Category Archives: 不当労働行為

不当労働行為100(X労働者組合事件)

おはようございます。

今日は、組合の街宣活動等に対する差止め請求等に関する裁判例を見てみましょう。

X労働者組合事件(東京地裁平成26年9月16日・労経速2226号22頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Yらの街宣活動等の行為により、Xの名誉・信用が毀損され、平穏に事業活動を営む権利が侵害された旨主張し、Yらに対し、これら行為の差止めを求めるとともに、不法行為に基づき、連帯して230万円の損害賠償及び知念損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

街宣活動等の差止めを認容

慰謝料として100万円を支払え

【判例のポイント】

1 本件街宣活動等の態様、特に、配布されたビラにおいて「非常勤ヘルパーに対する不当な排除を許さない!!」、「だまし打ち的な職場からの排除」などと、演説において「会社の、甲の説によれば、雇止めだと言っているが、こちらから見れば、一方的な排除であり、解雇だというふうに評価している。」などとして、読み手ないし聞き手に対し、XがしたBに対する雇止めが不当だとの前訴判決の判断に反する印象を与えるものであること、その回数が、X事務所におけるものだけでも27回に及ぶこと、Xが本件雇用関係の不存在等について前訴を提起して公権的解決を求め、前訴判決確定後も平成23年にYらに対してYらのXに対する活動を止めるよう申し入れるなど、XがYらとの任意の交渉を拒絶する意思が明確であること等からすれば、本件街宣活動等は、Xの名誉・信用を毀損し、平穏に事業活動を営む権利を侵害するものといえる
以上の事実に加え、X理事らの自宅におけるものも十数回に及ぶこと、Y組合代表者が、今後もX及びXら理事に対して従前と同様の行動をとる余地がある旨述べていることなどからすると、Yらが今後も従前と同様ないし類似の方法で街宣活動等を行う蓋然性は高いといわざるを得ず、Xの名誉・信用を守り、平穏に事業活動を確保するためには、Yらの当該街宣活動等を差し止める必要性があるというべきである

2 本件街宣活動等のうち、X事務所におけるものは、Xの名誉・信用を毀損し、平穏に事業活動をする権利を侵害する違法な行為というべきであって、不法行為を構成するが、他方、本件街宣活動等のうち、X理事宅におけるものは、直ちにXの名誉・信用を毀損し、平穏に事業活動をする権利が侵害されたものとは認められない。
そして、本件街宣活動等のうちX事務所におけるものの回数・期間、ビラの内容等の態様、本件証拠により認められる諸般の事情を併せ斟酌すれば、Xが本件街宣活動等により被った損害は100万円であると認定するのが相当である。
この点につき、Yらは、Yらへの本件訴状送達時より3年以上前の行為については消滅時効期間が経過している旨主張する。しかし、Yらの行為は、その目的の同一性、態様の類似性等からすれば、Bの雇用問題に関する一連の継続した行為と評価するのが相当であるから、消滅時効期間は経過していないと認められる。

街宣活動等の差し止めが認められた事案です。

どのようなことを主張立証すればよいのかについて参考にしてください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為99(ゼンショーホールディングスほか1社事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、労組法上の使用者性に関する命令を見てみましょう。

ゼンショーホールディングほか1社事件(神奈川県労委平成26年8月7日・労判1097号91頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、①組合員である派遣社員であるAら3名の労働問題についての団交要求に対し、業務多忙を理由として回答を延期したこと、②Aら3名と雇用関係にないことおよび申立外D社との労働者派遣契約終了を理由に団交を拒否したことは、不当労働行為であるとして、救済を申し立てた。

【労働委員会の判断】

Y社は労組法上の使用者にはあたらない
→∴不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 以上に述べたように、Y社は、希望者全員を無条件に直接雇用したのではなく、直接雇用の際に唯一「住居を自分で確保する」という合理的な条件を付けており、その条件を満たさなかったり就労可能でなかったAら3名とY社との間に、近い将来において労働契約関係が成立する可能性が現実的かつ具体的に存在していたとはいえず、Y社の使用者性は認められない

2 組合は、Y社が団体交渉応諾義務があるにもかかわらず、正当な理由なく団体交渉の開催を拒否し、組合が法適合組合であることを知っていたにもかかわらず様々な主張を繰り返し行い、組合との団体交渉開催を意図的に引き延ばして拒否し、組合と組合員との信頼関係を弱め、団結を弱めたり破壊しているので、このような長期にわたるY社の団体交渉拒否は労組法7条2号及び3号に該当する不当労働行為であると主張するが、上記のとおり、Y社は、Aら3名との関係において労組法7条の使用者に当たるとはいえないので、団体交渉応諾義務はなく、支配介入にも当たらない。

組合としては、上記2の点について実質的な判断をしてもらいたかったところですが、労組法上の使用者性が否定されてしまったため、このような結果になりました。

労組法上の使用者性に関してはこれまでにも重要な判断が出されていますので、参考にしてください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為98(富山通運事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう!

