Category Archives: 不当労働行為

不当労働行為80(城陽市事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、非常勤嘱託員の任用拒否、団交拒否に関する命令を見てみましょう。

城陽市事件(京都府労委平成25年8月9日・労判1077号91頁)

【事案の概要】

X組合は、Y市に対し、団体交渉を申し入れ、Aの勤務条件について8回団体交渉を行った。

Aは、特別職の地方公務員であり学童保育指導員(非常勤嘱託員)である。

Y市は、Xとの団体交渉において、Aに対し、24年度の任用を行わない旨を通告した。

その後、Y市は、X組合に対し、団体交渉を打ち切る旨を通知した。

【労働委員会の判断】

契約更新を行わなかったことは不当労働行為に当たらない

団交における市の対応は不当労働行為に当たる

【命令のポイント】

1 Y市は、平成22年度、Aを特別な支援を必要とする児童に対して配置される加配指導員として任用したが、Aは自己の考え方に基づき担当児の監護に専念しないなど学童保育所のルールを逸脱した業務を行い、これに対する他の指導員の指摘や注意も聞き入れようとせず、さらに、休日に担当児と関わろうとするなど家庭において監護を受けられない留守家庭児童の保育という学童保育事業の趣旨を逸脱した行動をとった。・・・Aは相変わらず自己の考え方に固執し、各学童保育所のルールを逸脱した業務を行い、他の指導員と連携しようともせず、注意を聞き入れようとしなかった。・・・このような報告を受けて、Y市は本件任用拒否について判断した。
以上のことから、本件任用拒否はAの勤務態度を理由として行われたものと認めるのが相当であり、AがX組合に加入したこと又はX組合の正当な行為をしたことの故をもって行われたものとはいいがたい

2 Aの勤務条件について、Y市は、業務の性質の観点から誠実に対応し、夏休み期間中は特別の配慮も行い、本件勧告に対しても、労基署の指導に基づいて是正措置を実施し、その旨説明したと主張する。
確かに、上記主張に沿う事実も認められるが、一方、Y市は、X組合の労基法15条違反の主張に対しては、労基署等への問い合わせの有無も明らかにしないまま違反には当たらない旨説明し、これにX組合が納得していないにもかかわらず、交渉の打ち切りを表明しており、このような対応は、後に本件勧告を受けていることから見ても、X組合の主張に対する自己の主張の根拠について十分説明を尽くしたものとは認められない。・・・Y市が上記誠実交渉義務を尽くしていたとはいえない。

雇止めについては、合理的な理由があるということです。

注意をし、改善を促したにもかかわらず、一向に改善しなかったというプロセスが大切ですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為79(山本製作所事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合が労組法上適法な団体であることが明らかでないとして団交に応じなかったことの不当労働行為性に関する命令を見てみましょう。

山本製作所事件(神奈川県労委平成25年6月21日・労判1077号95頁)

【事案の概要】

本件は、X組合(いわゆる合同労組)がAの組合加入を受け、Aの整理解雇等についてY社に対し団体交渉要求書を送付して団体呼応省を申し入れたところ、Y社が、組合規約等の提出を要求し、労働組合法上適法な団体であることが明らかになった後に団体交渉に応じるなどと回答したことが、労組法7条2号および3号に該当する不当労働行為であるとして、救済の申立てをしたものである。

【労働委員会の判断】

不当労働行為に該当する

【命令のポイント】

1 確かに、Aは、整理解雇により雇止めとされた当時、Y社に対して何ら不服を表明することなく、その後3年近く経過しており、また、少なくとも平成20年及び平成21年に年次有給休暇を取得していたことから、Y社が本件団体交渉要求書に記載された内容が事実と異なると認識したことには十分な事情が認められる。そして、組合は、Aにかかる団体交渉申入れは今回が初めてであったにもかかわらず、本件団体交渉要求書を送付したことなどからすれば、Y社が組合の団体交渉申入れの態様に対して疑念を抱いてもやむを得ないとみられる一面が存することは否定できない。
しかしながら、法適合組合であることは、労働組合法に規定する手続に参与し、同法に規定する救済を受けるために必要な要件ではあっても、組合が団体交渉を申し入れるのに必要な要件ではない。労働組合からの団体交渉申入れに対し、法適合組合であると確認した後に団体交渉に応じるとの使用者の対応は、労働組合の団体交渉権の行使を不当に制約するものと評価せざるを得ない
したがって、本件団体交渉申入れに対する当初のY社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たり、ひいては組合を軽視するものとして支配介入に当たる不当労働行為である。

