Category Archives: 不当労働行為

不当労働行為110(ミトミ建材センターほか事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、労働組合の街宣活動等の事前差止め請求等が相当とされた裁判例を見てみましょう。

ミトミ建材センターほか事件(大阪高裁平成26年12月24日・労経速2235号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社らが、Y社ら二社の商品納入現場、請負工事現場、取引先又はY社代表者Aの自宅の周辺等における付近で、X組合の組合員又は関係者による街頭宣伝活動、ビラ配布又はシュプレヒコールによって、Y社ら二社は営業権を侵害され、名誉や社会的信用を毀損されたなどと主張氏、X組合に対し、営業権又は人格権に基づき、X組合の所属組合員又は第三者をして、各行為をさせることの差止めを求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償請求をする事案である。

なお、差止請求について、Y社らは、原審では、Y社ラ全員との関係で各行為の全て(ただし、街宣活動等をY社らを非難する内容のものに限定しない。)の差止めを求めたが、当審において、被控訴人ごとに差止めを求める行為を特定し、請求を減縮した。

原審が、差止請求については、対象をY社らを非難する内容のものに限定して認容し、損害賠償請求については、Y社ら二社の請求につき各330万円及び遅延損害金、Aの請求につき110万円及び遅延損害金の限度で認容したため、これを不服とするX組合が本件控訴をした。

【裁判所の判断】

街宣活動は、Y社ら二社のいずれとの関係においても正当な組合活動であるとは認められない。

ビラ配布は、正当な組合活動である。

シュプレヒコールは正当な組合活動とは認められない。

【判例のポイント】

1 労働組合であるX組合が組合員のためにする組合活動については、それが使用者等の権利や法律上の保護される利益を侵害するものであっても、その目的、必要性、態様、使用者に与える影響その他の事情を総合考慮し、社会通念上相当と認められる正当な範囲内のものである限り、違法性を欠くというべきである。そして、この場合、その行為が使用者等の社会的評価を低下させる内容の表現行為であるときには、当該表現行為において摘示され、又はその前提とされた事実が真実であるか、真実と信じたことにつき相当の理由(真実相当性)があるか否かも、重要な要素になるものと解される

2 労働組合の組合活動であっても、組合員の使用者ではなく、殊更にその関連会社や取引先等の第三者を標的としてその権利や法律上保護される利益を侵害するものは、原則として社会通念上相当と認められる正当な範囲内の組合活動とはいえず、違法性が阻却されることはないというべきである。

3 労使関係の問題は基本的には労使関係の場(領域)で解決されるべきであり、労働組合の組合活動であっても、使用者の経営者等の私宅やその周辺等の私生活の領域に立ち入り、その平穏を害する行為は、原則として社会通念上相当と認められる正当な範囲内の組合活動とはいえず、違法性が阻却されることはないというべきである。
X組合によるシュプレヒコールは、Aの自宅から約240mという相当程度離れた距離で行われており、その内容も攻撃的・扇情的であったり、侮辱的であったりするものではないものの、横断幕の記載等に照らし、その目的は、別件地位確認等請求訴訟においてX組合組合員ら敗訴の控訴審判決が言い渡されたことを受けて、Y社やBに対して嫌がらせを行い、その社会的評価を低下させること自体にあったものともうかがわれ、少なくとも、元日の朝という特に生活の平穏を尊重すべき日時においこれを行うべき必要性は認められない。
これらを総合考慮すると、正当な範囲内の組合活動であるとは認められず、その違法性は阻却されないというべきであって、他にこの判断を覆すに足りる証拠はない。

労働組合の街宣活動に関する裁判所の考え方を参考にしてください。

なお、同事案の仮処分決定についてはこちらをご覧下さい。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為109(JR東日本大宮支社・常務発言)事件

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合活動批判にかかる常務発言の不当労働行為性に関する裁判例を見てみましょう。

JR東日本大宮支社・常務発言事件(東京高裁平成26年9月25日・労判1105号5頁)

