Category Archives: 労働時間

労働時間78 ラブホテル従業員の休憩時間の労働時間該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、ラブホテル従業員の休憩時間の労働時間該当性に関する裁判例を見ていきましょう。

ホテルステーショングループ事件(東京地裁令和3年11月29日・労経速2476号29頁)

【事案の概要】

Xは、平成26年4月、Y社(都内で16店舗のラブホテルを経営)との間で労働契約を締結し、以降Y社の経営する複数の店舗において、客室清掃などを担当する「ルーム係」として勤務していた。
Xは、平成30年8月から令和2年8月頃までは、Y社の店舗の一つであるA(11部屋の客室を有する)で勤務し、通常は出勤してタイムカードを打刻した後、所定始業時刻以前の労働時間については賃金が支払われていなかった。

Xは、令和2年12月にY社を退職したが、令和3年2月に、未払賃金及び休業手当の支払を求めて本件訴訟を提起した。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、合計148万5130円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、タイムカードを打刻してから所定始業時刻の午前10時までの間、リネン類の準備作業などを行っており、Xのこれらの作業の性質はY社の業務遂行そのものである。このことに加え、その作業がY社が労務管理のために導入したタイムカードの打刻後に行われていたこと、Y社の管理が及ぶ店舗内で行われていたものであること、ほぼ全ての出勤日で同じように行われ続けていたことなどからすると、Y社はこのような常態的な所定始業時刻前の作業の実態を当然に把握していたというべきところ、これを黙認し、業務遂行として利用していたともいえるから、上記作業はY社の包括的で黙示的な指示によって行われていたものと評価すべきである。

2 Xにおいては、ルーム係として客室清掃等の業務を行うことが労働契約上定められた業務であるところ、その業務を行う態様としては、Y社からの包括的な指揮命令に基づいて、フロント係からの連絡が客室の煙草処理や忘れ物の確認を行ったり、客室の空き状況や当日の混雑状況などを踏まえて必要があると自身らが判断すれば、客室清掃を行うといった状況であった。
そうすると、Xは、所定就業時間内においては、実作業に従事していない時間であっても、状況に応じてこれらの業務に取り掛からなければならない可能性がある状態に置かれていたというべきであり、その結果、原則的にルーム係控室に常に在室することを余儀なくされていたものと認められる。
そうすると、労働契約上の形式的な45分間の休憩時間や実際に昼食をとっていた時間を含めて、所定就業時間内は、Xには労働契約上の役務の提供が義務付けられていたというべきであり、労働からの解放が保障されていたとはいえない
したがって、所定就業時間内は、全て労基法上の労働時間に当たるものと認められる。

上記判例のポイント2については、仕事の性質上、仮に実作業に従事していない時間があったとしても、1人体制では、労働からの解放は否定されてしまうのはやむを得ないところです。

日頃から顧問弁護士に相談の上、労働時間の考え方について正しく理解することが肝要です。

労働時間77 事業場外みなし労働時間制適用の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、事業場外みなし労働時間制適用の可否に関する裁判例を見てみましょう。

アネビー事件(大阪地裁令和3年11月16日・労判ジャーナル121号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社に対し、未払割増賃金として、試用期間中である平成29年9月1日から同年12月10日までの勤務分につき割増賃金元本25万0530円+遅延損害金、並びに平成29年12月11日から平成31年2月10日までの勤務分につき割増賃金元本123万1542円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、21万5712円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、87万4208円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、常時ノートパソコンでY社のサーバーに保存された顧客情報等にアクセスすることができるようにするため、Y社からノートパソコン及びスマートフォンを貸与されていたのであり、Xは、顧客への営業活動や展示会の参加の際に、大阪支社のXの上司に相談したり、Xの上司がXに営業に関する指示をしたりすることもあったはずである。
だとすれば、Xが直行又は直帰する場合であっても、貸与したスマートフォン等により、Xが顧客のもとに到着し、営業活動を始めた時間や、営業活動を終え、顧客のもとを離れた時間を報告させることにより、Xの労働時間を管理することが十分可能であったといえる。
実際にも、Y社は、業務終了後、Xに日報メールを送信するよう指示し、これを直帰した場合のタイムカード代わりに捉え、その送信をもって業務終了と考えていたほか、証拠によれば、原告は、社用車での移動中にスピーカーフォンに切り替え、運転しながら上長に業務の相談や報告をすることもあったと認められ、原告の直帰時の終業時刻を実際に把握していたものといえる。