今日は、就労不依頼と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

富山通運事件(富山県労委平成26年8月5日・労判1097号92頁)

【事案の概要】

Y社は、日々雇用のアルバイトである組合員5名に仕事を依頼しなくなったことをきっかけに、組合はY社に対し、団体交渉を申し入れた。

当初、Y社は団体交渉に応じていたが、団体交渉で議論が出尽くしたことを理由に組合の主張する解雇に関する団交には応じない旨の回答をした。

【労働委員会の判断】

いずれも不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 日々雇用のアルバイトの場合、解雇に関する法理を類推適用することはできないし、就労実態からすれば、雇用関係の継続がある程度期待されていたとも認められない以上、契約関係の終了を制限すべき理由もない
よって、Y社がAら5名を解雇したとの組合の主張は認められない。

2 平成24年12月4日の第1回団体交渉において、組合と会社でAら5名に対する就労依頼がないことが「解雇」か否か、双方が自らの立場を主張しあい平行線であったことが認められる。
Y社は、その後の団体交渉を拒否したものの、組合が申請した当委員会のあっせんを受諾し、あっせんの場において2度、あっせん員を通じて話し合いが行われ、第1回の団体交渉と同じく、「解雇」か否かについて組合と会社がそれぞれの立場を主張し、結局話し合いは平行線のまま合意に至らず、あっせんが不調と終わった経緯がある。
このような一連の経緯からすれば、Y社は、当委員会のあっせんを受諾したことによって、事実上団体交渉を継続したといえること、また、2度のあっせんでも組合とY社の主張が合意に達する余地は全くなく不調に終わったことからすれば、交渉の行き詰まりに到達したと認められる
よって、Y社の対応は、団体交渉を拒否したとは認められず、また、誠実交渉義務に違反したともいえない。

交渉が平行線のまま行き詰まりに到達したか否かは評価の問題ですが、その判断は言うほど簡単ではありません。

会社側があまりにも早期に行き詰まったと判断し、交渉を打ち切ると、不当労働行為にあたる団交拒否と判断される可能性がありますので注意が必要です。

不当労働行為97(芳賀通運事件)

おはようございます。

今日は、組合員の転勤指示を時代とする団交と不誠実団交に関する命令を見てみましょう。

芳賀通運事件(中労委平成26年6月18日・労判1097号93頁)

【事案の概要】

平成21年8月、Y社は、海上コンテナ運転手であって東京都内の自宅から東京営業所に通勤し、貨物自動車運送事業関係法令により実施が義務付けられた乗務前後の点呼を受けていなかったXに対し、今後は八千代市に所在する八千代事業所で点呼を受けるよう指示した(転勤指示)。

その後、Xは、組合に加入し、組合はY社に対し、団交を申し入れた。

Y社と組合は、平成21年9月から平成22年1月までに5回の団交を開催し、組合は、Xの現職復帰を求めたのに対し、Y社は、法令に則り八千代事業所でXの点呼を行う必要性や東京営業所は法令に則った拠点として点呼を行える場所でない旨および東京営業所を法令に則った拠点とすることができない事情を述べ、Xの原職復帰要求に応じられないことを説明した。

平成22年1月29日、Y社は、組合に対し、これに以上正常な団交を行うことはできなくなった旨の通知を行い、組合が同月30日から同年3月12日までに申し入れた4回の団交に応じなかった。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 Y社は、本件団交においてXの原職復帰要求に応じられない理由を説明し、八千代事業所に転勤する場合の経済的負担の軽減策及び職種変更により東京営業所で勤務する方策を提案しており、これらの対応が不誠実であったとはいえない。

2 加えて、本件団交においては、組合員による会社を罵倒ないし恫喝するような発言や、組合員が口々に大声で発言して発言内容が聞き取れない状況ないし会社の発言が遮られる状況や、XがT社長に殴りかかろうとする場面などがあり、正常な交渉の実施が確保されていたとは言い難い状況で交渉が行われており、Y社は、そうした状況にあっても、Xを原職復帰させられない理由を繰り返し説明し、八千代事業所に転勤する場合の経済的負担の軽減策及び職種変更により東京営業所で勤務する方策を提案し、これらに応じるよう求めていたものである

3 よって、本件団交におけるY社の対応が労組法7条2号の不当労働行為に当たらないとした初審命令の判断は相当である。

上記命令のポイント2のような団交での様子をしっかり記録しておくことが大切です。

節度を欠く団体交渉が続く場合には、会社側は、団体交渉を打ち切ることも検討しましょう。

不当労働行為だと言われますが、あまりに酷い場合にはやむを得ないでしょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為96(医療法人社団静和会事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう!