まったくそのとおりなので、特にコメントすることはありません。

使用者のみなさん、このような通らないことが明らかな理由で団体交渉を拒否することはやめましょう。

何のメリットもありませんので。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為78(ミカド観光センター事件)

おはようございます。

さて、今日は、ストを主導した組合役員らを懲戒解雇したこと等と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

ミカド観光センター事件(長崎県労委平成25年8月5日・労判1077号92頁)

【事案の概要】

X組合は、平成23年11月、ストライキを実施し、その後、ストライキを解除した。

Y社は、前日までストライキに参加していた組合員10名に対し、自宅待機を命じた。

Y社は、上記10名のうち、X2およびX3を懲戒解雇した。また、X5からX10に対し、ミカド市場等への配置転換を、X4に対してさらに1か月の自宅待機を命じた。その後、Y社はX4を懲戒解雇した。

これらのY社の行為および組合が求めた当該行為に関する団体交渉に対するY社の対応が、労組法7条1号から3号に該当する不当労働行為であるとしてX組合が救済を申し立てた。

【労働委員会の判断】

懲戒解雇、配置転換、自宅待機命令は、いずれも不当労働行為に該当する

【命令のポイント】

1 本件自宅待機命令は、本件ストライキに最後まで参加した10名に対して行われたものであるが、本件ストライキが正当な組合活動と認められることは前述のとおりである。また、上記のとおり、本件自宅待機命令に合理的な理由が認められない一方で、Y社はX組合を嫌悪していたことが認められるのであるから、本件ストライキを違法と決め付けたY社が、組合嫌悪意思をもって本件自宅待機命令を行ったと認めるのが相当である

2 本件懲戒解雇についても合理的な理由が認められない一方で、Y社がX組合を嫌悪していたことが認められるのであるから、本件ストライキを違法と決め付けたY社が、組合嫌悪意思をもって本件懲戒解雇を行ったと認めるのが相当である。そして、X組合の要職にあった3名を懲戒解雇することにより会社内における組合活動を困難にさせ、組合のさらなる弱体化を図ったものと認めることができる。X組合組合員の減少が著しいことは前述のとおりである

3 本件配置転換は、本件自宅待機命令に引き続いて行われたものである。本件ストライキが正当な組合活動と認められること、本件自宅待機命令が不当労働行為に該当することは前述のとおりであり、また、上記のとおり、本件は移転命令について合理的な理由が認められない一方で、Y社がX組合を嫌悪していたことが認められるのであるから、本件ストライキを違法と決め付けたY社が、組合嫌悪意思をもって本件ストライキがなかったならば行うことのなかった配転をあえて行ったと認めるのが相当である

あまりコメントすることがないほど明白な不当労働行為ですね。

顧問弁護士や顧問社労士がいないのでしょうか。

「あのー、社長、100%不当労働行為ですよ・・・」とか言ってあげる人がいなかったのでしょうか。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為77(兵庫県・兵庫県労委(川崎重工業)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、使用者に当たらないとして救済申立棄却命令の取消請求に関する裁判例を見てみましょう。

兵庫県・兵庫県労委(川崎重工業)事件(神戸地裁平成25年5月14日・労判1076号5頁)

【事案の概要】

Xの川崎分会に所属する組合員は、A社及びB社に雇用されて、労働者派遣契約や請負契約に基づき、Y社の工場で就労していたが、A社及びB社から解雇又は雇止めをされたため、Xが、Y社に対し、分会組合員の雇用に関する要求事項を掲げて団体交渉を申し入れたところ、Y社が分会組合員の使用者に当たらないことを理由に拒否したため、この行為が労働組合法7条2号(誠実交渉義務違反)の不当労働行為に当たるとして、処分行政庁に対し不当労働行為救済命令申立てを行ったが、処分行政庁は、Y社は分会組合員の使用者に当たらないと判断して本件申立てを棄却する命令をした。
本件は、Xが、本件命令を不服として、その取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 不当労働行為禁止規定(労働組合法7条)における「使用者」は、一般に、労働契約上の雇用主をいうものと解されるが、同条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除、是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることにかんがみると、雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、同事業主は同条の「使用者」に当たるものと解するのが相当である(最高裁平成7年2月28日判決)。

