派遣労働26 派遣先における面談後の不採用と損害賠償請求の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、派遣先における面談後の不採用に対する損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

バックスグループ事件(東京地裁平成29年6月7日・労判ジャーナル71号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用契約の締結を申し込んだ派遣労働者Xが、Y社に対し、Y社がXと雇用契約を締結する前に派遣労働者の就労予定先であるA社の担当者と派遣労働者を面接させたうえ、A社の意向を理由としてXを採用しなかった旨主張し、かかる経緯に照らせば、A社とY社は実質的には労働者派遣契約を結んでおり、Y社が派遣労働者に本件面接を行わせ、本件面接の結果派遣労働者を不採用としたことは、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(以下、告示37号)に違反し、Xに対する不法行為に当たるなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料95万円の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、不法行為の根拠として告示37号違反を主張するところ、告示37号の目的は、労働者派遣法の施行に伴い、労働者派遣法に該当するか否かの判断を的確に行う必要があることに鑑み、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分を明らかにすることであり、労働者派遣事業と請負との区分に関する基準であるから、事業者(使用者)に関する何らかの義務を定めるものではなく、本件においてXが指摘するY社の各行為について、告示37号違反による不法行為を認めることはできない

2 本件面接について、労働者派遣法が禁ずる事前面接に当たるとのXの主張は、派遣先による特定行為を禁止する労働者派遣法第26条6項に違反する旨の主張とも解されるところ、同項は「派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない」と規定しており、いわゆる努力義務にとどまると解される上、その義務の主体は「労働者派遣の役務の提供を受けようとする者」であるから、仮に本件面接が同条項の特定行為に当たるとしても、それによって直ちにXの個々具体的な保護法益が侵害され、その責任をY社が負うとは認め難く、Y社が本件面接を行わせたこと自体がXに対する不法行為に当たると認めることはできず、さらに、契約締結自由の原則により、一般に企業には従業員の採用に当たって広範な裁量が認められるところ、同項の趣旨及び本件に顕れた一切の事情を考慮しても、Y社がXを採用しなかったこと自体が権利濫用に当たるとも認め難いから、Y社はXに対し不法行為責任を負わない。

特段異存はありません。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。