【事案の概要】

本件は、東京都労働委員会が、Xの不当労働行為の申立て(A常務が、宇都宮運転所及び大宮信通センターで行われた社内行事(本件安全キャラバン)の冒頭挨拶において、不当労働行為に当たる発言(本件発言)をしたとして、その救済を求めるもの)を棄却し(初審命令)、中央労働委員会が、Xの再審査申立てを棄却(本件命令)ことから、Xが、国に対し、本件命令の取消しを求めた事案である。

原判決がXの請求を棄却したので、Xがこれを不服として控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 本件署名活動の対象となった浦和電車区事件は、列車の安全運行の確保を担うY社にとって、再発防止に取り組むべき重要な課題といえるから、A常務が本件安全キャラバンの冒頭挨拶において、同事件に言及することは相当である。また、本件発言当時、Y社は、本件組合員らが1審の東京地方裁判所で認定された強要行為をし、その結果、職場秩序を著しく乱し、会社の信用を著しく失墜せしめたとして、懲戒解雇しており、A常務が、本件安全キャラバンの機会を捉えて、本件組合員らを擁護することが、会社外部の者からどのように見られるかという視点を交えながら、参加者に対し、本件組合員らに執った措置への理解を求め、その判断の正当性を説明することも許されると解される

2 たしかに、その際、A乗務が本件発言において用いた「覚悟」や、「今日はそれぐらいに留めておきますけどね」との表現は、適切なものであったとはいいがたいが、①A常務が、本件発言前に、「あとは社員一人ひとりの意思表示だから、会社がどうのこうの言う立場でない。」旨前置きし、本件発言後、会社も改めるべきは改めていくつもりであり、意見を聞かせてもらいたい旨付言して挨拶を締めくくったこと、②本件発言は、A常務の挨拶の一部にすぎず、特に強調され、繰り返されたものでなく、組合員のみならず参加者全員を対象として行われたものであること、③本件発言後、Y社は、本件署名活動に会社として関与する考えはないことを繰り返し表明し、本件発言に先立つ秋田支社長の発言を巡る一件でも、文書で、Xが行う本件署名活動に会社として介入するつもりはない旨回答していることなどを総合すると、本件発言が、Xの組織や運営等に対する支配介入に当たるということはできない

役職に就いている方の発言内容如何によっては、それだけで不当労働行為になってしまうこともあります。

十分ご注意ください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為108(V社事件)

おはようございます。

今日は、団体交渉の当事者適格に関する命令を見てみましょう。

V社事件(大阪府労委平成26年10月3日・労判1104号91頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が業務上密接な関係にある申立外A社の従業員であった組合員Bの解雇問題を議題とする団交に応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 A社とY社は、業務上、密接な関係にあり、Y社がA社に一定の影響力を及ぼし得るとしてもB組合員は、原則として、A社の役員及び従業員から業務上の指示を受けてA社の業務に従事しており、また、A社がB組合員の雇用の可否を含む労働条件を主体的に決定していたというのが相当であって、Y社が、B組合員の基本的な労働条件について、雇用主と同視できる程度に具体的かつ直接的な影響力ないし支配力を及ぼし得る地位にあったとまではいうことはできない
したがって、Y社は、B組合員の労働組合法上の使用者には当たらず、本件申立ては、その余のことを判断するまでもなく、棄却する。

労組法上の使用者性が争点となっていますが、否定されました。

「雇用主と同視できる程度に具体的かつ直接的な影響力ないし支配力を及ぼし得る地位」を認めてもらうには高いハードルを越えなければなりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為107(学校法人明泉学園(S高校・クラス担任外し)事件)

