賃金173 固定残業代が有効と判断される場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

22日目の栗坊トマト。順調に大きくなっています。

今日は、固定残業手当、深夜手当は時間外・深夜労働の対価性を有すると認めた裁判例を見てみましょう。

さいたま労基署長事件(東京地裁平成31年1月31日・労経速2384号23頁)

【事案の概要】

本件は、平成23年9月30日に急性心不全により死亡した亡Xの母であるAらが、Xの死亡は勤務先における恒常的な長時間労働が原因であると主張して、所轄労働基準監督署長であるさいたま労働基準監督署長に対し、遺族補償給付などを請求したところ、処分行政庁は、平成29年7月18日付けで、Xの給付基礎日額を8915円と認定した上で、当該給付基礎日額に基づき算定された金額の遺族補償年金をAに支給する旨の処分等につき、原告らが、上記各処分には給付基礎日額を低額に認定した違法があると主張して、Yに対し、上記各処分の取消しを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件会社における固定残業手当(残業手当)ないし深夜手当が、通常の労働時間の賃金に当たる部分(基本給)と明確に区分されていることは明らかである。
次に、対価性についてみると、Xが署名した契約社員雇用契約書には、「業務手当」を「残業手当」として支給する旨が明記されるとともに、本件賃金規程17条には、定額式の時間外手当として固定残業手当を支給することがあること及び実際の時間外労働がその金額を超えたときは別途時間外手当を支給する旨の包括的な定めが置かれ、本件賃金規程12条は、従業員が午後10時から午前5時までの間に勤務した場合には深夜勤務手当を支給する旨を定めている。また、Xの給与明細には「残業手当」ないし「固定残業手当」及び「深夜手当」との名称が明記されていた上、「固定残業手当」や「残業手当」という言葉の通常の語感からも、定額の残業代(割増賃金)を意味するものと容易に認識することが可能である。これらの事実によれば、本件会社がXに支給していた「残業手当(業務手当)」ないし「固定残業手当」は、時間外労働に対する対価として、「深夜(勤務)手当」は深夜労働に対する対価としてそれぞれ支払われたものと認められ、Xも、これを認識していたと認めるのが相当である(Aは、Xから残業代が支払われていないとの不満を聞いたことはない旨供述しているところ、当該供述も上記認定を裏付けるものといえる。)。

奇を衒わず、基本に忠実に固定残業制度を運用すればちゃんと裁判所は認めてくれます。

決して自分勝手に解釈して固定残業制度を導入することだけはやめましょう。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。