Category Archives: 不当労働行為

不当労働行為130(G社(休職期間満了)事件)

おはようございます。

今日は、休職期間満了を理由に労災認定を受けたC組合員を退職扱いとしたことが不当労働行為にした命令を見てみましょう。

G社(休職期間満了)事件(大阪府労委平成27年5月11日・労判1121号95頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、①組合員Cを退職扱いとしたことおよびCを被告として地位等不存在確認請求訴訟を提起したこと、②「休職期間満了・退職通知書」をCに直接送付したことなどが、それぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事案である。

【労働委員会の判断】

Cを退職扱いとしたことは不当労働行為にあたる。

その余は不当労働行為にあたらない。

【命令のポイント】

1 Y社は、平成25年10月17日までは、長時間労働及びパワハラの事実の有無やうつ病発症との因果関係の有無について労基署の判断を仰ぎ、労基署による労災認定がなされれば、それに従い、C組合員の休職を業務上傷病による休職と認める余地があるかのような言動をとっていながら、その後、休職期間内に恒常的な長時間労働と上司とのトラブルにより、うつ病を発症したとの労災認定がなされたにもかかわらず、そのことを知ってただちにC組合員に対して退職通知を送付しており、このような会社の扱いは、不自然な点があるといわざるを得ない
・・・以上のことを総合的に考えると、Y社は、C組合員を組合の組合員であるが故に退職扱いとしたと推認でき、このような会社の対応は、C組合員に対する不利益取扱い及び組合を弱体化させるための支配介入に当たるといわざるを得ない

2 確かに、訴訟の被告とされることは心理的又は経済的な負担になることは否定できないが、何人も民事事件において裁判所に訴えを提起する権利を否定されないものであるから(憲法32条参照)、会社が専務によるパワハラ行為の存否、C組合員の休職は業務外傷病による傷病か及びC組合員の退職の有効性等を明らかにするため、C組合員を被告として、本件訴訟を提起することも権利の行使として尊重されるべきである。したがって、Y社が本件訴訟を提起したことは、組合員であるが故に行われた不利益取扱いであるとともに、組合に対する支配介入である旨の組合の主張は採用できない。

労災認定されていますので、労基法の解雇制限が適用されますので、解雇や休職期間満了による退職処分はできません。

従業員が組合員である場合には、不当労働行為になりますので、ご注意ください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為129(ユアサ商事事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、組合員の継続雇用後の再雇用拒否等を議題とする団交申入れに応じなかったことと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

ユアサ商事事件(中労委平成27年6月17日・労判1121号93頁)

【事案の概要】

本件は、Xユニオンが、Y社に対し、A1組合員の継続雇用後の再雇用拒否等を議題として団交を申し入れたところ、Y社が、A1を再雇用を拒否した事実はないこと、5回にわたって団交に応じ、説明を尽くしてきたこと等を理由に本件団交申入れに応じなかったことが不当労働行為に当たるとして、東京都労委に救済申立てを行った事案である。

同労委は、申立てを棄却したので、本件再審査を申し立てた。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない。
→初審命令を維持

【命令のポイント】

1 組合は、5回の団体交渉を通じ一貫して、高年法の趣旨に関する組合の解釈、つまり、65歳までの雇用を確保することが原則であるとの主張を主要な根拠として、A1の契約更新を求めていた。高年法の解釈と運用については、会社は、第2回団体交渉において、65歳までの雇用を義務づけるものではないという見解を示し、以後その見解を変えることはなく、この点についても両者の考え方は平行線をたどっていた。当時、高年法については、65歳までの雇用確保を必ずしも義務づけるものではなく、高年法の趣旨に沿った実質的な運用を求めるというものであり、その旨は、組合も団体交渉で述べていた。したがって、A1の契約更新の可否を判断するに当たり、高年法の解釈と運用に関して、上記のように会社と組合との見解が相違したとしても、そのことをもって、会社の対応を不相当であると断じることはできない状況であった

2 こうした団体交渉の状況に鑑みれば、組合が、能力評価の不相当性や高年法の趣旨を踏まえてA1の契約更新を要求した点は、組合と会社の間で更に交渉を重ねても、それ以上進展する見込みがない段階に至っており、少なくとも第5回団体交渉の時点で、会社と組合の間の団体交渉は行き詰まりに達していたといわざるを得ない。

ここで注意すべきなのは、会社としては、団体交渉のあまりにも早期の段階で、「これ以上交渉しても平行線である」と判断してしまうことは避けるべきである、ということです。

