おはようございます。
15日目の栗坊トマト。順調に育っております。
今日は、上司の指示命令に従わないこと等を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。
社会福祉法人三宅島あじさいの会事件(東京地裁平成31年3月7日・労判ジャーナル89号42頁)
【事案の概要】
本件は、Y社を普通解雇された元職員Xが、本件解雇は無効であるとして、Y社との間で雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、Y社に対し、本件解雇後の未払賃金等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
解雇は有効
【判例のポイント】
1 Xの行為のうち、解雇理由1ないし5については、上司の職務上の指示命令に従うことを求めた就業規則26条2項、職員間で相互に協調することを求めた同規則27条1号、職務上の権限を越えた専断的行為を禁じた同規則29条1項5号に反するものであり、同規則22条11号(就業規則等の定めに反したとき)に該当し、また、解雇理由2ないし6のとおり、Xの介護技術や同僚職員との連携に不十分な点があったにもかかわらず、Xが上司及び同僚職員の指示や指導を聞き入れようとせず、本件けん責処分を受けながらなお真摯な反省の態度を示すことがなかったXの姿勢は、Y社においてXを指導し、介護技術や職員間の連携等など、介護の職務遂行上必要な能力を向上させることをおよそ困難とする事情であり、同条3号(勤務成績が著しく不良又は上司の指示を守れず早期に改善の見込みがないとき)、同条4号(職務遂行能力が劣り、一定期間の改善指導を行っても職務遂行上必要な水準まで上達する見込みがないとき)及び同条12号(前各号の他、解雇に該当する合理的事由があるとき)に該当し、本件解雇には、就業規則上定められ、合理的と認められる解雇の理由が存する。
2 Xの解雇理由に共通するのは、Xが自己の判断で独善的かつ専断的に業務を遂行するという点であり、Xには、上司の指示に従い他の職員と協同して業務を遂行するという、組織の中で職務を遂行するに当たり求められる基本的な姿勢が欠けているといわざるを得ず、また、Xが、上司や同僚職員からの指導に対して真摯に耳を傾ける姿勢を欠き、本件けん責処分により改善の機会が付与されたにもかかわらず、その後も自己の勤務態度を改めることがなかった経緯も踏まえると、Xの勤務態度について、指導等による改善が見込めるものでもないから、Xに対し解雇をもって臨むことはやむを得ず、本件解雇の手続にも特段不適切な点は認められないことなどを踏まえると、本件解雇は社会通念上相当として是認することができること等から、本件解雇に解雇権を濫用した違法があるとはいえず、本件解雇は有効である。
このような事案の場合、使用者側もしびれを切らしてすぐに解雇してしまう例がありますが、それではいけません。
指導・教育・改善の機会を与えたにもかかわらず改善しなかったという一連の流れについてエビデンスを残す意識を持つことが大切です。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。