Category Archives: 不当労働行為

不当労働行為260 組合に対して不必要な要求を繰り返すことと不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、団交申入れに対して、会社の質問に事前に回答しないこと、および組合員名簿を事前に提出しないことを理由に、会社が団交に応じなかったことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

デリカフーズ事件(大阪府労委令和2年4月6日・労判1231号169頁)

【事案の概要】

本件は、団交申入れに対して、会社の質問に事前に回答しないこと、および組合員名簿を事前に提出しないことを理由に、会社が団交に応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 会社は、組合員名簿の事前提出を求めた理由について、「労働組合法上の労働組合は組合員から委任を受けて組合員のために使用者と交渉する権限を有する」との労働組合法第6条の解釈を基に、組合が誰を代理しているのかが不明であり、組合の要求事項が義務的団交事項の範囲なのかどうかを判断するためであった旨主張する。
しかしながら、会社のかかる主張は、あくまでも団交の具体的な交渉の場面において労働組合がその代表者以外に交渉権限を付与することができることを規定したものにすぎない同条を曲解した独自の主張と言わざるを得ないし、そもそも、組合の団交申入れ事項が義務的団交事項であることは、前記・・・判断のとおりである。

2 ・・・以上にとおり、会社は、団交申入れについて団交に応じられない事情があったとはいえない。
それにもかかわらず、会社は、雇止めの議題については、組合がもはや議題としなくなった状況においても議題としての説明を求め続け、賃上げ及び兵庫事業所における事故の議題については、団交の開催に支障がないことが明らかになった段階においてもなお、組合員名簿の事前提出及び議題の対象となる組合員の明示を求め続けたり、交渉申入れ事項の書面による明確化を求めたりしたものといえる。
上記6回の団交申入れに対する会社のこのような対応は、本来、必要のない要求を組合に対し執拗に繰り返すことで、団交開催を引き延ばしたものとみるほかない

団交に応じないという対応は、本件同様、団交拒否として不当労働行為にあたる可能性があります。

団交前には必ず顧問弁護士に相談することをおすすめします。

不当労働行為259 組合員に対する定時帰宅指示と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合に加入した組合員2名に対し、定時帰宅を指示したことが不当労働行為にあたるとされた事案を見てみましょう。

近物レックス事件(大阪府労委令和2年4月20日・労判1231号168頁)

【事案の概要】

本件は、組合に加入した組合員2名に対し、定時帰宅を指示したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社における従業員の出退勤の時間管理が適正に行われていたかについて判然としない中で、Y社は、組合加入公然化後、組合活動が活発化していた時期に突然、組合が未払賃金の支給を要求している分会長及びG組合員に対し、根拠の説明もしないまま合理的な理由なく30.1.6Y社指示及び30.2.27Y社指示を行っているといえ、このことは、組合活動を嫌悪したY社による組合員であるが故の不利益取扱いであるとともに、組合の活動を委縮させ、組合を弱体化させるものであるから、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。

時期やプロセスから、不当労働行為該当性が判断されていることがよくわかります。

組合員に対する対応は、事前に顧問弁護士に相談をすることが大切です。

不当労働行為258 技能実習生が加入した労組との団体交渉における使用者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、外国人技能実習生受入れ事業を行う協同組合が実習生の加入した労組の申し入れた団交に応じないことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

中亜国際共同組合ほか事件(広島県労委令和2年3月13日・労判1227号96頁)

【事案の概要】

本件は、外国人技能実習生受入れ事業を行う協同組合が実習生の加入した労組の申し入れた団交に応じないことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為に当たらない

【命令のポイント】

1 本件協同組合はA組合員の座学講習の適正な実施について、技能実習制度の範囲内ではあるが、現実的かつ具体的に決定することができる地位にあったものと認められる。したがって、組合が、A組合員の座学講習の適正な実施のために、本件協同組合に対して話し合いを求めたことには相応の理由があると解される。
もっとも、本件協同組合のA組合員に対する座学講習は、監理団体の業務として行われたものと解される。そして、座学講習は雇用契約の効力の発生の前提として密接に関連するものの、座学講習の受講は労務の提供ではないことから、本件協同組合における座学講習の適正な実施に関する事項は、A組合員の基本的な労働条件等に当たらないと解するのが相当である。