平行線をたどっていると思われても、それでも一定の回数を重ねることには意味があると考え、団体交渉に応じるべきだと考えます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為128(日本IBM事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、予定されていた団交議題に組合員6名の解雇問題を追加するよう求める組合の申入れに応じなかったことが不当労働行為にあたるとされた命令を見てみましょう。

日本IBM事件(中労委平成27年6月17日・労判1119号93頁)

【事案の概要】

本件は、予定されていた団交議題に組合員6名の解雇問題を追加するよう求める組合の申入れに応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、9.21団体交渉において、組合による・・・要求書の趣旨説明や抗議に対して一応の対応をしているものの、その内容は、具体的な説明を行わないまま結論のみを述べるものであったり、抽象的かつ同一の内容は、具体的な説明を行わないまま結論のみを述べるものであったり、抽象的かつ同一の内容の説明を繰り返すものであったということができ、また、Aら6名が自主退職を選択するかどうかについて重要な要素である解雇理由や自主退職の場合の条件についても具体的に明らかにせず、A4ら6名に対する解雇予告通知問題については、そもそも9.21団体交渉における協議対象とはしないとの姿勢に固執していたのであるから、9.21団体交渉において同問題に関する実質的な協議を行うという組合の申入れの目的は達せられていないというべきである。

2 以上によれば、Y社は、組合の指定した9.21団体交渉において、A4ら6名に対する解雇予告通知問題を議題として実質的に協議すべき義務があったにもかかわらず、同問題について実質的な協議を行わず組合の申入れに応じなかったのであるから、このようなY社の対応は、労組法7条2号の不当労働行為に該当するというべきである。

使用者側がどこまで具体的に回答したらよいのかは、実際のところ、判断が難しい場合があります。

具体的に回答しても特段支障がない場合は問題ありませんが、そうでない場合には、どこまで回答すべきについて検討しなければなりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為127(ブリタニカ・ジャパン事件)

おはようございます。

今日は、申立外会社を解雇された組合員の解雇撤回等を議題とする団交に会社が応じなかったことが不当労働行為にあたらないとされた命令を見てみましょう。

ブリタニカ・ジャパン事件(中労委平成27年6月3日・労判1119号94頁)

【事案の概要】

本件は、申立外会社を解雇された組合員Aらの解雇撤回等を議題とする団交に会社が応じなかったことが不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない。

【命令のポイント】

1 Y社らは、事業目的や事業内容、代表取締役、本店所在地等を異にし、それぞれ別個独立に事業を行っていた別法人であり、直接の資本関係や取引関係はなかった上、従業員の採用・解雇や労働条件の決定、従業員に対する指揮命令等もそれぞれ独自に行っていたものであり、Y社が、N社の事業運営に関与していた事実も認められない
そうすると、組合が指摘する事実を考慮しても、Y社らが、実質的に同一性のある企業であると認めることはできない

2 団体交渉においてその解雇が主な議題となっていたA1組合員が従事していた英会話教室事業は、Y社に承継されておらず、Y社らの間で、N社とその従業員との間の契約関係を全体としてY社が承継する旨の合意もなされていないことなどからすれば、Y社とN社との間で、会社分割等救済命令を受けるべき地位を含めた法律関係を承継する効果をもつ合意あるいは手続がなされていないことは明らかである。

労組法上の使用者性が否定された事例です。

上記命令のポイント1のような事情を考えれば当然の結果です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為126(丙川商店事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、専属下請運転手である組合員の定期健康診断を議題とする団交に応じなかったことが不当労働行為にあたらないとされた命令を見てみましょう。

丙川商店事件(大阪府労委平成27年6月26日・労判1119号92頁)

【事案の概要】

本件は、X組合がY社に対し、組合員の健康診断を議題とする団交を申し入れたところ、Y社が団交応諾義務がないと考え団交に応じないとしたことが不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない。

【命令のポイント】

1 専属下請運転手は、契約上は会社の管理下にあり、会社から割り振られた業務を孫請けに出すことはできないとされていることが認められる。しかしながら、実際には、専属下請運転手の中に親族等の仕事を行う者や株式会社が認められるのであって、毎日業務を行う者もいれば、2、3日に1回程度業務を行う者もいて、年間総報酬額については約330万円から約970万円まで幅のあるとおり、専属下請運転手は、いつどの程度働くか働き方について自らの意思により決定することができるといえるのであって、また、使用するトラックのリース料等経費を負担し、報酬から社会保険料等の控除はなされておらず、自らが確定申告を行っているのであるから、専属下請運転手には、恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し、自らリスクを引き受けて事業を行う者としての一定の事業者性があるといえる。

