Category Archives: 不当労働行為

不当労働行為280 組合員に対する部長及び社長の面談における発言と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合員に対する部長及び社長の面談における発言が不当労働行為にあたるとされた事案を見ていきましょう。

ビジネスパートナーほか1社事件(東京都労委令和2年1月21日・労判1247号96頁)

【事案の概要】

本件は、組合員に対する部長及び社長の面談における発言が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社らは、面談時のB3部長の発言について、職位を離れ、友人として個人的に話をしており、支配介入の意思はなく、組合の運営や活動等に影響を与える可能性も存しないと主張する。
しかし、B3部長はY1会社の部長職でB1社長を補佐する立場にあるところ、A2に、B1社長への謝罪と損害賠償請求訴訟の和解の必要性を説き、「ユニオンを立てた時点で、もうこいつは、というふうに思われてるのよ、あなたは。あなたが上の経営者だったらどう思う。」、「それを、例えば、感情が高ぶってね、あいつは、みたいに思われているところに、それに輪を掛けたのが、その、第三者を入れたということだと思うよ、その、しかも、第三者も悪いと思うよ、私は、性質が。企業にとって。」といった発言をしている。
これらの発言は、組合加入や組合を介した交渉がA2に悪影響を及ぼすことを示唆し、同人に対し、暗に組合からの脱退を迫るもので、これが、同人をY1会社の会議室に呼び出した上で行われていることをも踏まえれば、職位を離れた個人的な話であったとは認め難く、Y1会社による組合の弱体化を図る支配介入行為に当たるというべきである。

思うのは自由です。

ただ、それを口に出したら問題になってしまうことがあります。

気を付けましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為279 組合についての記事掲載及び書面送付と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合についての記事掲載及び書面送付が不当労働行為にあたるかが争われた裁判例を見てみましょう。

国・中労委(シーフォービジネスインテグレーション)事件(東京地裁令和3年3月25日・労判ジャーナル113号44頁)

【事案の概要】

本件は、X組合が、都労委に対し、Y社が平成●年●月●日にインターネットのフェイスブックページにX組合に関する記事を掲載したこと及びY社がY社の退職者に対してX組合に関する記述に関する記事を掲載したこと及びY社がY社の退職者に対してX組合に関する記述を含む書面を送付したことが、それぞれ労働組合法7条3号の不当労働行為(支配介入)に該当するとして救済命令を申し立てたところ、都労委が、前記各行為が不当労働行為に当たると認めて救済命令を発し、Y社はこれを不服として、中労委に再審査を申し立てたが、中労委が、前記各行為は不当労働行為に当たると認めて、初審命令を一部変更した救済命令を発したため、Y社が、中労委が発した本件命令の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件記事は、Y社のフェイスブックページに掲載されたものであり、Y社の退職者やその他の読者が閲覧できるものであり、本件記事掲載は、Y社の退職者を含む読者に対して、組合と関係を持つとトラブルに巻き込まれかねず、JJK脱退手続が早期に行われない可能性があるという危惧を抱かせるものであり、Y社の退職者のうち、非組合員にはX組合に加入することを躊躇させ、X組合員にはX組合から脱退することを促す効果を持つ行為であり、X組合の組織結成を妨害し、X組合を弱体化させる行為であると認められること等から、本件記事掲載は、支配介入に該当するものと認められる。

2 本件書面送付は、退職者に対して書面を郵送するという方法で行われたところ、本件書面の記載内容の要点は、Y社の発行済株式の全部を所有していたA社の代表取締役Bにより、不法な会社の乗っ取りが行なわれたが、脱退手続を含む離職手続に関し、添付した退職経緯書を記入して返信すれば、離職手続を完了させるというものであり、送付した退職者に対して、X組合は、建造物侵入などで逮捕者を出し、組合員に使用者の情報を盗ませる不法行為を行っている組織であり、また、X組合のY社に対する争議行為はBの画策であるとの印象を与えるものであるから、本件書面送付は、読者である非組合員にはX組合に加入することを躊躇させる効果をもたらし、組合員には組合から脱退することを促す効果をもたらすものといえ、組合を弱体化させる行為であると認められること等から、本件書面送付は、組合への支配介入に該当するものと認められる。

表現の自由があるとはいえ、公共の福祉による制約を受けます。

今回の事案のように組合に関する表現行為については、労組法の不当労働行為による制約を受けることは言うまでもありません。

軽率な行為・言動はトラブルに発展しますのでお気を付けください。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為278 使用者が身の危険と恐怖を感じたという理由で団交拒否できるか?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、組合員の解雇問題を議題とする団交に応じなかった会社の対応が不当労働行為とされた事案を見ていきましょう。

