Author Archives: 栗田 勇

本の紹介2100 凡人起業#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

特別な能力がなくても、日々、人よりも多くの努力を続けられれば、一定の成果を出すことはできます。

途中で投げ出さないことがなによりも大切なのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

スティーブ・ジョブズでさえも、アイデアとは降ってくるものではなく過去から生まれてくるものだとスピーチしています。『未来に先回りして点と点をつなげることはできない。きみたちにできるのは過去を振り返って点と点をつなげることだけだ。だから点と点が、いつかなんらかのかたちでつながると信じなければならない。自分の根性、運命、人生、カルマ、なんでもいいから、とにかく信じるのです。」(208頁)

一見、遠回りに見えることも、いつか過去を振り返ったときにその時の経験が「点」となり、どのように作用するかはわかりません。

自分がやりたいことだけに固執するのではなく、与えられた環境、与えられた条件の下で一生懸命に目の前のことをやってみる。

これこそがいつか来る「connecting the dots」の「dot」となるのです。

「配属ガチャ」なんて言っているうちは、この感覚、この発想にはたどり着けません。

配転・出向・転籍56 医師の配転命令先における義務不存在仮処分等の申立て(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、医師の配転命令先における義務不存在仮処分等の申立てに関する裁判例を見ていきましょう。

市立東大阪医療センター事件(大阪地裁令和5年8月31日・労判ジャーナル141号16頁)

【事案の概要】

基本事件は、Y社によって運営されているaセンターにおいて勤務していた医師であるXが、Y社によるbセンターへの本件配転命令が無効であると主張して、①bセンターにおいて勤務する労働契約上の義務がないことを仮に定めるとともに、②aセンターにおける就労請求権を前提に、aセンターにおける就労を妨害しないことを命じるよう求める旨の申立てをした事案である。
本件は、Y社が、本件申立てを認容した原決定を不服として、原決定の取消し及び本件申立ての却下を求める保全異議を申し立てた事案である。

【裁判所の判断】

債権者と債務者との間の大阪地方裁判所令和4年(ヨ)第10007号地位保全等仮処分申立事件について、同裁判所が令和4年11月10日にした仮処分決定を認可する。

【判例のポイント】

1 上記中期計画には、医療センターとして担うべき役割のうち救急医療について、「a救命救急センターとの連携を強化することで、多数の二次・三次救急患者を受け入れ、重症度、緊急度に応じた適切な医療を提供する体制の確保を図る」旨の記載があるにとどまり、救急医療に携わる医師の異動に係る記載はないし、同じ中期計画の人材の確保と育成に係る箇所や人員配置に係る箇所においても、医師の異動をうかがわせる記載は見当たらない。
以上によれば、Y社の指摘する中期計画の記載は、XとY社の間の勤務内容や勤務場所の合意に係る原決定の認定を左右するものとはいえない。

2 Y社は、複数の看護師がXによるパワーハラスメントや倫理的に不適切な発言をした旨の相談や報告をしていること自体、本件配転命令に係る業務上の必要性を基礎付ける重要な要素であり、原決定はその評価を誤った旨主張する。
しかし、上記相談及び報告に係る疎明資料は、いずれも聴取結果をまとめたメモであるところ、被聴取者等の氏名がマスキングされており、その他に信用性を補う事情も認められないことからすると、これらに依拠してXが問題のある言動をしていたとか、配転の必要性を基礎付けるに足る複数の相談等の疎明があったとはいえない

パワハラ等の事案において、報復を避ける目的で、陳述書や聴取書等で氏名をマスキングした上で証拠として提出するケースがありますが、上記判例のポイント2のように信用性を否定されてしまいますので注意しましょう。

配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介2099 頭のいい奴のマネをしろ#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

日本マクドナルド創業者の実体験に基づく「マネ」の重要性が説かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

