Category Archives: 不当労働行為

不当労働行為160 使用者が自ら示した条件に固辞し、それ以外では団交に応じないとしたことが不当労働行為とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、使用者が自ら示した条件に固辞し、それ以外では団交に応じないとしたことが不当労働行為とされた命令を見てみましょう。

国立大学法人東京学芸大学事件(東京都労委平成28年7月19日・労判1141号91頁)

【事案の概要】

本件は、使用者が自ら示した条件に固辞し、それ以外では団交に応じないとしたことが不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は日本語を話せない組合らが通訳者を手配すべきであると主張し、組合らはLLRで話すことのできないY社が通訳者を手配すべきであると主張するが、団体交渉で使用する言語を一義的に決めることができない本件にあっては、団体交渉で使用する言語を話すことのできない側が通訳者の手配に要する全ての負担を負うべきものということもできない。

2 以上の点に加えて、団体交渉のルールは労使の合意で決定するのが原則であることをも勘案すると、本件労使間においては、円滑な団体交渉を行うため、団体交渉における使用言語及び通訳者の手配に関するルールについて、労使双方に合意形成のための相応の努力を行うことが求められていたというべきである
したがって、組合らが上記合意の形成に向けた相応の努力を行っているにもかかわらず、Y社がそのような努力を行わず、団体交渉が円滑に行われる状況に至らなかった場合には、原則として、Y社は、正当な理由のない団体交渉拒否を行ったものと評価すべきである。

使用者側は、上記命令のポイント2を十分に理解しましょう。

ユニオンからの要求をなんでもかんでも拒否するだけが団交対策ではありません。

最低限の団交のルールを知り、柔軟に対応することが求められているのだと考えましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為159 複数の組合が存在する場合における使用者の中立保持義務(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合事務所不貸与と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

神戸ヤマト運輸事件(兵庫県労委平成28年8月18日・労判1141号90頁)

【事案の概要】

本件は、本社の新社屋移転に際し、G労組に組合事務所に貸与しながら、X労組に貸与しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 使用者は、労働組合に対して当然に組合事務所を貸与する義務を負うものではないが、同一会社内に複数の労働組合が併存している場合には、組合事務所の貸与という便宜供与においても、労働組合の自主性を損なわない限りにおいて、各労働組合を平等に取り扱うことが求められている。そして、使用者が一方の労働組合に対して組合事務所を貸与しておきながら、他方の労働組合に対して組合事務所を貸与しないことは、合理的理由のない限り、他方の労働組合の活動力を低下させ、その弱体化を図ろうとする意図を推認させるものである。

2 本件のように、併存する二つの労働組合が双方とも組合事務所の貸与を求めている状況下においては、会社は、双方の労働組合を平等に取り扱うべきところ、当初はいずれの組合にも組合事務所として貸与する部屋がないと回答しておきながら、その後、X組合に事前に説明することなく、G組合にのみ組合事務所を貸与するに至った経緯からすると、Y社が主張する、本社移転前から継続して組合事務所を貸与していたG労組に対して優先的に貸与したとの理由付けは説得力に乏しい。

上記命令のポイント1をよく理解しておく必要があります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為158 時間外労働に関する組合員差別と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、組合員の時間外労働について、和解協定を履行せず、団交における合意に反して、非組合員と差別したことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

Q社事件(兵庫県労委平成28年4月21日・労判1139号92頁)

【事案の概要】

本件は、組合員の時間外労働について、和解協定を履行せず、団交における合意に反して、非組合員と差別したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 ・・・この差からすれば、両人が公平に時間外労働を分担しているとは認め難く、会社は、時間外労働について、Xに対し、Aとは異なった取扱いをし、Xにはほとんど時間外労働を命じていないと言える。
なお、両人に共に時間外労働を命じる必要はない程度の業務量しかない日は、その業務が主に材料ヤードの業務の場合はXに時間外労働を命じてAを退勤させるべきであり、Xが従事する材料ヤードの業務をAに命じることは、平成26年12月4日の団体交渉での合意事項に明らかに反する行為であると言える。

