おはようございます。
今日は、スポーツクラブ支店長の管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。
コナミスポーツクラブ事件(東京高裁平成30年11月22日・労判ジャーナル84号24頁)
【事案の概要】
本件は、会員制のスポーツクラブを運営するY社の元従業員X(支店長職又はマネージャー職)が、Y社に対し、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する割増賃金(割増手当)合計約317万円等の支払を求めるとともに、労働基準法114条所定の付加金として割増賃金と同額の支払を求めたのに対し、Y社が、Xは労働基準法41条2号に定める管理監督者に該当し、時間外労働及び休日労働に対する割増賃金請求権は発生しないなどと主張して争った事案である。
原判決は、Xは、管理監督者に該当しないとして、Xの請求を、割増賃金につき約312万円等の支払、付加金につき90万円等の支払を求める限度で認容した。
Y社が控訴し、Xが付帯控訴した。
【裁判所の判断】
控訴棄却
【判例のポイント】
1 Y社は、XがM2級からM3級に昇格してSM職層になって更に支店長に昇進することで月額9万円の増額となるところ、Xの残業時間が1月当たり約37時間にとどまる限り、支店長昇進前の時間外割増賃金相当分と大差ないことから、管理監督者に相当する処遇を受けていたと評価されるべきであると主張するが、そもそもXが本件請求期間中に支店長であった期間の1か月平均の時間外労働時間数は41時間11分であって、上記の約37時間を超えているのであり、支店長の広範な職責を踏まえると、管理監督者としての地位にふさわしい待遇がされていたと認めることはできないこと等から、Xの職責や権限、勤務態様や待遇等に照らせば、Xが労働基準法41条2号に定める管理監督者の地位にあったと認めることはできない。
2 Xは、Xが労働基準法上の管理監督者に該当しない場合には、労働基準法12条によりY社の給与規程22条及び23条が適用される旨主張するが、労働契約法12条は労働契約が就業規則に違反する場合に無効部分については就業規則によるというものであるが、本件はY社の就業規則が労働基準法に反するものであるから、労働基準法13条により無効部分については労働基準法によることになり、当事者の合理的意思解釈としてもそのように解すべきであることは原判決が説示するところである。
ファストフードの店長やスポーツクラブの支店長ですら管理監督者に該当しないわけですから、一般的な会社の部長クラスを管理監督者と考えることはもはやあきらめたほうがいいでしょう。
管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。