有力者に会いたいと思ったら、”勇気”を出して、直接たずねてみることである。アポイントメントを取らない限り、十中八、九まで玄関払いを食うかもしれないが、1パーセントでも可能性があれば、出かけてみるべきだ。・・・有力者のコネを求める方法を質問してくるぐらいなら、堂々と胸を張って直接ぶつかるだけの勇気を養ってほしいものだ。」(186頁)

私、こういうの全然平気です。

断られても、「ですよね~お忙しいですもんね~」と言えば済む話です。

最初からダメ元ですから、断られたところで落ち込むような話ではありません。

もじもじしているうちに人生は終わってしまいます。

どんどん連絡してお話を聞きに行くべし。

解雇405 普通解雇及び懲戒解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、普通解雇及び懲戒解雇の有効性が争点となった事案を見ていきましょう。

ネットスパイス事件(大阪地裁令和5年8月24日・労判ジャーナル141号22頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結していたXが、Y社に対し、XがY社からされた令和3年1月14日付けでの解雇が無効である旨主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求をするとともに、労働契約に基づき、本件解雇の翌月から毎月の賃金支払日である10日限り41万円の賃金+遅延損害金の支払請求をする事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件解雇の際に交付した労働契約終了通知書には、解雇理由として、アドテクノロジー製品開発の進捗が停滞しており、開発体制を再検討する旨が記載されているのみであり、Xの能力不足や経歴詐称を指摘する文言はないし、懲戒解雇に係る就業規則の条文の摘示もない
また、本件解雇の約2週間後に交付された解雇理由証明書には、「解雇理由は、新製品開発の停滞により会社業績が悪化し、人員削減が必要になったため」と冒頭に記載した上で、その後の箇所で具体的な理由として、令和2年9月期において赤字決算となり、翌年9月期決算では会社業績がさらに大幅に悪化することが確実な状況であること、経費の大半が人件費であることを指摘した上で、Xが人員削減の対象となった理由として、本件製品専任であったこととプログラミングの基礎の習得が十分でないことが記載されており、以上の記載内容は本件解雇が整理解雇であることを強くうかがわせるものであるといえる。
以上のとおり、本件解雇に伴ってY社からXに対して交付された文書からは、Xに対して企業秩序違反を指摘する記載が全くなく、かえって、整理解雇であることを強くうかがわせる記載があることからすると、本件解雇は普通解雇と解するほかなく、懲戒解雇の意思表示を含むものとは認められない

2 Xの行った作業からプログラマーとしての能力が欠如しているとは認められず、Xに対して業務上の注意及び指導がされていたともいえないから、本件解雇は普通解雇として客観的合理的理由があり、社会通念上相当であるとはいえない。

普通解雇と懲戒解雇は、「解雇」という点では共通していますが、法的性質が異なるため、解雇の意思表示をする際は、どちらの解雇をするのかを意識する必要があります。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2098 自分を超え続ける(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

サブタイトルは、「熱意と行動力があれば、叶わない夢はない」です。

著者は、19歳、日本人最年少で世界七大陸最高峰を制覇された方です。

超えるべきは他でもない「自分」なのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分の人生なのだから、誰かに命じられたり、何かに振り回されたりして生きていきたくない。自分の人生を自分でコントロールしたい。そのためには、自分自身で生きていく力をつけなくてはいけない。」(93頁)

私が弁護士になろうと思った理由です。

人生において、「自由」という名の選択肢を持ち続けるためには、誰かや何かに依存せずに自分自身で生きていく力をつけなくてはいけません。

制度や社会や会社や上司やパートナーの愚痴や不満を言ってみたところで、実際は何一つ変わりません。

自分自身に力をつけるほかないのです。

賃金277 従業員の地位を併有するとして、専務執行役への退職金の支払いが認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、従業員の地位を併有するとして、専務執行役への退職金の支払いが認められた事案を見ていきましょう。