ラクサス・テクノロジーズ事件(広島県労委令和2年8月7日・労判1245号95頁)

【事案の概要】

本件は、組合員の解雇問題を議題とする団交に応じなかった会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 団体交渉は、誠実、平和的かつ秩序ある方法で行われなければならず、暴力の行使が許容されるものではないことは、労働組合法第1条第2項ただし書の規定を待つまでもなく明らかである。
しかしながら、会社が主張するように、単に使用者が身の危険と恐怖を感じたというだけで団体交渉を拒否する正当な理由が認められるとすれば、使用者の主観的な判断によって団体交渉を拒否できることとなり、憲法第28条によって認められた団体交渉権が保障されないことになる。
したがって、将来行われる団体交渉の場において、労働組合の代表者等が暴力を行使する蓋然性が高いと認められる場合に、使用者は、正当な理由があるものとして、労働組合の言動を理由に団体交渉を拒否することができると解される。
そして、暴力行使の蓋然性が高く団体交渉の拒否に正当な理由があるか否かは、使用者及び労働者双方の従前の団体交渉その他の折衝の場における態度等諸般の事情を考慮して決するのが相当である(東京地裁昭和58年12月22日判決)。

2 組合が同意なしに会社に赴く旨を強い口調で通告したのは、組合から本件団体交渉要求について再三にわたり回答を要求されたにもかかわらず、会社が明確に回答しなかったためであり、会社の態度に原因があると解される。
A副委員長とB社員の電話でのやり取りは、わずか数分程度であって、長時間にわたって暴力的な言動を繰り返したというものではなかったことが認められる。
以上のことから、組合が暴力を行使する蓋然性が高いとはいい難い

会社側の主張は理解できなくはありません。

しかし、労働委員会としては上記命令のポイントのように判断することを認識しておく必要があります。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為277 組合員の賞与支給時期を非組合員より遅らせたことは不当労働行為?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合員の賞与支給時期を非組合員より遅らせたことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

沖縄セメント工業(賞与)事件(沖縄県労委令和2年11月12日・労判1245号94頁)

【事案の概要】

本件は、組合員の賞与支給時期を非組合員より遅らせたことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 会社は、組合員については、少なくとも平成28年から同30年までは、夏季賞与支給予定額が決定したころに組合からの団体交渉の申入れを受けて、団体交渉において賞与支給予定額を提示した後、組合と協定書を締結するか、組合に異議がないことが確認された後に夏季賞与を支給していたこと、その結果、組合員よりも先に非組合員に対して夏季賞与が支給されたことがあったこと、平成30年においても、組合員よりも先に非組合員に夏季賞与が支給されたけれども、組合はこれに特段の異議を述べていなかったことが認められる。
本件についても、会社は、従前と同様の対応を予定していたところ、令和元年7月19日に組合から開催希望日を同月26日とする団体交渉の申入れを受けたため、これに応諾すべく、非組合員に対する賞与支給日である同月26日までに組合に対し賞与支給予定額を提示することを控えた結果、同日までに組合と賞与支給について協定書の締結等に至らず、夏季賞与を支給できなかったものと認められる。また、会社は、同月26日の団体交渉の際、あるいはその後においても、組合に対し賞与支給予定額を通知し、賞与を早期に支給するための団体交渉の開催を促すなどした上で、同年9月12日に夏季賞与を支給した事実も認められる。

2 以上の事実によれば、会社は、これまで組合から特段の異議もなく行われてきた夏季賞与支給についての手順に従って対応しようとした結果、組合員に対する支給が遅くなったものに過ぎないというべきである。・・・このような会社の姿勢からすれば、会社が、組合員に対する賞与支給時期を非組合員よりも殊更に遅らせたとは言い難い。
したがって、会社が、殊更に、本件行為に及んだと認めることはできない以上、本件行為が不合理であるとはいえない。

結果だけを見ると、組合員に対する不利益な取扱いのように見えますが、ご覧のとおり、そこには合理的な理由が認められるため、不当労働行為とは評価されませんでした。

組合員に対する不利益取扱いは、紛争になる可能性が高いので、日頃から顧問弁護士に相談する体制を整えておくことが肝要です。

不当労働行為276 信頼関係の構築と団体交渉(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、当事者間で団交を行う前提となる「信頼関係が構築できていない」ことを理由に団交に応じない会社の対応が不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

魚沼運輸事件(新潟県労委令和3年1月6日・労判1245号91頁)