2 ・・・以上を総合勘案すると、専属下請運転手であるA組合員は、会社との関係において、労働組合法上の「労働者」に当たるとまでいうことはできない

専属下請運転手の労組法上の労働者性が否定されています。

裁判所がどのように判断するか注目されます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為125(ロイヤル事件)

おはようございます。

今日は、組合員2名に対してマネージャー職を解き、配転したことが不当労働行為にあたるとされた命令を見てみましょう。

ロイヤル事件(中労委平成27年2月4日・労判1117号95頁)

【事案の概要】

本件は、理美容業務を営むY社が、組合員Xら2名に対して、マネージャー職を解き、カット、シャンプー、パーマおよびカラー等のフルサービスを行う店舗から、カットおよびシャンプーにサービスを限定した店舗へ配置転換したことが不当労働行為にあたるとして、組合が、大阪府労委に救済申立てを行った事案である。

初審は不当労働行為にあたると判断した。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 本件において、Xらは、男流散髪屋への配置転換を希望しておらず、むしろ希望に反することが明らかであるにもかかわらず、フルサービス店の店長(マネージャー)から、スタイリストとして男流散髪屋の一従業員へと配置転換されたのであるから、Xらが、本件は移転により、キャリア上、人事上の不利益や、これに伴う精神的な不利益を受けたことは明らかであるというべきである。

2 本件人事異動は合理的なものであったとは認められないこと、さらに、Y社が、組合に対し、絶対に許さないくらいの気迫をもって対決する姿勢を明らかにした上で、Xらが別件未払賃金請求訴訟を提起した僅か1か月後に、本件人事異動を内示するに及び、その際行われた団交においても、組合の街宣活動を理由に本件人事異動を行う旨を述べていたこと等を併せ考えれば、本件人事異動は、正にXらが組合の組合員であることの「故をもって」行われたものといわざるを得ない

3 X2は、既に退職しているが、X1については、現に会社に在職中であるところ、Y社が、同人や組合に対して本件復職通知を行い、27年1月1日付けで店長に就任させるとともに、初審で命じられた文書手交を履行する旨を伝えたのに対し、組合が、団交において、本件復職通知の撤回を求めたことなどから、上記各通知の内容はいずれも履行されていないのが現状である。
そうすると、組合が本件人事異動により被った団結権侵害の状況が解消されたとはいえないのであって、本件における組合の救済利益は、未だ失われていない。

4 本件人事異動は、不当労働行為として行われたものであるから、これをなかったものとし、原職又は原職相当職に復帰させるよう命じることとする。ただし、X2は既に会社を退職していることから、原職又は原職相当職への復帰を命じるのは、現に会社に在職中のX1のみとするのが相当である。

上記命令のポイント2の下線部の事情については、是非、反面教師にしてください。

組合には組合の、会社には会社の交渉のしかたがあります。

そのあたりをうまくやっていかないと、有利に交渉を運ぶことはできません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為124(ファミリーマート事件)

おはようございます。

今日は、フランチャイズ加盟者の労組法上の労働者性に関する命令を見てみましょう。

ファミリーマート事件(東京都労委平成27年3月17日・労判1117号94頁)

【事案の概要】

本件は、①フランチャイズ加盟者が労組法上の労働者にあたるか、②会社が団交に応じていないことは、正当な理由のない団交拒否に当たるか、が争われた事案である。

【労働委員会の判断】

フランチャイズ加盟者は労組法上の労働者である。
→団交拒否は不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 本件における加盟者は、「フランチャイズ契約」との形式ではあるものの、その実態においては、全ての加盟店の店長として会社に労務を提供し、労務の提供に対して会社から詳細な指示等を受けているところ、①会社の業務遂行に不可欠ないし枢要な労働力として会社の事業組織に組み入れられており、②会社が本件フランチャイズ契約の内容を一方的・定型的に決定しているということができ、③加盟店の得る金員は、労務の供給に対する対価又はそれに類する収入としての性格を有することから、報酬の労務対価性が認められ、④実態上、会社からの業務の依頼に対してこれに応ずべき関係にあり、⑤会社の指揮監督の下に労務を提供していると広い意味で解することができ、その労務の提供については一定の拘束を受けているということができる一方、⑥顕著な事業者性を認めることはできない
これらの諸事情を総合的に勘案すれば、本件における加盟者は、会社との関係において労組法上の労働者に当たると解するのが相当である。

