Category Archives: 不当労働行為

不当労働行為220 団交における抽象的な説明と誠実交渉義務(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、非常勤講師の契約更新を議題とする3回の団交における大学の対応及びその後の団交申入れに応じなかったことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

学校法人明治大学(非常勤講師・更新拒絶)事件(東京都労委平成30年12月18日・労判1196号92頁)

【事案の概要】

本件は、非常勤講師の契約更新を議題とする3回の団交における大学の対応及びその後の団交申入れに応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 大学は、第1回及び第2回の団体交渉では、Bの雇止め理由について、A学部の判断を支持するという結論を述べるだけで、教育機関として妥当と判断した、一連の総合的な判断を支持した等の抽象的な説明を繰り返し、A学部が、本件事務折衝の経過を踏まえた上で、Bとの信頼関係を回復できず、同人を雇止めにすると判断するに至った具体的な根拠等について、何ら回答していない。また、大学は、第3回の団体交渉において、Bの雇止めの理由と謝罪文の評価について回答したものの、雇止め決定プロセスや29年度のBの雇用に係る組合の質問には明確な回答をしておらず、信頼関係の回復についての議論になることもなかった。
本件事務折衝において、大学が、今後信頼関係の措置が執られるのであれば、29年度の雇用を検討する余地がある旨説明していたことからすれば、Bの29年度の雇用に向けた適時の交渉が必要であったにもかかわらず、本件代替交渉における大学の上記対応は、組合とA学部が事務折衝を重ねて詰めてきた議論を後戻りさせるものといえ、事務折衝の経緯を踏まえた上で交渉が継続できるような対応であったとは到底いうことができない。
大学は、A学部の教授を出席させるか、又は、A学部から十分な説明を受けた理事を出席させ、事務折衝の経緯を踏まえた上での交渉に努めるべきであったといえる
したがって、本件団体交渉における大学の対応は、不誠実な団体交渉であったといわざるを得ない。

2 ・・・これは、要求事項について交渉の余地はなく、団体交渉が行き詰まっていることを理由に、組合が従前の要求事項を繰り返す限り、団体交渉に応じる必要がないとの意思を示したものと解釈するほかなく、団体交渉を拒否したものといえる
そして、前記で判断したとおり、本件団体交渉において、大学は誠実交渉義務を尽くしておらず、団体交渉が行き詰まりの状態に達していたとは認められないから、大学が組合の28年9月19日付及び11月11日付団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

上記命令のポイント1のようなケースはよく目にします。

一応説明はしているけれど、抽象的な説明にとどまっており、具体的な根拠資料等を提示しない場合には、不誠実団交と判断される可能性がありますので注意が必要です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為219 労組委員長の雇止めと不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、交通事故等を理由に労組委員長の再雇用契約を更新せず、雇止めにしたことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

太宰府タクシー事件(福岡県労委平成30年11月2日・労判1196号93頁)

【事案の概要】

本件は、交通事故等を理由に労組委員長の再雇用契約を更新せず、雇止めにしたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 A1は、約9年間組合の執行委員長を務め、組合活動の中心的な人物であった。

2 会社は、5月3日の苦情の前には、A1の雇止め及び解雇について、社内で検討したことがなかったにもかかわらず、5月3日の苦情の件については、その2週間後の同月17日に懲戒処分通知を発し、同時に本件雇止め通知を発するなど、本件雇止めを性急に決定した

3 会社では、料金メーターを不正操作するなど懲戒解雇事由に該当する行為を行った従業員に対しても雇止めは行われておらず、A1に対する本件雇止め以外に雇止めの事例はない

4 上記の各事実から、会社による本件雇止めは、会社が組合の執行委員長であるA1を嫌悪し、同人を会社外に放逐することにより、組合活動を困難にさせることを企図して行われたものと十分推認できる。

5 以上のとおり、本件雇止めは、組合活動の中心的な存在であるA1を嫌悪してなされた不利益取扱いと認められ、同時に、組合活動を委縮させるものであるから、労組法7条1号及び3号に該当する不当労働行為である。

上記命令のポイント1~3のような事情があると雇止めの合理性を肯定するのは難しいでしょうね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為218 書面による回答と団交応諾義務(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労組の団交申入れに対して、一部の事項について書面による回答だけを行ったこと、および開催条件に固執して団交を拒否したことなどの会社の対応を不当労働行為とした初審命令が維持された事案を見てみましょう。

アート警備事件(中労委平成31年1月31日・労判1196号90頁)