2 また、Xは、大阪支社に出勤した際には、その日の予定を朝礼で伝えていたものであり、朝礼に出ることができない場合についても、Xは、口頭で上長に翌日は朝から直行する旨や直行先、おおよその帰社時刻を伝えていたものと認められる。また、Xが直行後大阪支社に戻ってきた場合には、Xの上司がその結果を当然に確認するはずであるし、Xは、各案件の進捗状況等を随時案件シートに更新していくよう指示を受け、訪問日時、担当者名、次回訪問予定日、打合せ内容(具体的な会話内容)、案件の進捗状況、決定事項等を入力していたものと認められ、この認定に反する証拠はないのであって、このようなXから伝えられた情報や案件シートの記載内容を参照することによって、Y社は、Xの大まかな労働時間を把握することはできたはずである。
とりわけ、展示会の場合には、展示会の前日に現地に入る場合には、概ね午前9時頃から遊具等を会場に搬入し、大きな会場では午後6時過ぎ頃まで会場設営を行い、その後、翌日午前9時に集合し、午前10時から展示会が始まり、午後6時頃に終了することが多く、展示会の最終日には、閉会後に撤収作業を行い、多くは翌日に搬出作業を行っていたものであって、上司が営業担当者に展示会への参加を振り分けていた以上、Y社は、展示会の日程は当然に把握していたはずであるし、これにXを含む営業担当者が参加する場合には前記のようなスケジュールとなることも把握していたものと推認される

3 以上に加え、社用車を利用して出張する場合、事前に、行先、出発予定時刻及び帰社予定時刻を社内の共有システムに入力して予約することが義務付けられていたこと、レンタカーを利用する場合や新幹線を利用する場合、宿泊を伴う場合は、事前に必要経費を計算して申請し、上司の許可を得ることが義務付けられていたことなどが認められ、これらの事情によれば、Y社は、Xが出張に際して提出する各種申請内容等によっても、Xの行動予定を大まかに把握することができたものといえる。
以上の諸点を総合すると、Xが事業場である大阪支社外で業務を遂行した場合の労働時間をY社が算定することは十分に可能であり、これを算定し難いということはできない
Y社の主張は、要するに労働時間の管理は可能であるが、敢えてこれを行わないというに過ぎず、その他Y社が種々主張するところを踏まえても、前記判断を左右しない。
よって、Xの事業場外での労働につき、労働基準法38条の2第1項の適用があるということはできない。

ご覧の通り、事業場外みなし労働時間制の要件は極めて厳しく判断されるため、同制度を採用することは、非常にリスクが高いといえます。

日頃から顧問弁護士に相談の上、労働時間の考え方について正しく理解することが肝要です。 

労働時間76 障害者就労支援施設等での泊まり込み時間が実労働時間として認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、障害者就労支援施設等での泊まり込み時間が実労働時間として認められた事案を見ていきましょう。

グローバル事件(福岡地裁小倉支部令和3年8月24日・労経速2467号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xらが、就労移行支援施設、グループホーム、自立準備施設等を運営しているY社に対し、①未払賃金(X1につき1112万8136円、X2につき2357万7345円)、②前記①に対する遅延損害金の支払、③付加金+遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、X1に対し、945万1705円+遅延損害金、付加金を支払え

Y社は、X2に対し、1637万9459円+遅延損害金、付加金を支払え

【判例のポイント】

1 Xらには、利用者の対応をしていない不活動時間もあると考えられるところ、利用者から対応を求められるタイミングは、あらかじめ明らかになっているものではなく、不活動時間においても、必要があれば利用者対応をすることが予定されているといえるから、労働契約上の役務の提供が義務付けられているとして、Y社の指揮命令下に置かれていたというべきであり、労働時間にあたる。
ただし、Xらにも朝食を取るなど、労働からの解放が保障されている時間があったと考えられるから、午前6時から午前8時30分までの間の30分は労働時間にあたらないというべきである。

2 平日の午後4時から午後9時までの間、Xらは、支援記録を欠いたり、夕食の配膳等を行ったりする他、利用者の入浴の見守り・介助を行っていたから、これらの時間は労働時間にあたる。
また、それ以外の不活動時間においても、介助等の利用者対応を求められるタイミングは、あらかじめ明らかになっているものではなく、不活動時間においても、必要があれば利用者対応をすることが予定されているといえるから、労働契約上の役務の提供が義務付けられているといえるとして、Y社の指揮命令下に置かれていたというべきであり、労働時間にあたる。
ただし、Xらも夕食を取ったり、風呂に入ったりしていたと考えられること、Xらは、週に3、4度、1度につき30分から1時間程度、自分の用事で外出していたことからすれば、Xらにも、労働からの解放が保障されている時間があったと考えられるから、少なくとも午後4時から午後9時までの間の1時間は労働時間にあたらないというべきである。

