Category Archives: 不当労働行為

不当労働行為210 労組の情宣活動と使用者の団交拒否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、労組の申し入れた組合員の復職等を議題とする団交に応じなかった会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるが、支配介入には当たらないとされた事案を見てみましょう。

重田事件(東京都労委平成30年3月6日・労判1187号91頁)

【事案の概要】

本件は、労組の申し入れた組合員の復職等を議題とする団交に応じなかった会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

団交拒否にはあたるが支配介入にはあたらない

【命令のポイント】

1 会社は、組合が正当な組合活動の範囲を逸脱した情宣活動について言及したことが、会社が組合の主張及び要求を全て認めるよう強要するものであるから正当な団体交渉の申入れではないと主張する。
しかし、組合が記載した情宣活動は直ちに違法と判断されるような内容のものではなく、しかも、いまだ実行されてもいなかった。また、そもそも本件記載は、団体交渉の「申し入れを拒否する場合は」と書かれており、会社が組合の主張や要求を全て認めなければ、組合が本件記載の行為を実行すると理解することもできない。
したがって、会社の主張は、団体交渉を拒否する正当な理由とはなり得ないものであり、採用することができない。

2 会社は、A2が、ごみ箱内にあったわけでもないワインを拾得したことについて報告や引継ぎも行わず、自身の専用ロッカーに入れていたこと等から、同人によるワインの拾得が窃盗ないし横領に当たることが明白であると考えたことに加え、同人も会社の処分に従うと申し出て退職の意思を表示したと判断していたことから、もはや組合との団体交渉により復職に向けて交渉する段階にはないと考え、7月21日付回答書に至ったとみるのが相当である。そして、組合も、それ以上に会社に団体交渉を働きかけることなく、同回答書の受領後直ちに本件不当労働行為救済申立てを提起していることからすると、この回答が組合の活動を制限し、組合の運営を阻害し弱体化させるものであったとまでは認めることはできない
したがって、会社が団体交渉に応じなかったことが支配介入に当たるとまではいえない。

特に上記命令のポイント1は注意しましょう。

このような理由では団体交渉を拒否する理由とはなりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為209 定年前人事考課を理由とする再雇用拒否と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、定年退職後再雇用を希望する組合員に対し、定年前人事考課が低く再雇用基準を満たしていないとして再雇用しなかったことを不当労働行為とした事案を見てみましょう。

医療法人社団更正会事件(中労委平成30年3月7日・労判1187号90頁)

【事案の概要】

本件は、定年退職後再雇用を希望する組合員に対し、定年前人事考課が低く再雇用基準を満たしていないとして再雇用しなかったことを不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 本件二段階引下規定は、人事考課表不提出者に対して、最終評価ランクの決定の段階で目標評価3項目を既にマイナス16点という不利な評価をしたことに加えて、最終評価を二段階引き下げるという二重に不利な評価を行うものである。そしてその不利な評価は、給与額や賞与額という重要な労働条件のみならず、定年後の再雇用にも重大な不利益を及ぼすものである。本件二段階引下規定は、このように広範かつ重大な不利益を生じさせるものであるが、その重大な不利益を緩和する段階的な適用や措置は想定されていない

2 このような本件二段階引下規定が導入されたのは、組合がA1支部結成以来一貫して人事考課制度に反対して情宣文書の配布やストライキ等の闘争を行い、遂には人事考課表提出拒否闘争を行うに至ったことを契機とするものであり、人事考課制度をめぐる労使関係の対立が顕著となる中で行われたものであった。そして、単に人事考課表の提出拒否を防止するための措置というには不相当に重い本件二段階引下規定を、何らの段階的適用や緩和措置を検討することなく導入するにあたって、法人は、本件二段階引下規定の適用対象者が事実上、組合員のみであることを、上記経緯から、十分に認識していたといえる。

3 以上からすると、同規定は、組合の人事考課制度に対する反対運動を嫌悪した法人が、人事考課表を提出しない組合員を狙い撃ちにして殊更に重い不利益を与え、特に再雇用との関係では、同規定の適用によって、再雇用拒否により組合員が法人から排除される結果をもたらすことを認識・認容した上で定めたものと認めるのが相当である。

法人側の気持ちも理解はできますが、このようなやり方では不当労働行為と評価されてしまうのも仕方ありません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為208 工場長が委員長である労組との団交拒否と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、工場長が委員長となっている支部の適法性に疑義があるなどとして、支部の申し入れた夏季一時金等に関する団交に応じなかった会社の対応が不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