【事案の概要】

本件は、労組の団交申入れに対して、一部の事項について書面による回答だけを行ったこと、および開催条件に固執して団交を拒否したことなどの会社の対応の不当労働行為該当性が争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 団体交渉は、労使双方が同席、相対峙して自己の意思を円滑かつ迅速に相手に直接伝達することによって、協議、交渉を行うことが原則であり、労使双方の合意がある場合又は直接話し合う方式を採ることが困難であるなど特段の事情がある場合を除いては、書面の回答により団交が実施されたことにはならないというべきである。

2 会社が組合に対して送付した書面による回答等は、その内容からして、形式的にも実質的にも団交の体をなしておらず、「対面による団交」の代替となりうるようなものであったとは到底いえないことが明らかであるし、そもそも書面により団交が実施されたといえる場合についての上記の要件を満たしていないことも明らかである。そして、これらの会社の対応は、組合からの申入れによる団交が実施されていないことだけにとどまらず、会社が団交申入れを拒絶したものと十分に評価できることも明らかである。

3 団交実施に当たって、一方当事者が団交の場所や時間、議事の進行その他について実施のための条件を付すことは、相手方に異存がない場合のほか、団交を円滑に実施するための有効、適切かつ合理的な必要性と相当性が認められ、かつ相手方の利益等を不当に害するものでないときには、許されないわけではない。しかし、・・・一方当事者が設定した条件に応じない限り団交を実施しないことに正当な理由があると認められるのは、その条件について上記の必要性や相当性が明らかに認められ、相手方がこれを拒絶することが不当と評価できる場合に限られると解される。

4 会社は、義務的団交事項に係る27年各団交申入れにつき、それ以前の対応も含め、組合に団交3条件の受入れを求め、これを不当とする組合からの協議の申入れ等を拒絶し、上記の前提を明らかに欠く団交3条件に固執して、上記の事実経過のとおり長期間にわたって現在まで団交を開催していないのであるから、正当な理由がない団交拒否であることは明らかである。

団体交渉に関する基本的ルールが書かれています。

特に目新しい内容ではありませんが、大切な点なのでよく理解しておきましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為217 組合員に対する直接交渉と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、子会社2社が、平成27年8月18日付で労組の申し入れた土地売却等に伴う雇用問題に関する団交に応じない対応をとったことは支配介入の不当労働行為に当たるとした事案を見てみましょう。

昭和ホールディングスほか事件(中労委平成30年11月21日・労判1194号89頁)

【事案の概要】

本件は、子会社2社が、平成27年8月18日付で労組の申し入れた土地売却等に伴う雇用問題に関する団交に応じない対応をとったことは支配介入の不当労働行為に当たるかが争われた事案を見てみましょう。

【労働委員会の判断】

不当労働行為に当たる

【命令のポイント】

1 8月18日付け団交申入れに係る団交事項である「柏工場土地約1万坪の譲渡にともなう雇用問題」は義務的団交事項であるといえ、子会社2社がこれに応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否であり、労組法7条2号の不当労働行為が成立する。

2 8月27日付け団交申入書に係る具体的な団交事項は、いずれも子会社2社の処分可能あるいは説明可能な事項であるとはいえないし、直接に組合員の労働条件に係る問題であるともいえないから、義務的団交事項には当たらず、この点に関し子会社2社の不当労働行為は成立しない。

3 労使関係が緊張状態にある中で、・・・組合らからの団交申入れを拒むと同時に、あえて従業員宛てとしてその団交事項に係る内容について書面での回答を行うことは、殊更に組合らを無視し、組合員らやその他の従業員をして、その交渉力に疑問を抱かしめ、組合を弱体化させるおそれがある対応というべきであり、このことは、子会社2社も十分に認識していたということができる。

上記命令のポイント3のような対応は注意しなければいけません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為216 貸切バスの担当者変更の合理的理由の有無と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、貸切バスの担当者変更の一部は合理的理由が認められ、不当労働行為に当たらないものの、その一部は組合員に対する配車差別の不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

船木鉄道事件(山口県労委平成30年10月25日・労判1194号90頁)

【事案の概要】

本件は、貸切バスの担当者変更が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

貸切バスの担当者変更の一部は合理的理由が認められ、不当労働行為に当たらないものの、その一部は組合員に対する配車差別の不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 本件担当者変更は、観光部長がその変更案の作成検討に着手する前の時期から決定に至る経過において、Y社にZ労組を優先する意図があったこと、また、それに伴って混乱が生じたことが明白であるから、Y社(特に現社長)がX労組に比して、Z労組を有利に扱う組合間差別を行っているものと認めざるを得ない
組合間差別が存在することは、ひいては、Y社に不当労働行為意思が存在することを推認させるに十分であり、これを前提とすると、本件担当者変更に合理的理由がない限り、当該措置が不当労働行為に直結すると考えざるを得ない。

