Category Archives: 不当労働行為

不当労働行為309 組合からの団交申入れに対して、組合執行委員長の交渉権限・協定締結権原の有無に疑義がある等として団交拒否したことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合からの団交申入れに対して、組合執行委員長の交渉権限・協定締結権限の有無に疑義がある等として団交拒否したことの不当労働行為該当性について見ていきましょう。

医療法人社団雄仁会事件(東京都労委令和4年10月18日・労判1291号101頁)

【事案の概要】

本件は、組合からの団交申入れに対して、組合執行委員長の交渉権限・協定締結権限の有無に疑義がある等として団交拒否したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は専従者が労働者でないことを前提とする主張を行うものの労働組合の専従者の立場にあることをもって直ちに労働組合法第3条に定める労働者でないということはできないことなどを考慮すると、労働組合法上の労働者でない者が実質的に組合の中心的地位を占め、その主体をなしているとは認められない。
組合員全体についても、労働者でない者が組合員の多数を占めていると認めるに足りる具体的事実の疎明はなく、組合について、労働者が質量ともに組合の構成員の主体になっていないということはできない。

2 Y社は、団体交渉を拒否したのではなく、留保したにすぎないと主張するが、Y社は、組合の事務折衝終了直後に、別件確認訴訟の結論が確定するまでには相当の期間を要するとの認識の下、組合のこれまでの基本姿勢に変化がない限り、組合との団体交渉には応じないとの基本方針を決定し、この基本方針に基づきその後の組合からのAの解雇等に関する団体交渉の申入れに一貫して応じないと対応してきたのであり、このようなY社の対応は、団体交渉を拒否したものといわざるを得ない

上記命令のポイント2のような理由で団交を拒否(留保)すると、ほぼ間違いなく不当労働行為に判断されますのでご注意ください。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為308 組合員に対する業務委託契約の解除通知を協議事項とする団体交渉に応じなかったことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、組合員に対する業務委託契約の解除通知を協議事項とする団体交渉に応じなかったことの不当労働行為該当性について見ていきましょう。

セントラルメディエンス事件(大阪府労委令和5年1月13日・労判1291号98頁)

【事案の概要】

本件は、組合員に対する業務委託契約の解除通知を協議事項とする団体交渉に応じなかったことの不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、Aが労働組合法上の労働者に当たるか否かについては主張も立証もしていないが、労働基準法上の労働者に当たらない旨主張するので、念のため、AがY社との関係で労働組合法上の労働者に当たるかについて、労働組合法上の労働者性の基本的判断要素である①事業組織への組入れ、②契約内容の一方的・定型的決定、③報酬の労務対価性に即して検討する。
・・・以上のことを考え合わせると、Aは、労働組合法上の労働者に当たるとみるのが相当である。

2 一般に、団交において労使が協議を尽くした結果、議論が平行線をたどり、交渉が決裂して、再度交渉したとしても進展が見込めない状態に至った場合には、使用者が団交申入れを拒否しても、正当な理由のない団交拒否には当たらない。
この点、8.25団交におけるやり取りについては、本件団交申入れの協議事項について、議論の余地がなくなっていたと認めるに足りる事実の疎明はない。むしろ、その後も団交申入れの協議事項に関連するやり取りがなされていたことからすれば8.25団交が終了した時点において、本件団交申入れの協議事項について、交渉が決裂して、再度交渉したとしても進展が見込めない状態に至っていたとはいえない。

労基法上の労働者性と労組法上の労働者性の判断は微妙に異なりますので注意しましょう。

また、使用者側から上記命令のポイント2のような理由で団交を拒否する場合には、慎重に判断をする必要があります。多くの事案で不当労働行為と認定されています。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為307 金融機関における人事部附への配置転換の不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、金融機関における人事部附への配置転換の不当労働行為該当性について見ていきましょう。

あおぞら銀行事件(東京都労委令和5年1月24日・労判1291号95頁)