2 本件一時帰国の決定は、本件協同組合の監理団体の業務として行われたものと解される。そして、本件一時帰国は、座学講習の中断を意味するものであり、座学講習の受講は労務の提供ではないことから、A組合員の一時帰国における本件協同組合の対応に関する事項は、A組合員の基本的な労働条件等に当たらないと解するのが相当である、
以上のとおりであるから、本件団体交渉事項について、本件協同組合に労働組合法7条2号の使用者性は認めることはできない

労組法上の使用者性や義務的団交事項に関する判断です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為257 団交の打切りが不誠実団交と評価されない場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、介護老人保健施設で介護職員として勤務してきた組合員を解雇したことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

医療法人健和会事件(大阪府労委令和2年4月13日・労判1229号102頁)

【事案の概要】

本件は、Y法人の設置運営する介護老人保健施設で介護職員として勤務してきた組合員を解雇したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 Y法人がB利用者への虐待行為があったと判断したことには理由があり、かつ、Y法人が虐待行為を重視し、虐待行為を行った職員を解雇することが不合理であるといえないことからすると、29.7.18通知書等に記載されたもののうち、B利用者への虐待の件だけを取り上げてみても、解雇には相応の理由があったというべきである。
・・・したがって、Y法人が、平成29年8月24日をもってF組合員を解雇したことは、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらない。

2 Y法人は、本件団交の2日後に、29.8.23解雇通知書を送付しているが、Y法人が、F組合員の処遇についての結論を急いだことに、理由がなかったわけではないといえ、また、組合が、29.7.26団交要求書の要求内容について継続して協議する意向を持っていたかについて疑念が残るといわざるを得ず、これらのことを考え合わせると、Y法人が、本件団交の2日後に29.8.23解雇通知書を送付したことをもって、団交を一方的に打ち切ったとまではいえない

上記命令のポイント2のように、使用者側から団交を打ち切ると不誠実団交の疑いが生じます。

打ち切りの合理的理由があるかどうかについては慎重に判断することが求められますのでご注意ください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為256 会社が決めたルールを強要してストライキの実施運用に介入する行為と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、出席生徒数の減少を理由に非常勤講師である組合員2名の担当クラスを閉鎖したことが不当労働行為に当たらない、Y社がストを行う場合に事前予告を求める内容の文書をX労組に交付したことが不当労働行為とされた事案を見ていきましょう。

エヌ・シイ・シイ事件(東京都労委令和2年2月4日・労判1225号105頁)

【事案の概要】

本件は、①出席生徒数の減少を理由に非常勤講師である組合員2名の担当クラスを閉鎖したこと、及び、②Y社がストを行う場合に事前予告を求める内容の文書をX労組に交付したことが不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

①は不当労働行為にあたらない

②は不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社が、出席生徒数が定員の3分の1にも満たないA3及びA4の担当クラスを閉鎖したことは、非組合員の場合と異なる対応であったとはいえず、Y社が、両人が組合員であることを理由に担当クラスを閉鎖したとまで認めることはできない。

2 本件要求書には、単に事前の予告を要請するだけではなく、その要請を受け入れない場合には、「正当なストライキではないと判断します」と記載されている。これは3日前までに予告のないストライキをした場合には、Y社が組合員に対して懲戒処分をするなどの可能性があることを示しているといえる。Y社の要請を受け入れなければ組合員へ不利益が生じる可能性があることを示しながらストライキの3日前までの事前予告を求める対応は、単なる要請ではなく、Y社が一方的に決めたルールを強要してストライキの実施運用に介入する行為であると評価せざるを得ない
したがって、Y社が組合に対し本件要求書を交付したことは、組合の運営に対する支配介入に当たる。

上記命令のポイント2は単なる要請であれば不当労働行為とは評価されないでしょうが、今回はそれを超えた内容であったため、不当労働行為と評価されています。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為255 請負契約を締結する作業者の労組法上の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、Y社と請負契約を締結してY社の計器工事に従事する作業者は労組法上の労働者に当たり、同人らの加入する労組の申し入れた団交に応じないY社の対応が不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

