賃金165 固定残業制度が無効と判断される理由(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、未払時間外割増賃金等支払請求と固定残業代に関する裁判例を見てみましょう。

アトラス産業事件(東京地裁平成30年9月10日・労判ジャーナル84号52頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の正社員であったXが、会社在籍中に時間外労働、休日労働及び深夜労働を行ったと主張して、Y社に対し、時間外、休日及び深夜割増賃金約811万円等の支払を求めるとともに、労働基準法114条に基づく付加金約808万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、約457万円+付加金320万円を支払え

【判例のポイント】

1 XはY社から月給40万円に時間外労働等に対する割増賃金が含まれるとの説明を受けたことを否認し、本件証拠によるも、Y社からXに対し上記説明があったとは認められないこと、本件契約書1の記載から直ちに上記月給に時間外労働等に対する対価としての定額の割増賃金が含まれていると理解することは困難であること、賃金規程には基本給に割増賃金を含む旨の記載がないばかりでなく、時間外労働につき割増率1.25倍の割増賃金を支給するとの本件各契約書の記載と齟齬する記載があること、本件各契約書に記載された基本給の時給額は、埼玉県の最低賃金を下回ること、Y社が主張する固定残業代の定めによれば、固定残業代部分が1か月当たり約181時間ないし209時間分の時間外労働の対価となるなど、基本給と固定残業代部分が著しく均衡を失するうえ、Xの実際の時間外労働が1か月平均約60時間であることともかけ離れていることなどの事情を考慮すると、上記月給に時間外労働等に対する対価としての定額の割増賃金が含まれているとは認め難いこと等から、Y社の上記固定残業代に係る主張は採用することができず、月給40万円は全て通常の労働時間の賃金に当たるものと解するのが相当である。

2 Y社は、Xとの間で固定残業代の定めの合意をし、これを支給していた旨主張するものの、かかる固定残業代の定めを認めることはできないうえ、かかる給与制度に託けて基本給以外に時間外等割増賃金の支払をしていないことやその金額が高額に及ぶことなどの事情を総合して考慮すると、Y社に対し、上記未払時間外等割増賃金額から本訴提起日までに支給日から2年が経過した部分を控除した457万7397円の約7割に当たる320万円の付加金の支払を命ずるのが相当である。

もうそろそろ固定残業制度、やめませんか・・・

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残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。