Category Archives: 不当労働行為

不当労働行為180 団交の行き詰まりを理由とする団交拒否の不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、交渉が行き詰まったことなどを理由に組合の申し入れた団交に応じない法人の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案を見てみましょう。

社会福祉法人方城療育園事件(福岡県労委平成29年3月10日・労判1159号90頁)

【事案の概要】

本件は、交渉が行き詰まったことなどを理由に組合の申し入れた団交に応じない法人の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 ・・・これらのやり取りからすれば、Aの育成課への復職そのものに関しては、双方の主張が根本的に対立し交渉が進展する見込みがなくなったものと見られなくもない。
しかし、育成課への復職に関する事項には、28年2月29日付け団交申入書の要求事項2に「平成28年2月以降の賃金不利益分を支払うこと」との記載もあるように、配置転換に伴う給与減額についての問題も含まれている。育成課から総務課(営繕業務)への配置転換により、Aの育成課での給与約21万5500円から1割以上の減額となることから、その点に関する代償措置や激変緩和措置などが協議されることも十分考えられるところであるが、法人が配置転換に伴う給与制度上の減額の内容を説明したことは認められるものの、上記の代償措置などの点についての協議は行われておらず、それらの点について、いずれかの譲歩により交渉が進展する見込みが全くなくなったとはいえない

2 Y社は、組合が団交において具体的な意見を出さなかったとも主張する。
しかし、組合は27年12月11日の第1回団交で初めて本件配転を知らされたこと、開催された3回の団交の合計時間が2時間30分程度にとどまること、及び28年1月28日の第3回団交は2月1日の復職日が迫る時期であったことからすれば、3回の協議がいずれもAの配置先の問題に集中し、組合から配置転換後の給与の減額内容やそれに対する対応及びその他の処遇といった事項について具体的な意見が出されなかったこともやむを得なかったものと考えらえる。

3 以上のように、本件団交要求に対し、Y社がこれを拒否する正当な理由があると認められないから、Y社が本件団交要求に応じなかったことは、労組法7条2号に該当する。

団体交渉を重ねていくと、会社側と組合側の主張が平行線を辿ることがありますが、だからといってあまりにも早い段階で団交を打ち切ると不当労働行為と評価されるリスクがあります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為179 社長の不適切発言と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、解雇された組合員の復職後の労働条件をめぐって対立するなかで、社長が労組を非難し、脱退を勧奨する発言を行ったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案を見てみましょう。

青林堂事件(東京都労委平成29年3月7日・労判1159号91頁)

【事案の概要】

本件は、解雇された組合員の復職後の労働条件をめぐって対立するなかで、社長が労組を非難し、脱退を勧奨する発言を行ったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 本件発言の内容や態様についてみると、A社長は、「全ての元凶は、ユニオンなわけよ。君がユニオン辞めれば、辞めれば、普通にみんな付き合う」「そういう可能性は、ないわけ。みんな君のことを嫌っているけど、それ以上にユニオンに対して、非常にアレルギー、アレルギーがある」と発言している。これらの発言は、直接的にXに対して向けられ、Xが組合員であることが労使紛争の原因であるとして、組合を非難ないし批判するものであると同時に、明らかに組合からの脱退を促す発言である。

2 また、発言当時の労使関係をみると、Xの解雇に関連した前件において、和解が成立した後、同人が復職したものの、復職後間もなく職務内容など労働条件を巡って再び労使紛争となり、本件申立てにつながっている。このように、本件発言は、Xの職務内容など労働条件について再び労使間で問題が発生し、対立関係が厳しくなる中で行われたものである。

3 さらに、発言当時の状況をみると、Xは、会社内における唯一の組合員であり、本件発言は、会社内においてXの勤務時間中、A社長のほかB専務や他の従業員が同席する中で行われた。そのような状況下において、会社代表者であるAが前記のような組合への非難や明らかな組合脱退勧奨発言をすれば、組合員として組合活動を続けることについて直截的な威嚇的効果があり、会社内において組合活動が阻害されるおそれは極めて大きいといえる。