今年もあと1か月ですね。 がんばりましょう!!

今日は、組合員の配置転換と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

医療法人社団静和会事件(中労委平成26年5月21日・労判1095号95頁)

【事案の概要】

Y社は、医療事故の再発防止のために業務体制を変更したことに伴い、検体検査業務に従事していた組合員Xを採血検査係に配置転換する旨の通知した(本件業務任命)。

Xは、組合結成時の執行委員長であり、その後は書記長を勤めるなどして、組合活動の中心的存在であった。

本件の主たる争点は、本件業務任命の不当労働行為該当性である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【判例のポイント】

1 ①Y社は医療上の安全、信頼の確保の観点から臨床検査科に係る業務改善について早期かつ抜本的な改革が求められていたこと、②これに対しY社が採った方策が不自然・不合理なものとは認められないこと、③従前からエコー検査の技能習得の指示があったが、X組合員は本件体制変更時には十分な技能を習得していなかったことが認められること、④同人は組合活動の中心的メンバーとして活動してきたが、本件業務任命当時、Y社と組合との間には本件を除き、とりたてて紛争は生じていなかったのであり、本件業務任命が同人の組合活動を嫌悪ないし抑止するために行われたと推認する事情は認められないこと等からすると、同任命後の同人の取扱い等にはいささか疑問は残らないでもないものの、本件業務任命は、医療上の安全、信頼の確保の見地から行われたものであり、X組合員が組合の組合員であること又は同人の組合活動の故に行われたものであるとみることは困難である。

客観的にみて、業務命令の内容に合理性が認められる場合には、不当労働行為とは認定されません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為95(南島原市事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、誠実交渉義務に関する命令を見てみましょう。

南島原市事件(長崎県労委平成26年7月22日・労判1095号94頁)

【事案の概要】

本件は、Y市が、組合からのゴミ収集業務の民間委託を議題とする団体交渉において、管理運営事項であり労働条件の変更はないと主張し、議論は平行線のまま進展しなかった。

このようなY市の対応が、労組法7条2号の不当労働行為に該当するかどうかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 確かに、管理運営事項については、地公労法第7条により団体交渉の対象とすることができないとされている。しかしながら、管理運営事項であると同時に労働条件にも関する事項があれば、その労働条件に関する事項は団体交渉の対象となると解されるところである。そうすると、本件民間委託自体が管理運営事項に当たるとしても、その実施に伴い影響を受ける労働条件については団体交渉の対象となるのであり、上記のとおり、本件においては労働条件の変更がないとは認められないのであるから、市の主張を採用することはできない。

2 ・・・以上のとおり、市の主張はいずれも認めることはできず、団体交渉において「労働条件の変更とは考えていない。管理運営事項であり、事前協議や団体交渉の対象ではない」という姿勢を頑なにとり続けた市の対応に合理的な理由を見出すことは困難である。
したがって、このような市の対応は、合意達成の可能性を模索する態度と評価することはできず、労組法7条2号の団交拒否(不誠実団交)に該当すると判断せざるを得ない。

上記判例のポイント1は理解しておきましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為94(詫間港運事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、団交拒否、不誠実団交に関する命令を見てみましょう。

詫間港運事件(香川県労委平成26年2月10日・労判1088号95頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、会社の従業員で組合に加入している組合員に対し、仕事の配分差別を行ったこと、会社の代表者であるY1代表取締役が、組合との団交を欠席したことなどが不当労働行為であるとして救済を申し立てた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、Y1社長の身体の安全が確保できない状態であり、警察の助言を得たことを理由として団体交渉に応じないことの正当性を主張する。・・・仮に、単独で出席すれば身体の危険を及ぼす可能性がある場合にはI顧問や代理人弁護士と共に団体交渉に臨めばよいはずであるから、Y社の主張には合理的な理由がなく、Y社は意図的に団体交渉を拒否したものと判断される