学究社事件(東京地裁令和5年6月29日・労経速2540号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の専務執行役であったXが、従業員の地位も併有していた旨主張して、Y社に対し、退職金3999万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、1800万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、その後、Y社の執行役に就任し執行役としての業務に従事したものの、管理本部長等の従業員としての職制上の地位を併有しており、執行役に就任した際、Y社に対し退職届を提出したり、雇用保険の資格喪失手続をしたり、Y社から退職金の支払いを受けたりするなどして従業員としての地位を清算することはなかったことから、従前有していたY社の従業員としての地位に変化はなかったということができる(なお、Y社退職金規程3条1号のとおり、Y社においては退職金規程上も使用人兼務役員の存在が認められているところである。)。
また、Xの業務内容についてみても、塾講師としての業務を続けるなど、実務的で使用者からの指揮監督を受けて行うことが想定される業務にも従事している。さらに、Y社は、XについてA退職金規定に則って計算した金額を退職給付引当金として計上したり、Aの規定に従って退職金の手続をとることを通知したりするなど、Xのことを従業員であると認識していたと推認できる事情もある。なお、Y社は、X以外の執行役についても、Xと同様に退職給付引当金を計上したり、従業員のみが対象となる企業型確定拠出年金の拠出をしたりするなどしており、執行役についても退職金について従業員と同様の取扱いをしているし、Y社においては、執行役に就任した後、従業員の地位に戻る者もいたことなどから、執行役は、従業員と明確に区別されていなかったということができる。
したがって、Xは、Y社において、執行役就任に伴い従業員としての地位を喪失したということはできないから、Y社の従業員であったということができる。

同種の事案は決して珍しくありません。

裁判所がどのような事実に着目して、上記結論を導いているのかをチェックしましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2097 ウルトラ・ニッチ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

サブタイトルは、「小さく始めろ!ニッチを攻めろ!」です。

WAGYUMAFIAを経営する著者がどのようなことを考えてきたのかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

君の年で資本経済に投資する必要はない、なぜ1時間50万円で講演ができるかといえば、発展途上国の経済発展論を英語で、しかも日本人で説明できる人間が僕しかいないからだ。なぜ、そうなったか。それは、君の年に自分に投資をしたからだ」(87頁)

20代、30代前半にどれだけ自己投資をしてきたかが、人生の後半戦における報酬単価に影響を与えます。

残酷ですが、紛れもない事実です。

給料が安いと不満を言っている場合ではないのです。

私のような凡人は、他の人が遊んでいるとき、寝ているときに、寸暇を惜しんで自分の商品価値を高めるための努力を重ねるほかないのです。

やるかやらないか。

ただそれだけの話。

セクハラ・パワハラ84 上司の部下に対する侮辱的な発言が不法行為にあたるとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

今日は、上司の部下に対する侮辱的な発言が不法行為にあたるとされた事案を見ていきましょう。

ブレア事件(東京地裁令和5年6月8日・労経速2539号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の設置する補習校で勤務していたXが、上司であったY2からパワーハラスメント及びセクシャルハラスメントを受けて適応障害になったと主張して、Y2に対しては不法行為に基づき、Y社に対しては使用者責任に基づき、連帯して364万0610円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Yらは、Xに対し、連帯して55万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y2がXに対してXの年齢、体型及び結婚歴に関して侮辱的発言(「おばさん」、「(お)デブ」、「経験豊富」)をしたことは当事者間に争いはない。他方で、Xは、容貌に関する侮辱的発言(「ブス」)もあったと主張するが、Yらはこれを否認する。
もっとも、この点に関するXの供述(職員会議後に行った飲食店内において「ブスのぶりっ子は見るに堪えない。」と言われた。)は具体的であるし、上記争いのない発言に照らしてY2の発言として不自然さもないから、信用性が高い
これに対し、Y2は、「個人の努力によって差が出る」体型への発言は許容されるが、「先天性のもの」である容貌に関する発言は許容されないという考えを持っているので、「ブス」という発言はしないように心掛けているから、言っていないと思うなどと供述しているが、その内容自体不合理なものであって、信用性に欠ける
したがって、Y2は、Xの要望に関する侮辱的文言(「ブス」)による発言もしたことを認めることができる。
そして、上記各侮辱的文言による発言は、通常、相手に精神的苦痛を生じさせるものであって、特段の事情のない限り不法行為となるものである。
この点について、Yらは、当該発言は、Y2とXとの良好だった関係性や、X自身が自虐的に笑いをとるキャラであったことを背景にされたものであるから、Xに精神的苦痛を与えるものではなく、不法行為とならないなどと主張する。
しかしながら、Y2とXとの関係性について、Yらが提出するメッセージのやりとりを見ても、単なる上司と部下との間の通常のやりとりにすぎず、そこから侮辱的な発言が正当化されるような何らかの特殊な関係性を認めることはできない
そもそも、良好な関係性があったり、本人が自虐的に笑いをとっていたりしたとしても、それによって侮辱的な発言が正当化されるものではない。