4 以上のことから、使用者側の言論の自由を考慮しても、会社がその存在と内容について認めている本件発言は、組合の組織、運営や組合活動に悪影響を与えるものであることが明らかであり、組合の組織、運営に対する支配介入に当たる。

言っていいことと悪いことがありますね。

こんなこと、思っていても言っていいわけがありません。

何の得にもなりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為178 あっせん申請を理由とする団交拒否と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、通勤手当の減額、あっせん申請を理由に団交に応じないこと等が不当労働行為にあたるかが争われた事案について見てみましょう。

正栄工業事件(岡山県労委平成29年3月23日・労判1159号88頁)

【事案の概要】

通勤手当の減額、あっせん申請を理由に団交に応じないこと等が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

通勤手当の減額は不当労働行為にあたらない

あっせんの申請を理由に団交に応じないこと、およびその後に行われた団交に誠実に対応しなかったことは不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 本件通勤手当の減額は、杜撰な事務処理による誤った計算に基づくものであるが、組合との継続合意事項を無視し、組合員を差別的に取り扱って組合の弱体化を図ろうとしたものとは認められず、労働組合法7条3号の不当労働行為があったとまですることはできない。

2 あっせんと団体交渉とは別個の行為であり、会社が労働委員会のあっせんを理由に団体交渉に応じないことは、基本的には正当な理由があるとは認め難い。

上記命令のポイント2は基本的なことですが、しっかりと押さえておきましょう。

訴訟、労働審判、あっせんを起こしたことは、団体交渉を拒否する理由にはなりませんので誤解なきように。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為177 会社が組合員に対するハラスメントを放置したことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、Aが夫の陳述書を別事件の証拠とすることに協力し、その後組合支部に加入したことを理由に、会社が他の従業員によるAに対するセクハラやパワハラを放置したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案について見ていきましょう。

日東興産事件(神奈川県労委平成29年1月12日・労判1156号92頁)

【事案の概要】

本件は、Aが夫の陳述書を別事件の証拠とすることに協力し、その後組合支部に加入したことを理由に、会社が他の従業員によるAに対するセクハラやパワハラを放置したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 Y社としては、X3の通報したセクハラについて、その解決を当事者間の話合いに委ねるとの方針でいたことがうかがえるものの、その決定がなされたのは同人の組合支部への加入前であり、加入後もその方針に変更は見られないことからすると、Y社が、X3が組合支部に加入して組合員になったことや組合支部の正当な行為をしたことを理由に上記のセクハラを放置したものと認めることはできない。

2 また、Xらは、本件陳述書を24-35号事件の証拠とすることに協力したX3に対するパワハラをY社が放置したことは、労組法7条4号に該当すると主張する。
しかし、仮にY社が本件陳述書の作成にX3が何らかの協力をしたものと考えたとしても、上述したとおり、X3の通報したセクハラに関する方針を決定したのは本件陳述書の提出前であることからすると、Y社が24-35号事件の「証拠を提示し・・・たことを理由として」X3に対する上記方針を決定したものと認めることはできず、上記主張は採用できない。

3 以上により、X3に対するセクハラやパワハラに関するY社の対応は、労組法7条1号及び4号の不利益取扱いには当たらない。

上記命令のポイント1のような事情があれば、会社側に不当労働行為意思がないことは明らかですので、大丈夫です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為176 労組委員長らの発言を記載した文書を掲示・回覧したことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、覚書締結交渉の膠着状態を打開しようとして労組委員長らの発言の言葉じりを捉えた文書を掲示または回覧した措置につき、不当労働行為に該当するとされた事案を見てみましょう。

京都生協事件(中労委平成29年3月1日・労判1158号154頁)

【事案の概要】

本件は、覚書締結交渉の膠着状態を打開しようとして労組委員長らの発言の言葉じりを捉えた文書を掲示または回覧した措置につき、不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

初審京都府労委は、不当労働行為にあたらないと判断した。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 ・・・以上の記載は、いずれも本件交渉における執行部の対応を批判する内容を含み、26年度覚書が締結できない責任が専ら執行部にあるかのような行き過ぎともいえる部分があるといえるのであるが、その多くは、Y社の立場からみた意見の表明やその前提となる事実等の指摘として許容される範囲に収まっているとも判断できる余地がないわけではない。

