Category Archives: 不当労働行為

不当労働行為170 団交応諾の前提条件に応じないことを理由とする団交拒否の不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、団交内容を第三者に漏洩しないなどの団交ルールに労組が同意しないことを理由として団交に応じない会社の対応が不当労働行為とされた事例を見てみましょう。

アート警備事件(埼玉県労委平成29年3月23日・労判1154号92頁)

【事案の概要】

本件は、団交内容を第三者に漏洩しないなどの団交ルールに労組が同意しないことを理由として団交に応じない会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 使用者の誠実交渉義務の具体的内容は、会見し協議する義務を本則とするものと言うべきであり、書面の交換による方法が許される場合があるとしても、それは当事者が特に合意したとか、直接話し合う方式を採ることが困難な特段の事情がある場合などに限られると言うべきである。

2 Y社は、組合の「コンプライアンスに不安があること」を、本条件の正当理由として主張しているが、この点に関する求釈明に対してはY社から具体的な釈明がなされなかった上、事前協議への申入れにすら応じないことについては、何ら主張も立証もなされていない
このような経緯に照らせば、Y社が本条件を団体交渉開催の条件とし、これに合意しないことを理由に事前協議を含む団体交渉を拒否したことは正当な理由のない団体交渉拒否と言うほかない。しかもルール策定のための協議にすら応じないY社の姿勢は、そもそも合意形成の意思のない団体交渉権否認の態度であると言わざるを得ず、Y社の団体交渉拒否の違法の程度は著しい。

3 Y社が団交において録音、撮影を行わないことを団体交渉開催の条件とし、これに合意をしないことを理由に団体交渉を拒否したことは、正当な理由のない団体交渉拒否であり、かつ、その違法の程度が著しいことは、前記の場合と同様である。

4 弁護士資格を有する代理人を議事進行役に限定することを団体交渉開催の条件とすることには何ら正当な理由はなく、同条件に応じないことを理由とした団体交渉拒否は許されない。

上記のようなさまざまな条件をつけたくなる気持ちはわかりますが、いずれも団交拒否の正当な理由とはならないため、これを理由に団交拒否することは不当労働行為にあたります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為169 労組加入を理由とする契約終了の不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、労組加入を理由として契約を終了したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案を見てみましょう。

明石被服興業事件(山口県労委平成28年12月8日・労判1152号90頁)

【事案の概要】

本件は、労組加入を理由として契約を終了したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、平成27年4月15日(Xが組合に加入する前)に、Xを含めたデサント業務従事者全員に対し、・・・デサント業務を同年7月31日で終了すると通知したのであるから、これにより同年7月31日までの契約継続を約束していることは明らかである。
それにもかかわらず、Y社がXと同様な立場にある非組合員3名については同年7月31日までの契約を維持している一方で、同年5月31日をもってXとの本件契約を終了すると主張し、その労務提供を禁止したことは、組合員であるXに対する不利益取扱いである。

2 デサント業務従事者のうち、平成27年8月以降、G作業所でパート採用された2名は、当該応募手続きを経たのに対し、Xは、工場長らから、応募の意向があれば手続きを要すること及び応募者多数の場合、その中から選考することになる旨の説明等は受けたが、採用確約の言質までは得られず、Xが応募を諦めたため、採用に至らなかったという経過は明らかであり、Y社が組合員であるXを不利益に取り扱ったものとは認められない
また、Y社がXのみを特別扱いにするなどの求めに応じることなく優先的に扱わなかったからといって、その対応が不当なものであるとはいえない。

上記命令のポイント1のように組合員と非組合員の取扱いに明らかな区別が認められる場合、その区別を合理的に説明できなければ不当労働行為となります。

注意しましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為168 会社が組合の要求に応じなかったことが不当労働行為にあたらないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、労働条件の決定・変更および重要な経営施策の事前協議・同意制度にかかる協定案締結等を議題とする団交および臨時就労契約期間満了後の組合員の労働条件にかかる団交申入れに関する会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事例をみてみましょう。

島崎エンジニアリング事件(中労委平成28年10月5日・労判1148号95頁)