拘束時間が長い職業の場合、今回の事案同様、すごい金額になってしまいます。

このような施設は極めて多いと思います。

消滅時効の期間が伸長されていることを考えると今のうちに対策を考えないと経営破綻してしまいます。

労働人口がますます減っていくことからしますと、抜本的な解決はかなり難しいといえます。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。 

労働時間75 通勤時間、朝礼時間、休憩時間の労働時間性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、未払賃金等支払請求と通勤時間等の労働時間性に関する裁判例を見てみましょう。

オーイング事件(福井地裁令和3年3月10日・労判ジャーナル112号54頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結して労務を提供していたXら12名が、Y社に対し、雇用契約に基づく賃金支払請求権に基づいて、未払賃金等の支払を求めるとともに、付加金請求権に基づいて、付加金等の支払を求め、さらに、不法行為に損害賠償請求権に基づいて、それぞれ100万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払賃金請求一部認容

損害賠償請求棄却

【判例のポイント】

1 各集合場所と高浜発電所の間のY社社有車の移動時間については、Xらは、他の従業員を乗せて社有車の運転を行う場合もあったとはいえ、社有車内で業務を行うことはなかったことからすると、自家用車等で通勤する場合と差異はないといえ、Xらが入門証の管理についてY社の指示に従っていたことから直ちに、Xらが上記移動時間中にY社の指揮命令下に置かれていたとはいえないこと等から、Xらが主張する各集合場所と同発電所までの移動時間については、これを労働時間と認めることはできない

2 午前8時に呼出周辺巡回業務を開始する警備員を対象に午前7時半頃から朝礼が行われていたこと、朝礼において、前日からの引継ぎや業務に関する注意喚起など、業務遂行に必要な連絡等が行われていたこと、朝礼に参加しない場合において注意を受けるということもあったことが認められ、そして、朝礼終了後、警備員はその日のそれぞれの配置場所に移動した上で勤務を開始していたことからすると、朝礼及びその後の配置場所までの移動までの行動を含めて、Y社の指揮命令下に置かれていたものと認められるから、呼出周辺巡回業務を担当する警備員において、午前8時に同業務を開始する日の朝礼開始後業務開始までの30分間は労働基準法上の労働時間に該当するものと認めるのが相当である。

3 Xらは、昼の60分の休憩時間全体において、ゲートの開閉等の業務について、直ちに対応することが義務付けられており、労働からの解放が保障されているとはいえず、Xらは、Y社の指揮命令下に置かれていたといえるから、昼の60分の休憩時間とされた時間は、労働基準法上の労働時間に該当するものと認めるのが相当であり、夜勤の60分間の休憩時間について、Xらは夜勤時においてもPHSを携帯していたことが認められ、これに加え、昼の60分間の休憩時間についてローテーションが機能していなかったことからすれば、夜勤の60分間の休憩時間についても、ローテーションが機能していなかったことが推認されるから、夜勤の60分間の休憩時間において、Xらは、労働からの解放が保障されているとはいえず、XらはY社の指揮命令下に置かれていたといえるから、日勤の昼の60分の休憩時間のほか、夜勤の60分の休憩時間についても、労働基準法上の労働時間に該当すると認めるのが相当である。

警備員に限らず、休憩時間の労働時間該当性についての判断として一般的なものです。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。 

労働時間74 ダブルワーク先の労働時間について通算が否定された理由とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労基法38条に基づき、ダブルワーク先の労働時間について通算が否定された事案を見ていきましょう。

シェリーマン事件(東京地裁令和3年3月3日・労経速2454号37頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、①雇用契約に基づく賃金請求として、平成29年11月1日から同年12月5日までの間(以下「本件請求期間」という。)の未払残業代18万2185円及び②労基法20条1項に基づく解雇予告手当の未払分の請求として、17万6700円の合計35万8885円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、6万4421円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、午前7時から翌日の午前7時まで24時間勤務のダブルワークを行っており、ダブルワーク先における労働時間を、労基法38条に基づき、Y社における労働時間に通算すべきである旨主張する。
この点、労基法32条2項が、1日8時間を超えて労働させてはならない旨規定する趣旨は、長時間労働により労働者に生じる種々の悪影響を排除することにあると解されることからすれば、同項の1日とは、午前0時から午後12時までのいわゆる暦日をいうが、継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも1勤務として取扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の1日の労働とすべきであると解される(昭和63年1月1日基発第1号,平成11年3月31日基発第168号参照)。