担当者変更については、合理的理由の有無がカギとなりますが、その中でも決定したタイミングが重要になります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為215 組合掲示板設置の便宜供与拒否と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、市に勤務する労組の組合員が1名であることなどを理由に、労組の要求する掲示板設置等の便宜供与を拒否したことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

東大和市事件(東京都労委平成30年7月17日・労判1194号92頁)

【事案の概要】

本件は、市に勤務する労組の組合員が1名であることなどを理由に、労組の要求する掲示板設置等の便宜供与を拒否したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 正規職員の約6割を組織する職員団体と、非正規職員1名のみを組織する組合とでは、組織規模に大きな違いがあり市の施設を利用する必要性等の事情も異なるであろうことなどを考慮すれば、併存組合である職員団体が組合掲示板設置等の便宜供与を受けているとしても、そのことから、直ちに組合に本件便宜供与一式が認められるべきであるとまでいうことはできない。そして、第6回団体交渉において、市が本件便宜供与一式の拒否理由として説明した、組合掲示板設置については、組合事務所貸与については、物理的にスペースがないことなどについても、一概に不合理な理由であると断ずることはできない。

2 本件便宜供与一式の具体的内容は、組合掲示板設置のほか、組合事務所貸与、内線電話の設置・利用、郵便物取次ぎ、終業時間内の短時間組合用務の黙認などを含んだ多様なものであったところ、市は、比較的軽易で使用者の負担も軽いと思われる事項についても、一律に拒否する旨を回答している。こうした事項について、職員団体への便宜供与を認める一方で、組合に対しては一切認めない市の対応には疑問がないではない
しかしながら、組合は、職員団体が市から多様な便宜供与を受けていることを踏まえて、職員団体に認めて組合に認めないのは差別的取扱いであるなどとして、職員団体と同じ扱いにするよう求めており、本件便宜供与一式を一括して要求していることから、市の回答は、こうした組合の要求方式に対応したものとみることができる。そして、組合は、団体交渉において、組合が最重要視していた組合掲示板設置以外の個別の事項について、切り離して要求する姿勢をみせてはいないのであり、組合掲示板設置の代替案として市が置きビラの提案を行い、それについての協議が行われたことは上記判断のとおりである。
そうすると、組合が29年1月13日に初めて本件便宜供与一式を要求した後の最初の交渉となる第6回団体交渉において、具体的な交渉に入る前の段階の回答で、市が、本件便宜供与一式の一切を拒否し、その回答を変えていないことをもって、支配介入に当たるとまではいえない

非常に参考になる判断です。

是非、団体交渉を行う際に頭に入れておいてください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為214 組合員の雇止めが不当労働行為とならない場合(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、契約期間満了を理由に有期雇用職員である組合員の契約を更新しなかったことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

国立研究開発法人情報通信研究機構事件(東京都労委平成30年2月20日・労判1190号94頁)

【事案の概要】

本件は、契約期間満了を理由に有期雇用職員である組合員の契約を更新しなかったことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 ・・・これらの事実からすると、委託研究推進室においては、Y社がXらの組合加入を認識する以前から、28年度以降の業務体制の変更を検討しており、それまでXらが担当してきた経理検査業務についても、ベテランである同人らの経験や実績のみに頼ることのない組織体制作りを模索していたことがうかがえる
その適否の評価はともかくとして、Y社は、Xらの組合加入を認識する以前から、28年度以降の経理検査の業務体制変更を検討し、28年度以降、Xらを含む委託研究推進室における一般職有期雇用職員の採用数を絞ろうとしていたことが認められるのであり、一方、Y社が、Xらが組合員であることやその組合活動を理由として、同人らの公募不採用を決定するに至ったことをうかがわせる事情は、特段見当たらない。これと上記の事実を併せ考えれば、Xらの不採用が同人らの組合加入を理由とするものであるとみるのは困難であるといわざるを得ない。

2 よって、Y社が、28年4月1日以降、Xらを雇用しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらない。

上記のような事情があるため、Xらの不採用と組合加入との因果関係は否定されました。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為213 労組加入を公然化した組合員の雇止めが不当労働行為とならない場合(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、労組加入を公然化した組合員との非常勤講師契約を再締結しなかったことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

