対する処分は重くなります。 犯罪なので。

会社とすれば、しっかりとした調査と適正な手続をとることに留意する必要があります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇57(奈良観光バス事件)

おはようございます。

今日は、研修期間満了による本契約拒否に関する裁判例を見てみましょう。

奈良観光バス事件(大阪地裁平成23年2月18日・労判1030号90頁)

【事案の概要】

Y社は、一般貸切旅客自動車運送事業等を目的とする会社である。

Xは、もともとタクシー運転手として稼働してきたが、平成19年7月、Y社のバス運転手採用試験を受験し、入社した。

Y社は、バス運転手として新規採用した者に対し実技研修を行った上、研修期間中に実施する実技試験である中間検定又は最終検定のいずれかに合格した者を雇用期間1年の契約社員として採用し、さらに契約社員として3年以上勤務した者の中から正社員を採用する運用を行っている。

Xは、上記検定に不合格となり、退職扱いとされたため、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた。

なお、他の新規採用者4名は、いずれも中間検定又は最終検定に合格し、契約社員として採用された。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件雇用請書には、「研修期間内に雇い入れることが適当でないと認めたときは、予告なしで雇用を解除する。」との規定が置かれているが、同規定にいう解除は、当事者の一方による解約の意思表示を意味するから、解雇にほかならない。ところで、本件労働契約は、期間の定めのある労働契約であるから、労働契約法17条1項により、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができないのであり、労働契約の当事者が、やむを得ない事由がない場合でも解雇は可能である旨を合意したとしても、そのような合意は無効とされる。そして、同条にいう「やむを得ない事由」とは、期間の定めのない労働契約につき解雇権濫用法理を適用する場合における解雇の合理的理由より限定された事由であって、期間の満了をまたず直ちに契約を終了されざるを得ない事由を意味し、労働者の就労不能や重大な非違行為がある場合などに限られると解されるから、Y社が労働者に対しバス運転者としての適性・能力がないと判定したことは、同条にいう「やむを得ない事由」に当たらないといわなければならない。
よって、Y社による留保解約権の行使は認められないから、本件労働契約は、平成19年9月15日の経過により終了したといえる。

2 Xは、(1)平成19年3月に大型第二種運転免許を取得したばかりであり、バス運転の経験を有しなかったこと、(2)Y社の採用試験においても、一回目は、左折時に脱輪するなどして不合格となっていること、(3)研修中から、バス運転に関し、速度を出し過ぎる、速度にムラがある、左側に寄り過ぎる、ふらつくなどの問題点を指摘されていたこと、(4)本件中間検定においても、6名の判定者から、「全体を通して、速度を出し過ぎる」「カーブ及び交差点に進入する際、減速が足りない」「対向車を避けるとき、急ハンドルを切る」「車両が左側に寄り過ぎる」などの問題点が指摘され、判定会議の結果、判定者6名のうち1名が「もう少し研修をして経過観察しても良い」という意見であったものの、その余の5名が、「改善の見込みがなく本採用しない」という意見であったことが認められる。したがって、Y社が、Xに対し、本件中間検定について不合格の判定を行うとともに、研修を続けても技能の向上が見込めないと判断したことは、必ずしも不当とまではいえず、本件全証拠を検討してみても、Y社が恣意的に判断を行ったことを窺えるような証拠もない。

3 よって、Xは、Y社のバス運転者としての適性・能力を有することが認められない以上、Y社に対し、契約社員の労働契約が成立したと主張することはできない。

ちょっと厳しい気がしますが・・・。

経過観察で、もう一度チャンスを与えてもいい気がします。

会社としてみれば、そんなレベルではない、ということなのでしょうか。

なお、この事案は、Xが控訴しました。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇56(日鯨商事事件)

おはようございます。

さて、今日は、海外勤務者の無断帰国等を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

日鯨商事事件(東京地裁平成22年9月8日・労判1025号64頁)

【事案の概要】

Y社は、東京に事務所を有するほか、オマーンにも事務所兼社宅を借りていた。

Xは、Y社との間で雇用契約を締結し、平成19年11月から、主にオマーンにおいて業務に従事していた。

Xは、日本とオマーンを行き来しており、同年3月にも日本からオマーンに向けて出国した。この際の往復旅費はY社の負担である。

Xは、同月、オマーンから日本へ帰国した。この前日、XはY社の取締役であるAと電話でやりとりをし、きちんと引継ぎと今後の業務への対応策を話し合う必要があるので、Y社代表者とAがオマーンに戻る翌日までオマーンに残るよう言われたが、Xは航空券の日程変更ができないとして、同日帰国した。

Y社は、Xに対し、Xの「中東業務契約」を解除する旨のメールを送信し、同日、Y社は、解除メールと同内容の「中東業務契約解除(解任)通知書」と題する書面を発送した。

Xは、Y社による解雇は違法であるとして、損害賠償請求、未払時間外手当の請求等をした。

【裁判所の判断】

Y社の行為は不法行為に該当する。

【判例のポイント】

1 Y社のXに対する中東業務契約解除につき、本件就業規則には解雇規定はあるが、Y社に在籍しつつ一部の業務について契約を解除する旨の規定はないことや、Y社がXに対し退職の意思の有無を確認せずに退職手続を進めたことから、Y社は、契約解除通知書の交付をもって、Xに対し解雇の意思表示をしたものと認められる。

2 Xの出張先からの帰国等が、本件就業規則の解雇事由である「従業員の就業状況が著しく不良で就業に適しないと認められる場合」には該当しないとし、本件解雇は解雇権を濫用し著しく相当性を欠くものであり、Y社には本件解雇をしたことにつき過失があったものと認められる。
以上によると、本件解雇は、Xに対する不法行為を構成するものということができる。

3 Xは、本件解雇により失職したことによって、合理的に再就職が可能と考えられる時期までの間、本来勤務を継続していれば得られたはずの賃金相当額の損害を受けたものということができる。

Xは、本件解雇当時45歳の男性であったこと、複数回の転職経験があること、語学(英語)能力が高いこと、現に本件解雇後1か月も経過しないうちに再就職することができたことが認められるところ、これらの事情を総合考慮すると、Xが合理的に再就職をすることが可能であると考えられる期間は、本件解雇後3か月であると認めるのが相当である

4 本件解雇により被った精神的苦痛については、前記財産的損害の賠償により慰謝される性質のものであるというべきである

本件では、Y社の不法行為責任を認めました。

事案としては、解雇の有効性は否定されてもしかたがないものです。

注目すべきは損害額です(上記判例のポイント3参照)。

Xがこれほど有能でなければ、損害額はもっと多くなったのでしょうか・・・?

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。