Category Archives: 不当労働行為

不当労働行為190 団交に弁護士だけが出席することは不当労働行為?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、組合員の勤務時間等を議題とする団交において、回答の根拠を示さないまま、団交は決裂したと述べて退席した会社の対応、団交の出席者を代理人弁護士のみとしたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案を見てみましょう。

ケミサプライ・アマックス事件(福岡県労委平成29年8月9日・労判1169号95頁)

【事案の概要】

本件は、組合員の勤務時間等を議題とする団交において、回答の根拠を示さないまま、団交は決裂したと述べて退席した会社の対応、団交の出席者を代理人弁護士のみとしたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案

【労働委員会の判断】

組合員の勤務時間等を議題とする団交において、回答の根拠を示さないまま、団交は決裂したと述べて退席した会社の対応は不当労働行為にあたる。

団交の出席者を代理人弁護士のみとしたことが不当労働行為にあたらない。

【命令のポイント】

1 組合が、会社の労働条件は就業規則により明示しているとの回答を受けて、会社に就業規則の設置場所を質すことは、労働条件の明示に係る問題であって義務的団交事項であるから、会社はこれに対し誠実に答える義務がある。
ところが、これに対する会社の回答は、言われれば出すというものに止まるから、会社が、質問された就業規則の備付けの場所等の具体的な内容について誠実に答えていたとは到底いい難い
このように、会社は本件団交において、上記の使用者が果たすべき義務、即ち相手方の納得を得るべく誠意をもって団交に当たる義務や、自己の主張の根拠を具体的に説明するなど努力すべき義務を果たさないまま、一方的に退席したといわざるを得ない。

2 団交において、組合が使用者に対し、要求事項に関連する事柄についての事実関係の確認を求めることは当然予測されることであるから、使用者にはそうした事実関係の確認を求められる事態に対応できる者を出席させることが望まれる。しかし、使用者にはそのような事実関係の確認に対応できる者を常に団交に出席させなければならないというまでの義務があるとはいえない。B弁護士が組合の事実確認に対応ができなかったのは本件団交が初めてであり、同弁護士のみが団交に出席したことによって直ちに団交に支障を来したとまではいえない
したがって、本件団交において、会社がB弁護士のみを出席させ、会社の取締役ないし会社と雇用関係にある者を出席させなかったことが不誠実団交に該当するとまではいえない。

上記命令のポイント2は注意が必要です。

やはり団交は弁護士だけではなく、会社の方も同席したほうがいいです。

すべての質問にその場で回答できるわけではありませんが、それでも会社の担当者が同席をし、

その場で回答できるものはすべきだと思います。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為189 ブログやメールで労組の活動を非難することは不当労働行為?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、社内ブログおよび営業部長のメールにおいて、労組の活動を非難し、労組への批判的意見の醸成を図ったりしたこと、全社集会において労組に批判的な発言がなされても集会の司会を務めた取締役が発言を抑止しなかったことの不当労働行為性が争われた事案を見てみましょう。

桐原書店事件(東京都労委平成29年9月19日・労判1169号94頁)

【事案の概要】

本件は、社内ブログおよび営業部長のメールにおいて、労組の活動を非難し、労組への批判的意見の醸成を図ったりしたこと、全社集会において労組に批判的な発言がなされても集会の司会を務めた取締役が発言を抑止しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

社内ブログおよび営業部長のメールにおいて、労組の活動を非難し、労組への批判的意見の醸成を図ったりしたことは不当労働行為にあたる。

全社集会において労組に批判的な発言がなされても集会の司会を務めた取締役が発言を抑止しなかったことは不当労働行為にあたらない。

【命令のポイント】

1 これは、「責任を追及」等の強い表現をもって、所長又は副所長が自ら組合執行部を非難することを求めたものであり、本来使用者が介入すべきではない組合内部の意思形成に介入して組合の方針の転換を図ったものといわざるを得ないから、使用者に許される意思表明の範囲を超えているというべきである。

2 全社集会において、会社が、組合を批判する発言を禁止する等の対応はせず、従業員の発言はいずれも制止しないけれども、組合に対して弁明の機会を確保したことは、一部の従業員と組合との対立がある中でのやむを得ぬ対応であり、このような会社の対応が、組合に対する支配介入に当たるとまでいうことはできない。

上記命令のポイント1については使用者側が気をつけなければいけません。

思っていても言っていいことと悪いことがあるのです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為188 新賃金制度に関する労使間の合意の有無(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、新賃金制度に関する労使協議会の過程で行われた一時金の支給月数の話合いは、労使間の合意と認められず、会社が後の一時金交渉において合意を否定する対応をとったことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