おはようございます。

今日は、クラス担任外しと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

学校法人明泉学園(S高校・クラス担任外し)事件(中労委平成26年12月3日・労判1104号90頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、授業時間中の生徒指導において生徒とトラブルになったことを理由に組合員Xをクラス担任から外したこと及び生徒にクラス担任変更のお知らせを配布したことが不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 本件トラブルが発生した当時、Y社は、組合から提起された各訴訟で敗訴し、多額の金員の支払を余儀なくされていた上、組合が新たに提起した第3次賃金訴訟や立ち番訴訟への対応に当たらなければならない状況であった。さらに、裁判所から、Y社は組合を差別している旨指摘されたり、労働委員会命令の不履行があるとして過料の制裁を受けるに至っていた上、組合との団体交渉においては、Xの専任教諭化や差額賃金の支払等を繰り返し要求されていた。このような状況であったことからすれば、Y社は、対立的な組合の存在を嫌悪していたと考えられるところであり、組合によるXの専任教諭化要求について、これを認める余地がないとの態度を示していたのも、こうした嫌悪感の表れの一端であったとうかがわれる

2 以上からすれば、Y社が、性急かつ不相当な方法で本件クラス担任外しを決定し、Xを殊更不利益に取り扱ったのは、本件トラブルの責任は全てX個人にあったことにして、組合の組合員であるXをあえてクラス担任から外すことにより、Y社の責任を追及しようとする組合活動を牽制するとともに、Xの専任教諭化等の要求を続けていた当時の組合の活動や組織に打撃を与えようと考えたからであったと認めるのが相当である。
したがって、本件クラス担任外しは、Xが、組合の組合員であることを理由として行われた不利益取扱いであり、労組法7条1号の不当労働行為に当たる。

使用者と組合との間で激しく対立しているのが読み取れます。

学校自体の運営に支障が出て、生徒に対して影響が出なければいいですが。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為106(K病院経営者(違法仮処分申立損害賠償)事件

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、ストライキ差止め請求者に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

K病院経営者(違法仮処分申立損害賠償)事件(津地裁平成26年2月28日・労判1103号89頁)

【事案の概要】

本件は、Aの経営する病院の労働者で構成されるX1組合およびその上部組織であるX2組合が、Aによる違法な仮処分申立てに基づきXらのストライキの禁止を命ずる仮処分決定が発令されたとして、Aに対し、不法行為に基づき、Xら各自につき損害金550万円およびこれに対する遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

AはXらに対し、各165万円(無形的損害150万円+弁護士費用15万円)+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 仮処分決定の被保全権利が当初から存在しない場合に、仮処分申立人が同決定を得てこれを執行したことに故意又は過失があったときは、申立人は、民法709条により、相手方がその執行によって受けた損害を賠償する義務を負担すべきものであり(最高裁平成2年1月22日判決)、一般に、仮処分決定が異議もしくは上訴手続において取り消され、あるいは本案訴訟において原告敗訴の判決が言い渡され、その判決が確定した場合には、他に特段の事情のないかぎり、申立人において過失があったものと推認するのが相当である(最高裁平成43年12月24日判決)。

2 そして、本件訴訟のような仮処分申立てが不法行為に該当するとして提起された損害賠償訴訟において、仮処分申立てに係る被保全権利が当初から存在しないことが明らかになった場合も、最終的に当該損害賠償訴訟の判決の確定とともに被保全権利が存在しないという判断が確定するのであるから、上記の「仮処分決定が異議もしくは上訴手続において取り消され、あるいは本案訴訟において原告敗訴の判決が言い渡され、その判決が確定した場合」と別異に扱う合理的な理由があるとはいえないし、本件のように、仮処分決定の申立人が仮処分申立てを取り下げて本案訴訟も提起しない場合には、仮処分の相手方において、異議手続あるいは本案訴訟において被保全権利を争う機会が与えられないのであるから、かかる事情も考慮すれば仮処分申立てが不法行為に該当するとして提起された損害賠償訴訟において、仮処分申立てに係る被保全権利が当初から存在しないことが明らかになった場合にも、特段の事情のない限り、申立人の過失が推認されると解するのが相当である。