【事案の概要】

本件は、当事者間で団交を行う前提となる「信頼関係が構築できていない」ことを理由に団交に応じない会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 第1回団交及び第2回団交において、組合側出席者には、適切であるとは言い難い言動があったと言わざるを得ず、この点は組合等としても自省すべきところである。このため、会社が第2回団交の後に、交渉時間、交渉場所及び出席人数等の団交開催の条件を提案したことは理解できるところである。
しかしながら、組合側出席者の言動は、第2回団交で、会社側出席者が組合側出席者の質問に対し、自らの権限を超えている旨発言するなど、明確な回答を避けるような会社側出席者の姿勢に起因する面もあったことは否定できない。また、第1回団交及び第2回団交のいずれにおいても、団交は途中で打ち切られることなく終了しており、団交が全く継続できないような事態に陥ったとは認められない

2 会社が団交申入れに応じないことに、正当な理由があるとは認められない。
よって、それらをもって信頼関係が構築できていないとし、団交に応じなられないとする会社の主張は採用できない。

団体交渉において、両者の「信頼関係が構築」されないとしても、それは立場上やむを得ないことがあります。

よほどのことがない限り、使用者側が団交を拒否すると不当労働行為とされますので注意しましょう。

団体交渉における具体的な対応方法については、必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

不当労働行為275 組合員が特定されないこと等を理由とする団交拒否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合員が特定されないこと等を理由に団交に応じない会社の対応が不当労働行為とされた事案を見ていきましょう。

ヨーク事件(京都府労委令和2年12月9日・労判1244号148頁)

【事案の概要】

本件は、組合員が特定されないこと等を理由に団交に応じない会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 会社は、まず、平成30年8月1日前は、組合が特定できず、交渉のしようがなかったと主張する。この点、平成30年7月2日の時点では、組合は、当時会社に在籍した6人の技能実習生のうち、いずれの者が組合に加入したかについて、明らかにしていなかった。このため、会社は、組合に加入した技能実習生の特定を求めた。
これに対し、組合は、8月1日、B弁護士に電話で組合に加入したのはA組合員であることを告げた上で、本件合意書案をFAX送信した。本件合意書案には、A組合員の名が記載されており、組合に加入したのがA組合員であることは、本件合意書案から明白であった
以上により、組合は、組合に加入したのがA組合員であることを会社に明らかにしたのであるから、8月1日前の時点においてはともかく、会社は、組合の組合員が特定されないことを理由に団体交渉を拒否することはできない

命令のポイント1の事情からすれば、組合員の特定は可能であったと考えるのが相当でしょう。

団体交渉における具体的な対応方法については、必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

不当労働行為274 組合ニュースの記事内容を理由とする組合事務所の明渡し要求の不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合の発行する組合ニュースについて、特定の記事を掲載しないよう求め、記事の内容を理由に組合事務所の明渡しを求めたことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

枚方市事件(大阪府労委令和2年11月30日・労判1242号104頁)

【事案の概要】

本件は、組合の発行する組合ニュースについて、特定の記事を掲載しないよう求め、記事の内容を理由に組合事務所の明渡しを求めたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 組合が使用目的の範囲内で組合事務所を使用しているかの確認に当たって市が採った対応や、市が組合に対し組合事務所の明渡しを求めた理由によっては、不当労働行為となり得る場合がある。

2 組合ニュース記事の内容に28.5.31市書面で示した基準に違反する政治的要素が含まれ、当該記事を掲載した組合ニュースを職員会館内の組合事務所で作成・印刷したことが職員会館の使用目的に付した条件に反するとして、組合に対し、30.12.27市通知書を交付して、平成30年の使用許可を取り消すことになる旨、即刻自主的に職員会館から退去することを求める旨等を通知した市の対応は、必要最小限の手続とはいえず、組合事務所の明渡しを求めるに足る相当な理由も認められず、また、組合ニュースの作成・印刷する場所を問題とする市の主張に疎明はないのであって、組合事務所の明渡しを求めることで、結果的に組合活動を委縮・弱体化させるものであるといえる

3 市が組合ニュースの特定の記事を掲載しないよう求めたとの組合主張については、やり取りについての具体的な疎明がなく、直ちに支配介入があったとまではいえないものの、組合が組合事務所で政権や特定政党への批判的な記事を掲載した組合ニュースの印刷・発行を繰り返したとして、市が組合事務所の明渡しを求めたことは、組合活動を委縮・弱体化させる支配介入に当たり、労働組合法7条3号に該当する不当労働行為である。

