おはようございます。
今日は、労基法20条に反する解雇通知が30日経過時点で有効とされた裁判例を見てみましょう。
雄武町事件(旭川地裁平成30年3月6日・労経速2343号24頁)
【事案の概要】
本件は、Y社に地方公務員法22条1項に基づき条件付きで採用され、Y社が設置しているX病院に技師(医師)として勤務していたところ、条件付採用期間の勤務成績を不良と判断されて雄武町長から本件免職処分を受けたXが、Y社に対し、本件免職処分は違法であると主張して、行政事件訴訟法3条2項に基づき、本件免職処分の取消しを求めるとともに、違法な本件免職処分により精神的苦痛を受け、転居を余儀なくされるなどの損害を受けたと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、①慰謝料、転居費用、弁護士費用等合計654万8318円+遅延損害金、並びに②同年6月1日から本件判決確定の日までの間、転居後の住居とそれまで居住していた職員住宅の賃料差額として月額8万2548円の割合による金員の各支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 以上を前提に、条件付採用期間におけるXの勤務成績について検討すると、Xは、わずか6か月の条件付採用期間中の医療過誤に繋がりかねない誤りを複数回にわたって犯した上、医師が行うべき業務を、合理的な理由もないのに行わなかった。また、Xは、医師、あるいは医長として、他の職員に対して指揮命令をすべき立場にありながら、合理的な理由もなく、看護師を怒鳴りつけ、詰め寄るなどした。更に、Xは、本件病院の他の職員に対して協調性をもって接するべきであるにもかかわらず、職員に体当たりをし、詰め寄るなどの行為に及んだのであって、これらの事実からすれば、条件付採用期間におけるXの勤務成績は不良であったといわざるを得ない。
2 本件免職処分によりXが免職されるものとされた平成28年3月31日の30日前に解雇予告がされたことはなく、また、本件免職処分が通知された際に解雇予告手当が現に支払われたこともないが、Y社において本件免職処分により同月31日付けでXを免職することに固執する趣旨であったと認めるに足りる証拠はなく、かえって、Y社は22日分の解雇予告手当を含む退職手当を支払ったのであるから、本件免職処分につき、Y社が同月31日付けのXの免職に固執する趣旨であったとはいえない。
そうすると、本件免職処分は、遅くとも、本件免職処分が通知された日の30日後である同年4月22日を経過した時点でその効力が生じたものというべきである。
基本的な点ではありますが、上記判例のポイント2の考え方は理解しておきましょう。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。