【事案の概要】

本件は、組合員Aに対する人事部附への配置転換が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 以上のとおり、Y社がAを人事部附に配属したことについての業務上の必要性は疑問であり、同人を人事部附に配属したことは不自然であるといわざるを得ない。そして、本件懲戒処分をめぐって労使が鋭く対立していた中で、Y社は、組合を軽視し、退職勧奨について組合が交渉を求めていたにもかかわらず、組合を通さずにAと直接話をしようとするなど組合との更なる交渉を忌避しようとしていたことが認められる。
また、本件懲戒処分に納得せず、Y社からの始末書提出の指示に素直に従わず、組合の力を得て団体交渉でY社を追及しようとするAをY社は疎ましく思い、同人をY社から退職させようとしていたことが認められる
そうすると、本件配置転換は、組合の存在を嫌悪していたY社が、組合員として自身の懲戒処分撤回等の活動を行っていたAを退職誘導して職場から排除し、ひいてはY社から排除することを企図して組合を弱体化させるために行ったものであったといわざるを得ない。
したがって、本件配置転換は、Aが組合員であること及び組合活動を行ったことを理由とする不利益取扱いに当たり、また、組合の運営に対する支配介入にも当たる。

気持ちは理解できますが、やはり上記事情からすると、不当労働行為と判断されてしまいます。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為306 使用者が「ユニオンとは何か-その実態と対応方法-」という資料を配布し読み上げた行為の不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、使用者が「ユニオンとは何か-その実態と対応方法-」という資料を配布し読み上げた行為の不当労働行為該当性に関する事案を見ていきましょう。

一般財団法人あんしん財団(資料配布)事件(東京都労委令和3年6月15日・労判1288号110頁)

【事案の概要】

本件は、使用者が「ユニオンとは何か-その実態と対応方法-」という資料を配布し読み上げた行為の不当労働行為該当性に関する事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 各支局長が本件資料を職員に配布し読み上げて説明した行為は、社会的にも財団にとっても好ましくない存在であるとの印象を与え、組合への敵対意識を醸成するものであり、また、組合員である職員に対しては、組合への不信感を抱かせ、組合活動への委縮効果を与えるものであるから、組合の組織運営に対する支配介入に該当する。

2 財団は、本件研修は、組合の違法不当な情宣活動に対抗するためにやむを得ないものであったと主張する。
しかし、組合の情宣活動に必ずしも適当とはいえない面があったとしても、それは、組合との交渉や組合への抗議、あるいは訴訟による法的手段等により解決を図るべきものであり、組合の情宣活動への対抗手段として支配介入行為が許されるものではないので、財団の主張は採用することができない。

財団側の気持ちは理解できなくはありませんが、労働組合法上のルールからしますと、上記結論自体には異論がないところかと思います。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為305 面談における支局長の発言が支配介入にあたるか(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、面談における支局長の発言が支配介入にあたるかが争われた事案を見ていきましょう。

一般財団法人あいんしん財団(解雇等)事件(東京都労委令和4年10月18日・労判1288号106頁)

【事案の概要】

本件は、面談における支局長の発言が支配介入にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

支配介入にあたる

【命令のポイント】

1 B支局長が、平成29年12月25日の面談において、Aに対して「早期退職って制度があるじゃん」、「辞めても裁判って続けられるじゃん」などと発言していることからすれば、この面談では、Aに退職の勧奨を行ったとみるのが相当である。
上記面談で、B支局長は、早期退職の募集とは無関係である係属中の訴訟を引き合いに出して、退職することを促している。当時、Aら7名の配転に係る訴訟が進行し、判決言渡し(平成30年2月26日)直前であったなど、労使が対立的な関係にあったといえる。
B支局長は、所属職員の管理監督に当たる立場であり、財団の利益代表者に近接する職制上の地位にあるところ、同人の発言は、上記のように損害賠償請求事件等をめぐる対立的な労使関係を踏まえたものであるから、使用者の意を体して行ったものといわざるを得ない。
そうすると、B支局長の発言は、財団の意を体して、組合員であるAを、早期退職募集の機会を利用して排除しようとしたものということができる。
よって、B支局長の上記発言は、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合員を排除することにより組合の弱体化を図る支配介入にも当たる。

組合との対立関係が生じているときに、組合員に対して直接退職勧奨をすると不当労働行為と評価される可能性が高いので注意しましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為304 コロナ禍を理由に対面での団交に応じなかったことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、コロナ禍を理由に対面での団交に応じなかったことの不当労働行為該当性について見ていきましょう。

エイ・アンド・エム事件(福岡県労委令和4年3月11日・労判1286号85頁)