【事案の概要】

本件は、労働条件の決定・変更および重要な経営施策の事前協議・同意制度にかかる協定案締結等を議題とする団交および臨時就労契約期間満了後の組合員の労働条件にかかる団交申入れに関する会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 ・・・これに対し、組合は、第3回団交、第9回団交等において、会社の組合の要求には応じられないとする上記理由や上記見解に対して、何ら根拠を示して反論等を行うこともなく、一貫して、労働条件の変更は組合と協議して実施すべきであると主張して、労働条件の変更は組合と協議して実施すべきであると主張して繰り返し本件事前協議・同意制度に係る協定の締結や、上記労使合意に基づく実行体制の創設を要求するばかりであり、交渉は歩み寄ることなく、平行線をたどった
会社は、組合の本件事前協議・同意制度に係る協定の締結要求を受け入れ、あるいは、譲歩する義務まで負うものではないところ、上記経緯に照らすと、組合に対して、同要求に応じられないとする理由や見解を十分説明し、理解を求めていたのであり、合意には至らなかったものの協議は尽くされたと認められる。また、こうした会社の対応が、労使関係を否定する趣旨でなされたものと認めることはできない。
したがって、会社が、組合からなされた本件事前協議、同意制度に係る協定の締結要求に応じなかったことをもって、不誠実な対応であると評価することはできず、組合の前記の主張は採用できない。

会社は妥結義務までは負っていないため、組合の要求に応じられない場合にはその理由を合理的に説明すれば不誠実団交とは評価されません。

結局、説明をしっかりする、という責任を負っているということです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為167 団交場所に固執し団交拒否した会社の対応が不当労働行為とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、団交場所を社外に設けることに固執して、労組の申し入れた団交に応じない会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事例について見てみましょう。

齋木運送事件(三重県労委平成28年6月27日・労判1145号157頁)

【事案の概要】

本件は、団交場所を社外に設けることに固執して、労組の申し入れた団交に応じない会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事例である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、平成27年4月7日、A本部らに軟禁され、同年5月13日には、組合員B及びCに突然自宅に押しかけられたことから、Y社事務所で団体交渉を実施すれば、A本部らの要求を承諾しない限り、Y社事務所に軟禁され続ける虞があったといえると主張する。
しかし、A本部らがY社を軟禁した事実は認められず、Y社が一方的に就業場所以外の場所を指定した合理的理由は認められない
これらのことから、Y社は、なんら理由を明確にすることなく、外部での団体交渉の開催に固執し、A本部らの団体交渉の申入れに応じなかったものといえ、労組法第7条第2号に規定する「正当な理由」は認められない。

Y社の気持ちもわからなくはないですが、団交の開催場所や団体交渉の人数の限定に固執して団体交渉を拒否すると不当労働行為に該当する可能性がありますので注意してください。

弁護士もついているでしょうから、軟禁されたらそのときに対応を考えればいいですよ。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為166 組合員に対する昇給、賞与支給の差別が不当労働行為とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合員に対する昇給、夏季・年末賞与および決算賞与支給の差別が不当労働行為にあたるかが争われた事例を見てみましょう。

プリントパック事件(京都府労委平成28年7月19日・労判1145号156頁)

【事案の概要】

本件は、組合員に対する昇給、夏季・年末賞与および決算賞与支給の差別が不当労働行為にあたるかが争われた事例である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 組合に加入したことをY社に通知した後のX1組合員らの昇給及び賞与の取扱いと他の従業員及びそれまでのX1組合員らと昇給及び賞与の取扱いには明らかな差異が認められ、これに加えて、分会結成直後からY社には組合を嫌悪し、又は軽視する態度が認められることから、本件不支給等はX1組合員らが組合に加入した故をもってなされたものと、一応、推認することができる。

2 Y社は、本件不支給等は総労働時間を重要な考慮要素とした合理的な査定に基づくものと主張し、確かに、X1組合員らは本件不支給等の各査定期間において、総労働時間が他の従業員に比べて少ないことが認められる。
しかしながら、まず、Y社の昇給及び賞与に係る査定は、査定表による、社是・経営理念、勤務姿勢、休務日数及び貢献度等の項目の5段階評価により行われており、総労働時間は社是・経営理念の重要な考慮要素とされていると認められるが、その根拠となる個々の査定表等の資料は一切示されていない

3 Y社は、まず、X1組合員らに対し、時間外労働が減少するような措置を講じ、その後もX1組合員らの時間外労働について説明や対応を二転三転させながら、結局、時間外労働を行わせないようにし続けているものと認めざるを得ず、そうすると、そのようなY社の対応の下で、総労働時間を重要な考慮要素として行われた査定は公正さを欠き、合理的なものとはいえない。

組合員と非組合員との間に労働条件等に差が生じている場合、そこに合理的な理由が説明できるか否かが勝敗を決します。

曖昧な説明しかできない場合には不利益取扱いと判断されてしまいます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為165 労組の団交申入れに対し文書で報告したとおりであると回答したことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、労組の団交申入れに対して文書で報告したとおりであると回答したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