2 ここでいう「使用者」は、労働契約関係ないしそれに隣接ないし近似する関係を基盤として成立する団体労使関係上の一方当事者を意味し、雇用主以外の者であっても、当該労働者との間に、近い将来において労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性が存する者もまた、これに該当するものと解すべきである

3 Y社が、派遣労働者であったDらと直接雇用契約を締結するかは、基本的にY社の有する採用の自由が及ぶ範囲内の事柄であり(このことはXも認めるところである。)、Y社が自ら直用化するか否かを決定することができるからといって、そのことから直ちにY社が使用者に当たると解することはできない。

4 労働者派遣が派遣法に違反する常体に至っている場合には、確かに派遣先において派遣労働者を直接雇用することは違法状態を解消し、派遣労働者の雇用の安定を図る一つの方策ではあるが、派遣労働者の雇用の安定を図る方策は直接雇用に限られるわけではないことに加え、派遣法40条の4は、派遣可能期間に抵触する等一定の要件を充たした場合に派遣先企業に派遣労働者に対する労働契約の申込みを義務付けているものの、当該申込義務は、派遣先企業が派遣労働者に対して負う私法上の義務ではなく、国に対して負う公法上の義務であって、派遣労働者はこれが履行された場合に反射的利益を受ける立場にあるにとどまると解される

5 本件では、A社が労働者を解雇する場面において、Y社は派遣解除通知をするに当たり減員人数を伝えるのみであり、派遣契約を解除される労働者を決定するのはA社であったことからすると、Y社は誰を解雇するかについてA社に対して影響力を及ぼしておらず、人選をA社の意向にゆだねていたものというべきであり、採用の場面でY社がA社に何らかの影響力を及ぼしていることはうかがえないのであって、単に業務の大半を依存しているという事実のみからY社を使用者と認めることはできない

労組法上の使用者性に関するオーソドックスな判断です。

違法派遣についての判断も、特に変わるところはありませんね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為76(中ノ郷信用組合事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は異なる労組に二重加入している組合員に関する団交申入れと団交応諾義務に関する命令を見てみましょう。

中ノ郷信用組合事件(中労委平成25年7月17日・労判1075号93頁)

【事案の概要】

Y社は、Aの懲戒処分等を議題とするX組合からの団交申入れに対し、Aが2つの労働組合に二重加入していることを理由に団交を拒否した。

【労働委員会の命令】

労働組合の二重加入を理由として、組合の申し入れた団交を拒否したことは不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 労働者が組織を異にする二つの労働組合に二重に加入している場合、使用者が、当該労働者の労働条件等に関する同一の事項について各労働組合から別々に団交が申し入れられたときに両労働組合の間でまでは調整を求める等を理由に団交を拒否することは認められうる

2 しかし、本件においては、Y社は、職員組合から、Aの本件懲戒処分等を議題とする団交と同様の要求は受けておらず、その他Aの労働条件についての団交の申入れも受けていなかった。その上、職員組合は非組合員であるAの本件懲戒処分ないしは労働条件等を議題としてY社と団交を行う意思を有していたとは認められない。そして、職員組合にAの本件懲戒処分等に関してY社に団交の申し入れをするようなことを窺わせる具体的な事情も認められないことを踏まえると、Y社は、7月15日付け拒否回答の時点において、AがX組合と職員組合に二重加入の状態であったとしても、職員組合はAの懲戒処分等について団交を行う意思がないことは容易に認識でき、職員組合から二重の交渉を求められないことも認識していたと認められる。

3 したがって、Y社は、X組合と職員組合から同一の事項につき別々の団交を申し入れられた事実はなく、加えて二重の交渉を求められないことも認識していたのであるから、Y社がX組合からの7.2団交申入れに応じられない正当な理由があるとは認められない

押さえておくべきなのは、判例のポイント1ですね。

二重加入の事実のみを理由として団交拒否をすれば、不当労働行為に該当するのは明らかです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為75(福岡市事件)

おはようございます。 今週も一週間、お疲れ様でした。

さて、今日は、嘱託員への特別選考と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

福岡市事件(中労委平成25年6月19日・労判1073号94頁)

【事案の概要】

Xらは、福岡市の運営する福岡市男女共同参画推進センター・アミカスに勤務していた。

福岡市と組合は、任用期間1年の嘱託員の更新回数制限に関して、「更新回数満了に伴う新たな任用は、まずは、アミカスにおいて現に勤務する任期満了者を対象に特別選考を実施し、特別選考により必要な人員が確保できない場合は、公募による一般選考を実施する」旨の確認書を取り交わした。