2 以上によれば、本件各書面提示のうち、Y社が、組合員を含むパート職員に対し、「パート労組執行部は『私たち(労組執行部)はこの内容で理解できるが、代議員に納得させる自信がないので、人事教育部が代議員会に出席し説明してほしい。』と述べました。」との記載がある26.3.6書面を提示したことについては、たとえ同提示の目的として、雇用関係の終了というパート職員の不利益を生じさせないこと等のために26年度雇用契約書の提出を呼び掛けることが含まれているとしても、本件交渉の膠着状態を打開し、本件交渉を有利に進めるために、いまだ同年度覚書の締結に至っていないのは、執行部の対応に問題があるからであるかのようにパート職員に印象付け、執行部を批判にさらさせることにより、X組合に対し同年度覚書締結に関する協議の再開に応じるよう圧力を掛け、X組合の運営に影響を与えようとしたものといわざるを得ず、労組法7条3号の支配介入に当たる。

初審と異なる判断です。

個人的には中労委の判断の方がしっくりきます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為175 自殺を図った組合員を配転したことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、自殺を図った空港送迎タクシー業務に従事していた組合員を内勤業務に配転したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案を見てみましょう。

中央タクシー(配転等)事件(群馬県労委平成29年3月9日・労判1158号153頁)

【事案の概要】

本件は、自殺を図った空港送迎タクシー業務に従事していた組合員を内勤業務に配転したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 睡眠導入剤を服用していることだけでも、運転の安全管理上十分な配慮が必要であり、これに加えて上記の欠勤の経緯をみれば、自動車運転事業者としては、Xが自殺未遂の原因となった精神的な症状から回復しておらず、運転業務につかせることに慎重になるのは当然であり、むしろ、乗客の安全を確保する義務を負っている同事業者の責務であって、本件配置転換等には合理的な理由が十分にある
・・・以上のとおり、本件配置転換等は、Y社の不当労働行為意思によって行われたものであるとはいえないので、労組法7条1号の不当労働行為には該当しないと判断する。

当然の配慮です。

むしろ会社がこの状態でそのまま運転を継続させていて何か事故でもあれば、逆に責任追及をされてしまいます。

日頃から顧問弁護士に相談する体制を整え、無用なトラブルを回避することが肝要です。

不当労働行為174 会社工場の周辺住民の健康被害に対する補償問題は義務的団交事項?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社工場の周辺住民の健康被害に対する補償問題などが義務的団交事項に当たるかが争われた事例を見てみましょう。

リソルホールディングス事件(埼玉県労委平成29年4月13日・労判1156号90頁)

【事案の概要】

本件は、会社工場の周辺住民の健康被害に対する補償問題などが義務的団交事項に当たるかが争われた事例である。

【労働委員会の判断】

義務的団交事項にあたらない

【命令のポイント】

1 アスベストが、いわゆるクボタショックにみられるようにアスベスト製品製造工場の周辺住民にも健康被害を及ぼすおそれのある物質であることから、組合が、Y社に対して、Aら旧大宮工場の周辺住民への補償を求めることは理解できなくはない。
しかしながら、労働委員会が扱う不当労働行為救済制度が、労働者の労働条件に係る交渉について、労働組合と使用者との対等な関係を保障するためにあることからすれば、労組法上の「雇用」とは、会社との労働契約関係に近似ないし隣接する関係のことを意味するというべきである
そうすると、旧大宮工場の周辺に居住していたにすぎない者は、Y社との関係において、労働契約関係に近似ないし隣接する者とはいえない。
また、旧大宮工場の周辺住民に金銭補償を行うか否かは、元従業員の未精算の労働条件とは全く別の問題である

2 したがって、「旧大宮工場の周辺住民被害者」は労組法第7条第2号にいう「使用者が雇用する労働者」には当たらず、「周辺住民被害者」の企業補償に関する事項は義務的団交事項には該当しない。

異論のないところだと思います。

義務的団交事項を理解するにはわかりやすい例ではないでしょうか。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為173 労組法27条2項の「継続する行為」の意義(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、大量観察方式により不当労働行為の成立が否定された事例を見てみましょう。