2 時間外労働は、それを命じられないことそれ自体が不利益とは言えないし、時間外労働が命じられなかったために時間外割増賃金が支払われないことも直ちに不利益であるとは言えない。しかし、毎月、一定の量の時間外労働を恒常的に命じられ、時間外割増賃金が労働者の毎月の賃金の一定の部分を占めている場合において、時間外労働が命じられず、時間外割増賃金が支払われないことは、労働者にとって不利益と評価すべきである
Xについても、組合加入前、会社がほぼ毎日時間外労働を命じ、それに対する時間外割増賃金を毎月支払っていたものであるにもかかわらず、組合加入後、時間外労働を命じず、時間外割増賃金を支払わないのは、Xにとって不利益と評価すべきである。

団体交渉でユニオンと合意した事項を守らなければ、不当労働行為といわれても文句はいえません。

守れない事項について合意をしないことです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為157 組合員に対して時間外労働を命じなかったこと、運送業務を配車しなかったことが不当労働行為にあたるか(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合員に対して時間外労働を命じなかったこと、運送業務を配車しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案を見てみましょう。

大石運輸事件(埼玉県労委平成28年7月28日・労判1139号90頁)

【事案の概要】

本件は、組合員に対して時間外労働を命じなかったこと、運送業務を配車しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

時間外労働を命じなかったことは不当労働行為にあたらないが、運送業務を配車しなかったことは不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社には、組合嫌悪の情があったことが認められる。
しかしながら、Y社の対応にはいずれも合理性が認められる。本件残業差別以降における会社の対応をも考え合わせれば、本件残業差別は、X2が本件36協定は無効であるとして残業拒否をしたこと、Y社がX2に対し時間外労働を命じた場合に、X2が当該命令に従わないことにより生じる会社の営業上のリスクを回避すること、及び後でX2から労基署に対して労基法違反である旨申告されることによるトラブルを回避すること、のために行われたものとみるのが相当である。
以上のことからして、Y社が、X2に対し、平成27年5月11日以降、時間外労働を命じなかったことは、組合員であるが故になされたものとは認められず、労組法7条1号の不当労働行為であると判断することはできない。

2 Y社には組合嫌悪の情が認められる。
もっとも、本件配車差別が開始された平成27年5月25日から第4回団体交渉が開催された同年6月19日までの会社の対応には合理性が認められる。この間の会社の対応は、X2が本件36協定の無効を主張する中で、X2に対して配車をするべく就業時間の繰上げ又は繰下げの提案をしつつ、平成27年5月22日のように会社の指示をX2が拒否しないかどうかを確認できなかったために、会社の被るリスクを避けるために配車を見合わせていたものとするのが相当である。X2に対して配車をしなかったことが不当労働行為によるものと認めることはできない
しかしながら、第4回団体交渉において、労組は、Y社に対して、X2に午前8時から午後5時までに収まるような配車をすることを要求し、それに対して、Y社は「努力する」と回答している。Xは、午前8時から午後5時までの運送業務を拒否したこともなかったそれにもかかわらず、平成28年3月31日までX2に対して配車をしなかったことはすでにみたとおりである
会社が、本件配車拒否を行った理由として述べる午前8時から午後5時までの運送業務はまれであったためにX2に対して配車できなかったことには合理性が認められない。
・・・以上のとおりであるから、Y社がX2に対し、平成27年6月23日から平成28年3月31日まで、運送業務を命じなかったことは、労組法7条1号の不当労働行為に該当する。

組合員と非組合員で業務量に差があり、それが給与面に影響する場合には、注意が必要です。

業務量の差について合理的な理由を説明できなければ不当労働行為に該当する可能性が出てきます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為156(東急バス(残業割当・第2・審査開始)事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、バス乗務員に対し、他の従業員と差別して残業扱いとなる乗務(増務)を割り当てなかったことが不当労働行為にあたるとされた事案を見てみましょう。