2 Y1社長が、真意に反して意図的に事業閉鎖を示唆する発言をすることにより、組合に不安を生じさせて団体交渉を有利に進めようとしたものと推測されるのであり、不誠実団交であったと判断される

3 Y社は、平成23年3月頃から大口取引先の不祥事の影響で業務量総体が相当程度減少していたことが窺われるものの、業務遂行に必要とされる職務上の資格や能力に関して組合員とその他の従業員との間で仕事の配分について差別をしなければならないような特段の理由が存在しなかった。
それにもかかわらず、実際には組合員とその他の従業員に対し会社が配分した業務量には大きな較差があり、その他の従業員に対しては原則的に休業の割り当てが行われず、また、休業が開始された後に組合を脱退した者に対しては、脱退後は仕事が配分されるなど明らかに組合員差別をする事態が生じており、他方では組合員は会社から休業を余儀なくさせられ賃金が減少するという不利益を受けた。
よって、以上のとおり、当委員会は、組合員に対する仕事の配分差別及びその結果として賃金差別があったものと認定し、労働組合法7条1号の不当労働行為に該当するものと判断する。

上記命令のポイント1及び2は、参考にしてください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為93(日本電気硝子ほか1社事件)

おはようございます。

今日は、団体交渉の当事者適格(使用者性)に関する命令を見てみましょう。

日本電気硝子ほか1社事件(中労委平成26年2月19日・労判1088号94頁)

【事案の概要】

Xらは、Y1社の工場で測定業務および記録業務に従事していた。

Y2社は、Y1社が100%出資する連結子会社であり、Y1社のA事業場において、ガラス製造業務の一部を請け負っている(Y1社及びY2社を合わせて「Y1社ら」という。)。

B社は、Y2社から測定業務等を請け負っている。

Xらは、B社と雇用関係にある。

Xらは、B社退職後、組合に加入し、組合は、Y1社らに対し、交渉事項を「これまでの中間搾取と違法な労働者供給事業に対する補償をすること」などとする団交を申し入れたが、Y1社らは、労組法上の団交義務がないとして、団交に応じなかった。

組合の救済申立てについて、初審滋賀県労委は、団交拒否が不当労働行為にあたるとして団交応諾を命じた。

会社らはこれを不服として本件再審査を申し立てた。

【労働委員会の判断】

Y1社らは労組法上の使用者に当たらない

【命令のポイント】

1 本件団交事項は、Y1社らがX組合員らを直接雇用すべきであったことを前提に、X組合員らがY1社らに直接雇用されていたならば得られたであろう会社らの従業員との賃金の差額相当額等の補償を求めるものと解される。そうすると、本件団交事項は、会社らがX組合員らの雇用主であること又は雇用主と同視し得る地位にあることを前提としたもので、就労の諸条件にとどまらず、X組合員らの雇用そのもの、すなわち、採用、配置、雇用の終了等の一連の雇用の管理に関する決定に関わるものということができる

2 これらX組合員らに係る採用、配置、雇用の終了等といった一連の雇用の管理に関する決定について、Y1社らがB社と同視できる程度に現実的かつ具体的な関与等をしたことを認めるに足りる証拠はない。

3 以上によれば、X組合員らの就労に関する諸条件についても、Y1社とY2社とはいずれも、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたものと認めることはできないから、Y1社らは、本件団交事項に関し、労組法7条の「使用者」に当たるものと認めることはできない。

このような団交事項の場合、必ずといっていいほど、労組法上の使用者性が問題となりますね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為92(田中酸素事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう。

さて、今日は、賞与等に関する団交における会社対応の不当労働行為に関する裁判例を見てみましょう。

田中酸素事件(東京地裁平成26年1月20日・労判1093号44頁)

【事案の概要】

Y社内の労働組合である補助参加人は、Y社が、平成21年10月22日付け労働協約に反し、団体交渉に決定権限を有していない者を出席させたこと、本件労働協約及び平成21年12月19日の団体交渉における合意事項に反し、賞与及び昇給に係る団体交渉の申入れ及び査定に使用した資料等の提示を行うことなく平成21年の冬季賞与、平成22年1月の昇給及び同年の夏季賞与を支給したこと並びに補助参加人による平成22年1月26日及び同年3月22日の団体交渉の申入れを拒否したこと等が不当労働行為に当たるとして、同年8月24日付けで山口県労働委員会に対し、①団体交渉におけるY社代表者の出席及び誠実交渉、➁賞与及び昇給の支給予定金額を決定次第、支給予定金額及び査定に使用した資料等を補助参加人に提示して団体交渉を申し入れ、賞与等の支給前に団体交渉を開催すること、③謝罪文書の交付等を求めて、Y社を被申立人とする救済の申立てをした。山口県労委は、上記➁について、平成21年の冬季賞与及び平成22年1月の昇給に係るY社の対応が不当労働行為に当たるとして、Y社に対し、今後の賞与又は昇給に関する団体交渉において本件労働協約を遵守し必要な資料を提示してY社の主張の根拠を具体的かつ合理的に説明し誠実に対応することを命じ、その余の申立てを棄却した。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 …以上のとおり、平成21年12月21日のY社の対応は、本件合意事項に反するものと認められ、加えて、補助参加人からY社に対し、平成21年の冬季賞与の支給金額の決定に使用した資料の提示が繰り返し求められたにもかかわらず、平成22年4月22日の団体交渉や同年6月10日の団体交渉に至っても当該資料が提示されていないことからすれば、平成21年の冬季賞与に係るY社の対応は、本件合意事項及び本件労働協約に基づくY社及び補助参加人間のルールに従って誠実に対応したものと認めることはできない