東部重工業事件(千葉県労委平成30年3月14日・労判1185号91頁)

【事案の概要】

本件は、工場長が委員長となっている支部の適法性に疑義があるなどとして、支部の申し入れた夏季一時金等に関する団交に応じなかった会社の対応が不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 工場長の人事労務に関する権限等について、会社は、工場長には人事権限があり、その内容は、採用、配置、賞与考課など、人事の直接的権限ないし、労働関係に関する機密に接するものである旨主張するが、期末評価実施要領によれば、工場長は、副工場長以下の従業員の一時評価者に位置付けられているものの、その二次評価者として部長がおり、最終評価者は役員会となっている
また、・・・A委員長が採用面接に参加したことや、当時の工場長及び副工場長が部下の賞与考課を行っていることは認められるものの、工場長の判断により、採用や賞与考課が決定されるとの事実を認めるに足りる証拠はない

2 したがって、会社において、工場長は人事に関する事務に従事するものの、決定権限の行使につき補助的・助言的地位を超えて、人事の直接的権限を有しているとまでは認められず、その他、使用者の利益を代表する者として、その参加を認めることによって、労働組合の自主独立性を損なうものとなるような重大な権限や責任を有していたと認めるに足りる事実はない
よって、工場長の職にある者を労組法第2条ただし書第1号に該当する使用者の利益を代表する者と認めることはできない。

上記命令のポイント2の考え方は理解しておく必要があります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為207 代理店主の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社と代理店契約を締結して会社の商品を販売する代理店主は労組法上の労働者といえないから、代理店主の組織する労組は労組法による救済を受ける資格を有しないとされた事案を見てみましょう。

シャルレ事件(東京都労委平成30年4月3日・労判1185号90頁)

【事案の概要】

本件は、会社と代理店契約を締結して会社の商品を販売する代理店主が労組法上の労働者にあたるかが争われた事案である。といえないから、

【労働委員会の判断】

労組法上の労働者とはいえない

【命令のポイント】

1 本件における代理店は、①会社の事業遂行に不可欠な販売組織として組み入れられており、②会社が本件代理店契約の内容を一方的・定型的に決定しているということができるが、③代理店が得る収入に労務対価性は認められず、④会社からの個別の業務の依頼に応じずべき関係にあるということもできず、⑤業務の遂行に当たり会社の指揮監督下に置かれているとも、時間的場所的な拘束を受けているともいえない一方、⑥強い事業者性を認めることができる

2 本件代理店主は、自己の裁量にて、傘下の下位販売者により形成される組織の維持及び拡大を図りつつ、本件代理店契約や会社のビジネスルールに従って商品を販売する、会社の事業取引の相手方とみるほかなく、会社との関係において、労組法上の労働者であると認めることはできない。

ときどき「え!これで労働者性が認められる?」みたいな判断がなされることがあるため、どうしてもチャレンジしたくなってしまうところです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為206 組合員に対する残業禁止と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労組に加入し、自らの労働条件を明らかにするよう求めたXに対し、残業を行わないよう指示し、固定残業代である業績時間外手当を不支給にしたことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

ケミサプライ・アマックス(残業差別)事件(福岡県労委平成30年7月30日・労判1185号89頁)

【事案の概要】

本件は、労組に加入し、自らの労働条件を明らかにするよう求めたXに対し、残業を行わないよう指示し、固定残業代である業績時間外手当を不支給にしたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 28年7月頃、Xは業務の状況にかかわらず18時までには退勤するように指示されただけでなく、29年5月頃からは、残業を一切しないように指示されたが、他の従業員はそのような指示を受けておらず、Xが退勤する際にも業務を続けていたことが認められる
したがって、Y社はXに対し、残業指示について非組合員と異なる差別的取扱いを行ったものといえる。

2 そもそも「業務時間外手当」は、賃金規程で定められ、Xの賃金の一部を構成するものであり、その支給を一方的に停止することは、労組法7条1号にいう「不利益な取扱い」であったと認められる。
Y社は、Xに対する29年5月分給与以降の「業務時間外手当」の支給を停止したが、この会社の行為は、団交に出席し、当労働委員会への救済申立てにも関わり、さらに、自身についての時間外手当に係る本件労働審判を申し立てるなどの組合活動を行うXに対して、それまでは行っていた残業指示をしないことで「普通残業手当」の支給を受けられないという経済的不利益を与えることに加え、さらに「業務時間外手当」を支給しないことで困窮させようとする意図で行われたものと解さざるを得ないのであり、Y社は、Xのこのような組合活動を嫌悪した上で「不利益取扱い」を行ったものといえる。