ワットラインサービス事件(東京都労委令和2年2月4日・労判1225号104頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と請負契約を締結してY社の計器工事に従事する作業者は労組法上の労働者に当たり、同人らの加入する労組の申し入れた団交に応じないY社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 計器工事作業者は、ア Y社の計器工事の遂行に不可欠な労働力として、会社組織に組み入れられており、イ Y社が契約内容の主要な部分を一方的・定型的に決定しており、ウ 計器工事作業者に支払われる報酬は、労務提供に対する対価としての性格を有しており、エ 個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係にあり、オ 広い意味でY社の指揮監督の下に労務の提供を行っていると解することができ、労務の提供に当たり、一定の時間的場所的拘束を受けているということができる一方、カ 事業者性が顕著であるとはいえない。
これらの事情を総合的に勘案すれば、計器工事作業者は労組法上の労働者に当たることは明らかである。

2 Y社は、労組法上の労働者に当たる計器工事差御者を組織する組合の団体交渉申入れに応ずべき立場にあるところ、Y社が団体交渉事項を拒否する正当な理由は認められないのであるから、組合が申し入れた団体交渉にY社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に該当する。

労組法上の労働者性に関する判断です。

上記命令のポイント1の考慮要素を理解しておきましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為254 使用者側代理人の発言と不誠実団交(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、勤務態度および勤務成績不良を理由に組合員1名を解雇したこと及び団交におけるY社の代理人弁護士らによる不適切な発言が不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

フォーラム事件(大阪府労委令和2年3月13日・労判1225号103頁)

【事案の概要】

本件は、勤務態度および勤務成績不良を理由に組合員1名を解雇したこと及び団交におけるY社の代理人弁護士らによる不適切な発言が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社が解雇理由証明書で示した5つの解雇理由については、X組合員の勤務態度及び勤務成績が不良であり、かつ、それらが解雇というY社から排斥すべき程度に重大なものであったと認めることができず、したがって、本件解雇には合理的な理由があるとまではいえない。
Y社は、X組合員の勤務成績や勤務態度を組合加入前から問題視し、それを理由に退職を求めていたものの、組合が未払残業代の支払い要求、パワハラへの抗議、他の社員分の残業代請求と、組合活動を活発化させた時期に本件解雇の予告に踏み切ったとみるのが相当である。

2 30.7.6団交におけるY社の代理人弁護士らによる6月12日の段階では団体交渉の申入れが行なわれていない旨の発言及び組合の権限をめぐるやり取りの際の一連の対応は不誠実というほかなく、かかるY社の対応は、労働組合法7条2号に該当する不当労働行為である。

団交に参加した使用者側代理人の発言によっても、不誠実団交と評価されますので注意が必要です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為253 組合員の自宅を訪問し退職勧奨したことと不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社の代表取締役がスト中の組合員2名の自宅を訪問し、退職を勧奨する発言を行ったことが不当労働行為とされた事案である。

エム・ケイ運輸ほか事件(大阪府労委令和2年1月7日・労判1223号102頁)

【事案の概要】

本件は、会社の代表取締役がスト中の組合員2名の自宅を訪問し、退職を勧奨する発言を行ったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 B社長は、スト中であった組合員個人の住居を訪問して退職勧奨を行っており、また、請求書兼相殺通知書に記載されていた損害賠償請求権と社会保険料立替分支払債務の対当額での相殺について、送付元の代理人に直接、異を唱えたり、訴訟を提起するといった対応をしないまま、かかる言動を行っていることから、本件言動における退職勧奨は、組合員の動揺を誘い、組合活動に悪影響を及ぼす支配介入に当たるとみるのが相当である。
さらに、7.11言動において、B社長は、これ以上言われても、とりあえず組合に確認する旨述べたE組合員に対し、「これ言うてもわからんのか。自分も大の大人やろ。子どもも嫁はんもおって、確認するって自分らあんなアホに確認して何すんねん。お前、おかしいやろ。あんなアホみたいなやくざみたいな・。」と言ったことが認められ、E組合員が組合に確認しようとしたことを非難し、組合を侮辱する発言をしたと判断することができる。

2 以上のとおりであるから、B社長らが、事前の連絡なく、スト中の本件組合員らの住居を訪問し、本件組合員らに対し、退職を勧奨する発言をしたことは、会社による組合に対する支配介入であって、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