2 Xは、平成29年11月2日、同月5日、同月12日、同月16日、同月20日及び同月26日に、ダブルワーク先において、午前7時から翌日の午前7時まで就労していたことが認められるところ、継続勤務が2暦日にわたる場合には、暦日を異にする場合でも1勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として扱うべきであると解されることからすれば、2暦日目の午前0時から午前7時までの7時間の労働時間については、ダブルワーク先における始業時刻が属する日の労働時間として算定されるべきものである。
また、ダブルワーク先における始業時刻の属する日において、当該始業時刻前に、Y社において夜間清掃業務を行っていた場合、夜間清掃業務は前日のフロント業務との継続勤務が2暦日にわたる場合として、当該フロント業務の始業時刻の属する日の労働であると解されるから、夜間清掃業務と午前7時からのダブルワーク先における労働は、別日のものと解すべきである。
そうすると、ダブルワーク先における労働時間について、労基法38条に基づきY社における労働時間として通算すべきものがあるとは認められず、Xの主張は採用できない。

上記判例のポイント1の通達は理解しておきましょう。

労働時間に関する対応は、事前に顧問弁護士に相談することにより大幅にリスクヘッジが可能になります。

労働時間73 セミナー受講の労働時間性と受講料返還請求の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、セミナーの受講料返還請求に関する裁判例を見てみましょう。

ダイレックス事件(長崎地裁令和3年2月26日・労判1241号16頁)

【事案の概要】

本件甲事件は、Y社の従業員であったXが、平成26年7月2日から平成28年8月31日まで、時間外労働等を行ったと主張して、労働契約に基づいて、Y社に対し、割増賃金260万0026円+遅延損害金の支払を求めると共に、労基法114条に基づいて、Y社に対し、付加金179万0414円+遅延損害金の支払を求める事案である。

本件乙事件は、Y社において、①XがY社に在職中である平成24年4月25日から平成27年8月19日までに聴講したセミナーの受講料について、Y社との間で、平成24年3月11日、受講から2年以内にY社を退職した場合にはY社にこれを支払う旨を合意したところ、平成28年10月2日にY社を退職したと主張して、無名契約たる上記合意に基づいて、Xに対し、受講料14万4335円+遅延損害金の支払を求め、②Xが、上記受講に当たって要した交通費について、平成24年3月11日、受講後2年間、雇用契約が継続された場合には支払義務が免除されることを条件に、Y社からこれを借り受けたところ、上記のとおりにY社を退職したと主張して、上記消費貸借契約に基づいて、Xに対し、貸金20万8260円+遅延損害金の支払を求め、③Xが、上記受講に当たって要した宿泊費について、平成24年3月11日、Xに代わってこれを支払ったY社との間で、受講後2年間、雇用契約が継続された場合には支払義務が免除されることを条件に、XのY社に対する精算金支払債務を消費貸借の目的とすることに合意したところ、上記のとおりにY社を退職したと主張して、上記準消費貸借契約に基づいて、Xに対し、貸金6万2270円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、153万0581円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、付加金96万4667円+遅延損害金を支払え。
 
Y社の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 本件セミナーの内容は、店舗で販売されるa社のPB商品の説明が主なものであること、本件セミナーの会場は、Y社本社又はY社店舗であったこと、受講料等はY社が負担し、宿泊の場合のホテルもY社が指定していたことからすれば、本件セミナーはY社の業務との関連性が認められる
また、Xは上司に当たるエリア長及び店長から正社員になるための要件であるとして受講するよう言われていた上、店長もXの受講に合わせてシフトを変更していたのであるから、受講前に受信したメールに「自由参加です」との記載があるとしても、それへの参加が事実上、強制されていたというべきである。
そうすると、本件セミナーの受講は使用者であるY社の指揮命令下に置かれたものと客観的に定まるものといえるから、その参加時間は労働時間であると認められる。