学校法人文際学園(非常勤講師)事件(中労委平成30年2月21日・労判1190号93頁)

【事案の概要】

本件は、労組加入を公然化した組合員との非常勤講師契約を再締結しなかったことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 X組合員については、①ECSで日本語を使用し、学生らが日本語を使用していても注意しないこと、学生らが授業に集中していなかったという問題が認められ、②また、これらの点についてのB専任教員からのフィードバックに関しても前向きな態度ではなかったこと、③さらに、学生満足調査における結果が悪かったことなど、24年11月中頃までに法人が把握した事情により、本件雇止めが決定されたと認められる。
そして、講義の質、学生の満足度などの点は非常勤講師契約においても再契約の考慮要素とされており、特に、X組合員の担当していたECSは、英語によるコミュニケーションを重視する授業であること、非常勤講師は原則として学期単位の有期契約であり、X組合員が当然に再契約を期待できる事情もなかったことも併せ考慮すれば、本件雇止めには相応の理由があるといえる。

2 本件雇止めの通知の時期は異例とはいえないこと、X組合員には当然に非常勤講師の再雇用を期待できるような事情も認められず、雇止めに相応の理由もあることからすれば、本件雇止めの通知が組合加入の公然化後間もない時点でされたことや、本件雇止め後の労使交渉の経緯を十分に考慮しても、本件雇止めが、組合員であるなどの労組法7条1号所定の理由によりされたものであるとは推認できないというべきである。
以上によれば、本件雇止めは組合員であるが故の不利益な取扱いであるとはいえず、労組法7条1号に規定する不当労働行為には当たらない。

従業員の組合加入の公然化と重なったことからこのような紛争が起きてしまいましたが、

上記命令のポイント1のように雇止めの理由に合理性が認められれば、不当労働行為とはなりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為212 併存組合が存在する場合の使用者の対応と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社内に併存する2労組に掲示板を貸与しながら、新たに結成された労組の下部組織に掲示板を貸与しなかったことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

山陽タクシー事件(兵庫県労委平成30年10月25日・労判1189号183頁)

【事案の概要】

本件は、会社内に併存する2労組に掲示板を貸与しながら、新たに結成された労組の下部組織に掲示板を貸与しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は併存組合に対しては、具体的条件を付さずに掲示板を貸与しながら、A1分会に対しては、これを貸与せず、その異なる取扱いについて合理的な理由は認められないので、Y社がA1分会に対して掲示板を貸与しないことは、A1分会を不当に差別して取り扱い、組合の弱体化を図ったものと認められ、労組法7条3号の不当労働行為に該当する。

団体交渉でもよく掲示板の貸与の話が出されますが、併存組合が存在する場合には、その対応に注意しなければなりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為211 セクハラ発言を理由とする解雇と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、葬儀場のマイクロバス運転手である組合員を、セクハラの言動を理由に解雇したことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

日本セレモニー事件(福岡県労委平成30年9月21日・労判1190号92頁)

【事案の概要】

本件は、葬儀場のマイクロバス運転手である組合員を、セクハラの言動を理由に解雇したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Xに対する解雇は、相当性に欠けるものであり、他の懲戒処分を選択することも十分考えられたにもかかわらず、Y社は、Xへの直接の事情聴取も行わず、また、他の懲戒処分を検討することもないまま短期間に重い処分である解雇を選択して本件解雇を行ったものであり、このようなY社の態度は、当初からXについては解雇しか検討していなかったのではないかと考えざるを得ない

2 ・・・さらに、Xが各団交において積極的に発言していることが認められるとともに、Y社は、XがY社のパート従業員らに対して、何か困ったことがあったら自分が強い人を紹介する、などと話していることを認識していた。

3 このような本件解雇に至る経緯、これまでの労使関係及び前記のとおり本件解雇が相当性に欠けることを併せ考慮すると、本件解雇は、Y社が、労働条件の交渉において容易に譲歩しようとしない組合を嫌悪して行ったものといえる

4 以上のように、本件解雇は、労組法7条1号に該当する。また、本件解雇によって、Y社は唯一の組合員を排除したのであるから併せて労組法7条3号にも該当する。

会社が、実際には本件解雇について不当労働行為意思がなかったとしても、上記命令のポイント記載の事情があると不当労働行為意思を認定されてしまいます。

いずれにしても解雇は慎重に行う必要があります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。