Category Archives: 不当労働行為

不当労働行為240 併存組合と使用者の中立保持義務(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も2日間がんばっていきましょう。

今日は、便宜供与を議題とする団交において、要求を拒否する旨回答するのみの会社の対応および労組の便宜供与要求に対し、現時点では応ずることはできないとだけ回答した会社の対応が、いずれも不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

朝日新聞社(便宜供与)事件(東京都労委平成31年4月23日・労判1214号93頁)

【事案の概要】

便宜供与を議題とする団交において、要求を拒否する旨回答するのみの会社の対応および労組の便宜供与要求に対し、現時点では応ずることはできないとだけ回答した会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

いずれも不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 組合は、本件団体交渉において、便宜供与には優先順序があるし、全部を求めているわけではなく、C労組との公平性から、労働組合の規模に比して、十分譲歩することはできるなどと述べて、優先順序や譲歩の余地があることを示しているのであるから、会社は、事前に検討して一定の結論を持っていたとしても、団体交渉で組合が示した内容を踏まえて再度検討したり、あるいは、組合に譲歩の余地等があってもなお応ずることができない合理的な理由を示して組合の理解を得るよう努力したりすべきであったといえる。

2 組織規模や会社との間で労使関係を構築してきた期間という点において、大きな差異が認められる場合にあっては、単に併存する労働組合との間で便宜供与に差があることのみをもって問題視することは適切ではなく、より具体的に、組合の求める便宜供与の内容、その必要性、便宜供与を行うに当たっての会社の負担、便宜供与をめぐる交渉の経緯、その他の事情を総合的に勘案して、便宜供与を行わないことが支配介入に当たるか否かを判断すべきものといえる。
・・・結局、会社は、組合の要求内容いかんにかかわらず、現段階では一切の便宜供与を行わないとの姿勢を示したものとみられてもやむを得ない。したがって、会社が本件便宜供与の要求について、合理的な理由を示さずにこれを拒否した対応は、中立保持義務に反し、支配介入に当たる。

併存する組合が存在する場合の考え方については、上記命令のポイント2が参考になりますので、理解しておきましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為239 採用前のビラ配布を理由とする雇止め(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、パート従業員として採用される前にビラ配布等をしたことを理由に、1か月の有期雇用期間満了時に次の有期雇用契約を締結しなかったことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

JR西日本広島メンテック事件(広島県労委平成31年4月12日・労判1214号94頁)

【事案の概要】

本件は、パート従業員として採用される前にビラ配布等をしたことを理由に、1か月の有期雇用期間満了時に次の有期雇用契約を締結しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 本件通告時におけるB副所長の、ビラを配布するということは一種の活動家である旨の発言は、会社が、A組合員の採用前のビラ配布を把握し、A組合員が組合方針に賛同し、組合活動に協力的な行動をしてきた人物であると認識していたことを示すものであるとともに、A組合員の採用前のビラ配布を嫌悪し、今後組合に加入し、会社内で組合活動を行うことを懸念したものであると認められる。

2 会社は、A組合員の採用前のビラ配布を把握し、A組合員が組合方針に賛同し、組合活動に協力的な行動をしてきた人物であると認識し、このような人物を会社に引き続き雇用すれば、組合に加入し、会社内で組合活動を行うことを懸念したことから、合理的とはいえない理由を付し、1か月の有期労働契約の期間満了をもって会社から排除しようとしたものというべきであり、不当労働行為の意思を推認させるものである。
したがって、次の有期労働契約を締結しなかったことは、A組合員が組合に加入することを懸念したが故になされた不利益取扱いであると判断するのが相当であり、労働組合法7条1号の不当労働行為に該当する。

この事案もそうですが、思うことは自由ですが、それを発言するとこのような紛争になります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為238 組合嫌悪発言と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社の管理部次長が部下の運転士を通じて、労組に加入して分会を結成した直後の組合員に対し、(労組に加入すると)将来がなくなる等と述べたことが不当労働行為にあたるとされた事案を見てみましょう。

西部観光バス事件(東京都労委令和元年10月15日・労判1214号92頁)

【事案の概要】

本件は、会社の管理部次長が部下の運転士を通じて、労組に加入して分会を結成した直後の組合員に対し、(労組に加入すると)将来がなくなる等と述べたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 「『(組合に加入していると)会社側としても、そういう運転士従業員は将来がなくなっちゃうんだよ。良いことは一つもない。』、『会社側は区別するよ。』等と発言している。
こららの発言は、Cが組合に加入しているが、早いうちに脱退してほしいという意向を述べたものである。また、組合加入によって会社から不利益な取扱いを受けることを示唆するものであり、脱退勧奨発言であると認められる