命令のポイント1のとおり、明渡しの理由如何によって不当労働行為該当性が判断されます。

今回のケースでは不当労働行為にあたると判断されてもやむを得ません。

今回のような対応の是非については、事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に判断しましょう。

不当労働行為273 団交の際、財務資料を用いた具体的な説明を行わなかったことと不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、准職員および時間雇用職員の無期転換に関する団体交渉を行う際に、人件費や財務への影響についての資料を用いた具体的な説明を行わなかった法人の対応が不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

国立大学法人東北大学事件(宮城県労委令和元年11月14日・労判1240号100頁)

【事案の概要】

本件は、准職員および時間雇用職員の無期転換に関する団体交渉を行う際に、人件費や財務への影響についての資料を用いた具体的な説明を行わなかった法人の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y法人は、本件質問要求書のうち質問として合理性を有する事項に対して、適切かつ誠実に対応しているとは認め難く、また新たな資料として提供したものは、限定正社員採用試験の受験者数及び合格者数にすぎないことから、本件質問要求書に対する平成30年2月7日の団体交渉におけるY法人の対応は、労組法7条2号の不当労働行為に当たる。

2 確かに、X組合はY法人に対し、回答できない理由を検討中であることを記載する程度で良い旨述べるとともに、速やかに回答するよう求めていることから、簡易なものでも良いから、ともかく回答することを優先するよう求められているとY法人が理解した可能性がある。しかし、そのことを前提にしたとしても、Y法人は、本件質問要求書に対して、平成30年2月7日の団体交渉で十分に対応していないし、その1か月後(本件質問要求書提出から約2か月後)の同年3月7日においても、Y法人は、本件文書により、何ら具体的な情報提供を行っていない
これらの経緯を考慮すると、本件文書による回答だけでは、本件質問要求書に対する回答として不十分であり、不誠実なものであると言わざるを得ない。よって、Y法人の本件文書による回答は、X組合の本件質問要求書に対して誠意をもって対応したとはいえず、労組法7条2号の不当労働行為に当たる。

組合から財務資料を求められることは少なくありません。

会社側は財務資料を開示することを通常嫌がりますが、合理的理由なく開示を拒むと不当労働行為と判断されますので気を付けてください。

団体交渉における具体的な対応方法については、必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

不当労働行為272 勤務シフトに従わず欠勤を続けた組合員に対する解雇と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、期間契約職員である組合員に対し、法人の指定した勤務シフトに従わず、欠勤を続けたことを理由に普通解雇したことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

社会福祉法人新事件(東京都労委令和元年12月17日・労判1240号99頁)

【事案の概要】

本件は、期間契約職員である組合員に対し、法人の指定した勤務シフトに従わず、欠勤を続けたことを理由に普通解雇したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為に当たらない

【命令のポイント】

1 法人がAを7月20日付けで普通解雇とする過程において、法人には同人の勤務シフトの問題について、組合との話し合いによって解決していくことを忌避したといえる対応があったといわざるを得ないが、そのことを考慮しても、法人が、連続夜勤を禁止し、その方針に基づいて同人に対して金曜日を含む勤務シフトを指定したこと自体は、相当な対応であったというべきである。
解雇は、このような状況の下でのAの対応を、連続夜勤に固執して法人が指定した勤務シフトに従わない姿勢を示すものとみて、そのことを理由としてなされたものといわざるを得ない。
したがって、法人が、Aを7月20日付けで普通解雇としたことは、同人が組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たらない。

解雇について客観的に合理的な理由が説明できれば、不当労働行為にはあたりません。

とはいえ、組合員に対する不利益取扱いは、このように紛争になる可能性が高いので、日頃から顧問弁護士に相談する体制を整えておくことが肝要です。

不当労働行為271 営業会議に出席しない組合員に対する懲戒処分と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、営業会議に出席しない等を理由に組合員をけん責の懲戒処分としたことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

パナソニック事件(大阪府労委令和2年1月7日・労判1240号98頁)

【事案の概要】

本件は、営業会議に出席しない等を理由に組合員をけん責の懲戒処分としたことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 会社が組合員について、組織責任者、経営幹部、人事責任者等による口頭・書面による注意指導や厳重注意を繰り返し行ったにもかかわらず、指示に応じず業務怠慢で誠実に業務を遂行していないという見解に至ったことは不合理であるとはいえず、組織責任者、経営幹部、人事担当者に対して誹謗・中傷する不適切言動があったという見解に至ったことについても、やむを得ないことであったと解されることから、会社が、本件処分理由書に記載した組合員の行為について、職場規律を乱す行為であるという判断を行ったことは不合理であるとはいえない。

組合員という立場に着目せず、処分理由の客観的合理性が認められる場合には、不当労働行為には該当しません。

日頃から顧問弁護士に相談する体制を整え、無用なトラブルを回避することが肝要です。