これだけわかりやすいと不当労働行為と判断されても仕方ありません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為205 ビラ配布に対する会社の警告書送付と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合員の労災にかかる団交申入れに対する会社の対応および労組のビラ配布等の宣伝活動に対する会社の警告書送付がいずれも不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

三協技研工業ほか1社事件(神奈川県労委平成30年2月26日・労判1183号90頁)

【事案の概要】

本件は、組合員の労災にかかる団交申入れに対する会社の対応および労組のビラ配布等の宣伝活動に対する会社の警告書送付がいずれも不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

具体的には、以下のとおりである。

組合は、Y2社の取引先であるA1社及びA2社の社前等においてビラを配布する等の宣伝活動を行った。Y2社は、組合に対し、再び宣伝活動を行った場合、法的手段を採るとともに、名誉棄損罪および業務妨害罪で刑事告訴する旨記載した警告書を送付した。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 確かに、組合には、憲法28条に基づく団体行動権が保障されている。
しかし、A1社及びA2社は本件労災とは全く関係のない第三者であり、これらの者に対して宣伝活動をしても、本件労災に端を発する一連の問題の解決に直結するものとはいえない以上、Y2社が組合に警告書を送付したことには相応の理由があると認められる。
よって、Y2社が組合に警告書を送付したことは、組合の運営に対する支配介入には当たらない。

会社側の対応としては、難しいところですが、結果としては不当労働行為にあたらないということです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為204 使用者が労働者のうち誰が組合員かを知ろうとすることは問題があるか?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、会社が、労組と団交をすることなくパート社員の昇給を発表したこと、組合員のみ現在の給与金額で契約更新の手続きをする旨連絡したこと、労組役員の倉庫立入要求を拒否したことがいずれも不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

PALTAC事件(広島県労委平成30年2月23日・労判1183号91頁)

【事案の概要】

本件は、会社が、労組と団交をすることなくパート社員の昇給を発表したこと、組合員のみ現在の給与金額で契約更新の手続きをする旨連絡したこと、労組役員の倉庫立入要求を拒否したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

いずれも不当労働行為に当たらない

【命令のポイント】

1 昇給発表自体は会社の自由になし得ることからすると、会社が29年昇給の発表を行ったことは、不当労働行為には当たらない。

2 使用者がその雇用する労働者のうち誰が組合員であるかを知ろうとすることは、それ自体として禁止されているものではないところ、会社が連絡文書において、会社が把握している組合員に誤りや漏れがあれば連絡するよう求めたのは、現在の給与金額で契約更新の手続きをしなければならない組合員を確認するためであったと認められる。
そうすると、会社が、・・・通知をしたことは、団体交渉の形骸化を狙ったものであるとも、組合活動の萎縮、妨害を意図するものとも認められず、不当労働行為に該当しない。

3 使用者が従業員ではない社外の第三者の会社構内への立入りを認めるかどうかは、原則として、施設管理権の行使として使用者の裁量的判断に委ねられているところ、会社の社員ではない組合本部役員の立入りを拒否したことが直ちに支配介入の不当労働行為に該当するとはいえない。

特に上記命令のポイント2は押さえておきましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為203 組合機関誌回収指示に従わなかった組合員に対する自宅待機命令と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、組合機関誌を配布した組合役員5名に対し、回収の指示に従わず、真面目な反省と謝罪がないとして自宅待機を命じたことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

市川学院事件(兵庫県労委平成30年2月22日・労判1180号154頁)

【事案の概要】

本件は、組合機関誌を配布した組合役員5名に対し、回収の指示に従わず、真面目な反省と謝罪がないとして自宅待機を命じたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 組合機関誌は、いずれも終業時刻後という、生徒が職員室等に入室する頻度が比較的少ない時間帯に、生徒の目に触れにくい方法で配布されており、生徒に対する教育的配慮がなされているものと認められる