3 Xらは、一体となって、Aとの間で、本件増額支給の解明を求めて団体交渉を重ねてきたにもかかわらず、Aが本件増額支給を否定する回答を続けて団体交渉によっては事態が進展しない状況となったため、本件ストライキを実施することにしたものであるが、Aの本件仮処分申立てにより本件ストライキを途中で中止させられ、組合員の労働条件の改善のための重要な手段である争議権を封じられたものであるから、これにより組合員等のXらに対する信用、社会的評価が低下するなどの無形的な損害を受けたものというべきであり、本件増額支給問題についてのAの対応の不誠実さ、本件ストライキの正当性、組合にとっての争議権の重要性などの諸般の事情を総合考慮すると、Xらが受けた無形的な損害の額は各150万円とするのが相当である。

仮処分を申し立てる際は、本件のような流れになる可能性があることを念頭に置く必要があります。

注意しましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為105(ヤマキ事件)

おはようございます。

今日は、組合支部長に対する配転や誠実交渉義務に関する命令を見てみましょう。

ヤマキ事件(滋賀県労委平成26年11月5日・労判1102号95頁)

【事案の概要】

Y社は、リフォーム部門の拡充を目的として組合の支部長を一般営業業務からリフォーム専従に配転した。

また、Y社は、団交において時間外労働手当は営業手当に含まれていると主張したが、主張の根拠となる資料の提示や内容の説明を十分に行わなかった。

これらのY社の行為が不当労働行為に該当するかが争われた。

【労働委員会の判断】

配転は不当労働行為にあたらない

団交における対応は不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 ・・・リフォーム部門強化の措置として最も適任と判断したA支部長を同部門に専従として配置転換させ、新たに販売促進の強化対象としたリピーター・OB顧客のフォローに主として従事させるとしたことには、新たな経営戦略を遂行するための措置として一定の合理的理由があるといえる。

2 たしかに、Y社においてはこれまで配置転換の例がなかったにもかかわらず、A支部長に初めて配置転換が行われたこと、それも、本件配置転換は、支部が結成されて団体交渉が行われ、給与体系等に関して対立が解消しきれていない状況下で行われた措置であること、・・・等からは、本件配置転換がA支部長の組合活動等の故に行われたと疑えなくもない。しかしながら、前記・・・でみた合理的理由の存在を考慮すると、これらのみをもってA支部長の組合活動等が本件は一点間の主たる理由であると断じることには、なお不十分である。

3 ・・・制度改定前の「営業手当」はいわゆる報奨的性格を有する手当であったことから、改定後の「営業手当」が25時間の時間外手当を固定額で含む趣旨の手当であるならば、その趣旨を含めた丁寧な説明が必要であると考えられるが、第1回審問でのY社社長の証言によれば、従業員に対する個別の説明はきわめて短時間(5分程度)であったこと等、Y社が主張する説明内容には不十分と思われる点や疑問が残る点があるにもかかわらず、交渉時には営業手当の算定方法等について十分な説明がされず、あるいはそれまでと同様の説明を繰り返すにとどまっている
以上から、・・・「営業手当」と25時間分の時間外手当の関係については、その根拠資料および説明内容の不十分さ等において不誠実な対応であったことが認められる。

配転命令については、一定の合理的理由が認められたため、不当労働行為とはなりませんでしたが、上記命令のポイント2からすると、反対の結論になったとしてもおかしくなかったと思います。

また、上記命令のポイント3の態様では、不誠実団交になることはしかたありません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為104(小城新生興業社事件)

おはようございます。

今日は、賃上げの団交において回答の根拠となる売上高および人件費を含めた経費の内訳を提示しない会社の対応と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

小城新生興業社事件(佐賀県労委平成26年10月20日・労判1101号171頁)

【事案の概要】

本件は、X組合が、賃金引上げ要求事項を議題とする団交において、Y社が、貸借対照表や損益計算書、もしくはそれに類似する資料の開示を拒否したことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

将来の労使関係安定を考慮して誠実な団交の応諾を命ずるに当たり条件を付した

【命令のポイント】

1 Y社は回答について具体的根拠を示した説明をしておらず、Y社が提示した資料からは会社の経費に占める人件費の割合やその内容が全く読み取れないのであるから、このような状況の中で、組合が自己の要求額や会社回答の妥当性を判断するために会社の財務資料の提示を求めたことには、一定の理由があるというべきである。したがって、Y社は、組合との交渉に必要な範囲内において、賃上げ額の説明に必要な具体的数値、例えば売上高や人件費を示すべきであったといえる。

