管理監督者5(センチュリーオート事件)

おはようございます。

さて、今日は、管理監督者に関する裁判例を見てみましょう。

センチュリーオート事件(東京地裁平成19年3月22日・労判938号85頁)

【事案の概要】

Y社は、自動車の修理及び整備点検、損害保険代理業等を目的とする有限会社である。

Xは、Y社入社時から退職時までの間、営業部長の職にあった。

Xは、Y社に対し、未払賃金、時間外割増賃金、付加金の支払い等を求めた。

Y社は、Xが管理監督者に該当するから、労働時間に関する労基法の規定は適用されないと主張し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を肯定し、時間外割増賃金及び付加金の請求を否定した。

【判例のポイント】

1 入社当時から退職するまでの間、Xは営業課長の職にあり、遅刻・早退等を理由としてXの基本給が減額されることはなかった

2 Xは営業課長として、営業部に所属する従業員の出欠勤の調整、出勤表の作成、出退勤の管理といった管理業務を担当していた

3 Xは、経営会議やリーダー会議のメンバーとしてこれらの会議に酒席していた。これらは、Y社代表者及び各部門責任者のみをその構成員とする会議であった

4 Xに支給された給与の額は、Y社代表者、工場長に次ぐ、高い金額であった

5 これらの事実によれば、Y社において、Xは営業部長という重要な職務と責任を有し、営業部門の労務管理等につき経営者と一体的な立場にあったと評するのが相当である

「営業部門の労務管理につき」という言い回しです。

マクドナルド事件のように「企業全体の事業経営」に関与することまでは要件とされていません。

なお、裁判所は、Xの主張について以下のように判断しています。

「労働時間の管理面については、確かにXは出退勤の際、タイムカードを打刻していたことが認められる。しかしながら、遅刻・早退等を理由としてXの基本給が減額されることはなかったのであるから、Xが出退勤の際にタイムカードを打刻していたとの事実のみから、直ちに、Xの労働時間が管理されていたと評することはできない。」

「Xは、新規採用者の決定権限や人事評価の決定権限は付与されていなかったと主張するが、XがY社代表者に営業部の人員の補充を求めたところ、Y社代表者が新規従業員を募集・採用した例があったこと、また、この際、Y社代表者がした採用面接の場にXが立ち会い、同面接後にはY社代表者から意見を求められたことからすれば、最終的な人事権がXに委ねられていたとはいえないものの、営業部に関しては、Y社代表者の人事権行使にあたり、部門長であったXの意向が反映され、また、その手続・判断の過程にXの関与が求められていたとみるのが相当である。したがって、X指摘の点は、前記の判断を左右するには足りない。」

このあたりは、参考になると思います。

タイムカードを打刻していたら管理監督者ではない、といった形式的な話ではないわけです。

この事案で、遅刻・早退した場合に、基本給の減額がされていたら、どのような結論になったのでしょうか。

やはり管理監督者性は否定されるのでしょうか・・・?

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。