Author Archives: 栗田 勇

本の紹介2110 871569#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

常にいろんなことを考えているんだろうな~ということがよくわかります。

今読み返しても、本当に良い本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分の身の丈を自分で決めてしまったら、いつまで経ってもそのサイズ通りの人間でしかいられない。ヤドカリはひと回り大きい貝殻に入れば、いつの間にかその貝殻がぴったりのヤドカリになる。貝殻が縮むのではない。ヤドカリの身体がひと回り大きくなるのだ。」(65頁)

環境がその人の人格や考え方を形成します。

これは残酷なことですが、紛れもない真実です。

自分が選べない環境もあれば、自ら選んで身を置く環境もあります。

多くの場合、30代までに身を置いた環境、それによって形成された人格や考え方によって、その人のその後の人生が決まってしまうように思います。

労働時間103 新型コロナ蔓延期の海外渡航に対する時季変更権の行使(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、新型コロナ蔓延期の海外渡航に対する時季変更権の行使に関する裁判例を見ていきましょう。

京王プラザホテル札幌事件(札幌地裁令和5年12月22日・労判1311号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において宿泊部部長として勤務していたXが、令和2年3月に国外で行われるXの娘の結婚式に出席するため、年次有給休暇の時季を指定したが、Y社から新型コロナウイルス感染症に関する状況等を踏まえて国外への渡航を禁止するための時季変更権の行使を受けて当該結婚式に出席することができなかったところ、当該時季変更権の行使はY社の事業の正常な運営を妨げる場合に当たらないから違法であるなどと主張して、労働契約上の債務不履行又は不法行為に基づき、慰謝料及び弁護士費用として330万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、本件期間の年次有給休暇の利用目的としてハワイで行われる娘の結婚式に出席することを明示しており、ハワイに渡航できず、同結婚式にも出席できない場合にはおよそ本件期間に年次有給休暇を取得する必要がなかったものと認められることを前提に、当時の新型コロナウイルス感染症の状況のの下では、仮にXがハワイに渡航し、実際に新型コロナウイルスに感染し、帰国後に症状等が出た場合には、当該感染の事実等が大々的に報道され、Y社に対する社会的評価の低下をもたらすことでY社の事業継続に影響しかねないものであったと認められ、上記の特段の事情があると認められるから、本件時季変更権の行使に当たり、Xの本件期間の年次有給休暇の利用目的を考慮することも許されるというべきである。

娘の結婚式に出席できないとは・・・。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2109 実験思考#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

世の中、すべては実験」とあるのように、考えたことを実験するといういわゆる「アウトプット力」が尋常ではない方です。

考え込んでいるほど人生は長くありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『実験思考』が身につくと、世の中に課題があればあるほど、楽しくなります。不便なこと、めんどくさいことが、ぼくにとっては『宝物』になり、世界が180度違って見えてきます。しかも、すべての失敗が貴重なデータになっていくので、失敗という概念すらなくなります。」(188頁)

まあ、とりあえずやってみる、ということです。

いきなりうまくいくことのほうがむしろまれです。

途中で修正すればいいのです。

1打席目からヒットを狙うから、なかなかバッターボックスに立てないのです。

ネクストバッターズサークルでいくら素振りをしていたって、いつまでたってもヒットは打てません。

賃金280 講座受講費立替金支払請求が棄却された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、講座受講費立替金支払請求が棄却された事案を見ていきましょう。

医療法人社団響心会事件(千葉簡裁令和5年11月28日・労判ジャーナル114号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、Xにが自らの自己啓発のためにY社の研修費用立替制度を利用し、本件各講座を受講したとして、同人に対する、同研修の受講料合計94万9300円から、会社の規定に基づく退職までの期間に応じた免除額を控除した合計89万9300円の支払い及びXの連帯保証人に対する、同人のXの損害賠償義務についての連帯保証契約に基づく同額の履行請求を行った事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社において、通常は、従業員が研修費用立替制度を利用する場合、「研修費稟議書」を提出することとなっていたというのであるから、Xからの「研修費稟議書」が存在しない以上、Xはこの「研修費稟議書」を提出していないということであり、これによれば、XがY社の研修費用立替制度を利用していたというY社の主張は認めることができず、また、XはY社に雇用されるに際して提出した誓約書に記載されている研修と前記「研修費稟議書」を提出して決済を受けなければならないとされている、本件研修費用立替制度を利用した研修とは全く別物であることが認められ、Xが誓約書に署名捺印していることによって、本件研修費用立替制度の利用に同意していたとは認められず、さらに、Y社の請求する本件各講座はY社の負担でXが受講した研修講座であることが認められるから、Xは、いかなる意味においても、Y社との間で立替金を返還する旨の合意をしていた事実は認められず、本件各講座の研修費用立替金の支払義務はない