2 本件における団体交渉申入れ事項は、「加盟者が再契約を希望する際に会社が可否を決定する具体的な判断基準について」という、組合員と会社との本件フランチャイズ契約の再契約についてであり、再契約の可否の基準は、労務供給者である組合員の生計の維持に直結する労務供給ないし就業機会の継続の可否に係るもので、組合員の労働条件ないし経済的地位に関する事項であり、かつ、会社が使用者としての立場で実質的に決定又は支配できるものであるから、義務的団体交渉事項に当たると解するのが相当でる。

3 したがって、・・・組合との団体交渉に応じていないことは、正当な理由のない団体交渉拒否に該当する。

以前から話題になっていたものですが、衝撃的な判断ですね。

FCの加盟者は、労組法上の労働者にあたると。

労組法上の労働者の概念は海のように広いのですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為123(本能寺文化会館事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、再雇用時の業務変更と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

本能寺文化会館事件(京都府労委平成27年3月3日・労判1115号92頁)

【事案の概要】

本件は、備品管理室長であった組合員Xに対し、定年退職後の継続雇用の業務としてパーキング管理を提示したことが不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない。

【命令のポイント】

1 組合らは、Xが本館及び西館から完全に独立した駐車場管理室での一人勤務となり、本館ロビーの通行も禁止され、他の従業員との接触を断たれたため、組合活動上の不利益を被っていると主張する。
確かに勤務時間中の他の従業員との接触の機会は減少したかもしれないが、接触の機会が絶たれたわけではなく、勤務時間外も含めれば、他の従業員との接触に大きな支障が生じているとはいいがたい。また、組合らからは、本件処分により、機関の会議や情報宣伝活動等具体的な組合活動について何らかの支障が生じたとの主張や立証はない
したがって、組合活動上の不利益取扱いであるとまでは認められない。

2 以上、検討したところによれば、本件処分は不利益取扱いに当たるとまではいえない。組合らは、本件処分はXの自負と誇りを傷つけるものであるとも主張しており、従来Xは継続して本館及び西館外に位置していることやX以外に継続雇用制度を適用された者が定年時と引き続き同じ業務に従事し同等の肩書を得ていることから、Xが、本件処分により自負と誇りを傷つけられたと感じたことがうかがえなくはない。しかしながら、単に本人の主観的な感情のみをもって不利益取扱いとはいいがたく、本件の審査に顕れた主張、立証をもってしては、本件処分に未だ客観的に労組法7条1号の不利益取扱いに当たると判断し得る不利益性があるということはできないので、本件処分は労組法7条1号の「解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること」に該当すると認めるには足りない。

定年退職後の継続雇用における業務内容に変更があった事案です。

不当労働行為として争われるのは、非組合員と組合員とで扱いが異なり、かつ、その違いに合理的理由が認められない場合です。

差別的な取扱いだと疑われないように気を付けましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為122(R社(雇止め)事件)

おはようございます。

今日は、有期雇用の組合員2名に対する雇止めと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

R社(雇止め)事件(大阪府労委平成27年4月17日・労判1115号91頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、Xらを契約期間満了をもって雇止めしたことが不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

なお、会社は、雇用契約更新の可否を、①契約期間満了時の業務量、②従事している業務の進捗状況、③有期契約従業員の能力、業務成績、勤務態度、④会社の経営状況を総合的に考慮して判断したものであると説明した文書を送付した。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない。

【命令のポイント】

1 ・・・これらのことからすると、両組合員が期間満了後の雇用を期待することについては、一定の合理性が認められ、有期雇用契約であるから期間満了に伴い当然に契約を終了するということはできず、従来の取扱いを変更して雇用契約を終了させてもやむを得ないと認められる特段の事情が必要である。

2 ・・・就業規則に会社の命令等に違反しないこと、また、業務上の指示及び計画を無視しないこととの規定があるにもかかわらず、X3組合員は、配車担当者から気に入らない車両や出勤時間を指示されるとこれを変更させ、希望どおりに休日が変更されないと変な時間の有休を取得する旨述べて有休を取得するとともに忙しいんで電話してくるなよ等と上司に対し粗暴な発言を行い、休み明けの早朝の出勤を指示されると半日有休を使うと言って話し合いの余地なく一方的に電話を切り、これについて同日分会長からの電話で出勤時間を午前5時に変更させ、休日明けは早朝出勤できないなどと言っているのであるから、同組合員は、会社の業務上の指示に従わず、会社の計画を無視しているといえ、配車が混乱するとの会社の主張は首肯できる