D新聞社事件(岡山県労委平成29年6月22日・労判1165号95頁)

【事案の概要】

本件は、新賃金制度に関する労使協議会の過程で行われた一時金の支給月数の話合いについて、会社が後の一時金交渉において合意を否定する対応をとったことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 26年及び27年の一時金に係る団体交渉は、いずれも本件労使協議会において年間一時金を新基準内賃金の「8か月分以上を支払う」との約束がなされたかどうかに関し、組合は約束があったと主張してその履行を求め、会社は約束ではなかったと主張して会社の設備投資の必要性、将来の見込み等の経営判断を説明するといったやりとりがなされたもので、本件労使協議会における年間一時金に関するやりとりが労使合意とまで認められないことは前述のとおりであり、その意味で、会社が約束はなかったと主張したことはそれなりの法的判断に基づくもので、このように主張することが直ちに誠実交渉義務に違反するものとまで認められない

2 以上の経緯に照らすと、結局、本件夏季及び冬季一時金に関する団体交渉において、会社は「予測がはずれて儲かれば、年間一時金を8か月分以上支払う」との本件労使協議会における発言を否定したものとは認められず、また、設備投資資金の必要性など具体的な質疑、応答、反論等が行われていたことが認められ、両者は、それぞれの立場を維持したため、議論が進展せず、歩み寄りが困難となり平行線に至ったものと認められるから、会社の交渉態度が不誠実であったとまで認めることはできない。

労使間に一時金に関する合意が存在しないという認定をされているため、不当労働行為には該当しないということになりました。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為187 組合員をシュレッダー係に配転したことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労組に加入した営業専任職として勤務していたXをシュレッダー係に配転したことが不当労働行為にあたるかが争われた事例を見てみましょう。

引越社ほか2社事件(東京都労委平成29年7月18日・労判1165号94頁)

【事案の概要】

本件は、労組に加入した営業専任職として勤務していたXをシュレッダー係に配転したことが不当労働行為にあたるかが争われた事例である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 以上の点を総合的に勘案すると、Y社がシュレッダー係にXを配転した真の狙いは、同人の組合加入により現役従業員の処遇改善を初めて求められた同社が、組合の会社らに対する影響力が強まることを懸念し、これを抑制することを狙って、同人に不利益な取扱いをすることにより、組合の会社らにおける組織拡大を抑制することにあったとみざるを得ない
このようなY社の行為は、Xが組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たるとともに、組合の弱体化を企図した支配介入にも当たる。

2 Y社が、Xをシュレッダー係の業務に就かせていたことについては、不利益取扱い及び支配介入であると認められるが、同人とY社との間では、Y社が同人に対して謝罪することを含む本件を和解が成立し、既に同人は、営業専門職に復職している。
しかしながら、本件の証拠に顕れているだけでも、27年3月29日から4月13日までの間に13名、9月22日に1名、28年7月22日に1名、7月28日から8月4日までの間に4名、8月6日に1名、9月2日から12日までの間に4名の組合員が組合を脱退しており、組合が大きな打撃を受けていることが認められる。こうした視点からみれば、本件和解が成立したことによっても、組合員に対するシュレッダー係への配転という不利益な取扱いによって損なわれた組合の団結権の回復措置は何らなされておらず、この点の救済の利益が消滅したとはいえないことから、本件の救済としては、主文第5項のとおり、Y社に文書交付及び掲示を命ずるのが相当と考える。

上記命令のポイント2は参考になりますね。

当該組合員と会社との間で和解が成立したとしても、前記のような事情を考えると、救済の利益は消滅していないと判断されるわけです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為186 役職定年制度導入を議題とする団交における会社の対応と不誠実団交(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、役職定年制度導入を議題とする団交における会社の対応と不当労働行為に関する事例を見てみましょう。

北びわこ農協事件(滋賀県労委平成29年8月7日・労判1165号93頁)

【事案の概要】

本件は、役職定年制度導入を議題とする団交における会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 本件役職定年制度の内容は、基本給を2割カットし、管理職手当の支給もしないというものである。この制度の適用を回避するために、対象者が選択定年制度による早期退職を選択した場合においても、退職金の加算があるとはいえ、その後の嘱託職員としての再雇用においては、基本給は従前の半額になる。このように、本件役職定年制度は、職員にとって著しい不利益を生じさせるものといわなければならない。
このような著しい不利益を生じさせる人事制度の改変を行うのであれば、まず、制度改変の必要性について、具体的な根拠を示し、十分な時間をかけて、組合に対して説明を行うべきである。しかしながら、この点についてのY社の説明は、全く不十分なものであった。