2 Y社は、2年前の署名依頼文書の件以来、組合に対して、組合機関誌の配布を自粛するよう繰り返し要請しているが、この自粛要請の趣旨について前記のとおり、理事長が本件審問において明確には供述していないことに加え、自粛要請に従わずに配布した「X2○号」を配布直後にY社が自力で回収するという所為に出たことを併せ考えると、Y社による自粛要請は、実質的には校内における一切の組合機関誌の配布を禁止する趣旨であると解される。したがって、組合機関誌の配布がY社の業務運営上も生徒に対する教育的配慮の上でも問題があるとは認められないにもかかわらず、Y社が取った一連の対応は、反組合的動機に基づくものと言わざるを得ず、組合を嫌悪し、組合の弱体化を狙ってなされたものであると認められ、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当する。

3 本件自宅待機命令は、平成28年9月12日に解除されたが、本件自宅待機命令によりA1ら5人が被った精神的不利益は回復されておらず、また、Y社が解除した理由は、A1ら5人に対する自宅待機命令を維持したままにすると授業に支障を来すからであって、本件自宅待機命令が不当労働行為に該当することを認めたためではないことからして、Y社は、今後も組合機関誌の配布に理事長の承認を要求し、承認なく配布した場合、自宅待機命令等の不利益取扱いや組合に対する支配介入を繰り返すおそれは消えていないので、未だ救済の必要性が失われたとは言えない

上記命令のポイント3は参考になりますね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為202 ストを行った組合員に対する遅刻届・始末書の要求と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、ストライキを行った組合員2名に対して遅刻届および始末書の提出を求めたことが不当労働行為にあたるとされた事案を見てみましょう。

日本郵便(新大阪郵便局)事件(大阪府労委平成30年3月27日・労判1180号153頁)

【事案の概要】

本件は、ストライキを行った組合員2名に対して遅刻届および始末書の提出を求めたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 労働関係調整法第37条の規定は、抜き打ちストによる公衆の生活への被害の防止を図る規定であって、使用者自体の利益を保護する規定ではなく、労働組合が同条違反の争議行為を行った場合でも、争議行為予告がなされなかったことにより公衆に不当な損害を与え使用者にその損害補てんの責任を余儀なくさせるなどの特段の事情のない限り、使用者との関係において直ちに違法となるものではない。

2 Y社が、本件ストライキが違法なストライキであることを理由に、本件ストライキに参加した組合員らに対し、ストライキによる不就労について遅刻届及び始末書の提出を求めたことに、正当な理由は認められない

3 そもそも、遅刻届や始末書の提出を求めること自体に正当な理由が認められない上、始末書の提出は、それ自体が懲戒処分ではないとしても、Y社も主張するとおり非違行為に対する弁明の機会を与えるものである以上、本件ストライキが非違行為に該当するとの前提の下、何らかの懲戒処分が行われることを予期させるものであるし、また、遅刻届の提出についても、始末書と同時にその提出を求めることで、上記予期を一層強める効果を持つものであるといわざるを得ない。

4 Y社が本件ストライキについて組合員らに対して遅刻届及び始末書の提出を求めたことは、労働関係調整法所定の手続が採られていなかったことを盾に取って組合の活動をけん制するものであったといわざるを得ず、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

労働関係調整法37条は以下の内容です。

「公益事業に関する事件につき関係当事者が争議行為をするには、その争議行為をしようとする日の少なくとも十日前までに、労働委員会及び厚生労働大臣又は都道府県知事にその旨を通知しなければならない。」

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為201 労組への加入の意向に関する質問と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、パートタイマーとの雇用契約の締結および更新に当たり、労組への加入の意向を質問したり、その旨の記載のある雇用契約書を使用したことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

サンプラザ事件(大阪府労委平成29年12月11日・労判1178号94号)

【事案の概要】

本件は、パートタイマーとの雇用契約の締結および更新に当たり、労組への加入の意向を質問したり、その旨の記載のある雇用契約書を使用したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 通常、雇用契約の締結において、使用者が労働者よりも優位な立場にあるのだから、各パートタイマーが本件ユニオン条項にはいと回答しなければ、契約が締結されない可能性があると感じるのも無理からぬものであって、かかる様式の変更は、実質的には、Zへの加入を勧奨又は強要するものと解され、中立保持義務に違反し、Zの組織強化を助け、もって組合の弱体化をもたらすものであることは明らかである。また、Y社は、Zの組織強化を助け、もって組合の弱体化を企図して、本件ユニオン条項を追加するなどしたものと推認される。
さらに、本件の中立保持義務違反は、雇用契約の締結という労使関係の根幹に係る局面で行われており、本件ユニオン条項は組合の活動に影響を及ぼすものと判断される。

まあ、そうでしょうね。

同様のアンケートを取ることもまた不当労働行為に該当する可能性が高いですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。