東急バス(残業割当・第2・審査開始)事件(中労委平成28年3月16日・労判1137号92頁)

【事案の概要】

本件は、バス乗務員Xに対し、他の従業員と差別して残業扱いとなる乗務(増務)を割り当てなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

なお、初審(東京都労委平成20年9月2日命令)は、申立てを一部認容。

Y社が再審査を申し立て、中労委(平成21年12月2日命令)は、初審命令を取り消し、Xの申立てを棄却する命令を発した。

Xは、申立てを棄却する命令の取消しを求めて行政訴訟を提起したところ、東京地裁(平成24年1月27日判決)は、中労委命令を取り消し、同判決が確定(東京高裁平成24年10月3日判決(控訴棄却)、最高裁平成26年12月16日決定(上告不受理))したことから、中央委は本件審査を再開した。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 不当労働行為救済申立事件に係る命令の取消訴訟において原命令を取り消す判決が確定し、労働委員会が当該事件の審査を再開して命令を出す際は、上記判決の拘束力が及び、当然ながら原命令に関する判断に抵触する認定判断をすることはできない(行政事件訴訟法第33条第1項・第2項、労働委員会規則第48条・第56条第1項)。
したがって、本件審査再開事件において、Xに係る差別的な増務割当てが不当労働行為に当たるとした東京地裁判決の判断は最終的なものであるから、以後、当事者がこの判断に抵触する認定判断を当委員会に求めることは許されないというべきである。

2 また、本件Xの救済申立てについては、労働委員会における審査及び取消訴訟における審理の一連の手続を通じて、本件当事者に十分な主張立証の機会が与えられ、主張立証が尽くされたうえで判決が確定している以上、Y社が、その後の手続において、上記取消判決の認定判断を蒸し返すことは、信義則に反するというべきである。

そういうことです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為155(沖縄セメント工業事件)

おはようございます。

今日は、労組の申し入れた人事考課制度等を議題とする団交に応じなかったことが不当労働行為にあたるとされた事案を見てみましょう。

沖縄セメント工業事件(中労委平成28年3月2日・労判1137号93頁)

【事案の概要】

本件は、労組の申し入れた人事考課制度等を議題とする団交に応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 人事考課については、会社の人事考課規程によれば、一時金だけではなく昇給及び昇格など組合員の労働条件に広範かつ多大な影響を及ぼし得るものである上、組合が開示を求めた査定結果は、もともと人事考課規程に基づいて考課の当事者には開示されることが予定されており、実際に、組合員に対しては、23年春闘や同年冬季一時金交渉に際して開示されていた。
しかも、開示された人事考課結果表によれば、いずれも組合員(分会員の多く)が規律性において4段階の評価区分の最低ランクに位置付けられており、沖縄県労委に対する救済申立てが相次ぐなど、当時の対立した労使関係も踏まえると、組合からみれば人事考課の公平性が疑われるのももっともな事情が認められる。また、その後、会社は、人事考課結果表の開示を一方的に中止しており、このことは、人事考課制度の運用に対する組合の不信感を増幅させるものであったと推認される
それにもかかわらず、会社においては、査定結果について被評定者が意見を述べることのできる仕組み(苦情処理機関)がないことから、組合としては、組合員の査定に対する疑念を解消するには、団交で査定結果の開示や査定根拠の説明等を求めるほかなく、人事考課制度の運用について問題を提起し、査定結果の開示等について機関を設けて協議するよう求めていたものである。
これらの事情からすると、人事考課制度の在り方は、本件労使関係において従来から懸案事項であったということができる。

2 ・・・したがって、会社は、人事考課制度等の問題を議題とする本件制度団交申入れに対して、合理的な理由のない回答に終始して速やかに応じなかったものであり、本件団交申入れに対する会社の上記対応には「正当な理由」(労組法7条2号)がなかったものと認められる。