発言内容について録音等の直接的な証拠がなくても、上記のとおり、裁判所が認定することは普通にあります。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。

本の紹介2096 ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から4年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

「オリジナル」であることがいかに重要であるかがよくわかります。

多くの人が他者と同じであることで安心する社会ですから、実際のところ、差別化なんて朝飯前です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

つねに現状に異議を唱えるような人は、『結果の論理』ではなく『妥当性の論理』を使う。つまり、『私のような人は、こういう状況ではどうするべきか』と考えるのだ。外側を見回すことで結果を予測するのではなく、内側、つまり自分のアイデンティティと向き合うのである。自分がどういう人間であるか、もしくはどういう人間になりたいのか、というのが決断の基礎となるのだ。『結果の論理』にもとづいて決断をしていると、リスクを負うべきではない理由が必ず見つかる。一方、『妥当性の論理』にもとづくと、自由になれる。」(246頁)

言うは易し。

多くの人は、世間体や他人の評価を気にして、自分が本当にやりたいことや正しいと思っていることができずに、悶々としながら生きています。

いろんなことに縛られ、我慢し、いつしかいろんなことを諦めてしまうのです。

人生は一度きりです。

しかもあっという間に終わってしまいます。

気付けばもう今年も4か月終わってしまいました。

もっと好きなように生きればいいのですよ。

YOLO

セクハラ・パワハラ83 上司から受けた身体的暴力に基づく損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、上司から受けた身体的暴力に基づく損害賠償請求に関する事案を見ていきましょう。

大洋建設事件(東京地裁令和5年2月17日・労判ジャーナル141号38頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、未払割増賃金等の支払を求めたほか、上司から暴言・暴力を受けており、職場環境整備義務に違反した債務不履行又は民法715条1項に基づく使用者責任に基づく損害賠償として100万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 従業員兼取締役であるCは、Xに対し、「行けるようであればって文章理解できない?なんでもかんでも電話して聞くんじゃなくて少し自分の頭で考えろバカ!」、「今後あまりバカだと2度と連絡しません」、「よく文面見ろバカ」、「了解しましたじゃなくて今日の予定どうなってるんだって聞いてんだバカ!」とメッセージを送信したものと認めることができ、また、Cは、Xの頭をヘルメット越しに5回くらい小突いたり、頭を直接10回くらい叩いたり、5回くらい足を蹴飛ばしたことがあったものと認めることができるところ、Cのメッセージは、その文面に照らしても、指導注意の過程に行われたものであって、表現方法として適切さに欠け、不穏当であり、Xが不快に感じるものであったことは否定することができないが、その頻度、経緯に照らしても、直ちに業務の範囲を超えたXの社会的名誉、名誉感情を害する程度・内容とまではいえないが、他方、Cにより、複数回にわたって身体的暴力を受けたことについて不法行為が成立し得るものといえ、これに対する慰謝料は、5万円をもって相当というべきであるから、Y社は、Xに対し、従業員を兼ねるCによる不法行為につき、使用者責任(民法715条)に基づいて慰謝料5万円等の支払義務を負う。

慰謝料の金額の相場がよくわかります。

この手の事案は、判決まで行った場合、会社側が支払う金額の多寡よりも、レピュテーションダメージのほうがはるかに大きいのが特徴です。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。