2 本件セミナーの受講は労働時間と認められ、その受講料等は本来的にY社が負担すべきものと考えられること、その内容に汎用性を見出し難いから、他の職に移ったとしても本件セミナーでの経験を生かせるとまでは考えられず、そうすると、本件合意は従業員の雇用契約から離れる自由を制限するものといわざるを得ないこと、受講料等の具体的金額は事前に知らされておらず、従業員においてY社に負担する金額を尋ねることができるとはいっても、これをすることは退職の意思があると表明するに等しく、事実上困難というべきであって、従業員の予測可能性が担保されていないこと、その額も合計40万円を超えるものであり、Xの手取り給与額(平成26年8月から平成28年9月までで月額15万円から26万円。平均すると、月額約18万6000円。ただし,平成27年4月以降は家族手当を含む。)と比較して、決して少額とはいえないことからすれば、本件合意につきY社が主張するような法的形式をとるとしても、その実質においては、労働基準法16条にいう違約金の定めであるというべきである。
したがって、本件合意は無効である。

判例のポイント2のような合意は必ず労基法16条との関係で問題となります。

この手の裁判例をいくつか理解しておくと、実務において応用がきくようになります。

いずれにせよ、日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に制度運用することをおすすめいたします。

労働時間72 休憩時間、仮眠時間の労働時間性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、休憩時間、仮眠時間が労働時間に該当しないとされた裁判例を見てみましょう。

千代田石油商事事件(東京地裁令和3年2月26日・労経速2448号38頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、平成29年1月から平成30年3月までの間、時間外・深夜・休日労働に従事したところ、本件請求期間の時間外労働等に係る割増賃金の未払いがあるなどとして、Y社に対し、①雇用契約に基づき、未払残金311万0127円+遅延損害金の支払を求めるとともに、②労基法114条に基づき、付加金311万0127円+遅延損害金の支払を求め、③Xの子が紛失した健康保険被保険者証の再発行に当たり、Y社から、指示どおりの内容の謝罪文を書くよう要求されたことが不法行為を構成するとして、Y社に対し、不法行為に基づき、慰謝料10万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、68万3552円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、同額の付加金+遅延損害金を支払え。

慰謝料請求は棄却。

【判例のポイント】

1 Y社においては、本船業務を1人又は2、3名程度の複数名で執り行っていたものであるところ、シフト等により休憩、仮眠時間が割り当てられ、これをとるものとされていたものである。この間、Xを含め、休憩、仮眠時間を取っていたY社の従業員が即時の対応を義務付けられていたことを裏付ける的確な証拠はない
この点、Xは、液化天然ガスを扱うという職務の公共的性質や上長としての立場について指摘し、これらの時間中においても作業の監視を続けざるを得なかった旨主張し、X本人の供述にはこれに沿う部分があるが、上記時間中まで作業の監視が続けられていた具体的な事実を裏付ける証拠はなく、まして、上長であったが故に他の従業員の作業内容を補助し続けなければならなかったというような実情を裏付ける証拠もなく、採用し難い。X本人の供述には、休憩,仮眠時間においてもトランシーバを所持し、一歩間違えば大惨事に至りかねない緊急時に備えていた旨述べる部分もあるが、そのような義務付けやこれによる即時対応をY社が義務付けていたと認めるべき的確な証拠はない。

2 トラブル発生の頻度をみても、緊急対応が必要となった大きなトラブル事象は657隻の取扱い中、1件にとどまっている上、これ以外のトラブル事象をみても、多くは入港前やマニホールド業務時間中の発生事象で、かかる時間帯における休憩時間にあって、XやY社従業員が、休憩をしていない従業員に代わり、即時の対応を余儀なくされたというような事実は認め難い。CCR業務(定常荷役中)のトラブル事象に至ってはトラブルの発生頻度自体も低く(4回にわたる桟橋補助業務を含めて3パーセントから5パーセント程度にとどまる。)、やはり、休憩や仮眠に当たっていない従業員が、これに当たっている従業員に代わって、即時の対応を余儀なくされたというような事実は認め難い
むしろ、証拠より窺われる時間管理後のXの休憩、仮眠時間の取得状況に照らすと、桟橋補助業務に当たっていたときはともかく、本船勤務日毎に、特段の中断なく、まとまった休憩、仮眠時間をとることができていると認められる。
そして、これら休憩、仮眠時間にあっては休憩室等の提供も基本的にはされていたものである。また、夜通しの勤務であることから仮眠時間中に仮眠がしっかりとられるべきということはいえても、休憩、仮眠時間中の過ごし方がY社により決定されていたものとも認められず、その間における場所的移動が禁止されていたとも認め難い
そうすると、休憩、仮眠時間において労働契約上の役務の提供が余儀なくされ、これが義務付けられていたと認めることはできないところであり、労働からの解放が保障されていないものとしてY社の指揮命令下にあったと認めることはできず、他にこの点を認めるに足りる的確な証拠はない。