3 以上のことからすると、①X3組合員の勤務態度が著しく不良であり、改善の期待ができないと判断したことについて理由があるといえ、加えて、②彦根支店では、減車方針に沿ってパート・ドライバーを減員する必要があり、現に減員していったといえるのであるから、X3組合員について、雇用契約を終了させてもやむを得ないと認められる特段の事情が存するといえる。

4 以上を総合すると、本件雇止めは、両組合員の勤務態度と減車に伴うパート・ドライバー減員の必要性等を総合的に考慮してなされたといえるのであるから、従来の取扱いを変更して雇用契約を終了させてもやむを得ないと認められる特段の事情が存している上、手続面で不合理な点は認められず、また、組合員であるが故になされたと認めることはできないのであるから、労働組合法7条1号に該当する不当労働行為であるとはいえず、この点に係る組合の申立ては棄却する。

解雇や雇止めの合理的理由を認定してもらうためには、上記命令のポイント2のような事情をいかに立証するかにかかっています。

日頃から業務記録をとる習慣をつけることから始めることをおすすめします。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為121(三幸自動車事件)

おはようございます。今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、組合員の解雇を無効とする都労委救済命令の取消訴訟に関する裁判例を見てみましょう。

三幸自動車事件(東京地裁平成27年1月19日・労判1115号5頁)

【事案の概要】

Y社においてタクシー乗務員として稼働するAは、X組合に加入したことをY社に対して公然化した上で、団体交渉に出席し、ホームページに記事を掲載したり、ビラを配布したりして組合加入の呼びかけなどを行っていたところ、就業時間中に許可なく労働組合活動をしたこと、ホームページへの記事の掲載による会社の機密漏洩、虚偽の内容のビラ配布による名誉毀損及びY社役員に対する暴行を理由に、平成23年9月16日付けでY社を解雇された。

X組合は、本件解雇は、Y社が組合及びその活動を嫌悪し、反組合的言動を繰り返した上でAを不当に解雇することによりY社から組合を排除しようとした不当労働行為であるとして、東京都労働委員会に対し、①本件解雇を撤回し、Aを原職に復職させ、本件解雇の翌日から復職までの間の賃金相当額を支払うこと、②謝罪文を交付及び掲示することを求めて救済申立てをしたところ、平成25年7月2日、都労委は、本件解雇はAが組合員であること及び労働組合の正当な行為をしたことを理由とした不利益取扱いに該当するとともに、Aを排除することによりY社における組合の影響力を排除しようとした支配介入にも該当するとして、本件解雇の撤回、Aの原職への復職、本件解雇の翌日から原職復職までの間の賃金相当額の支払並びに本件解雇が不当労働行為と認定されたこと及び今後このような行為を繰り返さないよう留意することを記載した文書の組合への交付及びY社営業所内での10日間の掲示を命ずる命令を発した。

本件は、Y社が、本件命令を不服としてその取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件解雇は、前記のとおり組合及び組合活動等を嫌悪するY社が、Y社における唯一の組合員であるAに対して行ったものであり、前記のとおり、第2回団体交渉への出席や組合活動としてのホームページへの掲載行為及び組合ビラの作成・配布行為について解雇を相当するに足りる重大な非違性が認められないところ、平成23年4月30日のAの腹部と本部長の腹部との接触も、前記でみたとおりの程度・態様にとどまるものであったにもかかわらず、これをもってAによる暴行行為と認定した上で、上記の団体交渉への出席やホームページへの掲載及び組合活動と併せて解雇理由として本件解雇に及んでいることからすれば、本件解雇は、実質的には、AがY社における唯一の組合員であり、団体交渉等の組合活動を積極的に行っていたことを理由に行われたものと推認するのが相当である。

2 そうすると、本件解雇は、Aが労働組合の組合員であり、労働組合の正当な行為をしたことを理由にY社がAに対してした不利益な取扱いであると認めることができるから、労働組合法7条1号の不利益取扱いに該当するとともに、本件解雇によりY社の唯一の組合員であるAが解雇された結果、Y社が組合の関与を受けなくなる点で、同条3号の支配介入にも該当すると認めることができる。

解雇事由としては不十分という判断です。

特に会社としては組合敵視をしているわけでなくても、解雇に合理的理由が認められない場合には、その裏返しとして、不当労働行為と判断されてしまいます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。