使用者側は労働組合法(特に7条)の理解をしっかりする必要があります。

何はやってよくて、何をやると不当労働行為になるかというレクチャーを顧問弁護士からしてもらうことをおすすめします。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為252 組合員の復職を認めなかったことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、休職を命じた組合員から就労が可能であるとの診断書および復職願が提出されても復職を認めなかったことを不当労働行為とした事案を見てみましょう。

学校法人神奈川歯科大学(復職)事件(中労委平成31年2月8日・労判1222号139頁)

【事案の概要】

本件は、休職を命じた組合員から就労が可能であるとの診断書および復職願が提出されても復職を認めなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 25年休職命令が発令されてからも、法人と組合との間で、Aの勤務場所、勤務内容をめぐって労使間の対立が継続していたところ、同人の復職要求をめぐって、労使間の対立が深刻化し、法人は、組合活動が活発化し、休職していた同人の復職により組合の影響力が拡大することを警戒していたことがうかがわれる。
このように緊張した労使関係の下で、法人がAから相応の医学的根拠のある一連の診断書及び復職願いが出されたにもかかわらず、25年7月1日から26年10月9日までの間、合理的な理由もなく組合及びAからの復職の要求を認めなかったことは、Aの休職を継続させることにより、同人及び同人を支援する組合の影響力を職場から排除しようとしたものであり、組合を嫌悪してなされたものとみるのが相当である。

2 法人がAの復職を認めなったことに対する救済として、初審命令は、Aに対する25年7月1日から26年10月9日までの間のバックペイ及び文書手交を命じているが、Aが提起した未払賃金請求訴訟において、27年8月6日、横浜地裁は、未払賃金の支払を法人に命じる判決を言い渡し、同判決に基づいて、法人は、27年8月14日、上記未払賃金をAの代理人であったC弁護士に支払っており、同判決は確定している。
そうすると、法人がAの復職を認めなかったことによる同人の経済的損害は既に回復されているといえ、さらに、Aが産業廃棄物管理室へ復帰し勤務していることなど本件に現れた一切の事情も併せ鑑みれば、バックペイを命じる必要はなく、文書交付のみ命じるものとする

一般的に、休職期間満了後の復職の可否の判断は、非常に難しいです。

主治医の診断書は多くの場合、「復職可」と記載されていますので、会社が、いかなる場合も例外なく主治医の診断書を鵜呑みするというわけにはいきません。

もっとも、本件では、法人と組合との対立が深刻化している状況も考慮され、結果として、不当労働行為に判断されています。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為251 組合と協議せず、合理的理由なく既得権益を奪う行為の不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労組に対する平成29年4月3日付で組合ニュースの教職員用メールボックスへの投函を禁止したことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

学校法人名古屋自由学院事件(愛知県労委平成31年3月8日・労判1222号138頁)

【事案の概要】

本件は、労組に対する平成29年4月3日付で組合ニュースの教職員用メールボックスへの投函を禁止したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 組合ニュースの内容は組合の組合員を含む教職員の労働条件及び処遇に直接関係するもの及び何らかの形で影響を与えると考えられるもの並びに一般的な組合活動に関するものであるといえ、組合ニュースの表現は個人及び学院の運営に関するひぼう中傷とまではいえず、また、A執行委員長に対する中傷ビラがメールボックスに投函され、組合から調査を求められたことを施設管理規程ないし経理規則を厳格に適用するようになった契機ということもできないことから、施設管理規程ないし経理規則を厳格に適用したことに正当な理由がある旨の学院の主張には合理的な理由が採用できない

2 以上より、学院が組合による組合ニュースのメールボックスへの投函を禁止したことは、長年にわたり許容し、容認してきた取扱いを大きく変更し、その取扱いに一方的な制限を加えようとするもので、組合活動に大幅な不便や不利益を生じさせるものであるにもかかわらず、学院は、事前にその取扱いの変更について組合と協議を尽くさず、また、合理的な理由もなく当該行為を行ったものであって、さらに、学院の当該行為が、組合と学院との関係が相当悪化していた時期に行われたことに鑑みれば、組合の組合活動を制限することを意図した支配介入であるというべきである。

既得権益を侵害する対応は、合理的理由がしっかり説明できないと、本件のように不当労働行為と判断されますのでご注意ください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。