2 会社は、F次長の発言は、G運転士を介してCに間接的に伝わったものであり、組合に与える影響は低いから、支配介入に当たらないと主張する。
確かに、F次長の発言はG運転士を介してCに伝わっているが、G運転士は、Cに対し、後記の職責を有するF次長に頼まれたと明示した上で、脱退勧奨発言を行っていること、発言内容には会社の立場を示すものが含まれていることから、組合員として組合活動を続けることについて大きな威嚇的効果があり、組合活動が阻害されるおそれは大きいといえる

3 したがって、本件行為は、会社から不利益な取扱いを受けることを示唆しての脱退勧奨に当たり、組合活動の弱体化を企図したものといえる。

思っていても言ってはいけないことがあります。

上記の発言が不当労働行為に該当することは明白です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為237 団交における財務資料不開示と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、有期雇用職員の無期転換を議題とする団交において、労組の要求する他大学の財務状況に関する資料を提示しなかったことは不当労働行為に当たらないが、希望者全員の無期転換ができない理由の根拠となる資料の提示および説明をしなかった法人の対応は不当労働行為に当たるとされた事案を見てみましょう。

国立大学法人東北大学事件(宮城県労委令和元年11月14日・労判1214号91頁)

【事案の概要】

本件は、有期雇用職員の無期転換を議題とする団交において、労組の要求する他大学の財務状況に関する資料を提示しなかった法人の対応、希望者全員の無期転換ができない理由の根拠となる資料の提示および説明をしなかった法人の対応は不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

労組の要求する他大学の財務状況に関する資料を提示しなかったことは不当労働行為に当たらない

希望者全員の無期転換ができない理由の根拠となる資料の提示および説明をしなかった法人の対応は不当労働行為に当たる

【命令のポイント】

1 他大学の財務状況に関しては、財務諸表や決算報告書などに記載されている概括的な情報は公開されているとしても、職員の雇用管理に関する情報や財源の具体的な使途等、比較分析を行うために必要な情報まで公開されているものではない。また、X組合がY社に対して、他大学の情報を入手するよう求めていることからも、それらの情報が一般に公開されているとは言い難い。さらに、X組合もそれらの情報の入手方法について具体的な主張をしておらず、Y社が入手可能であったとする特段の事情も認められない。よって、Y社が、他大学と異なる財務状況を説明することが可能であったとは認められない。
このような状況において、他大学との比較資料を提供しなかったとしても、誠実交渉義務に違反する対応であるとまではいえず、労組法7条2号の不当労働行為に該当するとはいえない

2 Y社は、希望者全員の無期転換というX組合の要求を受け入れられない理由として、正職員の人件費が逼迫した財務状態にあることや運営費交付金が減少していることなどの一般的・抽象的な理由を説明したにすぎず、有期雇用職員の現時点における人件費の額は明らかにしているものの、希望者全員を無期転換した場合に増加する将来の人件費の額、Y社の予算に占める増加額の割合(影響度)といった事項については明らかにしておらず、これらの事項を具体的に検討したことは窺えない。仮にこれらの事項について、Y社が具体的に検討し、X組合に情報を提供していれば、X組合は、それを前提に自身の要求の実現可能性を判断し、他の財源を割り当てる、あるいは無期転換の要求を一定程度縮小するといった対案を検討するなどしてY社と交渉することも可能であった。すなわち、Y社が、Xの要求を具体的に検討していないことにより、X組合に対して労使対等交渉に必要な情報が開示されず、労使対等交渉が妨げられていたことが認められる

上記命令のポイント1と2を比較検討すると、いかなる場合に、不当労働行為と判断されるかがよくわかりますね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為236 義務的団交事項に当たらないと判断して団交拒否?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、B2営業本部長によるハラスメント行為が義務的団交事項に当たらないとする会社の対応および労組のA2委員長を管理職層当職であるB職層から一般職であるC職層へ降格したことおよび同人を東京支店から名古屋市の本社お客様相談課へ配転したことがいずれも不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

V社(降格・配転)事件(東京都労委平成31年2月19日・労判1211号179頁)

【事案の概要】

本件は、B2営業本部長によるハラスメント行為が義務的団交事項に当たらないとする会社の対応および労組のA2委員長を管理職層当職であるB職層から一般職であるC職層へ降格したことおよび同人を東京支店から名古屋市の本社お客様相談課へ配転したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

いずれも不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 本件行為に対して会社がとる対処の有無とその内容は、従業員の就業環境に影響を及ぼす事項であり、会社が協議に応ずべき義務的団交事項に当たる。
組合は、団体交渉において、C1本部長の行為はセクハラに当たり、従業員の健全な職場環境づくりに関わる問題であるとして、その対処を求めたのであるから、それに対して会社は、会社の調査にて確認された事実関係やセクハラに当たらないと判断した理由を説明するなどした上で、会社が行う対処の内容等について、組合の協議に応じるべきであったといえる。
28年5月31日の団体交渉において、本件行為は義務的団交事項ではないとして協議に応じなかった会社の対応は、不誠実な団体交渉に該当する