上記の事情からすると、不当労働行為と判断されてもやむを得ないと思われます。

会社側としては気が進まないのは理解できますが、大局的な判断が求められるところです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為154(伊藤興業ほか1社事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、実質的に一体性をもった経営主体を構成する会社が労組法上の使用者にあたるかが争われた事案について見てみましょう。

伊藤興業ほか1社事件(兵庫県労委平成28年4月7日・労判1137号91頁)

【事案の概要】

本件は、申立外A社と実質的に一体性をもった経営主体を構成するB社およびC社はA社従業員が加入する労働組合の組合員との関係において労組法7条のの使用者にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

労組法7条の使用者に当たる

【命令のポイント】

1 B社とC社は、両社の創業者であるA及び両社の株主又は役員であるその親族が鉄関連業務を中心とする各種の事業経営を遂行するための手段として設立し、又は経営する会社であり、実質的にA一族の下で一体性を持つ経営体を構成していたのであって、その中でA社は、鉄関連業務を行うB社の運輸部門として機能していたものと認められる。
・・・以上のとおり、B社は、分会の組合員らに対する関係において、労組法第7条の使用者であると認めるのが相当である。

2 C社は、A社の解散時において存在しなかったものの、その設立後においては、A一族の下でA社と一体性を持った経営体を構成しており、A社から鉄関連業務を実質的に引き継いでいると認められ、このことからすると、C社もB社と同様に、分会の組合員らに対する関係において、労組法第7条の使用者であると認めるのが相当である。

別法人にもかかわらず、実質的には一体性を持つ経営体であると認定され、労組法上の使用者性が認められたものです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為153(学校法人九州電機工業学園事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、定年退職予定の組合員2名に対して雇用期間1年、週10時間の勤務形態、基本賃金月額8万4600円等の短時間嘱託とする継続雇用条件を提示したことが不当労働行為にあたらないとした事案を見てみましょう。

学校法人九州電機工業学園事件(福岡県労委平成28年4月15日・労判1137号90頁)

【事案の概要】

本件は、定年退職予定の組合員2名に対して雇用期間1年、週10時間の勤務形態、基本賃金月額8万4600円等の短時間嘱託とする継続雇用条件を提示したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 本件のように、業務量、本人の能力や法人の経営状況等を考慮して継続雇用の労働条件を個別的に決定する制度の下においては、労働者の多様な希望への対応が可能であるところ、労働者が従前どおりの勤務を希望する場合において、労働者に提示された労働条件が、従前と比較して月額賃金の21パーセント程度、収入ベースでみると17パーセント程度となる月額84600円という著しく低いものであるときは、合理的な理由が認められない限り、同法(高年法)の趣旨に抵触するというべきである。

2 Y社は、定年退職者の継続雇用の条件については、就業規則等に定める継続雇用制度の範囲内でその都度、業務量、本人の能力及び法人の経営状況等に応じて定めていたということができ、特に、教員については、授業及び校務の実施体制上の必要性に応じて、「常勤嘱託」とするか「非常勤又は短時間嘱託」とするかを決定するとともに、授業のみを担当させる後者については、定年退職する教員が担当できる授業科目の年度ごとの実施体制等を考慮して、担当する授業時間数を決定していたとみることができる
・・・したがって、Y社が、A2らに対して本件継続雇用条件を提示したことについては、カリキュラム編成等の学校運営における合理的な理由に基づくものであったと認められる

3 Y社が、A2らに対して本件継続雇用条件を提示したことは、前記のとおり、ほかの継続雇用された教職員の雇用条件と比べて、経済的に不利益な取扱いであることは否定できない。
しかしながら、Y社が本件継続雇用条件を提示したことには、学校の運営上合理的な理由が認められ、また、非組合員にも本件継続雇用条件と同一の条件で雇用された事例があり、・・・Y社が本件継続雇用条件を提示したことが組合嫌悪の意思によることを示すとは認められない

