賃金144 賃金減額同意の有効性の判断方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、休職後の雇用の終了の有効性、賃金減額同意の成否に関する裁判例を見てみましょう。

DMM.com事件(東京地裁平成29年3月31日・労判ジャーナル70号42頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結し、カラオケ映像制作及びゲーム制作等に従事していたXが、Y社から、予定されていた売上げが見込まれないとして、事業部における事業の終了を告げられた後、うつ病性障害にり患したとして休職を申請し、休職期間中に代理人を立てて和解交渉を行っていたところ、Y社から、Xの不正行為が判明したなどとして、和解交渉の打切りと休職期間満了による雇用の終了を告げられたため、Xが、かかる雇用終了は解雇に当たるとした上で、Xは取締役会長が行った不当な解雇通知や長時間労働の強要等のパワーハラスメントに起因して体調を崩しており、業務上の疾病に当たるため解雇が制限され、また、解雇権の濫用にも当たるとして雇用終了は認められないと主張し、労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、未払賃金、残業代、付加金及び慰謝料等を請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 休職期間満了時において、退職の効果を生じさせないためには、労働者において、復職意思があり、復職可能な状態にあることの立証を行う必要があると解されるところ、同日を経過する時点において、XからY社に対し復職の申出や、復職可能な状態に回復したことを証する診断書等の提出はなく、休職理由の消滅に関して何らの立証も行われなかったものと認められ、上記就業規則の適用により、Xは、平成27年1月10日の経過によって、休職期間満了によりY社を退職したものと認めることができ、また、本件でY社がXとの間の雇用を終了させたことが実質的に解雇としての側面があると考えた場合においても、客観的に合理的な理由及び社会通念上の相当性が認められ、解雇権の濫用に当たるようなものとはいえず、さらに、Xについては、精神疾患にり患し、それによって就業できない状況にあった事実の存在自体認め難い上、仮にその事実を認めるとしても、業務上の疾病に当たるということはできず、労基法19条の要件を満たさないこと等から、Xの請求のうち、雇用契約上の権利を有する地位の確認を求め、解雇後の未払賃金の支払を求めるものには理由がない。

2 本件賃金減額は、45万8400円もの急激な減額を伴うもので、その同意の認定に当たっては慎重な判断を要するということはいえるものの、本件賃金減額以前にも、Xが自ら人員の削減も含め人件費を半減させる提案をしていた事実が認められることや、Xは事業部の責任者として人件費の削減に自ら寄与すべき状況があったといえること、Xには、人件費の削減を事業部を継続させるための説得の材料として用いたいという動機があったと考えられることなど、真意をうかがわせる事情は複数認められ、また、本件賃金減額によっても、月額50万円と事業部において最も高額で、一般的に見ても低いとは言えない賃金が確保されており、その後もXから異議が述べられるなどしていないことに照らしても、本件賃金減額はXの同意に基づいてされたものであると認めることができること等から、本件賃金減額は、労働契約法8条により適法になされたものといえ、Xの未払賃金請求のうち、本件賃金減額の違法を理由に差額の未払賃金の支払を求める部分には理由がない。

上記判例のポイント1、2ともに重要な論点です。

裁判所が重要視する事情をしっかり主張立証することが大切です。

そのためには過去の裁判例を参考にして準備することが不可欠です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。