2 ただし、組合発行の機関紙の表現や団交の経過を見ると、組合と会社間の相互不信は根強く、正常な労使関係が構築できない現状を鑑みると同時に、労使関係の将来における安定のためという救済命令の目的を踏まえ、特に条件を付すものである。

3 なお、組合は、貸借対照表や損益計算書、もしくはそれに類似する資料を求めているが、主文の範囲の救済(当事者間で提示方法等について協議し、合意することを条件とする。)を命令することによって、救済の実をあげうるものと判断する。

救済命令に条件を付した例として参考になります。

会社として、財務資料の提示を躊躇することはよくあることです。

もっとも、団体交渉の際に、必要な資料の提示を拒むと、不誠実団交とされますので、注意しましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為103(リコー(出向)事件)

おはようございます。

今日は、代理人弁護士を交渉担当者とする団交でなければ応じられないとする会社の対応と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

リコー(出向)事件(中労委平成26年10月15日・労判1101号173頁)

【事案の概要】

本件は、X組合が、平成25年、Y社に対し、当時会社からB社へ出向していたA組合員の復帰等を交渉事項とする団交を申し入れたところ、Y社がこれを無視し、回答しなかったことは不当労働行為に該当する旨主張し、大阪府労委に対し救済を申し立てた事案である。

【労働委員会の判断】

代理人弁護士を交渉担当者とする団交でなければ応じられないとした会社の対応は不当労働行為には該当しない

【命令のポイント】

1 代理人による再三にわたる説得にもかかわらず、4.18団交後も、代理人を団交における窓口及び交渉担当者として認めないという従前と同様の主張に固執し、これを譲る姿勢を全くみせない組合の態度に照らせば、本件団交申入れ当時、このまま交渉担当者の問題について解決せずに組合との間で団交を行っても、4.18団交と同様、組合が弁護士を会社側交渉担当者として認めないという自己の見解に固執し、交渉事項について実質的な交渉をすることができない可能性が高かったということができる。

2 代理人による5.10回答は、こうした状況の下で行われたものであり、その回答内容も考慮すると、その趣旨は、弁護士が交渉担当者として出席することを認めないという組合の主張には応じられないとしつつも、4.18団交と同様の事態が生ずるのを回避し、正常な団交を行うべく、本件団交申入れを応諾する前提として、本来労使間で合意の上取り決めるべき団交ルールの一つである交渉担当者の問題についてあっせん手続において話し合い、交渉担当者の問題が解決した後に団交を行うことを提案したものと解するのが相当であり、これをもって団交を拒否したものと認めることはできない

3 したがって、本件団交申入れに対するY社の対応は、正当な理由のない団交拒否であるとは認められず、労組法7条2号の不当労働行為には該当しない。

団体交渉の場に弁護士が代理人として参加することはよくあることです。

代理人弁護士が交渉担当者となることを組合が拒否した場合には、是非、この事案を参考にしてください。

不当労働行為102(ジェイウェーブほか1社事件)

おはようございます。

今日は、就労拒否等と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

ジェイウェーブほか1社事件(大阪府平成26年9月29日・労判1099号92頁)

【事案の概要】

本件は、①Y社が、組合員Cの就労復帰を認めなかったこと、②Y社及びA社が、組合員Bに対して、組合加入後、就労日数を減少させたこと、③Y社が、組合加入後、Bに専属車両を割り当てなくなったことなどが、それぞれ不当労働行為であると申し立てられた事案である。

【労働委員会の判断】

①A社は組合員の労組法上の使用者といえないので、A社に対する救済申立は棄却

②体調不良により休業したCの就労復帰を認めなかったY社の対応は不当労働行為にあたらない

③組合加入に加入したBの就労日数を減少させたことは不当労働行為にあたる

④専属のミキサー車を割り当てられていたBに、組合加入後専属車両を割り当てなくなったことは不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】(上記①及び④のみピックアップ)