継続雇用の際、合理的な理由なく労働条件を大幅に下げると本件のようなトラブルになります。

合理的な理由を説明できるかどうかが鍵となります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為152(社会福祉法人大磯恒道会事件)

おはようございます。

今日は、組合員に対し、センター長および施設長の役職を解任し、自宅待機命令をしたこと等が不当労働行為にあたるとした命令を見てみましょう。

社会福祉法人大磯恒道会事件(中労委平成28年4月6日・労判1136号169頁)

【事案の概要】

本件は、組合員に対し、センター長および施設長の役職を解任し、自宅待機命令をしたこと及び組合いに対し法人の分室勤務を命じたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、自らの定款で定めた所要の手続を経ることなく本件解任等を実施しており、また、本件解任等を行うに際し、Aらの管理職としての適性を合理的に判断したとも認められない。

2 Y社は、ユニオンに加入したAらが、懲戒処分を議題とする団体交渉の開催を繰り返し要求し、組合活動を通じてY社に対抗していく姿勢をあらわにしたことから、同人らが職場で組合活動を展開すれば、同人らに同調する職員がユニオンに加入するなどにより理事会等法人上層部に対抗する勢力の拡大を招くおそれがあるとみて、Aらの組合活動への危機感を募らせ、同人らの職員への影響力を削ぐとともに職場から排除することを企図して、同人らの役職を解いて自宅待機を命じたものとみるのが相当である。
・・・したがって、本件解任等は労組法7条1号の不当労働行為に当たる。

3 本件分室勤務は、Aらに対し、常時、法人の介護現場や職員から隔離された個室内で勤務することを強いるものであるから、Aらに疎外感を与えるものであり、さらに、分室には出入口に向けてカメラが設置され、かつ、同人らにその設置目的や取扱方法も知らされていなかったことを考慮すれば、そのような環境下で勤務を強いることは、Y社により常に行動を監視されているとの念を抱かせ、心理的な圧迫を与えるに足るものというべきである。よって、本件分室勤務は、Aらに対し、精神上の不利益を与える取扱いである。
以上のとおり、本件分室勤務は、・・・労組法7条1号の不当労働行為に当たる。

所定の手続を経ずに解任等の不利益取扱いをすると、やはり組合敵視のように見えてしまいますね。

また、仮に手続を経たとしても、合理的な理由なく解任等を行えば、同様の結論になってしまいます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為151(両磐酒造(団交拒否)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、和解協定の履行に関する団体交渉に応じなかったことが不当労働行為にあたるとされた命令を見てみましょう。

両磐酒造(団交拒否)事件(平成28年2月23日・労判1136号170頁)

【事案の概要】

本件は、和解協定の履行に関する団体交渉に応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

Y社は、夏の中元シーズン期間は忙しいので棚上げし、団交は中元シーズンおよびお盆の終わった頃にしてほしいと回答し、団交に応じなかったものである。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 再雇用は労働条件と密接に関連しているものであるから、少数組合といえども、規程に関し団体交渉の申入れがあれば、会社は団体交渉に応じなければならない。

2 また、会社は、和解協定において、再雇用に関する規程を早急に整備し、次回のAの契約更新時以降は、整備した規程に基づき再雇用の手続を行うという内容を組合と合意した。しかし、Aの契約更新満了日であった7月31日の翌日である8月1日時点では、就業規則以外に具体的手続などを定めた関連規程を整備していないことが認められる。そのような状況の中で、就業規則に再雇用に関する規定が作成されていることを理由に団体交渉に応じないのは、正当な理由があるとはいえない

業務多忙を理由に団交を延期することだけで当然に不当労働行為に該当するわけではありません。

本件の場合には、上記のように団交を延期しておきながら、雇止めをしたために不当労働行為と判断されています。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。