明治(不当労働行為)事件(中労委平成29年1月11日・労経速2314号3頁)

【事案の概要】

本件は、本件Xらが、同人らの行う組合活動を嫌悪したY社は、Y社の人事制度の下、本件Xらの平成元年度から5年度における昇格・昇給を他の従業員と差別して不利益に行い、 その結果、組合の運営に支配介入したことは労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当すると主張して、6年7月6日、都労委に対し、救済を申し立てた事案である。

【労働委員会の判断】

本件各再審査申立てをいずれも棄却する。

【命令のポイント】

1 労組法第27条第2項は「労働委員会は、前項の申立てが、行為の日(継続する行為にあつてはその終了した日)から一年を経過した事件に係るものであるときは、これを受けることができない」と規定し、これを受けた労委規則第33条第1項第3号は、申立てが行為の日(継続する行為にあってはその終了した日)から1年を経過した事件に係るものであるときは、申立てを却下することができる旨規定している。
これらの規定の趣旨は、不当労働行為としてその救済が申し立てられる事件が行為の日から1年を経過している場合には、一般に、その調査審問に当たって証拠収集や実情把握が困難になり、かつ、1年を経過した後に命令を出すことはかえって労使関係の安定を阻害するおそれがあり、あるいは命令を出す実益がない場合もあることから、このような制度上の制限を設けたものと解される
そして、上記の「継続する行為」とは、個々の行為自体は複数であっても 全体として1個と見ることができる不当労働行為が継続している場合、すなわち、継続して行われる一括して1個の行為と評価できる場合をいうが、この範囲をあまり緩やかに解すると上記各規定の趣旨を没却することになるから、各行為の具体的な態様、目的、効果及び各行為の関連性等を総合して、各行為が一体のものとして1個の行為と評価できるか否かによって判断すべきである。

2 本件申立人らを含む申立人ら集団が、昭和30年代後半より、生産合理化活動や新職分制度などの会社の施策に反対する活動を行っており、労使協調路線を採るインフォーマル組織との間で、組合支部役員選挙等において激しく対立する状況にあったこと、インフォーマル組織の推薦する者が組合支部執行部を担うようになった後においても、申立人ら集団に属する者が同役員選挙等に立候補し、あるいはこれを支援するビラ配布等の活動を行っていたこと、これらの活動と並行して、会社を相手方とする組合員の解雇や配転等に関する裁 判等の傍聴や署名等の支援活動を行っており、「三つの裁判を支援する全国連絡会」が結成され、後に「全国連絡会」が結成され市川工場事件や本件の救済申立てにもつながっていることに加え、昭和41年2月の戸田橋工場における民主化同志会の結成以降、全国の各支部において一斉にインフォーマル組織が結成されており、民主化同志会の会合に市川工場の工場長を始めとする他の工場の職制らが出席していたり、戸田橋工場の課長が大阪工場にて組織化の方法を教示していたことなどからすれば、会社がその施策に賛同するインフォーマル組織の結成に関与していた疑いがあるというべきこと、さらに、会社の要職にあった者が、福岡工場での会議において、本件申立人らの活動である「三つの裁判を支援する全国連絡会」の 結成や、申立人ら集団を指すと思われる「民青」の会社内の人数の推移等 について報告していたことも認められ、会社においても、申立人ら集団 (本件申立人らや市川工場事件申立人らを含む。)について1つの集団として把握していたことがうかがわれる。
これらの事情を前提とすれば、本件申立人らを含む申立人ら集団が組合活動の面においては1つの集団であったと見た上で、人事考課成績等に関する集団的考察を行うことは、本件で不当労働行為の成否を判断にするに当たってはやはり有益な面がある

まずは上記命令のポイント1の規範を押さえましょう。

その上でいかなる場合であれば「継続する行為」と認定されるか、この事例を参考にしてください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為172 不当労働行為を理由とする会社に対する損害賠償請求と慰謝料額(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、ユニオン等の会社に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

引越社事件(名古屋地裁平成29年3月24日・労判ジャーナル63号19頁)