休憩時間、仮眠時間の労働時間性が否定されました。

労働からの解放が保障されているという評価がどのような事実に基づきなされているかを理解しておくことが大切ですね。

この分野も事前の準備・運用が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理することが求めれています。

労働時間71 会社専属運転手の待機時間は労働時間?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社専属の運転手の労働時間に関する裁判例を見てみましょう。

ラッキー事件(東京地裁令和2年11月6日・労判ジャーナル110号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、雇用契約に基づき、未払割増賃金等の支払、労働基準114条に基づき、上記割増賃金と同額の付加金等の支払、Y社の代表取締役であるBに対し、会社法429条に基づき、違法な長時間労働への従事及び割増賃金の不払による精神的苦痛を慰謝するための慰謝料として上記割増賃金相当額の賠償等の支払、Y社の会長と称されていたCに対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、Bに対するのと同様に上記割増賃金相当額の賠償をそれぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払割増賃金等請求一部認容、損害賠償等請求棄却

【判例のポイント】

1 Xが本件車両外で待機していた場合については、Xは、Bを被告事務所に送った後、本件駐車場に本件車両を駐車し、その後は、Y社事務所にBを迎えに行くまでは、本件居宅等で待機するなどしていたところ、Bから事前又は待機開始後速やかに迎えの時刻について指示があり、その時刻にCを迎えに行けば足りることが多かったといえる。
もっとも、事前又は待機開始後速やかに同指示がないことも相当程度あったほか、同指示があったとしても、指示の内容が前倒しに変更されることもそれなりにあり、いつBから迎え時刻についての指示がされるか明らかではないことも一定程度あったといえる。
そうすると、Xが本件車両外で待機していた時間については、その一部について、待機時間の自由な利用が保障され、Y社の指揮命令下から離れていたというべきであり、Xが本件車両外で待機していた時間の長さも勘案すると、各稼働日ごとに1時間は労働時間に当たらない時間があったと認めるのが相当である。

2 XとY社の間では雇用契約書が取り交わされておらず、また、本件当時、Y社には就業規則や賃金規程も存在せず、XとY社の間で営業手当として支払われた金員が割増賃金として支払われる旨の合意がされていたことを直接に裏付ける証拠はない。
Y社らは、Xの採用時の面接で営業手当を上記の趣旨で支払う旨合意していたとも主張するが、これを裏付ける証拠はなく、Xは、その趣旨の説明を受けたことを否定する趣旨の供述している。加えて、Cは、営業手当について、基本給以外の種々の営業行為に直接的又は間接的な動きをするための手当であると認識していたなどと、Y社らの上記主張に沿わない内容の供述をしている。
そうすると、営業手当が割増賃金として支払われていたと認めることはできない

待機時間の労働時間該当性の問題は、他の業種でも問題となります。

労働から解放されていたかを判断することになりますが、かなり微妙なケースも中にはあります。

この分野も事前の準備・運用が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理することが求めれています。

労働時間70 美容師の練習会参加は労働時間?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、美容師の練習会参加の労働時間該当性が否定された裁判例を見てみましょう。

ルーチェ事件(東京地裁令和2年9月17日・労経速2435号21頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結して就労していたXが、①平成27年8月16日から平成29年9月3日までの間(以下「本件請求期間」という。)に時間外労働及び深夜労働をした旨主張して、Y社に対し、労働契約に基づく上記の時間外労働等に対する割増賃金の支払及び労基法114条に基づく付加金の支払を求め、②Y社の代表取締役であるY2からいわゆるパワーハラスメントを受けて人格権を侵害された旨主張して、Y社らに対し、不法行為(Y社に対しては会社法350条又は債務不履行)による損害賠償金の連帯支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、44万0450円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、付加金30万9027円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、3万3000円+遅延損害金を支払え。