【事案の概要】

本件は、コロナ禍を理由に対面での団交に応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 本件において、対面による団交を行うとした場合、通常施設には出入りしていない組合側のA1委員長および会社側代理人であるB9弁護士が団交の出席者に含まれることが想定される。
そして、組合が3年1月5日付けで団交申入れを行った時点の社会情勢をみれば、福岡県内においては新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する状況にあり、それを受けて、同月14日から翌月7日までの間、緊急事態宣言が発令される状況に至っていた。
このような中、Y社が、介護を必要とする多数の高齢者が入居する施設内における新型コロナウイルス感染症の感染リスクを低減させるため、外部の者の立入り自体を制限すべきと考えることは、社会通念上不当とはいえない
また、上記の状況にあって、Y社が、高齢者の介護等に携わる施設職員が対面による団交に出席することで、新型コロナウイルス感染症に感染するリスクを考慮し、対面による実施には応じられないとしたことについては、相応に理解できるところである。
加えて、Y社は文書により一定の回答を行っている
さらに、3年3月5日、組合が処遇改善加算の支給基準を明確にすること等について団交を申し入れたことに対しては、Y社は、同月16日、書面により回答するとともに、ウェブ会議方式等による団交の実施を申し入れている
上記の事情からすれば、Y社の対応は、正当な理由なく団交を拒んだとまではいえず、労組法7条2号の不当労働行為には該当しない。

理由付け及び結論に異論はないと思います。

このような状況下において、ウェブ会議方式による団体交渉を拒否する合理的理由はないものと思われます。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為303 会社が団体交渉を拒否したといえるかが争われた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社が団体交渉を拒否したといえるかが争われた事案について見ていきましょう。

ヨコヅカ事件(栃木県労委令和5年1月12日・労判1286号83頁)

【事案の概要】

本件は、会社が団体交渉を拒否したといえるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

肯定

【命令のポイント】

1 令和3年11月4日の回答時点においてY社がウェブ会議を含むリモートでの団体交渉を提案しているということはできず、また、Y社が電話による話合いを提案しているとしても、そこに労使双方の合意や特段の事情があったとはいえない。さらに、Y社は、組合から要求事項の根拠となる証拠が提出されなければ団体交渉に応じないという態度であり、組合からの団体交渉申入れを拒否したものといわざるを得ない

2 Y社は、団体交渉を拒否したとしてもそれには正当な理由があるとして、解雇に対する事実の認識が異なること、そもそも解雇ではないのだから、不当解雇に関する内容は義務的団交事項に当たらない旨を主張している。
しかし、「解雇問題」は義務的団交事項であるから、Y社のその主張は採用できない。また、「社会保険等の未加入問題」及び「時間外労働賃金等の未払い」については、団体交渉を拒否する正当な理由があることについての主張及び疎明をしていないことから、これらについても正当な理由があったとはいえない。

上記命令のポイント1、2における使用者側の主張は、いずれも団体交渉の基本的ルールからすれば、採用されないことは明らかです。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為302 弁護士事務所の人間を称する者に実質的に代理させて交渉に当たらせたことが不誠実団交にあたるとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、弁護士事務所の人間を称する者に実質的に代理させて交渉に当たらせたことが不誠実団交にあたるとされた事案を見ていきましょう。

辰巳事件(群馬県労委令和4年5月19日・労判1282号96頁)

【事案の概要】

本件は、会社が、弁護士事務所の人間を称する者に実質的に代理させて交渉に当たらせたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【判例のポイント】

1 会社がBにどのような権限を与えたかを明確に示さずに実質的に代理させて交渉に当たらせたこと及び予め要求書に記載された要求事項に回答できる者を出席させなかったことは、合意達成の可能性を模索する義務に反している
さらに、Bが、C社がAの無断欠勤を問題にしている等の組合の適切な判断を誤らせるおそれのある虚偽の主張を繰り返したことは、誠実な交渉態度であったとは評価し難い。
したがって、第3回団体交渉における会社の対応は、不誠実であったといえる。

2 第4回団体交渉においては、会社の代表であるDが出席しており、Bが出席していたとしてもDの権限は明確であるから、会社側の出席者に特段の問題はない。また、第4回団体交渉において、第3回団体交渉におけるBの虚偽の発言が組合の判断に影響を与えていたと評価すべき事実は存在しない。よって、第3回団体交渉が不誠実なものであっても、第4回団体交渉に問題性が継続しているとまではいえない