2 以上の経過をみると、大幅な給与カットの導入が必要となる根拠について、組合が再三にわたって説明を求めたにもかかわらず、Y社は、具体的な財務状況の見通しすら示すことなく、単に経営状況が苦しい、若手の育成が必要だということを繰り返し述べるだけで、それ以上の説明をしていない。・・・このような状況では、Y社が本件役職定年制度導入の根拠について、基本的な説明すらしていないといわざるを得ず、Y社の交渉態度は不誠実であるというほかない。
したがって、本件団体交渉におけるY社の態度は不誠実であり、労働組合法7条2号の不当労働行為に該当する。

これでは、不誠実団交になるだけでなく、仮に民事訴訟を提起されて、労働条件の不利益変更が問題となっても、要件を満たさず、無効と判断されるおそれがあります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為185 組合員の賃金減額を議題とする団交と救済の必要性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合員の賃金減額を議題とする団交申入れに対する会社の対応の不当労働行為性が争われた事案を見てみましょう。

エス・エフ・ティー事件(神奈川県労委平成29年3月16日・労判1163号91頁)

【事案の概要】

本件は、組合員の賃金減額を議題とする団交申入れに対する会社の対応の不当労働行為性が争われた事案を見てみましょう。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたるが、その後の会社の対応から救済を命ずる必要性はない

【命令のポイント】

1 組合が会社に開示を要求している賃金減額の基準が記載されている賃金規定、職務規定のある雇用契約書、人事査定の規定等について、会社は、それらが存在しないことや、存在しても開示すべき法的理由がないこと等を開示しない理由として述べており、不開示という結果のみを捉えて、会社の対応が不誠実であるということはできない。

2 Aに対する平成25年10月25日付け賃金減額に関する団体交渉において、団体交渉が開催されるまでの会社の対応は不誠実な交渉態度であったといわざるを得ないが、その後の団体交渉をも考慮すれば、不誠実であったとまではいえない

3 会社は、組合から団体交渉の申入れがあった場合には、その開催期日の決定について誠実に対応しているといえることから、現時点において救済を命ずる必要性はないと判断する。

このような判断もあるので、会社としては、団体交渉にはできる限り応じましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為184 労組と合意することなく新制度を実施したことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、労組と合意することなく自動車通勤手当制度を実施したことが、不当労働行為に当たらないとした事案を見てみましょう。

JXTGエネルギー事件(中労委平成29年7月5日・労判1163号88頁)

【事案の概要】

本件は、労組と合意することなく自動車通勤手当制度を実施したことが、不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為に当たらない

【命令のポイント】

1 自動車通勤手当制度導入の経過についてみると、・・・従来の方法に替わる自動車通勤手当制度を実施することとしたことについては、経営上の必要性に基づく相応の合理性が認められるし、その対象も、組合の組合員のみではなく全従業員を対象として実施されたものであって、組合の組合員をそれ以外の従業員と比較して殊更差別的に取り扱ったものとはいえない。

2 Y社は、自動車通勤手当制度導入の趣旨や提案の内容等について、組合の理解を得るよう繰り返し説明を行い、約2年間にわたり相応の配慮をしながら団体交渉に臨んだものの、組合とY社との考え方の対立点について折り合いがつかなったことから、やむなく組合の合意なく組合の組合員に対しても自動車通勤手当制度を実施したものであって、交渉の過程において、殊更組合との合意の成立を阻害するような対応をしたとの事情も認められず、むしろ誠実に団体交渉に臨んでいたといえる。

3 さらに、そもそも通勤手当は、通勤に要する費用を実費弁償する性質のものであるところ、通勤手段が従業員の選択に委ねられている状況の下で、マイカー通勤を選択した者について前記のような算定基準によること自体が直ちに不合理とはいえず、また、この算定基準の具体的内容が、実費弁償の趣旨から逸脱しているとみられるような事情は、証拠上認められない。

組合員だけを殊更差別的に取り扱ったものではない以上、組合軽視ということにはなりません。

それにしても約2年にわたりこの件について団交を行ってきたようですが、気が遠くなりますね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為183 定年退職後の処遇と義務的団交事項(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合員の再雇用における労働条件等を団交事項とする団交の申入れについて、定年退職後の処遇は労働条件の変更に当たらず団交事項でないとして団交に応じなかったことが不当労働行為にあたるとされた事案を見てみましょう。

学校法人文際学園事件(大阪府労委平成29年3月13日・労判1161号90頁)