Y社らは、Xに対し、連帯して、5万5000円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社がアシスタントである従業員に対してスタイリストに昇格しないことによる不利益を課していたなどの事情は証拠上見当たらないのであって、仮にスタイリストに昇格するための経験を積む機会が練習会のほかにないとしても、このことから直ちにアシスタントである従業員が練習会への参加を余儀なくされていたということはできない。加えて、証拠及び弁論の全趣旨によれば、練習会に参加する従業員は、練習のためのカットモデルとなる者を各自で調達し、カットモデルを調達できないこともあったこと、従業員は練習会でカラー剤等の費用相当額をカットモデルとなった者から徴収してY社に支払っていたが、カットモデルとなった者から個人的な報酬を受け取ることができたことが認められる。
これらのことに照らすと、練習会は従業員の自主的な自己研さんの場という側面が強いものであったというべきである。
このような練習会の性格に鑑みると、Y2が練習会における練習の開始や終了に関する指示等をしていたとしても、店舗の施設管理上の指示等であった可能性を否定することができないし、XがY2から施術について注意等を受けた際に練習不足であるとの指摘を受けたことを契機として練習会に参加したとしても、これをもって練習会への参加を余儀なくされたとはいえない。
これに対し、Xは、練習会の途中で帰宅することは許されておらず、原則として従業員全員が練習会に参加しており、体調不良等を理由として練習会に参加しない場合にはY2の許可が必要であった、スタイリストに昇格した後にY2から練習が足りないと言われて練習会への参加を命じられた、練習会でのアシスタントの指導をする必要があった旨供述等するが、これを裏付ける的確な証拠はなく、Y2がXの上記供述等の内容を否定する供述等をしており、Y2の供述等の内容に特段不自然、不合理な点は見当たらないことに照らすと、Xの供述は直ちに採用することができない。
以上に述べたところによれば、Xが練習会に参加し、自らの練習や後輩の指導をしたことがあったとしても、Y社の指揮命令下に置かれていたと評価することはできないのであって、Xが練習会に参加した時間が労基法上の労働時間に該当するとはいえない。

2 Y社の休憩時間に関する主張は、要するに、顧客の本件各店舗への来店状況(予約状況)及びカット等の施術の補助業務に要する時間に基づいてXの作業時間を推定し、当該作業時間を除く時間の大部分の時間が休憩時間であるというものである。
この点、証拠及び弁論の全趣旨によれば、青山店における客の多くはY2による施術の予約客であり、Xを含む各従業員の主たる業務は、Y2による施術の補助業務(カットの場合はシャンプーや髪を乾かすブロー)のほか、タオル等の洗濯や清掃等の業務であったが、1人の客に対する施術の補助業務は同時に複数の人数でする必要はなかったこと、Xが担当していたパソコンに関する業務は頻繁にあったわけではなかったことが認められる。そして、青山店では、Xのほかに3名の従業員がいたことに照らすと、少なくとも来客がない時間にはXが実際に業務をしていない時間が相当程度あったことが推認される。また、下北沢店におけるXの業務量が青山店におけるそれよりも多かったと認めるに足りる証拠はない。
しかしながら、本件各店舗では完全予約制が採用されているところ、当日予約も受け付けており、来客の有無にかかわらず営業終了まで継続して開店し、かつ少なくとも客からの予約の電話等があり得る状態であったことが推認されることに照らすと、営業時間中にXが業務をしていない時間があったとしても、直ちに労働からの解放が保障されていたとみることはできない
このことに関し、Y2は、来客がない時間は従業員がそれぞれ自由に過ごすことを許しており従業員は自由に休憩を取得していたなどの旨供述等するが、証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件各店舗では、従業員間の取り決めで、それぞれ交代で1人ずつ順番に20分の休憩を取得し、1回目の休憩を「1番」、2回目の休憩を「2番」と呼称していたこと、Y2は上記取り決めに関与していないことが認められるのであり、来客がない時間に自由に休憩を取得することが許されているというのに、従業員が自発的に上記のような取り決めをして休憩を取得していたというのは不自然である。また、Y2の上記供述等を裏付ける的確な証拠はない。
したがって、Y2の上記供述等は直ちに採用することができず、Xの勤務日のうち来客がない時間帯の大部分において労働からの解放が保障されていたと認めることはできない
ところで、前記のとおり、従業員間の取り決めで、それぞれ交代で1人ずつ順番に20分の休憩を取得して、1回目の休憩を「1番」、2回目の休憩を「2番」と呼称していたことに関し、Xは、上記取り決めのとおり休憩を取得することができたわけではなく、予約が多いときには最初の20分の休憩を取ることもできなかったことがある旨供述等する。
この点、前記のとおり、青山店の従業員の主たる業務はY2による施術の補助業務であり、少なくとも来客がない時間は実際に業務をしていない時間が相当程度あったことが推認されるところ、本件サンプル期間中の勤務日のうち来客がない時間が合計1時間以上あったと考えられる日が半数を超えていることに照らすと、Xの上記供述等が休憩の取得が最長でも1日1回の20分のみであったとする趣旨であればそのまま採用することはできない。
一方で、本件サンプル期間中には来客のない時間がなかった日も存在し、かつY社では労働時間の管理は一切されておらず、取得すべき休憩時間も定めていなかったことに照らすと、Xが毎勤務日に必ず2回以上の休憩を取得していたと認めることもできない。
これらのことに照らすと、本件サンプル期間中の1勤務日当たりの休憩時間は平均して30分であったと認めるのが相当である。