上記判例のポイント1は、実際に団体交渉に携わる身としては、俄かには信じがたいです。

弁護士に代理人として同席してもらうようにしましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為301 団体交渉における会社側の対応が不誠実団交に該当するとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、団体交渉における会社側の対応が不誠実団交に該当するとされた事案を見ていきましょう。

たくみ運輸事件(兵庫県労委令和4年9月6日・労判1280号101頁)

【事案の概要】

本件は、団体交渉における会社側の対応が不誠実団交に該当するかが争点となった事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 B1が査定根拠として説明した内容は、「収入とね。まあ売上げ。もう分かりやすく今回言うたったな、ETCの額こんだけ違いますよ。」など、客観性のない極めて曖昧なものであり、組合が考慮要素に対する計算式などの具体的な評価基準を質したことに対しても回答したことは認められず、会社は、支給基準に関し、何ら具体的な説明をしていないというほかはない

2 組合が改めて査定資料の提出を要求したことに対しても、会社は、個人情報を理由に応じておらず、自らの主張の論拠となる資料等を提示し、組合の要求及び主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に説明できていたとは認められない。
本件団体交渉の経緯に鑑みれば、会社は、組合に対し、本件一時金の算定に用いた相関表や計算過程が、記録・保存されていたならばその記録に基づき具体的に説明すべきであり、仮に、会社が、それらを記録・保存していなかったならば、可能な限りその内容を具体的に説明すべきであったというべきである。

3 会社の業績は一時金の支給原資に影響していると認められ、会社の業績が分かる資料を何ら示そうとしなかった会社の対応に理由があったとはいえない

4 本件一時金の交渉が継続しているにもかかわらず、会社が一方的に一時金を支給したことは、組合との団体交渉を軽視したものといわざるを得ず、不誠実な対応であったと判断する。

決算書類等の非開示の不当労働行為該当性が争点となる事案は少なくありません。

会社としてはできるだけ見せたくないと思う気持ちも理解できますが、不当労働行為と判断される可能性が高いのでご注意ください。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為300 取締役である組合員の労組法上の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、取締役である組合員の労組法上の労働者性について見ていきましょう。

マテロックス事件(大阪府労委令和3年5月7日・労判1275号142頁)

【事案の概要】

本件は、取締役であるD組合員が労組法3条の労働者に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

労組法3条の労働者に該当する。

【命令のポイント】

1 D組合員の業務内容は、従業員として入社してから取締役に選任された後まで、一貫して、他の従業員と同様、工場で製品加工という現場作業に従事していたこと、少なくとも担当業務の範囲内等において、取締役としての意思決定や指揮監督する行為があったとはいえず、そのほかにD組合員が会社でどのように指揮監督していたかについても具体的な疎明はないこと、担当する業務の遂行を細かく指示されていること、からすると、D組合員はその業務遂行に当たり、会社の岸監督の下に労務の提供を行っていたとみることもできる。
D組合員は、会社から、タイムカードの打刻と打刻理由説明書の作成や有給休暇消火記録の提出を求められていたことからすると、服務態様からみる限り、会社による一定の時間的拘束を受けていたといえる。
D組合員の報酬には、労務提供への対価の要素も含まれていたとみることができること、会社通知書から、D組合員は、会社から、労務を提供しなければ減給されることも想定されていたことを勘案すると、D組合員の報酬の一部には労務対価性があったとみることができる。
D組合員は、取締役会や役員会議に出席したこと、労使会議に会社側として参加したこと、会社設備等の導入に関与したこと等は認められるものの、役員として会社経営に参画していたとまでみることはできない。加えて、会社通知書が交付された時期には、D組合員の会社における影響力は著しく弱まり、会社の経営に関与していたとみることはできない。
以上のことを総合的に判断すると、解任に至る当時、D組合員は、取締役であっても、実質的には使用人としての地位にあったとみるのが相当であり、労組法3条の労働者に該当するというべきである。

2 D組合員が組合員であることを否定し、団交申入れに応じなかった会社の対応は、組合の運営に対する支配介入であり、労組法7条3号に該当する不当労働行為である。

労働者性については、労基法においても労組法においても、実態を見られるという点では共通しています。

本件では、取締役ではありましたが、実質的には労働者であると判断されました。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。