2 A2委員長を東京支店から別の部署へ配転する必要があったとしても、新設された28年10月異動期において、お客様相談課を増員する必要性や、同委員長を同課へ配置する合理性は乏しく、そして、本件配転が、不当労働行為と認められる同委員長への降格処分と同時期に行われたことや、本件公表等を巡る緊迫した労使関係と配転による組合運営への支障なども併せ考えると、本件配転は、組合の中心人物である同委員長を活動拠点から遠方に放逐し、組合の活動力を削ぐことを意図したものとみるほかない
よって、会社がA2委員長に対し、お客様相談課への配転を命じたことは、組合員であるが故の不利益取扱いであるとともに組合運営に対する支配介入に当たる。

安易に義務的団交事項でないと判断することは避けなければなりません。

団体交渉の中で合理的な説明に努めるほうがよほど生産的です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為235 関連会社の従業員との団交と労組法上の使用者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、関連会社である申立外Fおよび同Gの従業員と労使関係になること等を理由に団交に応じない法人の対応が不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

日本貨物検数協会(転籍)事件(大阪府労委平成31年2月12日・労判1213号87頁)

【事案の概要】

本件は、関連会社である申立外Fおよび同Gの従業員と労使関係になること等を理由に団交に応じない法人の対応が不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 確かに、指定事業体から法人に採用され得る職員には、本件組合員も含まれているとみられるが、特定多数存する指定事業体の従業員のうちから、特に本件組合員を指名して無条件転籍させることを確認したとまで認めることは困難である。
あくまで、28.3.23確認書は、指定事業体から毎年度約120名の職員採用について努力することが確認されているにすぎず、同確認書により、法人が本件組合員と近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存するものになったとはいい難い。

2 以上のとおりであるから、本件団交申入れ事項に関し、法人が本件組合員の労働組合法上の使用者に当たるとはいえず、その余について判断するまでもなく、組合の申立ては棄却する。

本件のように、組合員のみならず非組合員も対象とされている場合には、不当労働行為と判断される可能性は低くなります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為234 組合員に対する不利益取扱いと合理的理由の有無(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、平成27年および28年の賞与に関し、営業職の組合員3名に対する考課点を低くして低額支給したことは不当労働行為であるが、工場勤務職の組合員1名の考課点が低くされたとは認められないとされた事案を見て行きましょう。

田中酸素(賞与・昇格)事件(山口県労委平成31年3月28日・労判1211号178頁)

【事案の概要】

本件は、平成27年および28年の賞与に関し、営業職の組合員3名に対する考課点を低くして低額支給したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 少なくとも平成27年及び平成28年において、A2ら3人の組合員に対しては、非組合員である従業員と異なり、実質的な査定がなされなかったことが推認される。
Y社が主張するとおり、A2ら3人の査定の考課点(加算も含む。)は、その時期や個人ごとに微妙に異なる点はあるが、概ねY社の査定制度上の平均値である27年前後となっており、これに関連して、Y社は、平成21年夏季から平成25年冬季までの賞与の査定を捉えて、人事考課の平均点から大きく逸脱した査定はしておらず、社会通念上相当なもので裁量権の逸脱はない。

2 「リーダーシップの欠如」や「報告、連絡、相談の不備」との指摘については、本件審問におけるB3の証人尋問における証言によっても、それらがY社による査定項目のどれに組み入れられて評価されたのかが明らかにされておらず、むしろ、B3は査定には関与せず、その実態も知り得ていないことが明らかになったのみであり、当委員会としても、その実態を解明するには至らなかった。
以上からすると、このようなY社の対応に合理的な事情は窺えず、当事者間には過去から不当労働行為救済申立てを含めて多様な係争が繰り返されている点に鑑みれば、Y社に組合嫌悪の念が存在することを否定し得ず、A2ら3人の平成27年及び平成28年賞与に関する査定において不利益取扱いが行われたものとみなさざるを得ない

会社と組合との間で係争が繰り返されている場合、上記命令のポイント2のように、会社側が組合員への不利益取扱いについて合理的説明ができないと、総合考慮により不当労働行為と評価されることがあるので、注意が必要です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為233 組合員に対する不適切発言と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、ストライキに続く年休取得による業務妨害(年休権の濫用)等を理由に組合員を解雇したことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

保険審査サービス(解雇)事件(大分県労委令和元年7月16日・労判1211号175頁)