この事案においても、休憩時間と手待時間に関する論点が登場します。

予約管理を従業員に行わせ、かつ、休憩時間中も対応させる場合には、本件同様の問題は生じます。

予約管理はすべてネットで行うようにすればこの問題は解決します。

労働時間に関する対応は、事前に顧問弁護士に相談したほうが間違いがないです。

労働時間69 バス運転手の待機時間は労働時間?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、バス運転手の待機時間のうち1割は労働時間に当たるとした原判決を取り消し、請求がいずれも棄却された裁判例を見てみましょう。

北九州市事件(福岡高裁令和2年9月17日・労経速2435号3頁)

【事案の概要】

Y市は、交通局(交通局)を設置し、北九州市市営バス(北九州市バス)事業を経営しているところ交通局は、バスが一つの系統の路線の終点に到着した後、次の系統の路線の始点から出発するまでの時間の一部に対して1時間当たり140円の「待機加算」を支給していた。
本件は、交通局に雇用され、北九州市バスの定期路線バス(乗合バス)運転手として稼働していたXらが、上記待機加算が支給される時間(以下「本件待機時間」という。)は労基法32条の労働時間(労基法上の労働時間)であり、同時間に係るXらの賃金及び時間外割増賃金と支払済みの待機加算との差額が未払であると主張して、Y市に対し、未払賃金+遅延損害金の支払を求めるとともに、労基法114条本文に基づき、上記未払賃金と同額の付加金+遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

本件各控訴をいずれも棄却する。

原判決主文第1項中控訴人兼附帯被控訴人らに関する部分を取り消す。

上記の部分につき,控訴人兼附帯被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Xら18名は,被控訴人が労基法上の休憩時間と待機加算の支給される本件待機時間とを明確に区別して取り扱ってきたことなどから、交通局の乗務員は、待機時間が労基法上の労働時間ではなく休憩時間として取り扱われていたことを認識しておらず、大半の乗務員は待機時間に労働から解放されているとの認識を有していなかったと主張する。
しかしながら、待機加算は、もともと交通局が、当時交通局で唯一の労働組合であったd労働組合との間で協定書(平成9年協定書)を作成し、労基法上の労働時間として扱っていた調整時間のうち転回時間を除く時間を労基法上の労働時間ではないことを前提として中休手当相当額を支給することとされたことから支給されるようになったものであり、その金額が1時間当たり140円と低額であることに照らすならば、その支払は本件待機時間が休憩時間であることを前提としてされていたものであるというべきである。

2 そして、Y市は、平成24年2月20日付けの本件通知により、待機時間を労基法上の労働時間ではなく休憩時間であると取り扱うことを乗務員に周知していたものであり、交通局の労働組合も、平成22年、a駅及びe郵便局の各転回場所における待機時間について、乗客が乗車している場合には実働時間とするよう要求し、平成25年4月及び平成26年4月にも、待機時間中の乗車等の勤務の申告を徹底させ、実働時間にすることを求めていたことに照らすならば、本件においてXら18名が支払を求めている未払賃金の期間において、交通局の乗務員は、Y市が待機時間を労基法上の労働時間ではなく休憩時間であると取り扱っており、待機時間には労働から解放されているとの認識を有していたものと認めるのが相当である。

3 Xら18名は、乗務員が、待機時間中、5分以上にわたってバスを離れることはなく、仮に離れていたとしても、それはトイレに行ったためであると主張する。
しかしながら、ドライブレコーダーの記録によれば、複数の乗務員が、休憩施設の有無にかかわらず、転回場所において5分以上バスから離れることがあったことを認めることができ、その全てがトイレに行く目的であったということはできないから、バスから離れることが許容されていたというべきである。ドライブレコーダーの記録の撮影範囲が限られていることなどXら18名の主張する事情は、いずれも同記録の信用性を失わせるものではなく、原審証人Bの証言及び前件訴訟におけるCの証言は、いずれも転回場所から5分以上バスから離れることがあることを否定するものではない。

休憩時間なのか手待時間なのかの議論は、今もなおさまざまな業種における残業代請求事件で論点となります。

日頃から労務管理に力を入れている会社はともかく、多く会社ではなあなあになってしまっているため、手待時間と判断されるリスクが高いといえます。

顧問弁護士に相談し、早急に対応することをおすすめします。