おはようございます。
さて、今日は退職勧奨後の配転命令の効力に関する裁判例を見てみましょう。
コロプラスト事件(東京地裁平成24年11月27日・労判1063号87頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の営業サポート職(いわゆる営業事務)として勤務していたXが、平成23年7月、埼玉県のA発送センターへ異動を命じられるとともに、業務をカッティングサービス、検品に変更されたことについて、同配転命令は、XがY社からの退職勧奨を拒んだことに対する報復であり、X・Y社間の雇用契約で合意された範囲を超え、権利濫用に当たるものであるから無効であるなどと主張して、XにA発送センターで勤務する義務がないことの確認を求めるとともに、Y社に対し、本件配転命令に伴い減額された差額賃金の支払を請求したという事案である。
【裁判所の判断】
配転命令は有効
【判例のポイント】
1 Xが採用に当たり勤務地が東京であり業務内容が事務職であることを告げられ、以後、東京において事務職として勤務してきたものであるとしても、本件雇用契約が長期間の雇用関係を予定した正社員としての契約であって、職種や勤務場所について限定する旨明確に合意した形跡が認められないことや、Xの職務が、通常の事務職であって格別特殊な技能や資格を要するわけでもないものであることなどの事情に照らすと、本件雇用契約が他業種、他の勤務場所への配転を排除するような職種限定・勤務地限定の雇用契約であると認めることはできない。
2 使用者の配転命令は、長期的な雇用関係を予定した正規従業員に対し使用者の人事権の行使として広く行われることが予定されているというべきである。しかし、特に転居を伴う転勤については、労働者の生活環境に少なからず影響を与えるというべきであるから、使用者としてもこれを無制約に行使できるものではないというべきであり、それが権利の濫用に当たる場合には無効となると解される。すなわち、当該配転命令に業務上の必要性が存しない場合や、業務上の必要性が存する場合であっても、当該配転命令が他の不当な動機をもってなされたものであるとき又は労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときなど、特段の事情がある場合には同配転命令は権利の濫用に当たるものとして無効になる場合があるというべきである。もっとも、ここでいう業務上の必要性とは、余人をもってしては容易に替え難いといった高度の必要性に限定されるものではなく、労働者の適正配置、業務の能率増進、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りはその存在を肯定すべきである(最高裁昭和61年7月14日判決)。
3 ・・・遠距離通勤になることについても、Xが単身で生活しており、要扶養、要介護の親族を抱えているわけでもなく、転居が可能な立場にあったことからすれば、この点を重視することはできない。
4 ・・・なお、本件配転命令の経緯については、Xからすれば、それまでXに甘い言動をしていたC本部長が、態度を翻して退職勧奨をし、配転を命じたという点で唐突に感じた面があるかも知れないが、自らの勤務ぶりに対する営業職らからの評判が芳しくなかったことについては察知できたと考えられるし、また察知すべきであったともいえる。また、平成22年11月にはC本部長からも直接厳しい内容の話をされており、自らの勤務態度を省みる機会を与えられていたといえるのであるから、本件配転命令が不意打ちであるということもできない。
配転命令については、使用者に広い裁量が認められているので、労働者側からすると、解雇の有効性を争うときに比べてハードルが高くなります。
配転により遠距離通勤となることについては、裁判所はほとんど重視していないようです。
上記判例のポイント3を参考にしてください。
実際の対応については顧問弁護士に相談しながら行いましょう。