【事案の概要】

本件は、ストライキに続く年休取得による業務妨害(年休権の濫用)等を理由に組合員を解雇したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 本件解雇までの労使関係と本件解雇の経緯についてみると、B社長は第1回団体交渉において「いや、紛争だと思っていますよ」、第2回団体交渉で組合員のことを「彼は再建の阻害要因でしかない」・・・等の発言をしており、・・・で判断したとおり、平成29年1月4日時点において、組合及び組合員に対する明らかな嫌悪感が認められる。・・・で認定したとおり、その後、会社の最終提案に対する回答、ストライキの実施、それに引き続く年休取得を契機として解雇していることから、B社長は、組合及び組合員の組合活動を嫌悪し、組合員を排除するために行ったものであると推認せざるを得ない

仮に本音ではそう思っていたとしても、それを発言した時点で内容によっては不当労働行為の認定根拠とされてしまいます。

感情的にならず、冷静に対応することが求められます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為232 労使間の対立状態での組合員の不利益取扱いと組合嫌悪意思の推認(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、希望退職の応募者が定員に達しなかったことを理由に、有期雇用の嘱託職員である組合書記長を雇止めにしたことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

学校法人大阪YMCA(雇止め)事件(大阪府労委平成31年2月22日・労判1209号84頁)

【事案の概要】

本件は、希望退職の応募者が定員に達しなかったことを理由に、有期雇用の嘱託職員である組合書記長を雇止めにしたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 組合はY社あての平成28年9月5日付けの団交申入書にて、同年度の人事異動に伴う学院高校の労働強化問題を議題とする団交を申し入れたこと、②この申入書には、(1)同年7月14日の団交にて、組合は、学院高校の業務量の改善を申し入れ、職場の実態について説明を求めたが、Y社は、校務分掌に基づく形式をなぞるだけで、労働強化はないとし、同26年度から始まった奨学制度について制度自体を知らないと述べるなど、職場の実態は明らかにされなかった、(2)同27年夏以降、現場の事務職の総意として業務達成には現行の人数でぎりぎりであることをJ副校長及びK事務長に伝えていたにもかかわらず、これを全く考慮せず、異動を強行し、おざなりな現場調査と形式論で労働強化はないとするY社に抗議する旨の記載があったこと、がそれぞれ認められ、学院高校の労働強化問題について労使間で対立が生じていたということができる

2 以上によれば、Y社は、C組合員とその組合活動を好ましからざるものとみていたと推認することができ、Y社が、本件希望退職の定員に達しなかった人員数を雇止めにすることにし、その対象にC組合員を含めたことは、C組合員が組合員であることを理由にしたものというのが相当である。

労使間の対立がある状態で、組合員に対して不利益処分を行う場合には、不当労働行為の問題が生じます。

合理的理由を主張立証できるように準備しておくことが求められます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為231 組合員と非組合員との差が生じていない不利益取扱いと不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、期間限定雇用契約社員として雇用されてきた組合員2名に対して、契約期間を従来の6か月から3か月に短縮したことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

交通機械サービス(契約期間短縮)事件(東京都労委平成31年3月19日・労判1209号83頁)

【事案の概要】

本件は、期間限定雇用契約社員として雇用されてきた組合員2名に対して、契約期間を従来の6か月から3か月に短縮したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 組合は、Y社が、A3及びA4の契約期間を短縮する一方、同時期に契約更新された非組合員に対しては、従来の労働契約期間を維持しており、これは組合員を狙い撃ちにしたものであると主張する。
しかし、契約社員全11名のうち、従来の労働契約期間が維持された2名は、定年間近であるために労働契約期間短縮措置の対象外となったものである。そして、Y社は、定年までおおむね2年以上あるなどの一定の要件を満たす者については、A3及びA4だけでなく、非組合員を含む9名全員を同措置の対象とし、29年7月以降10月1日までに契約社員7名の契約期間を6か月から3か月に短縮しているのであるから、労働契約期間短縮措置は、組合員であるか否かにかかわらず、従業員に一律に適用されたというべきであり、組合員を狙い撃ちにしたものであるとの組合の主張は、採用することができない。

2 また、一般的には、労働契約期間の短縮は、従業員にとって雇用の不安定化を招くものであることに対し、Y社は、労働契約期間短縮措置は、就労継続意思がある契約社員について、正社員登用の機会を増やすことを目的として導入したと主張する。
実際、Y社は、同措置対象者のうち、就労継続意思があり、業務遂行等に特段の問題がない者には、契約更新時に正社員登用を打診しており、A3及びA4もその打診を受け、希望したA4は正社員に登用されている。加えて、同措置導入後、契約期間満了のみを理由として雇止めをされた従業員はいない。
したがって、労働契約期間短縮措置の導入により、同措置対象従業員の雇用が不安定になった事実は認められず、同措置によって、組合員に具体的な不利益が生じたとはいえない。
よって、Y社が、A3及びA4との労働契約の期間を6か月から3か月に短縮したことが、不当労働行為に当たるということはできない。

上記命令のポイント1のように、組合員と非組合員との間に差が生じていない場合には不当労働行為の問題となりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。