1 A社代表者が、両組合員の基本的な労働条件について雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にあったとみることはできず、この点に関する組合の主張は認められない。
①Y社とA社は別個の法人格を持ち、本店所在地や代表者等が異なっており、近畿運輸局からの一般貨物運送事業の許可も別個に取得していること、②Y社a営業所とA社車庫は同一敷地内にあるが、それぞれの駐車場所は区別されており、また、それぞれのミキサー車も外形的にもはっきり別個のものと区別される状態であったこと、③当該敷地の賃貸借契約も別個に締結されていること、が認められ、それぞれが独立した法人として活動しているとみることができる
以上のとおりであるので、A社は、C組合員及びB組合員の労組法上の使用者であるとはいえず、A社に係る申立ては、その余について判断するまでもなく、これを棄却する

2 平成24年2月、3月及び6月においても、B組合員の乗務する車両は変動しているうえ、①Y社がB組合員に車番5の車両を割り当てなくなったのには、塗装のやり直しをするためという理由があったこと、②車番5の車両を、その後、同組合員に割り当てなかったのは同組合員がメンテナンスを怠っていたことが一因であると陳述されていること、③Y社においては、1台の車両を専属として決められている運転手はほとんどいなかったこと、が認められ、これらのことからすれば、Y社が同年8月から10月半ばまでの2か月余りの間、B組合員を特定の車両に割り当てなかったことには一定の理由があるといえ、他の運転手と比べて、B組合員が特別不利益に扱われているとまで認めることはできない
したがって、この点に係る組合の主張は採用できず、組合の申立ては棄却する。

上記命令のポイント1は、労組法上の使用者性に関する認定をしています。

組合員に対する対応が不当労働行為にはあたらないというためには、非組合員との比較をした際、とりたてて組合員ということを理由として不利益な取扱いをしているわけではないことを丁寧に主張する必要があります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為101(ZINZAN事件)

おはようございます。

今日は、離職した組合員に対する解雇予告手当および未払時間外労働賃金の支払を議題とする団交に応じないことと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

ZINZAN事件(岡山県労委平成26年9月25日・労判1099号93頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が経営する飲食店で働いていたX組合の組合員Aの解雇予告手当および未払残業代を議題とする団交に一度は応じたものの、その後、平成25年10月3日および同月10日に組合が申し入れた団交にY社が応じなかったことが、不当労働行為に当たるとして救済が申し立てられた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、解雇予告手当について、A及びX組合に十分な説明を行っておらず、離職に際して未清算の事項が存在するので、本件当事者間で協議する必要がある
以上のことから、Y社がA組合員の合意退職等を理由に解雇予告手当の支払いを議題とする団体交渉に応じないことには理由がない。

2 ・・・このように、Y社は、A組合員の時間外労働の実態を正確に把握していたとはいえない。また、X組合はY社に対し、再三にわたりA組合員の勤務実態を把握し、時間外労働の有無を明らかにするため、A組合員に関するタイムカード、A組合員の勤務した店舗の営業日報、会社の就業規則等の資料の提供を求めたにもかかわらず、Y社はタイムカードの一部を提示したのみで、団交でその他の資料をX組合に提示していないことが認められる。また、A組合員が休憩時間も含めて最大で14時間就労を繰り返していた際にも、Y社は職務懈怠等を理由に時間外労働は生じていない旨を主張するが、具体的な職務懈怠の説明をしていないことが認められる
以上に述べたY社の対応は、交渉の都度、主張が変遷するなどX組合の理解と納得を目指した誠実な対応であったとはいえないから、説明を尽くしたとの主張は認容することはできず、団体交渉を拒否する正当理由とは認められない

3 前記判断のとおり、Y社が、A組合員に対する解雇予告手当及び未払い残業代に関する組合の本件団交申入れに応じないことは労組法7条2号に該当する不当労働行為である。

全体を通じて、使用者側の説明不足という評価をされています。

もちろん使用者として、正直なところ、組合に見せたくなく会社の資料もありますが、少なくとも就業規則に見せない理由はないと思いますが。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。