社会福祉法人札幌明啓院事件(中労委平成28年8月3日・労判1146号93頁)

【事案の概要】

労組の団交申入れに対して文書で報告したとおりであると回答したこと、および労使間の確認書で合意した内容を履行しなかったことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 自身の立場を文書のみで回答するというY社の対応は、就業規則改正や職務専念義務の免除廃止といった義務的交渉事項について、対面での直接交渉の機会を設けることなくY社側の結論を組合に押しつけるものといえ、団体交渉の相対当事者である組合を軽視し、団体交渉という労働組合の基本的活動を抑制するものであるとともに、組合員に対し、組合には交渉力がないのではないかという疑念を生じさせかねない行為と評価し得る。また、現に、上記団体交渉申入れの議題に関する労使合意が成立したのは、同申入れの約4か月後である翌6年2月26日であり、本件回答書交付行為により、労使合意の成立が遅れた可能性が十分認められる。そして、組合が、労使協議を求める25年2月15日付け要求書等を皮切りに、上記問題に関する書面によるやりとりでは合意に至らなかったため、団体交渉による直接協議を求めたという経緯を経て、本件回答書交付行為がされていることに鑑みれば、Y社は同行為が組合ないし組合員に及ぼしかねない影響や効果を認識・認容していたというべきである。
以上によれば、本件回答書交付行為は、労組法第7条第3号の支配介入に当たるというべきである。

ちゃんと対面で団体交渉に応じましょうね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為164 整理解雇において組合員を解雇したことと被解雇者選定の合理性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、業務縮小を理由に組合員3名を解雇したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案を見てみましょう。

エミレーツ航空事件(大阪府労委平成28年10月11日・労判1148号94頁)

【事案の概要】

業務縮小を理由に組合員3名を解雇したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 本件自宅待機命令及び本件解雇は、大阪コールセンター及び予約発券機能の廃止に伴う一連のものとして行われたところ、①人員整理を直ちに行う必要があったかについては疑問が残るところであり、②自宅待機命令及び解雇の対象者の選定が合理的であったかについて、疑問を抱かざるを得ず、③会社が解雇回避努力を尽くしたとは言い難く、本件自宅待機命令及び本件解雇に至る手続についても相当性があるということができず、これらのことに、会社と組合との間の労使関係についても、会社と組合等との間では、未払残業代やパワハラ問題を巡って対立関係にあり、また、本件自宅待機命令及び本件解雇に至る経緯において、会社の組合を軽視した姿勢が窺えることからすると、会社は、大阪コールセンター廃止を口実として、本件自宅待機命令及び本件解雇に及んだものとみざるを得ない。そうであれば、本件自宅待機命令及び本件解雇は、組合員であるが故の不利益取扱いであり、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為である。

2 本件自宅待機命令及び本件解雇は、組合員であるが故の不利益取扱いであり、会社から組合員を駆逐することによって、会社への組合活動による影響力を減じさせるものでもあるから、組合に対する支配介入であって、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である

整理解雇の要件(要素)を満たしていて有効と判断される場合には不当労働行為性も否定されるのが一般的です。

特に被解雇者選定の合理性については被解雇者が組合員である場合には注意しなければいけません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為163 組合が求めた資料を提示しない対応が不当労働行為にあたらないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、年末一時金を議題とする団交における会社の対応等が不当労働行為にあたるかが争われた事案を見てみましょう。

テーエス運輸(一時金)事件(兵庫県労委平成28年11月10日・労判1148号93頁)

【事案の概要】

本件は、年末一時金を議題とする団交における会社の対応および労使交渉が妥結していないことを理由に組合員に対する年末一時金の支給を遅らせたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

いずれも不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 本件一時金の提案額の根拠をY社の財務状況との関係で説明する場合、財務諸表を基本として説明すれば足りると考えられるところ、本件一時金交渉において、Y社が提示した運送管理表は、損益計算書の内容と類似の内容が記載されている資料であり、・・・また、同じくY社が提示した別表は、その運送管理表に記載されている数値に係るより詳細な説明資料であるといえるので、Y社が運送管理表及び別表を提示して説明していることからすると、本件一時金の提案額の根拠や本件一時金の原資の有無について、財務状況との関係で必要な資料を提示して説明しているということができる。