市は、特別選考に応募した嘱託員9名(組合員8名、非組合員1名)につき、小論文及び面接を実施し、組合書記長X1、執行委員X2、組合員X3の3名を不合格者とし、組合執行委員長X4ら6名に合格通知を発送した。

【労働委員会の判断】

X1ら3名を不合格として退職扱いとしたことは不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 ・・・評定に当たっては答案用紙の受験者氏名は伏せて実施され、合否判定にあっては評定員2名の平均値により行われており、評定員の恣意・先入観等が入らないような配慮がなされていたことが認められ、小論文試験の設問内容、評価基準及び評定方法とも不合理、不自然な点は認められない。

2 ・・・面接員は、外部の有識者及び市職員で、男女共同参画推進に関する業務従事者等でアミカスの業務について理解できる者であって、受験者との関係や面接に必要な知見について配慮がなされていたことから、アミカスの業務従事者の特別選考という面接試験の趣旨目的及び実際の上記質問内容に照らすと、不合理、不自然なものであったとはいえない。

3 特別選考について市が定めた小論文及び面接試験の実施方法、判定基準及び選考委員会による合否判定に特段不合理、不自然な点は認められない。また、これらの特別選考の実施に当たり、市が恣意的に介入したと認めるに足る証拠はない。

今回のケースで、組合側が不当労働行為意思を立証するのは難しいでしょうね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為74(東海大学(付属仰星高校)事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は、協議結果をまとめた確認書への押印拒否と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

東海大学(付属仰星高校)事件(大阪府労委平成25年5月22日・労判1073号95頁)

【事案の概要】

組合は、高等学校と団交を行い、その内容をまとめた確認書を手渡した。

しかし、高等学校は、組合に対し、確認書に押印できない旨を述べた。

【労働委員会の判断】

確認書への押印拒否は不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 ・・・こうした法人の対応は、高等学校を通じた団交の交渉の内容を明確化し、その到達点を労使が共有しようとする組合の努力に応じる姿勢を示しておきながら、その後に理由を示すことなく態度を翻したものであって、それまでの組合の努力を無に帰せしめるものであり、ひいては組合と、高等学校を通じた法人との団交の意義を失わせるものであるといわざるを得ず、誠実に団交に応じたということはできない

2 以上のとおりであるから、団交の確認書の締結に係る法人の対応は、交渉の到達点について書面を作成して組合と高等学校が共有しようとする過程において、高等学校を通じて、その見解を変遷させ、その説明を行わなかったものであって、不誠実団交に当たるとともに、組合に対する支配介入を行ったとみるのが相当であって、かかる対応は、労組法7条2号及び3号に該当する不当労働行為である。

合理的な理由なく確認書への押印を拒否すると、本件のように不当労働行為になりますので、注意してください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為73(日本郵便事件)

おはようございます。 今週も一週間、がんばっていきましょう!!

さて、今日は人事異動と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

日本郵便事件(神奈川県労委平成25年6月21日・労判1073号93頁)

【事案の概要】

平成23年3月頃、Xは、「動労千葉を支援する会・全逓横浜」を結成し、代表に就任した。

同年7月、Y社は、Xに対し、横浜泉支店第二集配営業課への人事異動がある旨を伝えたが、Xは、拒否すると述べた。

同月、Xは、戸塚支店前等において、強制配転反対との見出しのビラを配布した。

その翌日、Y社は、Xに横浜泉支店第二集配営業課への異動を発令した。

なお、この異動により、Xの担当業務に変更はなく、同人の通勤時間は、片道約45分から約65分となった。

【労働委員会の判断】

本件人事異動は不当労働行為に当たらない。

【命令のポイント】

1 一般的に、労組法7条1号に定めのある「労働組合の正当な行為」とは、労働組合自身が行う行為、若しくは組合員が労働組合からの授権によって行う行為に限られるものではなく、客観的にみて組合員に影響する労働条件の維持・改善などを図る行為や、労働組合の自主的・民主的運営を志向する組合員による自発的活動をも含むと解すべきである