2 救済命令を発するためには、不当労働行為の存在が認定されることに加え、救済を受けることを正当とする利益又は救済を与えることを正当とする必要性、すなわち救済の利益が救済命令を発する時点で存することが必要であると解される。
この点について、Y社は、…今後の団体交渉の場の内外で同様の暴言や暴行が繰り返されるおそれがあると優に認められるから、本件初審命令のような救済命令を発すべき救済の利益は失われている旨主張するので、以下、検討する。
…Y社が、平成21年12月以降に行われた団体交渉等において、補助参加人からの再三の要求にもかかわらず、本件労働協約や本件合意事項に従った対応を必ずしもとっていなかったことなど、このような団体交渉におけるY社の対応が、補助参加人が団体交渉において上記のような態度をとったことの原因又は誘因の一つになっていた可能性も必ずしも否定することができないとも考えられるのであるし、団体交渉における補助参加人の上記の態度をもって直ちに、補助参加人が今後の団体交渉において、いかなる課題であるかにかかわらず、又はY社の対応にかかわらず、繰り返し同様の態度をとるであろうとも、これを前提とした上でY社が今後の補助参加人との団体交渉において何ら本件労働協約等に従った対応をとる必要がないとも認めることができないというべきである

ユニオンから資料の提示を求められた際は、(もちろん資料の種類・内容によりますが)前向きに検討しましょう。

過去の裁判例からすると、資料の不提示というのは、誠実交渉義務を尽くしていないと評価される場合が多いからです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為91(学校法人住吉清水学園事件)

おはようございます。

さて、今日は、分会長の通信費の削減、夏季一時金を前年度夏季一時金と同額支給したことと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

学校法人住吉清水学園事件(大阪府労委平成26年4月28日・労判1092号157頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、労働組合の組合員Xについて、①賃金の一部である通信費につき、組合が団交において協議を求めていたにもかかわらず、団交を経ないまま一方的に削減したこと、➁夏季一時金につき、組合の要求に対し回答のないまま、一方的に最高額の半額しか支給しなかったことなどが、不当労働行為であるとして申し立てられた事案である。

【労働委員会の判断】

いずれも不当労働行為とはいえない。

【命令のポイント】

Y社が、X分会長個人に対しては、通知書で、今後は業務上の連絡手段としてX分会長の携帯電話を使用しない以上通信費の不支給は当然のことと考える旨通知し、組合に対しては、団交で、今後は業務用の携帯電話を貸与する方向で検討中である旨述べ、個人の携帯電話を使用しなければ通信費はゼロである旨述べていることが認められ、また、平成23年4月1日以降、Y社が園児送迎のためスクールバスに乗務する教諭に対し携帯電話を貸与していることが認められる。このことからすると、Y社は、X分会長及び組合に対し、平成23年4月25日支給分以降の給与について、X分会長に通信費を支給しなくなる理由を事前に説明していたということができる。
以上のとおりであるから、Y社がX分会長に対し通信費を支給しなくなったことは、組合活動を行ったが故の不利益取扱いに当たるとはいえず、この点に係る申立ては棄却する。

2 平成23年度夏季一時金について、月額基本給の1.1か月分に相当する額の支給を受けた運転士がX分会長のほかに1名いたことが認められ、その運転士の勤続年数及び他の運転士の同一時金の前年度からの増減状況についての疎明はないが、同一時金の支給額が月額基本給の1.1か月分であった運転士には、組合員でない者も存在したとみることができる
以上のことからすると、Y社がX分会長の平成23年度夏季一時金を月額給与の1.1か月分としたことは、組合活動を行ったが故の不利益取扱いに当たるとはいえず、この点に係る申立ては棄却する。

上記命令のポイント2の視点は押さえておきましょう。

このような事実を主張し、疎明できれば、特に組合員だから不利益に取り扱ったわけではないことを裏付けることができます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。