【事案の概要】

本件は、組合員の再雇用における労働条件等を団交事項とする団交の申入れについて、定年退職後の処遇は労働条件の変更に当たらず団交事項でないとして団交に応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 定年退職後も引き続き再雇用されることを前提とした組合員の再雇用後の労働条件に関する事項は、定年前の労働条件を踏まえた組合員の個別の労働条件の変更に該当し、労使で協議することが可能な労働条件であるとみるのが相当であり、義務的団交事項に該当するのは明らかである。

2 ・・・以上のとおり、組合員の再雇用後の労働条件は義務的団交事項であるにもかかわらず、Y社は交渉に一切応じていないのであるから、Y社の主張はいずれも採用できず、組合の団交申入れに対するY社の対応は、労働組合法7条2号に該当する不当労働行為である。

継続雇用が予定されている以上はまだ継続雇用が始まっていないからといって義務的団交事項にあたらないと判断するのは難しいでしょうね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為182 賃金体系変更協定に応じない組合員に対する対応と不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、賃金体系変更協定に応じなかった組合員に対して、協定外残業および公休出勤を認めず、勤務シフトの変更に応じなかったことが不当労働行為に当たらないとされた事例を見てみましょう。

札幌交通(新賃金協定)事件(北海道労委平成29年5月29日・労判1161号89頁)

【事案の概要】

本件は、賃金体系変更協定に応じなかった組合員に対して、協定外残業および公休出勤を認めず、勤務シフトの変更に応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 旧協定適用者に対し行った会社の取扱いは、賃金等の労働条件の低下を内容とする新協定に調印して会社の再建に協力してくれる新協定締結者を不利に扱うわけにはいかないとの考えによるものであり、かかる取扱いをすることは予告されていた。
また、会社は、X組合員だけでなく、同じく未調印であった非組合員11名に対しても同様の取扱いをしている。
組合が嘱託組合員についてのみ新協定に調印することを認めるよう要請したのに対し、会社が組合の一括調印でないと認めない旨の回答をしたのは、組合と組合に所属する組合員について別異の取扱いはできないと考えたからであり、そのような対応は組合に対してだけではなく、他の労組に対しても同様であった

2 そうすると、X組合員が受けた不利益は、組合が会社との交渉で自主的な選択をし、また、組合の方針ないし状況判断に基づいて選択した結果であるというべきであって、会社のかかる行為が組合に対する団結権の否認ないし嫌悪の意図が決定的動機として行われたと認めることはできない。

3 以上のとおり、会社が、同年7月21日から同年11月20日までの間、X組合員に対して協定外残業、公休出勤及びシフト変更を制限したことは、X組合員であること又は組合が正当な行為をしたことを理由とした不利益取扱いであるとは認められないので、法7条1号に該当する不当労働行為であるとはいえない。

組合員だけをことさら不利益に取り扱っているわけではないということを明らかにできれば不当労働行為にはなりません。

今回はそれがうまくいった例ですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為181 形式的な質問の繰り返しや回答の先延ばしの不当労働該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、労組による団交申入れの根拠が不明である等として、団交に応じなかった会社の対応が不当労働行為とされた事例を見てみましょう。

凸版印刷事件(東京都労委平成29年7月4日・労判1161号88頁)

【事案の概要】

本件は、労組による団交申入れの根拠が不明である等として、団交に応じなかった会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

なお、会社は、労組からの団交申入れに対し、文書において、会社と労組には使用従属関係がなく、労組が団交申入れのできる事実的および法律的根拠を示すよう求めると回答し、その後も、労組が団交を申し入れる根拠を回答するよう求めるなどして、団交に応じなかった。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 会社の上記一連の対応をみると、会社は、組合に対して形式的な質問を繰り返すことにより、組合からの団体交渉申入れに対する回答を理由なく先延ばしにし、開催日時、場所等、団体交渉応諾についての回答を避け続けているものといわざるを得ない。

2 会社は、組合から団体交渉申入れを受けた当時、凸版組合との二重交渉のおそれがあったと主張する。
確かに、当時、Aは、凸版労組と組合の両方に加入していたが、組合の3月31日付団体交渉申入書には、凸版労組がB部長のAに対するパワハラについて「扱わない」こととしたため、Aが組合に加入した旨の記載があり、また、凸版労組が、会社に対し、組合が提示した議題について団体交渉を申し入れたことはなく、会社が組合及び凸版労組に対して交渉権限の有無を質問したり、その調整を求めたりしたことはなかった。したがって、会社の主張は、採用することができない。

私はあまりこういう入口での議論はせず、できるだけ団体交渉を行うほうがよいと考えます。

形式的な議論に終始して、結果、不当労働行為になるのでは本末転倒です。

中身の話をするほうがよほど生産的です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。