2 ・・・Y社は、単に、本件一時金について、妥結できていないから支払えなかったに過ぎず、その後の経過をみても、Y社があえて組合と妥結しないようにしたとも認めることはできない。
そうすると、組合が団体交渉においてY社の財務状況について質問するという正当な組合活動を行った故に、Y社は、本件一時金を支給しなかったということはできないので、本件一時金を支給しなかったことが、組合員に対する不利益取扱い及び組合に対する支配介入に該当するという申立人らの主張には理由がない。

ベースアップや賞与、リストラ等に関する団体交渉の中で会社の決算資料の開示を求められることがあります。

いかなる資料をいかなる範囲で開示すればよいのかについては顧問弁護士に確認をしてください。

理由なく開示しないと不当労働行為に該当しますので注意しましょう。

不当労働行為162 組合から求められた団交開催日に応じないことは不当労働行為?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、未払残業代等の労働条件、事業廃止および組合員の解雇等を議題とする団交申入れに対する会社の対応の不当労働行為該当性に関する命令を見てみましょう。

エスト事件(神奈川県労委平成28年5月26日・労判1143号87頁)

【事案の概要】

本件は、未払残業代等の労働条件、事業廃止および組合員の解雇等を議題とする団交申入れに対する会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為に当たらない

【命令のポイント】

1 Y社が組合から要求された団体交渉開催日に応じないことが、直ちに不誠実な対応といえるものではないし、団体交渉期日は一方的に決めるものではなく、双方の合意によって決められるべきものである。

2 確かに、既にA2及びA3は組合に加入しており、しかも第1回団体交渉が行われた後にもかかわらず、Y社が、事業廃止並びにA2及びA3の解雇について、組合に連絡、協議しなかったことは、結果的に労働組合を無視したものといえる。しかしながら、不誠実団体交渉に該当するか否かという点については、第2回団体交渉で組合は、Y社が事業廃止並びにA2及びA3の解雇について組合に連絡、協議を行わなわなかったことを指摘しているものの、同団体交渉そのものは、前記のとおり不誠実であったとまではいえない上、Y社が、この問題を団体交渉事項とする組合からの団体交渉申入れを拒否した事実もないことから、労組法7条2号に該当するという組合の主張は採用できない。

命令のポイント1について、あまりいじわるなとらえ方はしないほうがいいですね。

会社側の引き延ばしが明らかな場合には、不当労働行為に該当しますので注意してください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為161 団交における労組側出席者数を制限することの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、学園が団交における労組側出席者を7名以内とすることを求め、労組がこれに応じないことを理由に団交を拒否したことが不当労働行為に該当するとした命令を見てみましょう。

学校法人暁星学園事件(中労委平成28年6月15日・労判1143号86頁)

【事案の概要】

本件は、学園が団交における労組側出席者を7名以内とすることを求め、労組がこれに応じないことを理由に団交を拒否したことが不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 従前の団交の態様や団交の開催場所の状況からして、組合側出席者の人数が団交の秩序に支障を及ぼしていたとまではいえず、24年11月27日団交に向けて議論する事項がある程度整理される状況にあったことにも鑑みると、組合側出席者が7名を超える8名で申入れにかかる議題に入ったとしても、客観的にみて、同団交の冒頭において、学園が人数制約の目的として主張する「効果的に、秩序をもって団交を行う」ことが期待できない状況にあったとはいえない

2 組合側出席者が8名であった24年11月27日団交の冒頭、学園が、組合側の出席者が7名以内でないと申入れにかかる議題には入れないと述べ、人数の制約を団交の議題に入る条件とする態度をとったことは、本件の事情に照らし、客観的にみて、「効果的に、秩序をもって団交を行う」ために上記のような条件を課す十分な理由があるとはいえず、合理的なものとは認められない

3 確かに、24年11月27日団交においては、組合が大声をあげたり、机を叩いたりするなど、紛糾する場面があった。
しかしながら、学園は、上記の紛糾する場面が生じる前である24年11月27日団交の冒頭から、組合側出席者が7名以内でないと議題には入れないと述べ、組合が受け入れる意思がないならば今日はここで終わりにすると発言している。
・・・そうすると、学園が人数を理由に団交を拒否するという態度を改めて、団交の議題に入った場合にも秩序ある団交が期待できない状況になっていたとはいえず、また、途中退席が組合側の交渉態度によってなされたともいい難い。

確かに組合側の人数の多さには意見を言いたくなることがあるのは理解できます。

ただ、今回の事案のように、7人と8人とで団交の状況が変わるかと言われれば、実際はそれほど変わらないでしょう。

それにもかかわらず、制限人数に固執してしまうと不当な団交拒否と評価されることがありますので注意が必要です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。