非常に形式的な理由付けではありますが、そのように解するのが自然だということです。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2108 運のいい人、悪い人#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

運がいい人の特徴がよくわかります。

その逆もまたしかり。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

運が悪くなっていくのは、どういうことかといえば、まずエネルギーが衰えるということがあります。それまで何でもなくできていたことが、億劫になったり、できなくなっていく。それが運気がいいところから悪いほうに落ちていくときの特徴です。・・・いつまでもエネルギーを蓄えて、発散できるようにするためには、やはり健康であることが基本だし、それを維持する努力は必要だと思います。」(168頁)

これは健康なうちはわかりません。

一時的にでも、健康を害すると、このことがよくわかると思います。

運動、栄養、休養を意識し、ストレスを溜めず、前向きに生活を送ることができれば、エネルギーは自然とみなぎってきます。

年齢とともに、健康を維持するには努力が必要になってきます。

怠惰な生活を送ったり、体に悪いと分かっているながらアディクションから抜け出せないと人生の後半につけが回ってきます。

有期労働契約126 69歳時点での雇止めの適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、69歳時点での雇止めの適法性に関する裁判例を見ていきましょう。

エイチ・エス債権回収事件(東京地裁令和3年2月18日・労判1303号86頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で、有期労働契約を締結して内部監査業務に従事していたXが、同契約は労働契約法19条2号に該当し、Y社がXの更新申込みを拒絶することは客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められず、これを承諾したものとみなされるとして、労働契約に基づき、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、②令和元年4月分の賃金32万5000円並びに令和元年5月分以降本判決確定の日までの賃金月額32万5000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、X自身として、冷却期間を置いたうえで回収部と対話の機会を見出し定期報告までに解決する必要があると考えていたことが推認され、さらに、Y社代表者から、C取締役経由で回収部と接触するよう指示されていたことを十分認識していたことが推認されるから、仮にXが、Y社代表者が社内で解決すると発言したと認識し、C取締役から回収部の監査について指導を受けたと認識していなかったとしても、Xは、回収部に対する監査実施の必要性とそのための工夫等の必要性を十分に認識していたというべきである。

2 Xは、一定の時期以降、回収部の監査について、なんらの具体的な対応策も取らないままに延期を繰り返していたといわざるを得ない。Xは、Xによる回収部の監査の延期自体がY社代表者に対する問題提起であり、Y社代表者が社内で解決すると言っていたことが実現されるのを待っていたという趣旨のことを述べるが、仮にY社代表者が社内で解決するという発言をしていたとしても、前述のとおりそもそもXの認識によってもY社代表者はXに対しC取締役を介して回収部とやり取りをするよう指示していたのであるから、Xが一方的にそれを実行せずに黙示的にY社代表者へ直接の対応を求めていたというのは、Y社代表者からすればおよそ理解不能なものである。

3 本件においては、Y社代表者やC取締役から事細かな業務改善指導がなかったとしても、前記の注意指導がなされれば、社会通念上相当な注意指導がなされたものといえると解するのが相当である。

第2定年が設定していない会社の場合、どのタイミングで雇止めにするかは悩ましいところです。

年齢にかかわらず、雇止めには合理的理由が求められますので、そう簡単に雇止めをすることはできません。ご注意を。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

本の紹介2107 35歳からの「愚直論」。#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

愚直に何かをやり続けることがいかに大切であるかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『つまらないから辞める』という人間がとても多い中で、どんなに小さくとも楽しみを見つけ、それを継続していくことは、立派な一つの才能だからです。」(136頁)