【事案の概要】

本件は、X組合の支部長であるAが、Y社によって、名誉を毀損され、かつ、プライバシーに属する情報を公開されたなどと主張し、また、X組合が、Y社の上記行為は、ユニオンに対する不当労働行為に当たると主張して、いずれも不法行為に基づき、慰謝料ないし無形の損害として、Aにつき300万円、X組合につき100万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はAに対し30万円+遅延損害金、X組合に対し20万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Aは、X組合Y社支部の支部長の地位にあり、X組合とY社の紛争について大きな影響力を持っていること、公表された情報の種類は、前科や個人の内面に関わる思想などプライバシーに係る情報の中でも保護の必要性が高いものではなく、また、住所については、市町村までの情報にとどまっていること、Y社自らが広く第三者に公表したものではなく、報道機関である物流タイムズ社に対し、同社からの取材を受ける過程で伝達したにすぎないことが認められ、平成27年2月以降、X組合とY社との間には激しい対立があり、運送業界の業界紙を発行する物流タイムズ社がこれに関心を抱き、少なくとも支部長の地位にあるAの個人情報を伝達することの社会的な意義、必要性は高いと認められるから、Aの個人情報を公表されない法的利益がこれに優越するとはいえないこと等から、Y社が、物流タイムズ社に対し、Aのプライバシーに係る情報を公表したことについて、不法行為は成立しない

2 本件掲示行為は、Aの名誉を毀損するものであり、これにより、Aが精神的苦痛を被ったことが認められ、そして、本件張り紙はY社及びY社グループ会社の店舗という特定の場所に掲示されたものであり、新聞、週刊誌、書籍などのマスメディアによる名誉棄損と異なることを考慮した上で、本件張り紙が掲示された店舗数及び掲示されていた期間等から、Aに対する慰謝料は30万円と認めるのが相当である。

3 本件掲示行為について、本件張り紙は、読み手であるY社の従業員をして、X組合への参加を躊躇させ、又は、既にX組合に加入済みの組合員をして、同組合との信頼関係を低下させるおそれがある内容であること、Y社は、現に、X組合から脱会した従業員との間では、個別の和解を成立させるという切り崩し的な手法を用いており、本件掲示行為についても、X組合の活動を妨害し、又は、X組合の組織の弱体化を図るというY社の意図が推認できることなどの事情が認められること等から、Y社による本件掲示行為は、X組合に未加入の従業員に対しては、同組合に加入するか否かという、既にX組合に加入している従業員に対しては、同組合を脱退するか否かという、労働者ないし組合員が自主的に判断して行動すべき事柄に対する支配介入行為に当たると認めるのが相当である。

慰謝料額でいうとこの程度です。

名誉棄損の訴訟は、金銭的には見合わないため、目的は「お金じゃない」ということを明確にしておくべきですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為171 業務委託拡大は義務的団交事項にあたるか?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、調理職場の業務委託拡大等を議題とする団交申入れに対して、義務的団交事項に当たらないとして応じなかったことが不当労働行為にあたるとされた事例を見てみましょう。

国立病院機構小倉医療センター事件(福岡県労委平成28年10月14日・労判1154号94頁)

【事案の概要】

本件は、調理職場の業務委託拡大等を議題とする団交申入れに対して、義務的団交事項に当たらないとして応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、本件議題のうち、業務委託の範囲拡大の是非は経営事項であり、義務的団交事項には当たらないと主張する。しかし、事業譲渡や業務の下請け化のような経営に関わる事項は、労働者の労働条件と密接に関連することが多い。したがって、少なくとも、そのような経営に関わる事項の実施が、労働者の現在又は将来の労働条件に影響を及ぼす具体的な可能性がある場合には、これも義務的団交事項となると解することが相当である。
・・・したがって、「調理職場に就いている再雇用・非常勤職員について来年度も調理師として雇用し、調理職場の委託拡大を行わないこと」という本件議題は、調理業務の外部委託という経営に関わるものではあるが、義務的団交事項に当たると認められる。

気持ちはわかりますが、義務的団交事項であることは、過去の救済命令を見れば明らかです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。