2 支援する会は、組合のあり方を変えていく体質改善を目的としてはいるものの、実際には組合の組合員以外の者も所属することができる会であり、その主な活動は、動労千葉の国鉄分割民営化に反対して解雇された動労千葉の組合員に対しての支援活動として物資販売を行うことを通じて解雇撤回の運動を職場の中に広めること、被災地への救援物資販売、反原発の運動などであり、客観的にみて労働条件の維持・改善など組合の目的に沿った活動であるとはいい難い。現に動労千葉を支援する会の要綱には組合に関する項目はなく、支援する会が労働条件に係る問題を取り上げ会社に対し要求した事実もない。このほか、支援する会の活動が組合内の意見表明行為であるとする特段の事情も認められず、組合の自主的・民主的運営を志向する活動はいえない。
したがって、支援する会の活動が労働組合の行為とは認められない以上、それが正当な行為か否かを問題とするまでもなく、本件人事異動は労組法7条1号の不利益取扱いには該当せず、ひいては支援する会に対する同3号の支配介入にも該当しない

労組法7条1号の「労働組合の正当な行為」の意義について示されています。

こういう形での判断は、珍しいと思います。 参考にしてください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為72(E社事件)

おはようございます。 

さて、今日は、機密情報を無断で持ち出したこと等を理由とする懲戒解雇と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

E社事件(大阪府労委平成25年4月24日・労判1071号95頁)

【事案の概要】

Y社(産業廃棄物の収集運搬業)は、組合員Xを懲戒解雇した。

懲戒解雇事由は、Xが、従業員の昇給等のデータや会社の得意先一覧データを無断でプリントアウトし持ち出したこと等である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない。

【命令のポイント】

1 X組合員の本件得意先一覧及び本件昇給等データの無断持出しは、懲戒解雇に相当する重大な違反であり、A分会長の上記行為は、X組合員に対し、本件得意先一覧の持出しを依頼することで、結果として同人に窃盗罪にも当たる違反行為を行わせる原因を生ぜしめた上、自らそのリストを受け取っていることからすれば、Y社が、就業規則74条11号の「会社内で横領、傷害などの刑法犯に該当する行為があったとき」及び同条21号の「刑法その他法令に規定する犯罪に該当する行為をなし、その後の就業に不適当と認められるとき」に該当するとして、懲戒処分の中でも懲戒解雇に相当する重大な違反と判断したことは首肯できる

2 以上のとおり、解雇理由は、いずれも不当とはいえず、Y社がC分会長に対する処分として懲戒解雇に相当するとしたことを相当性を欠く判断とはいえない。
以上のとおりであるから、組合員らに対する本件懲戒解雇は客観的に合理的な理由を欠くものとは認められず、社会通念上相当性を欠くとも認められないのであって、組合員であるが故の不利益取扱いとはいえず、この点に組合の申立てを棄却する。

 本件では、懲戒解雇の有効性と不当労働行為成立の有無は、表裏の関係にあります。

特に組合員であるからどうだという話ではないということですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為71(津軽海峡フェリー事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合員に対する会社見解配信と船舶訪問による説明行為と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

津軽海峡フェリー事件(北海道労委平成25年5月24日・労判1071号93頁)

【事案の概要】

Y社とX組合は、平成23年2月、それぞれ労働協約改訂交渉を申し入れ、団交を開始した。

平成23年4月、Y社は、取締役専務執行役員Aを差出人とし、各船船長および全乗組員あてに、労働協約改訂交渉の背景、交渉経緯、労使の主張、論点等を記載した文書を、社内の情報連絡システム「デスクネッツ」により各船に配信した。

Y社とX組合は、従来から現場である船舶を訪問して、それぞれの方針・見解・団交の状況等を直接組合員に説明する訪船活動を行ってきた。

【労働委員会の判断】

不当労働行為に該当する。

【判例のポイント】

1 会社配信された書面には、組合方針に対する組合員の不信感をことさらに煽る内容が記載されており、それは会社の意見の表明の域を超えて、組合員に不当な影響を与え、組合の運営に影響を及ぼすべき性質を持つものということができることから、そのような会社見解を記載した文書を各船に配信した会社の行為は、法第7条第3号の不当労働行為に該当する。

2 ・・・会社見解について、訪船により会社が組合員に対して直接説明を行うことは、会社の意見表明の域を超えるものと認められ、文書の配信と同様に組合の運営に対する支配介入行為と認められる。
よって、本件訪船により、会社が組合員に対して上記内容に関する説明を行ったことは、法第7条第3号の不当労働行為に該当する。

短いですが、意味はわかると思います。

組合を飛び越して、直接、組合員に対して会社の意見を伝えると、本件と同じような判断がなされる可能性がありますので、ご注意ください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。