結局のところ、「面白きこともなき世をおもしろく  すみなすものは心なりけり」ということを認識しているかどうかが、人生を楽しく、幸せに生きていくコツなのだと思います。

物事・出来事それ自体には意味はありません。

その物事・出来事に意味を与えるのは、人の解釈です。

だからこそ、同じ物を見ても、同じ出来事に遭遇しても、感じ方、捉え方は人それぞれです。

不満ばかり言っている人は、運が悪いのではなく解釈のしかたが悪いのです。

賃金279 雇用契約書に幅のある月給が記載されている場合の賃金額(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、雇用契約書に幅のある月給が記載されている場合の賃金額についての裁判例を見ていきましょう。

カウカウフードシステム事件(大阪地裁令和5年10月12日・労判ジャーナル143号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結して就労していたXが、Y社に対し、本件労働契約に基づく未払賃金、未払割増賃金及び労働基準法114条に基づく付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Y社の人事担当者は、本件採用面接において、製造業務であれば採用する可能性がある旨を説明し、Xはこれに異論を述べることなく採用手続を経て採用されたことが認められ、以上に加え、月給16万5500円から25万円という記載内容の本件雇用契約書が作成され、本件労働契約締結後の試用期間中は1か月当たり賃金額が25万円であったことが認められ、本採用時に特段の手続きがとられたことをうかがわせる事情は見当たらないし、豊中工場でX以外に従事する従業員の中に月額25万円を超える基本給を受けている者や課税支給合計額で35万円以上の支給を受けている者はいないことからすると、試用期間時の賃金額が本採用時に増額されていないとしても不自然とはいえないから、Xの賃金額は試用期間開始時の時点では25万円であり、本採用時においても特段これを変更する旨の合意は認められないから、25万円であると認められる。

基本的な事実認定のしかたですね。

裁判所がどのような点に着目して事実認定をしているかをチェックすると勉強になります。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2106 資本家マインドセット#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「さらばサラリーマン。」と書かれています。

今の時代は、誰でも「資本家」としての生き方を選択することができます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

会社の名前でしか呼ばれないようなサラリーマンは、もはや生き残れない。活躍できるのは、自分の名前で仕事のオファーや注文が来るような人材だ。その人にしか打ち出せない価値や仕事があるなら、スーツやネクタイを着用していようがいまいが関係なく、取引先から求められるだろう。」(189頁)

ここ最近、スーツやネクタイを着用しない職種がものすごく増えてきましたね。

労働力の減少による超売り手市場がゆえに、昔のような堅苦しいルールはどんどんなくなり、服装も髪型も髪の色もピアスも髭もタトゥーも、もうなんでもOKなのでとにかく働いてください、という時代です。

そんなことはもう好きにすればいいと。

「べき論」が強い昔気質の会社は、今後ますます人が集まらなくなっていくことでしょう。

解雇406 業務によって貯まったポイントの私的費消を理由とする解雇が有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、業務によって貯まったポイントの私的費消を理由とする解雇が有効とされた事案を見ていきましょう。

中央建物事件(大阪地裁令和5年10月19日・労判ジャーナル143号28頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結して就労していたXが、Y社による解雇は無効であるとして、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、解雇後の未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、総務部における勤務中、上司から、担当業務であった酒類購入によって貯まった本件ポイントを当該酒類の購入に充てるように指示があったにもかかわらず、Xは、酒類購入業務によって貯まった本件ポイントを私的に費消しているところ、その使途が美容用品や家電製品等の多岐にわたることに照らすと、本件ポイントには、現金に類似する通用性・利便性があったと考えられ、本件ポイント費消は、Y社に対し、Xが業務上委ねられていた現預金を私的に利用することと同等の経済的損害を与えるものであって、これと同様の信頼関係の破壊をもたらすものであったといわざるを得ないから、本件ポイント費消の性質及び経緯、費消額及び用途並びに回数及び期間に照らすと、本件ポイント費消は、XのY社従業員としての職務上の義務に反するものであり、本件解雇についての客観的に合理的な理由に当たるものと認められる。

魔が差したというか出来心というか・・・とはいえ、ポイントの私的利用は、上記のとおり、現預金の私的流用に類似することから考えれば、懲戒解雇を選択することもやむを得ないと思います。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。